110 中級ダンジョン43階層の前夜
リュージたちは42階層から戻ると早速、調理にかかった。
サハギンからのドロップ、[新鮮な魚身]を使っての調理である。
ナマ食もできる魚などはエロイム近郊では手に入らない。
しかも、今回のドロップはナマ食以外にもいけるようなのだ。
「リュージ様、この[新鮮な魚身]はかなり大量にありますが、いかが致しますか?焼きと煮付けは行けますが、ナマ食はわかりかねます。」
この世界には醤油はないのだが、ダシ醤油のような調味料はあるにはある。
それとジンジャーなどを合わせて煮付けるのが一般的だ。
焼き魚はシンプルに塩を振って焼く方が多いようだ。
「ナマ食は俺が切り分けるから大丈夫だ。」
リュージはそう言って、[新鮮な魚身]を手早く切り分けた。
アイテムボックス刀を極細にして切り分けたのだった。
アイテムボックス刀は空間を切り裂くので、必ず切れるし失敗がない。
『極細は初めてだが、風魔法のカマイタチと違って、また別の使い方がありそうだな』
リュージは[新鮮な魚身]を次々と解体して切り刻んで皿に並べていった。
約130人分のお刺身盛り合わせがあっというまにできあがった。
「す、すごい。こんなにあっさりと刻んでしまうなんて。」
モコートは自分が知る魚料理以外のものが見れたと大喜びだった。
ダシ醤油につけて試食する。
モコートとトコートは[新鮮な魚身]を煮付けと焼き魚にしていく作業をこなしながらである。
リュージは刺身が出来上がったので、それ以外の料理に取り掛かる。
ワールドワンは魔素が豊富なので、作物がよく育つ。
最近はゴーレムを使って収穫をさせている。
そのゴーレムも魔改造をしてあり、例えばアイテムボックスを付与してその中に収穫物を入れて効率を上げている。
種をまいたり、手入れしたり、収穫したりするゴーレム全てにアイテムボックスを付与したのであった。
戦闘をするゴーレムと違って力はそんなにはない。
ただ、植物のケアを行うため、手先がやたらと器用なゴーレム仕様ではある。
そのゴーレム収穫の野菜や果物を使ってのリュージなりの料理をしていく。
ナス、人参、もやし、肉などの油炒めをまずは大量に作る。
大鍋に水魔法で水を入れダシを作ってゴボウ、人参、サトイモ、ネギ、魔物肉などを刻んで煮込む。
それだけの作業を一気に行う。
そして加熱に関してだが、ここでリュージのスキルが発動するのであった。
時空間魔法で一気に加熱調理すると料理が一瞬で出来上がる。
ただし、この時空間魔法で料理をする場合、欠点が一つだけある。
それは空間に関する時間の経過を限定的に加速するだけなので、混ぜたりすることが出来ず、焦げることもあるようなのだ。
まぁ、それでも加速させ、混ぜて、加速させ混ぜての繰り返しをやれば別になんてことなかった。
料理は仕込みや調理の時間はあるが待つ時間が圧倒的に長いのである。
「よし、ほぼほぼできた。あとは自然な流れで置いておけばちょうどになるだろう。」
リュージは今回に限って、約130人分の料理を準備したのであった。
サハギンが大量にドロップしたものに関しては、全員が一致団結して倒したからだし、チームRも当然なのである。
「リュージ様、皆がリュージ様の料理を食べたくて仕方がないようです。号令をお願いいたします。」
ルイーズが食事待ち代表として進言してきたのでリュージも一旦、手を止めて皆に号令をかけた。
「今日はみんなよく頑張った。サハギンから[新鮮な魚身]が大量に手に入ったから、皆で食べよう。鑑定した結果、ナマ食もできるようなので、刺身にした。サハギンからはとても想像できないような魚身だが、美味しいはずだ。まずは食べてみてくれ!!」
「わぁーー!美味しそうー!」
「リュージ様の手料理ー!」
「うんぅぅぅぅはぐはぐっ!」
「うまぁーうまぁー!」
「ふほぉー、はぅぅぅぅん」
概ね順調である。
煮込みと炒めが終わった[魚身と野菜煮込み]と[魚身と野菜のソテー]を出していく。
「ふひぃーー、リュージさまぁー、はぅん、まぃぅー」
「ウマィっす、うまうまっす!」
「久しぶりだわぁーーん。さすがリュージ君ね。」
ミカ、ジロー、シズカも絶賛のようである。
そして次に出てきたのは[美味しいヒレ酒]であった。
「ほぉー、深い味わいがある。これはこれは………。」
「さすがはリュージ様、出すタイミングも素晴らしい…。」
「ぬる燗でもいけそうですね。あはっ、おいしっ…。」
獣人族の精鋭、ガブリエル、ライアンが[美味しいヒレ酒]の感想を言っている傍で、ルイーズがガンガン[美味しいヒレ酒]を飲んでいた。
リュージが[魚身と野菜煮込み]と[魚身と野菜のソテー]を出したあとは、モコートとトコートが作っていた焼き魚の切身や煮込みがまた、次々と完成してはだされていった。
酒と料理はたくさんあったので、いつのまにか宴会の雰囲気となった。
リュージは
「こんなのも平和でたまにはいいね。」
と周りを見回しながらつぶやいた。




