037 ギルド嬢の憂鬱1 ※番外編 アレッタ編
アレッタは冒険者ギルドの受付嬢だ。
冒険者からはかわいい系受付嬢として知られている。
彼女には最近、気になる男性ができた。
約1週間前に突然、冒険者ギルドにやってきて、雷に打たれたような衝撃を受け、更には膝が震え、寒気までしたほどだ。
『自分のところに来てくれないかしら。いやでも、きたらきたで、何を話せばいいのかしら? 』
と思ったが、自分の受付の列に並んで貰えずガッカリした。
そんな折、2度目のチャンスがきた。
彼はその日の夕方、再度、冒険者ギルドを訪ねて来たのだった。
受付に並んだのは、私の列だった。
朝、話せなかった悔しさもあり、思わず言ったことは
「あら、お2人は今朝も来ていましたね。登録したばかりの方ですね。背が高くて、体も筋肉が美しいですね。独身です。」
心の声が思わず出てしまった。
しかも、独身などと、いかにも気があると言ってしまったようではないか。
強ち間違いではないのだが、露骨過ぎて顔から火が出そうだ。
幸いにも、気を使ってくれたのか? スルーしてくれた。
聞き返されても困る、困るのよ。
彼の常宿はトワイライトという宿屋だ。
宿屋としては割と中の上と言った宿屋で、どちらかと言えば上から中級冒険者辺りが常宿にする宿屋だ。
今日は半休で、午前中は冒険者ギルドの仕事は休みだ。
リュージ様に会いたい、しかし、彼はクエストの清算の時にしか冒険者ギルドには来ない。会えるとしたら常宿としているトワイライトぐらいだろう。もし早朝からクエストをしているなら、すでに宿は出たあとだろうから、会える可能性は皆無だろう。
かと言って、早朝起きて遠くから眺めていたとしても、鋭い彼の知覚なら、容易く私を発見して問いただされる可能性がある。
朝の今の時間帯なら、歩いていても不自然じゃない。
どちらにしても、この朝の時間帯は会える可能性はほぼない。
と、その時、リュージが宿から出てきた。
思わず走り寄った。
派手にコケた。
やはり、運命は残酷だった。
神を呪った。
しかし、救いの手が差し伸ばされた。
「大丈夫か?」
リュージ様は軽々と、私を抱き起こしてくれた。
汚れも軽く叩いてくれた。
恥ずかしかったが、リュージ様と会えたことが嬉しかった。
もう、この思い出だけで、生きていける。
そんな風に感じた。
「リュージ様、ありがとうございます。」
「あぁ、見たことあると思ったが、冒険者ギルドの受付の確か…」
「はい、アレッタです。」
「だったね。クエストの説明が素晴らしかったから、覚えていたよ。おかげで、クエストも順調だよ。ありがとう。」
「いいえ、覚えておいて頂きありがとうございます。わかりやすく説明するのも私達の仕事ですから。」
「今日はどうしたの?いつもと雰囲気違うね。」
「あ、はい。午前半休で今オフなんです。リュージさん、今から少し時間ありますか?助け起こしてもらったお礼がてら、冒険者ギルドのことでお話したいことがあるんですけど。」
「今日はオフだから、時間はあるよ。」
「では、私が知っているお店で、おススメの店があるので、そこに行きましょう。」
そう言って、アレッタは兼ねてから恋人ができたら行こうと思っていたカフェにリュージを連れて行く。
広いカフェは観葉植物がたくさん置いてあり、お香がたいてあるのか、いい匂いがした。
テーブルやイスは非常にオシャレだ。
壁や天井も装飾が施され、静かで、席同士も離れているため、話をするには最適だ。
魔道具なのか店内には水が流れており、川のせせらぎの音が聞こえてくる。
アレッタとリュージはその店に入ると、紅茶を頼んだ。
「リュージ様、実は冒険者ギルドの受付で噂になっていることがありまして、そのことをお話しようかと思っていました。」
「それはリュージ様が南の森で野草採取をしているので、多くの野草を採取できている、そのためにモンスターもかなりの数討伐しているとのこと。南の森はBランクモンスターも出るため、危険だとされています。また、魔素が濃いため、ルートをつけてもすぐ回復してしまい、踏破することさえ困難だと思われています。それをリュージ様はほぼ単独で傷ひとつなく、採取して戻って来ているとも聞いています。冒険者ギルドとしては珍しい野草も欲しいですが、モンスターの素材も必要としています。南の森はリンクモンスターが多く、次々とモンスターが湧くため、パーティー必須ですが、ジャングルのために、パーティー連携が取れません。そのために、純粋に単独での強さが要求されます。今現在、南の森のモンスター素材が無いのです。リュージ様が少なからず、モンスターを倒しているのは何となくわかります。素材を冒険者ギルドに卸していないのは、何か意図があってのことでしょうか?もしくは、どこか売却先が決まっているのでしょうか?」
と、ここまで一気に話して、話し過ぎたかな?と不安になり、アレッタは小首を傾げながら、恐る恐るリュージを見た。
リュージは笑っていた。
「アレッタさんは饒舌なんだね。たしかに、南の森で、少なからずモンスターは討伐している。ただ、単独ではなく、ジローと一緒だ。素材は単純に悪目立ちしたく無いから、卸していないだけだ。」
「リュージ様、正直にお話頂きありがとうございます。なら、ご提案があります。実は冒険者ギルドの噂というのは、リュージ様があまりに多くの野草を持ち込むのに、何故、モンスター素材を卸してくれないのか??という解体受付が出した噂です。悪目立ちしたくないと言うリュージ様の意向を汲んで、秘密は厳守致します。何なら誓約書を交わしても構いません。お手持ちのモンスター素材を卸して頂きませんか?解体受付の者は私の知り合いです。人間性は保障いたします。」
「ほぉー、そうだったか、悪目立ちしない行為が、余計悪目立ちしてしまったか。まぁ、解体受付で買い取ってもらえ、黙ってて貰えるなら、卸そう。」
「ありがとうございます。リュージ様。」
そう言って、アレッタはリュージの腕に両手で触れて、すぐ離した。
その後、アレッタとリュージは話をたくさんした。
何を話しても、リュージはきちんとした対応をしてくれ、気配りもできる最良のパートナーだった。
周りから見たら、きっと恋人同士が仲良く会話しているように見えているでしょうね。
そんな風に思えてきた。
リュージは冒険者ギルドの内部事情を話してくれ、リュージにとって最良の結果をもたらせてくれたアレッタに非常に感謝した。
ここのカフェで紅茶以外に甘味やお酒も頼んだため、支払いは結構高くついた。
アレッタが支払っていたようで、レジは通らずに出てきた。
リュージは感謝として何か上げれればいいなと思った。
「そうだ、そう言えばダンジョンの隠し部屋で見つけた、用途不明な綺麗な玉を見つけた。鑑定でもアンノウンとあり、鑑定できなかった。しかし、見た目は少なくとも非常に綺麗で形も可愛い。装飾とかに加工すれば、アレッタさんにも似合うだろう。」
そう思い、リュージはアレッタにそれをプレゼントした。
アレッタは、トイレに行ったついでに支払いを済ませた。支払ったお礼にリュージから、綺麗な宝玉を頂いた。とても綺麗な玉だったので、非常に嬉しかった。
何よりリュージ様からのプレゼントと言うことが嬉しかった。
涙がいっぱい出た。
リュージ様がハンカチもくれた。
居たたまれなくなり、お礼を言って、その場を離れてしまった。
その日は一旦、家に帰り、お昼過ぎてから、冒険者ギルドに出勤した。
リュージ様がから頂いた宝玉を胸に抱き、もう一生離さないと誓った。




