056 中級ダンジョン 19階層4
リュージたちは19階層の3つ目の建物の中でミーティングをしていた。
ダンジョンドロップの情報と運用方法を考えたのだ。
「では、皆の意見を集約した結果をまとめる。モンスターカードに関してはルイーズ中心に研究、精霊石に関してはカミーユが管理、研究、イリスとエマは燃える液体の運用方法を考えるでいいか?」
「承知致しました。」
「わかりました。」
「頑張ります。」「お役に立てるようにします。」
「ジローはどうする?」
「リュージさん、自分は土魔法研究します。土木研究もしたいっす。この世界の建築はほぼ石でできています。自分の領分です。せっかく土魔法の適正を持っているので、土魔法を極めたいっす。セラミック刀や鉱石の研究もします。」
『ジローも結構真面目かと思うぐらいの返答だった。今までに無いパターンだ。意外な一面を見たな。』
リュージはそう思った。
「ではジローは土魔法を極めるだな。極めることはいいことだ。期待している。 」
「皆もその研究だけにとらわれず、沢山のいい経験をしてくれ。能力の育成手段として一方的なものの見方だとすぐに限界を迎えたり、よい発想ができなかったりするらしい。多角的にものを観れた方がいいらしい。 それにはいろいろな経験をしたり、人と積極的に話して他人からの意見を聞いたり、他人視点でものを見たりすることがいいらしい。」
「俺は空間魔法の可能性の模索をしていく。既に始めているが、今後は積極的に情報収集していくし、研究していく予定だ。」
今日は既に充分動いたから、ワールドワンに戻ろう。
リュージたちはワールドワンに戻った。
ワールドワンに、戻ったらトコートさんとモコートさんも来ていた。
「リュージさん、そろそろ戻ってくると思っていました。お帰りなさい。」
「ただいま、トコートさん、モコートさん。」
「お食事は準備しましたが、何かリクエストはありますか?」
「あぁ、そうだ。美味しそうな肉が手に入ったんだ。これの調理の仕方、モコートさんなら知っている?」
そう言ってリュージは、[グリフォンの肉]と[上級グリフォンの肉]をイベントリから取り出した。
モコートさんは目を丸くして信じられないといった表情をしていた。
横でトコートさんが驚いた様子で
「リュージさん、これグリフォンの肉じゃない。しかも鮮度抜群。こんな上等な肉、王族でもなかなか食べれないわよ。やはりダンジョンドロップは違うわね。私もレベル上げに付き合おうかしら?こんな特典がついてくるなんてステキすぎるわ。」
「リュージさん、グリフォンの肉は魔力を沢山含んでいるらしく、美味しいそうです。鑑定の結果、この肉は最高の状態なので、シンプルに焼くのがよろしいかと思います。」
モコートさんは[グリフォン肉]の食べ方を鑑定して知っていたようだ。
「へー、鑑定は素材の調理方法まで教えてくれるのか。便利だな。」
「鑑定はその素材の良し悪しまで見ることができます。そしてその時の最良の調理方法を教えてくれます。自分自身がより深くそのことを知っていれば、もっと鑑定結果も詳しく出ます。」
「鑑定のスキルも奥が深そうだ。」
「じゃぁ、せっかくだから、外で焼肉バーベキューをしよう。」
急遽、バーベキューを外でやることになった。
以前もやったことがあるので、勝手知ったるバーベキューだった。
リュージはグリフォン肉を適度に切り分けて、串に刺した。
炭はトレントの炭だ。
リュージはワールドワンで収穫した食材を惜しげもなく出して、カットして焼いていく。
モコートさんたちが作った食材も庭に作った新たなテーブルに並べていく。
メニューは野菜とキノコのシチュー、こんがり焼き野菜、マッシュドポテトと刻み野菜、高級グリフォン肉の串焼き、エール、お酒、その他諸々。
「じゃぁ、実食としよう。」
「いただきます。」
全員で一斉に食べ始めた。
リュージはこんがり焼き野菜を食べて、頷く。
「うまい。ワールドワンの野菜は魔石ベースの上に土を盛っているから、きっと栄養もたっぷり含んでいるのだろう。旨さが非常に凝縮している感がある。」
「リュージさん、この野菜とキノコのシチューも美味いっすよ。野菜の旨味がキノコに入ってていい感じっす。野菜にもキノコと出汁が染みていて、ちょうどいい塩梅です。マッシュドポテトもワールドワン産ですね。旨味とマッシュド感が非常にいいです。ほんのり甘みがあり、熱が通っているのにポテトの美味しさが逃げてません。一緒に刻んだ野菜たちが、独特の歯応えと食感を醸し出しています。野菜をポテトがポテトが野菜をお互い高め合って、最高のおいしさになっています。」
ジローの食レポは相変わらずな感じだ。
リュージはエールを飲みながら高級グリフォン肉を頬張った。
「ほぉー、さすがだ。上質の鶏肉の更に上をいく美味しさだ。上質な名古屋コーチンにもっと旨味を足した感じだ。グリフォンだから、鶏肉に似た感じだろうと思って焼鳥串にしたが正解だったな。油のノリもサイコーだ。」
リュージはエールを飲みながら、更にグリフォン肉を焼く。
リュージは元の世界でもバーベキューをするときは、焼きながらビールを飲み皆に配りながら食べていた。
『まさか異世界で、同じようなことをするとは思わなかったな。』
リュージはエールを飲みながら上機嫌だ。
「リュージ様、エールをお注ぎ致しますね。」
エマがエールを注いでくれた。
リュージは酒には強い方だ。
いくら飲んでも乱れることはない。
鬼神族のルイーズ、カミーユ、エマ、イリスもグリフォン肉をガツガツと食べている。
モコートとトコートも大半は自分たちが用意した料理だったが、それも食べつつ、それ以上に珍しい食材とされる上級グリフォン肉を食べていた。
食材はチルドの魔法が付与された倉庫にあったものを使っている。
ワールドワン産の食材は魔力が多いとされる南の森よりも肥沃な土地に生えていたため、旨さも半端ない。
リュージが魔石を土地にばら撒きまくったためだ。
今回持ち帰った魔石も、ワールドワンの不可視部分に持っていき、ばら撒く予定だ。
今回は最高峰とされる上級魔石5がハイミノタウルスから手に入った。
こいつをコピーしてばら撒く予定だ。
「リュージ様、飲んでいますか?」
ルイーズが珍しく絡んできた。
「おぅ、飲んでいるぞ。ルイーズも飲むか?」
「はい、お願いします。」
ルイーズはリュージの腕を取り、自分の腕を絡めてきた。
「ルイーズったらズルイー、不可侵協定はどうしたの?」
反対側の腕にカミーユが腕を絡めてきた。
リュージはこれってデジャヴ?と思いながら、苦笑いする。
「酔っ払って今、殆ど寝ているのです。寝ている時はノーカウントなのです。」
「寝ているという割にハッキリと話しているじゃない。起きているんでしょう?」
エマがリュージの背後から、ルイーズとカミーユを引き離そうとして声を掛けてきた。
「私も寝ていますぅー」
イリスが座っているリュージの真正面から抱きついてきた。
リュージは潮時と思い、全くの予備動作無しに、スルッと女性陣の囲みを抜け出した。
「ちょっとその辺見てくる。」
と言ってスタスタと歩いて、畑方面へ向かった。
リュージは元の世界でもシズカやミカがよく絡んできたので、タイミングよく抜け出すのは慣れていた。
異世界に来て更に磨きがかかったかもしれない。
リュージが畑方面に歩いて行ったのは、ジローがモコートとトコートに連れられて行った方面だったからだ。
連れて行かれた方法が、トコートとモコート、両方から手を繋がれて、さながら「捕獲された小宇宙人」の写真のようだった。
あの写真だと両脇はトレンチコートを来たおっさんだったけどね。
3人して何なのかと思ったのだ。
リュージが3人を見つけた。
ジローはストーンクリエイトで家を建てていた。
2人にリクエストを受けて、ジローはサルのように顔を赤くして有頂天になっていた。
モコートとトコートはこうだあーだと言いながら、ジローに変更を求めている。
「モコートさん、トコートさん、ワールドワンに住むの?」
「あぁ、リュージさん、そうなの。後でリュージさんにも言おうと思っていたのだけど、ジロー君が大丈夫と言ったので今になったわ。良いかしら?」
「良いですよ。自由にしてもらって。土地はいくらでもあるし、畑や庭も作ってもらっても大丈夫ですよ。」
「やったー、リュージさんならそう言ってくれると思っていたわ。これで、安心ね。ジロー君、そこの廊下をもっと広くお願いね。」
ジローはサル顔で頷く。
『ジローの獣人好きは度を超してるな。あれじゃ何を言われてもやっちまうだろうな。まぁ、本人さえ良ければいいか。』
「あぁ、トコートさんモコートさん、住むのなら、こいつを渡しとくわ。アイテム袋。中に更にアイテム袋が入っているから後で見ておいて。」
「何何?リュージさん、モコートにあげたいけど、私がいるから、ついでにって訳かしら?」
「いや、二人には全く同じものを渡しているよ。ついでに言うと鬼神族のルイーズ、カミーユ、エマ、イリスにも、ほぼ同じものを渡している。最初に渡したアイテム袋は容量は小さいけど、畳10畳程の部屋の大きさがあるよ。けど、その中に入っているのは容量はマスバックルの親父の倉庫ぐらいの大きさがある袋が20個ほど入っているよ。中身は探すのが大変だって言われたから、単一のものしか入れていない。袋の表面に中身を書いておいたから、分かると思うけど、主だったものは、水、食料、魔石、スキルボール、宝石宝玉、珍しそうなアイテム、酒、魔道具、武器、家具、衣類、とかだ。大量にあるから、出す時は気をつけてね。」
「リ、リ、リ、、リュ、リュ、リュージさん、あなたは神ですか?どう言う了見でそんな神が作ったようなアイテムを手軽にボーンと渡しちゃうんですか?こんなの持っていると分かったら、私は世界中から狙われてしまいます。10畳のものでも金貨100枚はするでしょう。無理です。受け取れません。」
「あー、じゃぁさ、逆転の発想で、アイテム袋を5000個ぐらい作るからさ、それを売りさばいてくんねー? しかも超安値で。容量はそうだな。畳4畳半ぐらいで。 そしたら世の中に溢れてアイテム袋普通ーってなるからさ。」
「リュージさん、あなたは神ですか?」
今度はモコートさんに言われた。
「いくら安くても、貴族やお金持ちが買い占めます。平民には行き渡らないでしょう。」
「うーん、やっぱりそうか。なら、どうしようかな?」
「アイテム袋、その人専用にできませんかね? シンプルに最初に触った人が登録者となるとか。あと、容量はもっと少なくして、畳1畳ぐらいにして、1万個ぐらいにするとか。貧しい人限定で無償配布するとか。」
ジローが真面目に聞いていたかと思ったら、すごい意見を言ってきた。
「ふむ。なるほどな。じゃこうしよう。この世界にどれほどの人間や類人族がいるか知らないが、研究して、一人一つだけ、俺の作ったアイテム袋はもてる設定にする。もっと持とうと思ったら俺のアイテム袋以外を持てばいい。先日、Cランク冒険者ギルドカードをイベントリに入れた時、魔力の波形登録の仕組みがわかった。
たから、アイテム袋にも同じシステムが使えるだろう。一人一つで1万個。これでどうだろう?」
「さすがリュージさんです。では私からも提案です。その配布は我が商会にお任せ下さい。王都でもエロイムでも、王都近くの都市にも我が商会はあります。各地津々浦々ありますので、配布できると思います。配布基準はスラムの人や教会で働く人、孤児院などに限定します。1畳ぐらいの大きさなら商人も目くじらは立てないでしょう。」
「では、配布は任せた。取り敢えず、袋はモコートさんに後で渡しておく。」
リュージはそう言って、大胆にもそんな手段に出たのであった。
その日はリュージは久々に魔力枯渇になりながら、アイテム袋をコピーし続けた。




