030 初級ダンジョン踏破 前階
リュージ達は29階層に降りて、30階層入り口をかなりの速さで目指していた。
ランチブレイクでバーベキューをしたために、かなりの時間を費やしてしまったためだ。
リュージのイベントリには[庭付きセイフティハウス]が入っていた。
エアースキャホルドごと、セイフティハウスを取り込んだためだ。
『よく入ったなぁー』
とリュージは思った。
『そのうちまた鑑定して自身の能力を確認しないとな。』
ステータスはともかく、スキルはこのダンジョン内でもリュージのアイテムボックス鑑定で鑑定できるからだ。
『もう、いっそ、デッカい部屋をアイテムボックスの窪みで作って仕舞えば、外側からは見えないしいいかもな。』
リュージは移動しながら、考えを思い巡らした。
29階層は相変わらず砂漠だった。
ただ、これまでの階層と違って水場や岩場などが多く存在した。
ダンジョンの配慮なのか、罠なのかはわからない。
リュージたちが足早に走っていると、モンスターに遭遇した。
サボテンを3つダンゴ状にしたようなモンスターだった。
鑑定小
《ユニークモンスター》サボテンライダーズ
サボテンダー
ビジンダー
ワルダー
なんと、《ユニークモンスター》であった。
しかも、モンスターは3匹それぞれ名前が付いている。
「ストップ!ユニークモンスターらしい。1匹に見えるが3匹だ。1匹ずつ名前が付いている。ユニークモンスターがどんなものか知らないが、今まで出会ったことがない。注意しろ。」
「ヘイリュージさん。」「リュージ様、了解です。」「わかりました。」「承知しました。」「はぃ、リュージ様」
リュージが仕掛ける。
すると3匹のダンゴが崩れ、3匹別々に動き出した。
リュージの素早い切り込みに対応したのである。
リュージは驚いた。
これまでにここまでの反応をしたモンスターはいなかった。
「気をつけろ。3匹とも異常に素早いぞ。何か阻害しないと、全て回避されるぞ。」
「ストーンウォール!」
ジローは唱えた。
「バキャーン、ゴロゴロゴロ、ガッガッガッ…」
ジローが作ったストーンウォールはモンスターの一体がぶつかり、砕いた。
「アイス!!」
ルイーズが動きを阻害しようとして氷魔法のひとつアイスを唱える。
「ゲィーンゲィーン!」
アイスは空振り。
代わりにルイーズが攻撃を受ける。
リュージのエアープロテクションがかかっているので、ダメージはほとんどない。
ただ、リュージはなるべく自然な動きになるように、要所要所にしかプロテクションはかけていない。
手先や顔にはプロテクションはないため、そこを狙われると弱い。
そこは予め鬼人族4人にも言ってあるため、武技の優れた4人には問題ないだろう。
「グラビティ!!」
カミーユは唱えた。
これも外れた。
グラビティは強力なスキルだが、範囲を外れると弱い。
「ゲィーンゲィーン、ゴンゴン」
今度はカミーユも攻撃を受ける。
リュージのプロテクションがかかっているが、柔軟性を持たせてあるため、切れはしないが、強い衝撃を受けるとひしゃげる。
ひしゃげたが、カミーユは軽鎧を着ているため、ダメージはない。
3匹はそれぞれに高速で動き回り、リュージたちを翻弄する。
鬼人族は剣技を駆使して対抗する。
剣技は攻撃だけの技ではない。足捌き体捌きを含む防御、防御からの攻撃も剣技のひとつだ。
しかし、攻撃は当たらない。
ジローはストーンアームズで対抗する。
リュージのエアープロテクションと違い、ストーンアームズは視認できるため、モンスターはストーンアームズの隙をついて攻撃してくる。
リュージはジローには甘やかさない。
男として強くなろうと言ってリュージについてきているので、リュージもジローを甘やかすわけにはいかないからだ。
なので、ジローにはエアープロテクションは今はかけていない。
ジローはストーンアームズで手の甲に作った剣を振り回すが、勿論当たらない。
手詰まりだ。
「ジリ貧だな。仕方ない。エアープロテクション!」
リュージはそう唱えると、いきなり、50メートル四方のドーム状のエアープロテクションを設置する。
リュージたち6人とサボテンライダーズも全員中にいる状態である。
リュージはエアープロテクションを徐々に狭くしていく。
サボテンライダーズはリュージのエアープロテクションにものすごい勢いでぶつかる。
リュージのエアープロテクションはビクともしない。
徐々に狭くなり、直径20メートル四方になった時、リュージはエアープロテクションを一旦、止める。
サボテンライダーズは3匹まとまった。上中下と縦並びである。
「ビシューシューン、ピシューシューンシュン」
サボテンライダーズは麻痺針を飛ばしてきた。
リュージは避けた。
鬼人族も避けた。
一部はプロテクションにあたり、地面に落ちる。
ジローも避けた。
一部はストーンアームズにあたり、地面におちた。
一部はストーンアームズの隙間にあたり、ジローに突き刺さった。
「イタタタタッ……。」
ジローは痺れている。
ジローは麻痺して動けなくなった。
「おぉ、ジロー、今度は麻痺耐性に挑戦か。関心関心、さすがジローは自身をトレーニングするのに余念がないな。」
「リュー…ちが……。麻痺………。うごけな………。」
ジローはそうではないと言うことを言おうとしたが、痺れて言うことができない。
首を横に振ろうとしても動けなく。
『やっべぇ、自分、麻痺でいろいろヤバいっす。毒耐性があるせいか、気絶もできない。リュージさんもなんか、勝手にトレーニングとか言ってるし、気づいてくれてない。ヤッベぇ、ヤッベェっす。』
ジローは心の中で必死だった。
リュージはちょっと危険と判断したので、エアープロテクションを再び狭め始めた。
今度はサボテンライダーズだけを囲むようにした。リュージはエアープロテクションを更に狭めて、サボテンライダーズを拘束した。
エアープロテクションに隙間を開けて、サボテンライダーズをアイテムボックス刀で両断した。
「ギャォーース!」
サボテンライダーズは滅んだ。
強敵だった。
ドロップはユニークモンスタードロップらしく、変わったドロップだった。
リュージはイベントリ鑑定をした。
イベントリ鑑定
[変身仮面]:被ると変身できる。乗り物に上手に乗ることができるようになる。
[レジストパラリシス]ボール
:麻痺耐性を上げるスキルボール。複数インストール可。LV5で麻痺無効。LV7で大麻痺無効。LV10MAXで重麻痺無効(複製可)
[サボテンライダーの針]:刺さると麻痺する針。たくさん刺さると大麻痺、重麻痺になるので、取り扱い注意。
『[変身仮面]は使い道わからない。[レジストパラリシス]ボールはありがたいな。コピーして、耐性をつけよう。鬼人族にも、つけてあげた方がいいな。[サボテンライダーの針]は麻痺させることができるのなら、投げてモンスターを麻痺させるのもいいな。地味にスキルに頼らない攻撃方法として、いいかもしれない。』
リュージはジローがまだ麻痺していたので、エアースキャホルドに乗せて、他の4人と一緒に走った。
ユニークモンスターはあの一体きりで、他は全く出てこなかった。
リュージたちが29階層でであったモンスターは
[パラライズ ヘッジホッグ] 11匹
[ビッグ パラライズ サーペント]3匹
[ダズル サンド フェネック] 9匹
[ミラージュ プロミネント モール]1匹
[ビウィッチ サンドワーム]6匹
[エビル サンド ガゼル]3匹
[パラライズ ヘッジホッグ]はハリネズミ型のモンスター。
麻痺針を飛ばしてきた。
動きは素早くないため、回避 はできる。
ジローは麻痺から回復していたが、エアースキャホルドのフロートに乗っかっていた。
体を起こした瞬間、弾かれた麻痺針がジローに1本だけ刺さる。
「ふぎょーん。ピクピクっ。」
ジローは再びエアースキャホルドのフロートの上に倒れた。
鬼人族は素早く剣技で片付ける。
麻痺針は1回打ったら、しばらくタイムラグがあるようだ。
打って切って打たせて切っての繰り返しで[パラライズヘッジホッグ]は全滅した。
ドロップは[ヘッジホッグの麻痺針]と[たわし]だった。
なんか、ハズレを引いた感じがした。
[ヘッジホッグの麻痺針]も刺さると麻痺を受けるようだ。
[ビッグパラライズサーペント]はレアモンスターのようだった。
ギルドのモンスターリストにないモンスターで、出会った瞬間、大麻痺を視覚で行える凶悪なモンスターだった。
しかしながら、ジローには内緒だったが、リュージと鬼人族の4人は、リュージのイベントリでコピーされた[レジストパラリシス]ボールを10個インストールしていた。
10個インストールしたので、麻痺耐性はLV10のMAXとなっていた。
ついでに[レジストポイズン]ボールも10個インストールして、毒耐性もLV10としておいた。
そのため、リュージや鬼人族は大麻痺にはかからなかったが、気の毒なジローだけが、大麻痺にかかったため、再びリュージのエアースキャホルドフロートに乗ることとなった。
この際だから、ジローには自力で麻痺耐性もつけてもらいたいと言う、リュージの暖かい配慮だ。
『ジロー、オメーはすぐに調子にのるからな。自分で実体験したことで、きちんと刷り込まれりゃ油断せずに対応できるようになるだろ」
[ビッグ パラライズ サーペント]は強力なスキルを持つが故に、実質的な攻撃力や防御力は弱かった。
[ビッグ パラライズ サーペント]は鬼人族たちによって、すぐに斬り伏せられた。
ドロップは[サーペントの麻痺液]と[サーペントの皮]だった。
ただ、1匹だけ[蛇の宝玉]という綺麗な乳白色の玉をドロップした。
イベントリ鑑定
[蛇の宝玉]:非常に珍しい宝玉。錬金術の素材として使うことがある。擦ると蛇の好きな匂いがする。
またまた、使い道がよくわからないものが出た。
まぁ、錬金術と言うまだ全く知らないことに使い道があると言うのなら、素材として売却できるのだろう。
[ダズル サンド フェネック]は見た目は非常に可愛い、小型の愛玩動物のような狐タイプのモンスターだった。
その愛らしい姿とは裏腹に、幻惑魔法を使うモンスターで、これは全員かかった。
幸いにも、リュージが張っていたエアープロテクションにより、[ダズル サンド フェネック]が攻撃しても、しばらくはノーダメージでいられた。
[ダズル サンド フェネック]がエアープロテクションのない、手や顔を狙って攻撃することに気付く前に回復できたので、事なきを得た。
個人差はあったが、幻惑魔法自体にはダメージがなかったので、ほぼ全員ノーダメージで切り抜けられた。
ドロップは[フェネックのグッドラックチャーム]と[フェネックの毛皮]だった。
イベントリ鑑定
[フェネックのグッドラックチャーム]:フェネックの幸運を呼ぶとされるお守り。身につけていると少しだけラックげ上がるとされる。効果はともかく、可愛いので人気が高い。
また、微妙なドロップだった。
まぁ、人気があるのなら、売れるのだろう。
一応、6人ともせっかくなので、身につけておく。
鬼人族には非常に受けが良かった。
[ミラージュ プロミネント モール]は凶悪だった。
レアモンスターのようだ。
これもギルドのモンスターリストにはなかったモンスターだった。
全員が大幻惑にかかった。
小さな穴倉からいきなり出てきた[ミラージュ プロミネント モール]は、見た目はまんまモグラ。
そして、最初にジローが、次に鬼人族が、最後にリュージも幻惑にかかった。
大幻惑のため、自力回復するには非常に時間がかかる。
リュージたちはお互いに攻撃し合う。
鬼人族も結構マジに攻撃しあっている。
相手が敵に見えているようだ。
リュージも幻惑にかかっているが、何か変だとは思いつつ、幻惑から逃れられない。
幻惑とわかっていても、迫ってきたら、攻撃をせざる得ない。
リュージはイベントリから[ヘッジホッグの麻痺針]を取り出して、辺りの生命体6体、全部に向かって投げつけた。
生命体2つだけ、動きが鈍ったので、両方を同時にトンファーで叩く。
何度か叩く。
もう一度、[ヘッジホッグの麻痺針]を投げつける。
また、動きが鈍ったので、同時に叩く。
何度か叩く。
モグラ叩き?
何度か繰り返す。
大幻惑から、ジローが回復した。
2つの生命体の内、1体はジローと思っていたが、リュージは幻惑のため、思考力と視覚が失われていたため、見分けが全くつかなかった。
まぉ、ジローならステータス的にいくらトンファーで叩かれても大丈夫だとわかっていたので、両方モグラと思って叩いた。
回復したジローは、素早く[ミラージュ プロミネント モール]を始末する。
そして、アイテム袋から状態異常回復ポーションと幻惑用の回復ポーションを取り出して、リュージに飲ませた。
リュージはジローに
「ジロー、鬼人族のエマをまず、回復だ。俺のように状態異常回復ポーションと幻惑用の回復ポーションを飲ませろ。あとは、エマのスキルで全員回復させるんだ。」
リュージはエマから回復魔法を使えることは聞いていた。
更に、その後のミーティングで簡単な状態異常回復魔法と状態異常回復ポーションを精製することができることを確認していた。
リュージたちは危機を脱した。
[ミラージュ プロミネント モール]が、もっと積極的に攻撃してきたり、他のモンスターが襲ってきたら、詰んでいたかもしれない。
ドロップは[レジストミラージュ]ボールと[魔石 中5]、[モグラの髭]だった。
イベントリ鑑定
[レジストミラージュ]ボール
:幻惑耐性を上げるスキルボール。複数インストール可。LV5で幻惑無効。LV7で大幻惑無効。LV10MAXで重幻惑無効(複製可)
リュージは幻惑の危険性を充分認識できたので、4人の鬼人族にスキルボールをコピーして、インストールさせた。
[ビウィッチ サンドワーム]と[エビル サンド ガゼル]は幻惑する大きなワームと非常に元気のいい幻惑するガゼルだった。
幻惑耐性のおかげで、ジロー以外は全員無事で、鬼人族は剣技も使わずに始末していた。
ジローは幻惑したが、耐性レベルが上がったためか、割とすぐに回復した。
リュージはイベントリから、麻痺針を出して刺す準備をしていたが、使わずに済んだ。
ドロップはそれぞれ[ワーム肉 中]と[サンド ガゼルの角]、そして[魔石 中4]だった。
[ワーム肉]が更に増えた。
[サンド ガゼルの角]は薬剤師が削って調剤に使うらしい。
29階層はモンスターの数こそ少なかったが、状態異常を起こすモンスターが多く、苦戦したと言えるだろう。
まぁ、リュージたちがあえてモンスターとガチ勝負をしていると言うこともある。
一般の冒険者はモンスター避けの魔法や魔道具を駆使して、目的のモンスターを倒すとか、複数パーティーで組みながら、討伐と補給とをしながら、安全マージンを充分にとってダンジョンアタックをするらしい。
リュージたちが30階層まで到着したのは、すっかり日が暮れて、夕闇に包まれた頃だった。
リュージはイベントリから[庭付きセイフティハウス]を取り出して、全員を乗せて空中に浮かせた。
そして、今回はセイフティハウスの下部の一部を除き、上部を不可視のエアープロテクションでスッポリと覆った。
スキャホルドの下部は雲状に設定する。
まるで小さな不可視の空に浮かぶ村ができた感じである。
明日はボスアタック。
楽しみである。




