014 初めてのお使い 前編
リュージたちは、エロイムの街に戻ってきた。
配達のクエストをこなすためだ。
配達元の倉庫は南区にある。
そこから、北区と東区にある卸販売店と飲食店に配達するのが、今回のクエストだ。
リュージたちは南区の配達元とされる倉庫へむかった。
倉庫はすぐに見つかったが、依頼主が見当たらない。
リュージたちは倉庫の中に入り、依頼主がいないか、大声で叫んでみた。
「おーぃ!!、誰かいないかーー?」
「モゴモゴ、ウググーー!!」
「リュージさん、なんかモゴモゴ聞こえます、、」
「誰かいるようだな。たぶん、あっちだ。行くぞ。」
2人はリュージが言った方向に向かう。
「うーうー、ふーハヒィー、、!」
声のする方向に向かうと、そこにひとりの人が、荷物の下敷になって、呻いていた。
「大丈夫か? 下敷になるのが趣味じゃ無ければ、助けて良いか?」
リュージは冗談めかして言いつつ、荷物の下敷になっている人を助け出そうとする。
下敷になっている人は小麦の布袋の木枠ごと、かなりの重さの下敷になっている。
リュージは木枠ごと持ち上げる。
下敷になっている人を、ジローが引っぱり出す。
リュージは取り敢えず、木枠が落ちてきたであろう棚に小麦の袋ごと、戻す。
「あー、うー、はひぃ、、。助かったよ。重さで死ぬかと思ったわぃ。 助けてくれてありがとうよ。」
そう、応える人は正確には人族ではなかった。
背が人族より低く肉付きはがっしりとしている。
顔つきは顎髭と口髭が逞しい。
そう、いわゆる、ファンタジー世界のドワーフ族。
体の殆どが、下敷になっていたため、人族との区別はつかなかった。
「まぁ、大したことはしていない。」
「それより、なぜ、荷物の下敷になっていたんだ? 趣味か?」
「んなわけあるかぃ!! 点検中に棚が倒れてきて、下敷になっちまったんだ。 趣味で下敷になるやつなんて、おってたまるか。」
「棚全体が落ちてきていないとこを見ると、やや不自然だな。」
「あぁ、いつもなら、こんな荷物なんて、軽くどかせられるはずなんだが、下敷にあった時に打ち所が悪くてな。力がはいらんかったわぃ。」
そう言ってドワーフの親父は、腰の辺りを摩りながら、立ち上がろうとした。
「痛ッッテェーー!!、おぉー、痛いー!」
「無理すんな、親父さん。」
そう言ってリュージはドワーフの親父さんを、お姫様抱っこで、持ち上げる。
一応、腰にダメージの無いように細心の注意を払う。
「取り敢えず入り口付近まで運んでやる。」
ドワーフの親父は痛いのと恥ずかしいので、黙ったまま、為すがままに運ばれていく。
「ここでいいか?」
リュージは倉庫入り口付近にある、事務所のようなスペースについた。
そこにソファーがあったため、そこにドワーフの親父さんを寝かせる。
「あぁ、ありがとよ。本当に助かった。おめーらがきてくれなきゃ、一生あそこでいなきゃいけないかと思っていた。」
「それは盛りすぎだ。一生なわけないだろ。まぁ、感謝の気持ちは受け取った。」
ジローは事務所にドワーフの親父さん以外、いないことを確認してから、ドワーフの親父に聞いた。
「自分たちは、荷物の配達のクエストでここにきたんだ。ここには親父さんしかいないが、親父さんが依頼主か?」
「おー、おめーらが依頼をこなしてくれるだか? 見たところ、かなり身軽な気がするが、持ち運ぶ荷物は最低でも3トンぐらいあるぞ。大丈夫か?」
「冒険者ギルドの依頼説明である程度聞いている。 運搬にはマジックバックか荷車が必要だということらしいな。」
リュージが答える。
「これ、アイテム袋ね。」
ジローがアイテム袋を見せる。
「俺はアイテムボックスのスキル持ちだ。容量もかなりある。3トンの体積はわからないが、おそらく大丈夫だ。」
リュージはジローを無視して答える。
「ほぉー、アイテムボックス持ちか。ワシも持っている。容量は小さいがな。」
ドワーフの親父はソファーに横たわりながら、返答する。
「仮に3トンのものが持てるとしたら、かなり空間魔法のレベルが高いな。空間魔法のレベルが高いと、イベントリというスキルも修得しているかもしれんな。」
ドワーフの親父によると、スキルは使えば使うほど、スキルレベルが上がるらしい。
ただ、単に同じことの繰り返しでは上がらない。
いろいろな経験をしないといけないらしい。
また、レベルアップでも肉体的な強化がされるので、いろいろな技や同じスキルでも違った使い方ができるため、必然的にスキルレベルも上がるらしい。
逆に使わなさすぎると、レベルダウンもあるらしい。
「ほぉー、いいこと聞いたな。イベントリか。なんか、いけそうな気がする。」
「イベントリ!!」
「おー、出た出た。」
リュージはイベントリを修得していた。
「リュージさん、どこに出たんですか?自分には見えませんが?」
「ん?ジローには見えないのか?」
「見えません。」
「あー、イベントリのスキルは、他人から見えないらしいわ。ワシら、ドワーフの間でも、イベントリ持ちは珍しくてな。言うと羨ましがられるから、内緒にしとるやつもいると思う。イベントリはアイテムボックスの上位互換だから、イベントリ持ちは必ずアイテムボックスも同時に持っている。そして、アイテムボックスからイベントリへアイテムを出さずに移動できるから、隠すことも簡単にできるんじゃ。」
「ほぉー、なるほどな。移動してみよう。」
リュージはアイテムボックスにあったアンダーウェアをイベントリに移動した。
「おー、できた。移動は簡単だな。しかも、リスト表示されているわ。同じ種類のものは×3とか、まとまってしまうようだな。」
「イベントリは時が止まっているらしいから、中に入っているものはいつでも入れた時と同じ状態で保存されているらしい。だから、イベントリ持ちは非常に貴重じゃ。同じ空間魔法持ちでも、必ず持てるものじゃないらしいから、大事にせぇ。」
「ほぉ、じゃさっき、ヌッコロしたキラーエイブを移動させとくか。 出した時、腐っていたら目も当てられないしな。ついでに野草ともらった野菜も。」
と言ってリュージはササッさっと、移動させる。
「ジロー、驚け。俺たちが倒したキラーエイブ、108匹いたぞ。スゲー倒したな。」
「ぶは、リュージさん、倒し過ぎです。ほとんどリュージさんが倒していましたよね。虐殺クラスっすよ。ヤバイっす。称号があったら虐殺王とかつきますよ」
「不用意なフラグ発言すんな。単に襲われたから、自衛しただけだ。つくなら自衛王だろ」
リュージはリスト表示されたキラーエイブとビックキラーエイブをみて、密かにフラグに触れないよう祈った。
「おめーら、ワシがこんなだから、笑わせてくれているんか? ありがとうな。 そっちの背の高い兄ちゃんはかなり強そうだな。さっきもワシが持ち上がらんかったもんも、楽々持ち上げとったしな。」
ドワーフの親父は少し楽になってきたので、体を起こした。
「ほんじゃ、まっ、さっさと運搬を頼むとするかの。そこの壁に、倉庫の地図があるじゃろ。よく見てみろ。棚ナンバーがふってある。上から見た図と思ってくれ。棚ナンバーは全部で、240ある。」
「そして、その机の上に置いてある台帳を見てくれ。台帳にもナンバーがあるはずじゃ。 ナンバーとハイフンがあり、だいたい1から10の数字があるはずじゃ。その数字が棚の高さを表す。1番下が1じゃ。天井に行くに従って数字が増えていって、1番上が10じゃ。」
「運搬して欲しいのは、小麦、芋袋、雑穀だ。棚ナンバーの20から40が小麦じゃ。60から75が芋じゃ。今回の雑穀は棚ナンバー150から180にある、ヒエとアワとキビじゃ。」
「小麦は60袋、芋は50袋、ヒエとアワとキビはそれぞれ20袋をピックアップして欲しい。 それをそこにある伝票通りに配達してくれたら、完了じゃ。配達先は各伝票に書いてある。北区の卸店と東区の食堂に配達を頼む。卸店はさほど急ぎではないが、食堂はなくなる場合もあるから、なるはやで届けてやって欲しい。」
「りょーかいした。なるはやで届けよう。」
リュージは伝票にさっと目を通して、すぐに伝票を置いた。
「ジロー、積み込むの手伝ってくれ。」
「わかりました。リュージさん、がっつりやらせて頂きます。」
リュージを先頭に2人は倉庫に戻っていく。
そして、リュージの指示に従って荷物を積み込む。
リュージはジローにそばによるように囁く。
そして耳の側で、伝言した。
それをきいたジローはウンウンと頷く。
謎の行動である。
2人は荷物をアイテムボックスに落としていく。
あっと言う間に、荷物は準備できた。
リュージはアイテムボックスに入れた荷物をイベントリに移して、数に間違いがないか確認する。
間違いはないようだ。
「じゃ、親父さん、配達行ってくるわー。」
そう言って2人は、倉庫から足早に立ち去る。
「行ったな。危ないところだった。危うくバレるところだった。人族のアルバイトごとき、なんとでもと思ったが、2人いたしな。1人をやっている間に応援でも呼ばれたら厄介だ。」
そう言って物陰から、出てきた人物がいた。
いや、人物と言うよりも、ドワーフ物と言った方が正確だろう。
ドワーフの親父さんそっくりなドワーフだ。
このドワーフはアイテムボックスに小麦を詰め出した。
どうやらドロボウらしい。
やがて、アイテムボックスが満杯になったのか、辺りを伺いながら、倉庫を出ようとしていた。
倉庫を出て、安心したところで、後頭部に軽い衝撃を受けた。
「うっ…」
ほとんど、声も出せないまま、地面に倒れた。
後ろから出てきた人物がいた。
今度は間違いなく人族だ。
リュージとジローである。
「ドワーフだな。」「ドワーフっすね」
2人はハモった。
「まぁ、息を殺して潜んでいたから、ドロボウかなと思っていたが、ドワーフなら違うかもな。親父さんに確認して見よう。」
そう言って、ドワーフを引きずり、リュージたちは再び、倉庫の事務所に入った。
「おめーらか、忘れ物か?」
「ん? ドイッスルじゃねーか。引きずられてどーしたんだ?」
「親父さんの知り合いか?」
「あぁー、甥っ子だ。しばらく見かけなかったが、久しぶりだな。」
「あー、じゃ、親父さん、ショックだろうが、実はこいつ、自分のアイテムボックスに小麦を目一杯、詰め込んでいたぞ。親父さんがしばらく見てないなら、ドロボウだな。」
「… … … 。」
「すまん、たぶん、事情があるんだろう。どーしようもないやつだが、一応、甥っ子だ。事情を聞きたい。ワシがこんな状態だから、今は無理だが、人を呼びに行って欲しい。この倉庫の2筋向こうに黄色い槌のマークのある看板がある。 そこのクイックルという親父にマスバックルが呼んでいると言ってきてくれねーか?」
ジローは言われた通りにクイックルを呼びに行った。
クイックルと一緒にジローは戻ってきた。
「マスバックルの親父、どーしたんだ?急に?」
「きたか、クイックル、オメーんところのドイッスルが、アイテムボックスに小麦を目一杯入れて持って帰ろうとしたらしい。」
「そこの2人が証人だ。2人はさっき、ワシが荷物の下敷になっていたところを助けてくれた恩人じゃ。嘘は言わねーやつらだ。ワシも信用している。」
「わかった。まぁ、ドイッスルはこれまでの行いが行いだから、仕方ない。マスバックル、すまねー、ドイッスルは奴隷落ちさせる。前回、やらかした時、これ以上やったら奴隷落ちだと言い聞かせた。もう、言い訳は聞かねー。反省するまで、買い戻しもしねー。」
そう言ってドワーフのクイックルは、うなだれて、マスバックルに膝をつき謝罪した。
まぁ、あとはドワーフ達にに任せよう。
リュージたちは再び配達に向かった。
ポイント評価がわずがながらUP。




