018 ルーティンの果てに?
リュージたちは2週間、全く同じことをしていた訳ではない。
収穫クエストはまぁ、確かに収穫をしていた。
いろいろな野菜や果物、食材をかなりのハイペースで収穫したため、リュージにとっては空間魔法のスキルアップにつながった。
収穫クエストはその日の設定されたノルマを収穫してしまえば、あとはまた、翌日となる。
翌日はまた、別の収穫物であるため、収穫する際は工夫が必要だった。
例えば、トマトは苗木を傷めないように、アイテムボックスで覆って、入り口のところで切断する。
苗木はそのまま残るが、トマトはアイテムボックスの中に入る。
ナス、きゅうりもほぼ同じだ。
ウリ、スイカ、かぼちゃなどは地面にツルが伸びて、可食部分が葉っぱの後ろやツルの陰に隠れていたりするので、探して、カットだ。
フルーツはいちご、レモン、なし、りんご、かき、みかん、ぶどうなど、様々だ。
それぞれ、工夫してカットだ。
この異世界の野菜や果物は季節を無視して実る。
この異世界に充満する魔素のせいだとされる。
主に土地に充満しているらしく、様々な不思議効果があるらしい。
一般的な動物が魔素の関係で魔獣化したり、魔素が多くたまる場所はダンジョンができたりするらしい。
トマトやキュウリといっても、リュージやジローには翻訳されてそう聞こえるのであって、元の世界にあるトマトやキュウリとは微妙に違う。
その辺は2人は無頓着なので、全く気にすることはなかった。
人間もその土地に住み、その土地に生える食べ物を食べているから、魔力があるとされている。
「リュージさん、こっちはそろそろおわりです。回収をお願いします。」
「オーケーィ。こっちの回収が終わればこっちも終わりだ。ジローのディグも様になってきたな。」
ジローは土魔法の中で、ディグのスキルを器用に使いこなして、人参を掘り出して、リュージが回収しやすいように畑に横たえている。
このディグのスキルはスコップに付与されたディグのスキルと同じだ。
「スコップ使うのと変わらない感覚で使えるっす。まとめて広い範囲を掘り出すことができるので、速さが全然違うっす。」
「終わった。人参を回収する。」
そう言ってリュージはアイテムボックスを使って人参を回収する。
回収した人参はアイテムボックスから、イベントリに移す。
イベントリに移すことによって新鮮さが保たれるのと、回収した数がわかるのである。
「おーぃ! おめーら、終わったか?」
そう言って、寄ってきたのはここの農場主兼作業監督官のおっちゃんだ。
「おめーら、今日で、最終日だろ? 倉庫に作物を納めたら、あとで倉庫の横に来てくれや。」
「わかった。」
リュージは短く返答する。
言われた通り、倉庫に作物を納めたあと、倉庫横に行くと、農場で働いていたであろう、作業員たちが一同に集まっていた。
「集まったな。みんな、おつかれさん。今シーズンの最繁忙期を無事乗り越えられた。今シーズンはもう、絶対ダメかと思っていたが、ほぼ、ロス無しで、収穫できた。ありがとう。ささやかだが、宴を準備したので、飲み食いしてくれや」
「おぉー」「わーぃ」「素晴らしい」「待ってましたー!」「うまそうー」
大勢の人々が笑顔になる。
ここの農場はエロイムの街の食材の2割近くを賄っているらしい。
そのため、非常に大きなノルマがあるらしく、特にこの時期は収穫が集中するらしく、殺人的に忙しい。
それを短期とはいえ、ここにいる作業員たちはやりきったのだ。
達成感で自然と笑顔になる。
シーズンが終わったのだ。
全ての作業員がずっといた訳ではない。
また、最繁忙期が終わっただけで、今後も収穫作業は続く。
引き続き、この農場で働く人もいるだろう。
でも、とりあえず終わりだ。
一区切りなのだ。
作業員たちは収穫した食材で作られた料理を食べて笑顔だ。
美味しい食べ物は幸せな気分にしてくれる。
リュージたちはひとしきり、飲み食いした後、ルーティンである採取クエストと討伐をしに、南の森へと向かった。
「リュージさん、今日は森のどの辺りにいくっすか?」
リュージたちは南の森をこの2週間、かなりの広範囲にわたり、探索した。
もう、採取する野草が無いのでは?と思われたが、この森は豊かで、何処を探しても野草はあった。
流石に、2週間前に採取した場所にはまだ、生えることはなかったが、いずれ間をおかず、生えてくるだろう。
「方角的には、2週間前に採取したその奥に行くとするかな。あの時は、割とガチでクエストのことばかり考えていたから、あまり注意していなかったこともある。キラーエイブ以外のモンスターがこの森にはいっぱいいたが、やはり1番インパクトがあったのは最初の戦いだったな。」
南の森はリュージの感覚センサーによると、関東平野ぐらいの大きさはある。
この2週間で、ほぼ全方向は行ったことにはなるが、街道から起点で考えると、離れれば範囲は当然広くなるわけで、いっていないところはたくさんある。
リュージたちがこの森で、2週間で狩った魔物は
1、キラーエイブ(ビッグキラーエイブ)
2、レッドボア
3、スライム(ビッグスライム、ヒュージスライム)
4、ステルスマンティス
5、マーダーウルフ
6、コボルト(ハイコボルト)
7、ホーンラビット
8、レッドグリズリー(ブラックグリズリー)
9、デーモンタートル
10、ヒートラット
11、グレートジャッカル
12、サディスティックベアー
13、ゴブリン(ゴブリンリーダー)
14、アサシンバブーン
15、ミスリードクロウ
16、マッドカメレオンマン
17、ポイズンドホーク
18、バイオレントクロコダイル
※( )内は上位種
など、様々なモンスターと戦い、倒した。
おかげでレベルも上がって体の動きが変わった。
素早さや力強さが以前とは格段に違う。
器用さやコントロール力も上がったので、素早さや力強さが変わっても、コントロールを失ったり、力加減を間違ったりもしない。
[ダンジョンスキルセット]にあったプチ系魔法はベースの魔力が上がったため、威力がとんでもないことになっている。
ただ、スキルとしてはあまり使用していないために、スキル自体のレベルアップはしていないようだ。
専ら、リュージは空間魔法、ジローは土魔法を使用していた。
結局は相性がいいので、使いやすいようだ。
スキルレベルも上がっているようなので、その内、スキルボール屋のネコミミ獣人さんに、鑑定して貰おう。
「リュージさん、あっち見て下さい。黒光りしたでっかいトカゲがいるっす。あれ、なんか見た目ヤバそうです。」
「黒テカだな。鑑定だと[ブラックリザード]と出ているな。黒いでっかいトカゲだな。」
「自分、やります。ストーンバレット!!」
ジローは土魔法のストーンバレットを放つ。
もともとある地面を操作して、盛り上げたり、クリエイトしたりするタイプと違って、空中に自身の魔力を使って土属性のバレットを作り出し、相手に放つスキルである。
具現化し、風属性の魔法で相手に当てるため、実は非常に高等な技である。
ラノベでは、一般的には初期魔法だが、実は高等魔法。
ジローも魔力は相当上がっているため、できるのである。
ジローの放ったストーンバレットはブラックリザードに当たった。
しかしながら、所詮は石飛礫、ブラックリザードにダメージはなさそうだ。
ジローはがっくりした。
ジローの今のところ、土魔法の唯一と言っていい、攻撃手段である。
それは全く効かなかった。
しかしながら、ブラックリザードは怒った。
ジローを敵と認識して、怒気を放った。
怒気はジローに対して、めちゃくちゃ効いた。
怒気には闇魔法の一種、ウィークが混ざっていた。
落ち込んでいるジローに対して、追い討ちをかけるような魔法である。
ジローは死にたくなるような気持ちになって、攻撃どころでは無い。
「どーせ、自分の攻撃は当たらない。自分弱いっす。女の子にもモテないっす。」
『イジイジ イジイジ…。イジイジ、イジイジイジイジ…。ドーン、ドーン、がーんがーん、ズズズっズズッズッズーン…。』
「ジロー、耐性をつける訓練か?? ウィーク耐性とかあるんか?弱体化耐性?落ち込み耐性?」
このままだと、ジローがやられそうな気がしたので、リュージはアイテムボックスの入り口を思いっきり伸ばして、半楕円状にする。
アイテムボックスは中に入れないという状態にして、入り口を広げると、中には何も入れられない。
もはや、アイテムボックスというよりも、プロテクションのスキルである。
おそらく、空間魔法のスキル一覧には
<空間魔法>スキルリスト
アイテムボックス
イベントリ
プロテクション
なんて、書かれているだろう。
新しいスキルに関しては、本人が認識したスキル名がつくらしい。
これも、スキルボール屋のネコミミ獣人さんに聞いたことだ。
スキルの神さまが、そうしているらしい。
スキルの神さま、手抜き?
もしくはスキルの神さま的にも本人応援プログラム?
リュージが出したプロテクションのおかげで、ジローは死にたくなるというウィークから回復するまで傷一つ負わなかった。
リュージの機転で、半楕円より、よりジローを覆うようにプロテクションを伸ばしたからだ。
せっかく、ジローがやる気を出していたので、ジローに倒させたかった。
しかし、ジローの落ち込みが半端なかったため、これ以上は危険だと判断し、リュージはブラックリザードをアイテムボックス刀で両断した。
ブラックリザードは大きな断末魔を上げた。
その声を聞いてなのか、ほかのモンスターたちが次々と集まってきた。
まぁ、だいたい、毎日のことなので、慌てず、リュージたちは倒しまくる。
ブラックリザードはもちろん、キラーエイブ、アサシンバブーン、空中からはミスリードクロウが、襲ってきた。
ミスリードクロウはモノマネの得意なカラスで、空中から声やほかのモンスターの鳴き声の真似をする。
惑わされる訳だ。
アサシンバブーンは動きが早く、色が黒く、ほかのモンスターの背後などにいて、死角をついて攻撃してくる。
2匹とも面倒なモンスターだ。
リュージはアイテムボックス刀とトンファーを駆使して、倒しまくる。
アイテムボックス刀は目線で動かせるため、自由自在だ。
倒しまくる。
切りまくる。
大量虐殺である。
いや、襲ってくるので、大量自衛殺である。
死にたく無ければ、襲ってこなければいい。
プロテクションはアイテムボックスの一種なので、不可視である。
当然、モンスターにも見えないため、通る先に置くと面白いように、転んだり、ぶつかったりして、隙を作ってくれる。
もう、そうなると、やりたい放題である。
空間魔法はいろいろ応用が利く。
リュージが思うに
『やれないことはない』
のではないかと思う。
流石にそれは行き過ぎだが、最強だと思う。
マジ最強ーー!!!
ダンジョンと違い、野外だとモンスターの死体が残るので、リュージはアイテムボックスにモンスターを回収する。
因みに、数日前、コボルトとハイコボルトが出てきたので、倒して、冒険者ギルドで解体を依頼して、[コボルトの毛皮]納品クエストは完了している。
「ジロー、そろそろ街に戻るか。」
「ヘイ、リュージさん、戻りやしょう。落ちこんでしまってすみませんでしたー。」
「それは別にいい。耐性がついたと考えれば無駄にはならない。」
そう言って、リュージはアイテムボックスにモンスターを回収しながらも、ジローに話しかけた。
街に戻った2人は、ダンジョンには向かわずに、冒険者ギルドに向かった。
「リュージさん、今日で収穫のクエストが完遂したので、冒険者ランク、上がりますね。」
「だな。実はジロー、受付の嬢に聞いたら、俺たちは討伐ポイントと採取ポイントが多過ぎて、今回申請したら、Cランクになるらしいぞ。 ポイントシステム自体、謎なんだが…。まぁ、中級ダンジョンに入れるようになる条件が整うのは嬉しい。」
「え!、リュージさん、そんな話、いつ嬢とされていたんですか?自分とリュージさんはいつも一緒でしたよねー?」
「んー?いつも一緒とか、誤解されそうだな。いや、違うぞ。 オフの日、オメーは宿で寝ていたり、ゆっくりしていただろ。その時、俺が出かけようとしたら、なぜか、受付嬢が宿の前で偶然にも転んだり、ぶつかったり、落し物したりとやたらと会うことが多かったんだ。」
「そしたら、そのお礼だとか言って、食事や買い物やいろいろ奢ってくれたり、お礼だといって買ってくれたりしたんだよ。 その時に、いろいろ話していたら、そのポイントの話も出てな。 森で狩ったモンスターも素材として貴重だから欲しいと言う話になったから、冒険者ギルドの倉庫で卸したんだ。そしたら、特別に討伐ポイントとしてカウントしてくれてな。Cランクに上がることになったって訳よ。」
「リュージさん、宿の前にギルド嬢ばかり、オフの日に偶然鉢合わせするなんて、おかしいですよね。絶対、それって何か、作為を感じます。俺とリュージさんの仲を割く作戦では?」
「いや、それは絶対ないだろう。」
「まぁ、流石に、落ちたものを拾っただけとか、ぶつかったりしただけで、食事を奢ってもらうのは悪かったりしたから、俺なりのお礼はしたけどな。」
「何をしたのですか?」
「ほら、以前、ダンジョンの隠し部屋で見つけた変わった石があっただろう?鑑定ではアンノウンと出ていたから、価値がわからなかったやつ。それを見せたら「欲しい」と言ったからあげといた。」
「へー、まぁ、女子は綺麗な石とか好きですからねー。」
「それでかどうか、わからないが、幾らかは優遇してくれたんだと思う。」
「ふふふっっ。リュージさんもそんな搦め手ができるようになったんですね。」
「いや、全く偶然だ。 俺はDランクで全然問題ないし、ランクには興味ない。」
2人はやがて冒険者ギルドに到着する。
プロットは150話まで作成していますが、プロットのまだ、10ぐらいしか進行していません。
完結までに何話までになるのか?




