24話 前方不注意は始まり。
祭りの前の準備期間と、祭りの本番の賑やかさ。それは心が躍り、身体が高揚感に染まってゆく。
しかし、祭りが終わってしまうと残ったのは余韻──ではなく、清掃作業等の御片付け。
楽しかった余韻に浸れるのは観光客の様に祭りに参加しているだけの人達に限られた話です。祭りの会場・舞台となった場所の人達の様に、その後には一切関わりませんから。だから後片付けに参加して大変さを実際に体験してみると一人一人のマナーの大切さを痛感させられます。
尚、自分達のマナーは確かです。自主的に参加し後片付けを御手伝いさせて頂きました。
面倒臭がりそうなユーネさんですら文句を言わず率先して動いていましたからね。
地元住民に協力し、好意的に迎えて貰える関係は定住する事の少ない冒険者には必要な処世術です。世知辛いかもしれませんが、意固地になってみても理想で御腹は膨れませんからね。大事な事です。
そんなこんなで、リヴ・カーニバルから早四日。リーヴァインの街の様子は変わっています。
溢れ出しそうな程に居た観光客は、この三日間で大半が東西に向かって去って行きました。
自分達の様に滞在しているのは極一部だそうで、宿屋の女将さんから「今度は普段のリーヴァインの街を楽しんでおくれ」と言われました。
また、ポォラ様探しに関してですが、その内容を全ては話せなかった為、アエラさん達には街の事を歴史を含めて「深く理解して貰いたい」という様な始祖ヘラルドの思いによる期間限定の冒険体験だと説明をし、納得して頂きました。リゼッタさんには多少怪しまれましたが、誤魔化してはいますが話は決して嘘では有りませんので。
その後は、寝技で一本勝ちです。
それから、最終日の夜という事で夜活を。
【直感】も「イイネ、行っちゃいナッ!」と軽いラップ調のノリで言ってる感じでしたので。
あまり派手には動けませんから密かに狙っていた分身体にマークさせていた女性三名に接触。勿論、その際には【念齢詐肖】を使用して、です。
まあ、それはそれとして。
アエラさん達は今日からギルドの御仕事です。
リーヴァインでの予定滞在期間は最低でもリヴ・カーニバルが終わってから一週間ですから、今回は借家の利用はせず、宿屋を利用します。
ギルドの仕事は任意ですから遣らなくても特には文句も言われはしませんが、遣って置いた方が後々評価に反映したり、住民の好感度を上げられる為、遣った方が良いのは確かだったりします。
「夢が無い世界だな」なんて言っては駄目です。何しろ、都合の良い世界では有りませんから。
「……それにしても、露店商の姿が街の中から全く見えなくなるとは思わなかったなぁ……」
一人で散策しながら思うのは彼等の商人としての嗅覚と行動力の高さへの感心。商売の匂いがすれば何処からともなく現れ、集まってくる。その様子は砂糖に群がる蟻の様でも有り、毛の一本までも貪るハイエナの様でも有る為、凄まじい。
そして、その商売の匂いが無くなったと判ると、あっと言う間に消えるのも彼等の凄い所。
ダラダラと滞在していても宿泊費等が嵩むので、さっさと立ち去ってしまうのは当然でもあるから。基準が振れないのは流石だと言える。
ただ、一人位は観光を兼ねて、ゆっくり滞在する露店商──行商人が居てもいいのでは?。
そう思ってしまうのは仕方が無い事だと思う。
まあ、彼等が居なくなった事は仕方無い事だから気にしても意味が無いので気にしません。
リーヴァインの街は御祭りムード一色だったのが嘘かの様に生活感溢れる日常へ戻っている。
街の人々、アエラさん達には見知った街の様子も初めての自分には全てが新鮮だったりします。
装いを変えた──街でさえ仮装していたかの様に本来の姿は、雰囲気は、全くの別物で。
だけど、ポォラ様探しの過程で知った過去の街の雰囲気や面影は、しっかりと感じられる。
(……ポォラ様探し、かぁ……)
ちょっとした目撃から始まった期間限定の冒険。その結果として獲たのが【守護精霊の蕾卵】というスキルな訳ですが。まあ、スキルと呼んでいいのか微妙な所な訳ですけど。
そのスキルの説明文なんですけどね、それが更に問題で“主の経験・思考・嗜好を糧として誕生”と表記されているんです。うん、何?、何ですか?、その宿り木に寄生をしたみたいな感じの説明文は。いや、解りますよ?、解りますけど……ねぇ……。
その為、どの様な精霊となるかは不明なんですが何と無く、生まれる精霊が判る気がします。
いえね、自分の言動とかが影響するという事ならエロい精霊に成る事だけは間違い無いと言えます。──と言うか、生まれて来るのって精霊じゃなくて淫魔でしょう。そう言い切れる自信が有ります。
寧ろ、他の姿を想像出来ませんので。
ただ、数字やバーゲージみたいな形で現在の糧の蓄積量が判る訳では有りませんから、あまり意識し気にし過ぎても仕方無いので深くは考えません。
結局は誕生してみないと判りませんからね。
「──おや、シギルちゃんじゃないかい」
「こんにちは、女将さん」
そんな様な事を考えながら適当に散策していたら不意に声を掛けられ、声のした方へと振り向けば、宿屋の女将さんが荷車を引きながら近付いて来る。
荷車と言っても、形は前世の観光地等で見掛ける人力車を小型化した様な物で、現在の自分みたいな子供でも大して力を入れなくても、コツさえ掴めば意外と簡単に引ける造りだったりします。その為、子供の御手伝いの定番の一つだったりもします。
宿屋や料理店等では勿論、食材等を販売している御店等でも配達様に用いられています。
一応、街毎に規格が制定されていますから極端に大きな物は造れませんし、所有資格に規定が有り、所有資格者の所有数にも上限が有ります。
また一定以上の大きさになると通行規制も有り、事故に繋がらない様に考慮されている。
その為、彼方此方で動き回ったりする事は無く、歩行者や子供・老人も安心して過ごせます。勿論、だからと言って気を抜いてはいけませんし、不注意による事故の原因に為ってもいけませんけど。
その辺りは人々のモラルの問題ですから。
それは兎も角、女将さんの引く荷車を見る。
積み込まれた野菜や果物、御酒や粉物等々。
一目で買い出しだと判ります。
「また珍しい所で会ったねぇ、買い物かい?」
「いえ、何と無くで散策しています
リヴ・カーニバル中とは違う街の様子を自分の足で歩きながら見てみたいので」
「嬉しい話だねぇ……最近は観光客も本に書かれた場所ばっかりに注目が集まってるから……
シギルちゃんみたいな人が増えて欲しいもんだよ」
「限られた時間を有効に使おうと考えると効率的に回ろうとしますから当然なんでしょうけど……
誰かの見付けた良さよりも、自分で見付ける良さ、その過程の楽しさを知ったら、効率重視の考え方も変わるんだと思いますよ
何かしらの切っ掛けが有れば、ですけど」
「……成る程ねぇ、そうかもしれないねぇ
それにしても、その歳で、そういう考え方が出来るシギルちゃんは根っからの冒険者気質って訳だ
どんな活躍をしてくれるのか将来が楽しみだよ」
「取り敢えず、早死にしない様に頑張ります」
「ああ、健康で長生きするのは大事だからねぇ」
そんな他愛無い話をしながら女将さんの買い物に少しばかり付き合って御店を見て回る。
自分達の様な旅行者、現地住民、そして商業者。各々の立場によって御店側の対応も違いますから。それを見られる機会というのは意外と貴重です。
それにしても……女将さんは猛者でしたね。
自分は値切りは相手を選んでます。
遣り過ぎると、御店側の損失が嵩みますからね。潰そうとは思いませんから基本的には遣りません。飽く迄も、相手が遣り手なら、です。
勿論、その辺りは女将さんも判っていましたが、先々を見据えた駆け引きは御見事でした。
まあ、定住していないと難しい内容だったので、自分の遣り方には取り入れ難い事でしたが。
それでも、良い経験・勉強には為りました。
女将さんと別れ、とある場所を目指します。
別れ際に女将さんから「そう言えば、ポォラ様を見たんだったねぇ、なら、“祠”に行ってみな」と言われたので教えて貰った場所へ。
ポォラ様の伝承の様に、リーヴァインの住民達の間でしか知られていない場所なんだそうです。
そんな話を聞いたら、行くしか有りません。
──で、到着した場所は住宅街の入り組んだ道を進んだ先、大通りからは隠される様に奥まった所に建てられている小さな祠。
前世の、田舎等に点在している高さ50㎝も無い神様や御地蔵様を祀っている祠の様に。
それは静かに鎮座している。
近寄る事も忘れ、思わず息を飲んでしまう。
何しろ、この世界の──少なくとも現時点では、存在しない筈の朱色の“鳥居”が描かれた祠。
何度も補修されながら現存しているのだろうと、一目見て理解出来る程に見た目と年代が合わない。
ただ、そんな事は今は関係無い。
ポォラ様──守護精霊の存在と、始祖ヘラルド。二つの点を結ぶ様に浮かび上がる可能性。
しかし、本格的に「考えるなっ!」と警鐘が鳴り響いた為、即座に思考を放棄する。
何時かは知る事に、向き合う事になるとは思う。けれど、それは今ではないのだと。そう【直感】も告げている様な気がしたから。だから破棄する。
──とは言え、無視する事も出来無いのが本音。だから、取り敢えず祠を調べてはみる。
要は、その事を追求しなければいいのだから。
祠自体の造りは簡素で、釘等を用いない木組み。中に御神体は存在していない様で空っぽ。
その点で言えば、祠とは言えないのだが。まあ、あまり気にする所ではないのだろう。
祠には所謂“御供え物”が有る。
ただ、一つだけ異質なのが、祠の中には座布団が敷かれている、という事だろう。
「…………ひょっとしたら、この祠ってポォラ様が遣って来て休憩する為の場所なのかな?」
そう考えると御神体が存在しない事にも頷ける。御供え物にしても「何時、ポォラ様が遣って来ても大丈夫な様に準備している」と言われれば納得する事が出来ますからね。
座布団も、御神体を置くのではなく、ポォラ様が座ったりして寛ぐ為に用意されている物なら。
この祠の役割が何と無く判った気がします。
これ以上の深掘りはしませんが。
取り敢えず、女将さんに言われて買って来ているポォラ様への御供え物を置き、教会で習った祈りの捧げ方に従って、参拝しておきます。
和洋折衷で変な感じがしますけどね。
祠を後にし、そのまま入り組んだ住宅街の小路を気ままに歩いて行きます。
迷ったら迷ったで何とかしますし、いざとなればマップを呼び出せば現在地や宿屋への帰り道も直ぐ判りますからね。心配は要りません。
「……懐かしい感じだなぁ……」
前世で、五~七歳の二年程を過ごした場所。
その景色が、こんな感じだったのを思い出す。
アエラさん達も居ないし、誰にも聞かれない様に小声だから心配はしていませんが。
思わず、そう呟きたくなってしまった雰囲気。
郷愁と言えば郷愁なのかもしれないけれど。
それは多分、ポォラ様探しによる過去から現在へ継ぎ繋がる人々の想いを感じたからでしょう。
正直、その場所で其処まで大切な思い出・経験は有りませんでしたからね。
雰囲気が似ているから思い出しただけです。
まあ、そういう事を考えてしまっている辺りは、自分自身への照れ隠しなのかもしれませんけどね。大して未練も無く、寧ろ、今の人生の方が充実し、大切だと言い切れるのに。
シギル・ハィデには過去が無いから。
だから余計に、そういう感覚になるのでしょう。自分の事ですが、明言は出来ませんけど。
仕方が無い事だと思います。
気儘に小路を歩いていたら、少し開けた路へ。
大通りでは有りませんが、道幅は有りますから、ある程度は知られた道だとは思います。
ただ、人通りは然程多くは有りません。例えると田舎に有る寂れながらも地元の人達に愛されている商店街といった感じですかね。
賑やかで活気に溢れている場所ではなくて。
穏やかで和やかな人情味に溢れている様な。
「これがスローライフでしょう」と言える感じののんびりとした雰囲気が漂っています。
大通りから一本裏に外れただけで時間の流れ方が違う場所に来てしまったと錯覚してしまう様な。
そんなノスタルジックな匂いが香る景色です。
思わず立ち止まり、左右を確認します。
見覚えは有りませんが、リヴ・カーニバル中には此処にも確かに来ている筈です。本体ではなくて、分身体だったとしてもです。
だから、その違いに驚かない訳が有りません。
つい、ぼんやりと眺めてしまう雰囲気の街並み。これが此処に居る人々の日常風景なんだと思ったら今の自分に成ってから今日まで体験してきた日常が別物に感じられてしまいます。
勿論、実際に別物だから当然なんですけど。
人は自分の日常が、大多数と同じだと思い勝ち。でも、実際には一人一人違う日常の中に在る訳で。全く同じ日常なんて無いんですから。
だからこそ、その違う日常に触れた時、人の心は強く惹き付けられるのかもしれません。
自分の日常とは違う日常、“非日常”に。
そんな事を考えながら歩き出そうとした瞬間。
【直感】に「右ダックッ!」と叫ばれ、反射的にダッキングします。
すると、先程まで自分の頭が有った場所を何かが風を切って通過して行きました。
注意散漫だった為、【直感】の叫びが無かったら間違い無く直撃していたでしょう。
そして、その通過していった何かなんですが。
自分が通って来た小路の方に入って行きましたが振り向いた時には姿は有りませんでした。
「坊や、大丈夫だったかぃ?」
「あ、はい、大丈夫です、吃驚しましたけど……」
小路を見ていた所に声を掛けられ、振り向いたら優しそうな御婆さんが居ました。
この世界の老人って、前世の老人とは違い滅多に腰が曲がってる人とか居ないんですよね。杖を持つ人なら珍しくは有りませんが。基本的に身体能力の低下の度合いが全く違うみたいですから。
目の前の御婆さんも綺麗な姿勢をされていますし熟練のメイドさんみたいな上品さも感じます。
「危なかったねぇ……リヴ・カーニバルが終わった丁度この時期から“リヴロー”達の巣作りが始まる事も有って毎年何人かは怪我人が出るんだよ」
「話には聞いていましたけど……気を抜いていたら正面に衝突していましたね」
「まあ、直接当たられても青痣が出来る位だよ
それよりも場所や体勢が悪いと大怪我になるから、其方に気を配った方がいいよ」
「はい、そうします」
御婆さんに会釈し、御別れすると歩き出す。
【並列思考】を有効にしながら分身体を髪の毛に潜ませる様に作って周囲を見回す。
青空のキャンバスに描かれた様な白い雲に小さな飛沫が飛んでしまった様に、動く幾つもの点が。
【望遠視】で見れば、それが先程話題に挙がったリヴローという名の燕の魔獣だと判る。
このリヴローは魔獣だけど人間を襲う事は無く、御婆さんが言っていた様に青痣が出来る程度にしか攻撃力を持ってはいない。
体長は10~15㎝程、翼長は30㎝程。藍色の体毛が特徴で、御腹だけが白く、嘴は山吹色。
燕と違うのは“渡り”はしないという事。ただ、夏場は人里で生活していますが、冬になると山奥の洞窟等に移り、集団冬眠して越冬します。
基本的に魔獣は人を襲い食べますが、リヴローは虫や果実等が主食。特に小型の魔蟲を食べてくれる事も有って人々には好意的に受け入れられて人里で共生している珍しい魔獣だったりします。
虫にも害虫・益虫が有る様に、魔獣にも同じ様な存在が少数では有りますが、存在しています。
リヴローの場合、虫の駆除だけではなく繁殖期に作られ、雛が生まれて成長し、巣立った後は巣には戻らなくなります。その廃棄された巣は珍味として扱われていますので巣を作られた家や御店は幸運。その為、“幸運鳥”とも呼ばれていたりします。
尚、リヴローという名前ですが、リヴロー自体は彼方等此方等に広く分布し、固有種も居ます。
ただ、リヴローが歴史上最初に発見されたのが、リーヴァインだった為、此処のリヴローが基本種と認定されています。
──とまあ、そんな訳です。
一度、リヴローの存在を認識すれば、当たられる事は先ず有りません。リヴローも基本的には衝突を回避しようとする動きをしますので。
ただ運悪く事故る場合が有るというだけです。
そんなリヴローに注意しながら、通りを散策。
大通りとは違い、民間の方が圧倒的に割合の多い景色は宝探しをしているかの様な気分になり。
ちょっとばかり、ワクワクしてしまいます。
のんびりと。暫く歩いていると目に止まったのは前世の喫茶店の様な外観をしている建物。
デザイン的には、この世界でも似た建物は有り、実際に喫茶店・飲食店の類いだったりもします。
ただ、やはり、リーヴァインだからでしょうか。妙に雰囲気が似ている様な気がして。
気付けば、ドアのノブに右手を掛けていました。手を離して逃げるのも可笑しいですし、特に疚しい気持ち等は有りませんので。
グッと押し込む様にして御店の中へ。
………………はい、手前に引くタイプでした。
チリンッ、とドアの上部に取り付けられた小さな鈴が綺麗な音色を響かせて鳴り、店内へと招く。
嘗ては何気無く聞き流していただけだったのに。その然り気無い音色を今は聞き逃さない様に拾い。密かに心に温もりを感じてしまうのは。
リーヴァインの街だからなのでしょうか。
「いらっしゃい」と出迎えてくれるのは五十歳は迎えているだろう立派な白い髭の店主らしき男性。老人というよりも渋い年配の俳優みたいな感じで。カウンターの中に立つ姿は正に喫茶店のマスター。思わず、「いつもので」と言いたく為ります。
そんな店主に会釈し、店内を見回せば、内装等も含めて喫茶店としか思えません。
御客さんは五人程居ますが、賑やかにではなくて上品に楽しそうに御喋りしている御婆さん三人組、本を読んでいる御爺さん、真剣な表情で向き合ってイットゥーシスを遣っている中年の男性二人組。
特に共通点は有りませんが「他の御客さんに対し迷惑に為らない様に」というマナーが感じられて、御客さん達の自重意識が窺えます。
カウンター席には誰も座ってはいませんいので、マスター──店主の斜め前の席に。流石に真正面に座る勇気は初対面では持てません。
置かれているメニュー表を見て“ランベーダ”のハーブティー、リヴェロッペのクレープを注文して用意される様子を楽しみながら待ちます。
ランベーダは赤紫色の葉を付ける薬草で、花実は付けない球根の分割で殖えていきます。
新鮮な生葉を擂り潰して作られるがは頭痛薬で、乾燥させた葉を使うハーブティーはリラックスする優しい香りが特徴的です。
クレープはクレープとして存在しています。
リュクッソのムースを合わせるのがスタンダードだったりしますが、独自路線も存在します。
個人的には冒険するのは楽しいのですが。
他人に食べさせる分には遣りません。
「初めて見るけど、旅行でリーヴァインに?」
「観光も兼ねてはいますが、御義姉さん達が冒険者をしていますから、その関係で」
「それじゃあ、坊やも将来は冒険者に?」
「はい、成るつもりです」
「それは頼もしい限りだ」
そう言いながら目の前に置かれるティーカップ。淡い赤茶色は紅茶っぽい見た目ですが、分類的には紅茶に含まれません。
尚、紅茶の事はティーと呼びます。日本茶の様な種類はグリーンティーです。
他にも数種類有りますが、まあ、機会が有れば。
ティーカップの取り、先ずは一口。
口に含んだ瞬間に鼻腔を擽る香りは強過ぎずに、けれど薄過ぎる事も無く。舌に感じる上品な甘味。店主の確かな力量が窺える一杯です。
熱せられた、クレープを焼く為の専用機具の上の垂らして薄く伸ばされた“リーブォ”のオイルから香ばしくも淡い甘い匂いが上がる。
薄味のバターを溶かした様な感じで、スイーツが好きな人でなくても食べたくなりそう。
オイルの温度を見ながら其処にクレープの生地の素を垂らして薄く伸ばしながら焼いていく店主。
「実は私も三十歳までは冒険者をしていたんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ、だけど、冒険者も簡単な仕事じゃないし、常に死が傍に有る危険な状況に身を置く訳だからね
引き際の決断は大事に為るよ」
「引退されたのは、何か切っ掛けが有って?」
「私の場合は子供が出来た事だったね
私の妻は五歳下でね、妻も冒険者をしていたんだ
だから、出逢った時は先輩後輩であり、ライバル
当時は一緒に成るだなんて思いもしなかったよ
その妻は二十歳の時に冒険者を引退してね、故郷のリーヴァインに戻って別の道に進み、三年後に偶々再会したのが切っ掛けで付き合う事に為って……
そして、私が三十歳を迎えた年に子供が出来た
定住しても冒険者を続ける人は居るけれど……
私はね、妻や子供を残して死んだ時の事を考えると冒険者を続けられる気はしなかったんだ
パーティーを組んでいた仲間からは惜しまれたけど引退を決断した事には後悔はしていないよ
御陰で妻との間には十人も子供を授かったからね」
「それは冒険者を続けながらだと難しい事ですね」
「そうだね、不可能とは言わないけれど」
そう言った所で、出来上がったクレープを乗せた御皿が目の前に置かれる。
焼き立て、出来立ての温かいスイーツの匂いって一種の魅了だと思いませんか?。
──という訳で、頂きます。
クレープとハーブティー、店主や御客さん達との会話を1時間程楽しんで御店を後にしました。
昼食としては軽い内容ですが、それで十分です。足りなければ適当に買い食いしますので。
リヴ・カーニバルが終了しても、そういう御店は普段から存在してもいますからね。
ただ、最中は出店も含め、多くなるだけで。
それはそれとして。
冒険者の引退に関しては色々と思う所が有る事は正直に言って否めません。
例えば、フェリシアさんは御家の都合上、冒険者としての活動は最初から期限付きの物でした。
店主さん達の様な場合、怪我や病気が理由等々。引退する理由や切っ掛けは人各々、多種多様です。
しかし、必ず訪れる事でも有ります。
……まあ、死ぬまで遣っていれば、その死に方が何であれ、現役のまま亡くなる訳ですが。
まだ洗礼さえ受けてはない身ですが。
もしも、アエラさん達から子供を望まれたなら。どういう選択を自分はするのか。
勿論、アエラさん達が望んでくれるなら、子供を成す事自体に否は有りません。
フェリシアさんや、それ以前の人達との関係上、出来ている人が居るかもしれませんからね。
その辺りは……一応、心構えは出来ています。
現実的な話をすれば、アエラさん達四人と一緒に子供を成し、育てながら生活をする事は可能です。既に十分な生活費の貯えは有りますからね。
ただ、換金するには少々問題も伴います。
勿論、それ自体は誤魔化せない訳ではないので、どうにか出来ますけど。
そういった時には大体、探ってくる輩が居ます。その所為で平穏が破られますから困ります。
「────キャアッ!?」
「────ぅわっ!?」
考え事をしていたからでしょうか。本日二度目の注意散漫にて不意打ちに遭いました。
無警戒だった所に急に真横から来た衝撃に驚き、思わず声を上げてしまったのは仕方が有りません。ただ、倒れはしませんから、受け止める格好に。
柔らかく、温かいですね。
《ステータス》
:オリヴィア・リクサス
(偽名:シギル・ハィデ)
年齢:10歳
種族:人族
職業:──
評価 強化補正
体力:EX +1311
呪力:EX +1139
筋力:D +1038
耐久:D +1002
器用:D+ +1240
敏捷:D+ +1141
智力:D+ +1101
魔力:D +1047
魅力:── +1004
幸運:── +1218
性数:── 146人
[スキル]
【返し風】
物理攻撃を受け、相手の威力に自分の攻撃の威力を上乗せして、撃ち返す。
但し、相手の能力が施行者の能力を上回り過ぎると受け切れずに不発となるので要注意。
【渾溜】
発動後一定時間攻撃スキルの使用が不可能になるが一定時間経過後、一番最初に使用する攻撃スキルの威力が三倍になる。
但し、効果が有効なのは一定時間内であり、それを過ぎてしまうと無効と為ってしまう。
攻撃スキルの使えない一定時間の短縮、有効時間の延長は施行者の能力により増減する。
【輪回天】
【二刀流】所有、短剣専用。回転しながら、両手に持った短剣により連続して斬り付ける。
また、回転速度・回転数・回転継続時間は施行者の能力に伴って増減する。




