23話 幾季経て継ぐ絆。
リヴ・カーニバルも三日目──最終日です。
何だかんだで一人、街中を走り回っていますが、他の人達とは祭りの楽しみ方が全然違っています。自分で選んだ事なので不満は有りませんが。
ただ、少しばかり、未練は有る訳です。
勿論、逆に他の人達は体験出来無い事を経験中な事自体は、ちょっとした優越感を覚えますが。
それはさて置き、今日も昨日と同様に早起きして夜明け前のリーヴァインの街に出掛けます。
その理由ですが、昨日のリヴォンの件の時です。脳裏に浮かぶ言葉が有りました。
「狭間の大地に聳えし塔を34日と三半日進み、暁光の中、群れたる争竜の虚空に咲く小花冠へと、証を身に示し右手を沈めよ」と。
その一部分、“暁光の中”というのが文字通りの意味であるなら、昨日の時点では進めませんから。それで昨日は止めた訳です。
もし、読み違えていたなら、それまでですしね。自分には縁が無かったと諦めるだけです。
──で、最初の問題は“塔”が何処に有るのか。観光序でに探して見ましたが…見当たりません。
一番高い建物は、リヴェッセラ教会の中央尖塔で間違い無いんですけど……仕掛人は同じネタを使い回す様な性格ではないと思うんですよ。
そのまま昨日は宿屋に戻った訳なんですが。
眠る直前に気付いたんですよ、塔が有る事に。
ええ、割れ裂かれた“狭間の大地に聳えし塔”は直ぐ側に存在しているという事に。
それが解ると、“34日と三半日進み”が支柱の螺旋階段を進む事だと考える事が出来て。
“進む”という訳ですから、時計で言う右回りを指し示していると考えられる訳です。
下りが右回り、上りが左回りなので、下りの道を一段目の位置を基点──12時として34日。
2周で24時間──1日なので、68周。
“三半日”という言葉は知りませんが、半日なら12時間を示し、四半時なら15分を示す訳なので1日24時間を基本とすれば、三分の一は8時間。つまり“8時の方角”を示しているのでしょう。
そう考えて、早起きして向かうのは通行管理所。【水化】と【変体】、当然【絶影】【無音行動】も使って見付からない様に通り抜けます。
当たり前ですが、今は封鎖時間なので無人。
場所的にも先ず人目には付きませんが、油断せず気を引き締めて螺旋階段を下って行きます。
数え間違えたら時間の無駄ですからね。
尚、分身体を頂上──基点に置き、2周毎に同じ12時の地点に配置。
目印として置いて置くだけなので余裕です。
そう遣って、69体目の分身体を置き終えた所で一息吐き、景色を眺めて時間を確認。
後30分程で暁光──旭が昇る筈です。
気合いを入れ直し、三半日分、下ります。
さて、このリーヴァインの──リヴィアル大橋の支柱には無駄に見事な彫刻・壁画が施されており、冒険者を護衛として雇ってまで観たいと思う人々が少なからず居ます。その為、観光専門の冒険者達が生まれた要因だったりします。
つまり、然り気無く経済効果が有るんです。
アエラさん達と来た時には時間制限の事も有り、存分に堪能する事は出来ませんでしたが。
夜中に分身体を使って、貸し切り状態で独り占めさせて頂きましたので。ええ、素晴らしいです。
そんな支柱の彫刻・壁画を見ながら、目標地点に到着したので、しっかりと確認をします。
“群れたる争竜の虚空”というのは彫刻・壁画のモチーフにされる三大物語の一つ“キアヴァス”の竜谷篇の一幕を指しているのだと思います。
その予想通りに竜達の姿が立体と平面を駆使して表現されている中、怯え、逃げ惑う人々の姿が。
その内の一人の少女の手から離れ、空に舞うのはリヴタニアの花冠のレリーフが。
恐らくは、あれが目印で間違い無いしょう。
後は“証を身に示し右手を沈めよ”の文字通り、昨日、“鍵”と成ったリヴォンを首から下げたまま右手を花冠に触れ、押し込むだけ。
取り敢えず、リヴォンを外した状態で試して。
リヴォンを付けてから試して。
“暁光の中”が重要な鍵なんだと再確認します。決して、「行けたら、ラッキー♪」とか思ったりはしていませんよ、ええ、していませんとも。
分身体を解除し、その場にて待つ事、約20分。地平線の彼方が白んできましたので準備体勢へ。
そして、旭が支柱を照らしたのと同時に、右手を花冠のレリーフの中央へと当て、押し込みます。
水面の様に波打ちながらも、密度の高い空気層に手を押し入れているかの様な感覚。
肩口まで来た所で指先が何かに触れる。恐る恐る指先を動かして確認する。
冷んやりとした、摩擦の無い滑らかな曲線。
直径20㎝程の水晶玉を思わせる“ソレ”を。
俺は躊躇う事無く、しっかりと右手で掴む。
次の瞬間、感覚から先の展開を想像した。
経験から左手は反射的に脇差しの柄を握り締め、万が一に構えていたんですけど。
特に何も起こらなかったので一息吐きます。
【記録書】にてマップを確認すれば、予想通り。新しく“天地内球”というダンジョン・マップと、その中に俺自身の現在地を示すマーカーの点滅が。
周囲を見渡してみると「…………あれ、街?」と思わず言いたくなる光景が。
【記録書】な無かったら──いや、いきなり何も知らずに此処に飛ばされていたとしたなら。
大抵の人が「知らない場所に転移させられた」と勘違いしてしまいそうな程に。
精巧なリーヴァインの街が広がっています。
──とは言え、過去の街並みですが。
(……でも、これって、ある意味悪趣味……)
此処に到るまでの経緯で、知っているからこそ。直ぐに察しが付く訳ですが。
普通の子供には先ず判りません。まあ、抑の話、普通の子供には此処に辿り着く事は出来ませんから考えるだけ無駄な事なんですけどね。
それでも少しは愚痴りたくなる訳です。
──で、悪趣味だと感じる理由ですが。
自分の周囲には沢山の人々が行き交っています。自分の身体を擦り抜ける様にね。
ええ、恐らくは立体映像──幻影でしょう。
ただ、客観的に見れば仮想現実体験をしている。そんな風に思えなくも有りませんから。
そういう知識が無かったら驚きますよ。だって、有っても吃驚したんですから。
いえね、普通に驚きますよ?。ダンジョンの中に街が有って、沢山の人々が普通に生活をしている。そんな光景が目の前に広がっていれば。
まあ、そんな事は兎も角として。
見た感じ、現在地は街の中央です。何しろ、直ぐ側には装飾等が改修される前のリヴェッセラ教会が建っていますから。一目で判りますとも。
問題は何処を目指せば良いのか、ですね。
まあ、マップの達成率を100%にする事だけは俺自身の拘りでも有りますけど。
──なんて考えていたら、胸元から光が。
視線を落とせば、リヴォンが光っており、右手に持って確認しようとすると白い光が収束し、表面に十二の青白い炎の様に揺らめく光点が。
それは宛ら時計の文字盤の様で。
だから、直ぐに意味に気付く。
つまりダンジョンの攻略に与えられた制限時間は12時間──日の出から日没までって事ですか。
全く……燃えてくるじゃないですかっ!。
このダンジョンの製作者は実に攻略者の燃え所を深く正しく理解していますよ。
勿論、コンプ派も居ますけど。
こういった条件下でも尚、それを成し遂げる。
攻略者の総合力が試されるイベントの有無こそが超一流と一流を隔てる要素ですからねっ!。
──というのが、個人的な持論です。
兎に角、遣り甲斐が有って嬉しい限りです。
それと時間制限付きって事はダンジョンの内外の時差は無いって事かもしれません。
そういう仕様の方が個人的にも上がりますから。取り敢えず、そう勝手に思って置きましょう。
あと、光点が刻まれるのが、ダンジョンに入って直ぐではなく、少しだけどタイムラグが有ったのは……まあ、優しさでしょうね。
流石に、立て続けにだと追い込み感が凄いので。俺は気にしません。寧ろ、爆跳ねです。
「さてと、取り敢えずは──あの、こんにちは」
そう目の前を通り過ぎて行く人に話し掛ける。
既に幻影だとは理解しているが街の人々が攻略と無関係な背景かは定かではない。
迷宮技術に関しては未だに謎だらけなんですが。もしも、ゲーム製作に近い感覚が有るのなら。
時には、そういった仕様も有りかと。
──と言うか、こういう仕様なら、そうした方が個人的には面白いと思うからです。
「聞いてくれ、宅のソフィアに孫が産まれてね!
私もついに御祖父ちゃんさ、はっはっはっ!」
「…………はぁ……」
──そんな期待を一撃必殺で撃ち砕かれまして。
全く脈絡の無い事を笑顔で言う話し掛けた男性は此方等の反応を待たず──否、無視する様にして、その場から歩き去ろうとする。
呆気に取られながらも【並列思考】により素早く我に返ると、検証の為、再び声を掛け、どういった反応が返るかを試す。
「聞いてくれ、宅のソフィアに孫が産まれてね!
私もついに御祖父ちゃんさ、はっはっはっ!」
そう言い残し、男性は立ち去って行った。
台詞・口調・表情・動作、その全てが同じ事から所謂、固定台詞のNPCと同じ仕様みたいです。
しかし、もしかしたら複数の台詞を持つ可能性も捨て切れませんから念の為、別の人でも検証。
──と言うか、今の男性では遣りたくないです。テンション的に付いて行けませんから。
結果から言えば、1人1パターンの様です。
1人10回ずつ、20人で、連続・断続する形で頑張って話し掛け続けましたからね。
ただ、少なくとも人々が単なる背景ではなくて、情報を隠し持つ標す者なのは確かです。
問題は誰が貴重な情報を握っているのか。それが判らない事と、攻略等の進捗具合に伴う彼等の台詞の変化の有無。この二つが悩ましい点。
ゲームなら一つの街でNPCは40~50人程。しかし、此処では軽く見回しただけで100人以上行き交っている姿を確認出来る。
まあ、モブ画の使い回しじゃないから判別し易い事だけは救いかもしれませんけど。
──って言うか、普通だと詰みますよ、これ。
誰と話したのかを記憶するだけでも大変ですし、変わるのだとしたら、尚更に時間を消費します。
ただまあ、それだけに期待も膨らみますけどね。
取り敢えず、【直感】の助言に従い街の西側からマップ埋めを兼ねて情報収集を始めましょうか。
此処に転移させられてから約1時間が経過。
少し前にリヴォンの光点が一つ消えましたから。便利では有るんですけど、細かくは判らないので、油断していると時間切れに為りそうで怖いです。
現状ですが、中央と西側のマッピングと情報収集を終了させ、東側に取り掛かっています。
分身体が有効かを試すと、掌サイズのスライス型でも話し掛けると人々が反応してくれたのは予想外でしたが、ラッキーでした。
その御陰で作業は捗っています。
「──っと、また出て来た……」
ただですね、やっぱり此処はダンジョンな訳で。街中だろうと魔物は出現し、襲って来ます。
それなのに人々が無反応なのはシュールです。
──と言うか、戦闘中の独り言に反応したりする無差別な仕様ではないだけ増しでしょうね。
どうやら、此方等が話し掛ける意思を持たないと人々は反応しないみたいですから。
どんな仕組みなのかは解りませんけどね。
出現しているのは、ジャヴィーとスケルトン。
出現する数は一度に1~3体なので倒す事自体は苦労はしませんが、鬱陶しいです。分身体の全てに自己防衛可能な必要最低限の戦闘力を割かないと、消されてしまうので油断は出来ません。
そんな感じで、魔物を倒しながらもマッピングと情報収集は進み──東側も略埋まっている。
そんなダンジョンの達成率は──28%。まあ、まだ一階層分だって考えたら、可笑しくはない事。でも、今の所、次に進む為の道は見当たりません。それを考えると……引っ掛かる訳です。
一息吐き、思考を切り替え様と空を仰ぐ。
「……………………ぇえぇ~……」
見上げた空。其処に有るのは──リーヴァイン。今、自分が立っている、昔のリーヴァインの街が。空という巨大な鏡に映したかの様に存在している。
思わず、変な声を出してしまうのも仕方が無い。だって、【望遠視】で【精霊眼】で確認をしたら、向こうも実在しているんですもん。
そんな気持ちにもなるでしょう。
まあ、そうは言っても、時間は有限ですからね。直ぐに切り替え、同時に東側のマッピングが終了。達成率は29%に。残っている所は何もしないままだと入る事は出来無い場所です。
街という形だからこそ、変な隠しエリアは無く。潔い仕様なのは有難いですね。油断はしませんが。
取り敢えず、“天地内球”というダンジョン名の理由だけは、はっきりしました。
昔有った地球内空洞説。アレっぽい訳です。
そういう訳で、彼方等側に行く方法を探す事から始めて行きましょうか。
人々から得た情報の中で、明らかにヒントっぽい内容だったものが十二件。
それだけだと難しいですが、情報をくれた人達が二人ずつ同種族なので、二つで一つになるのだと。そう察しが付きます。
先ずは一組目のヒントで、「春告げ誘う華回廊、ボラデに一杯奢れ」から行きましょうか。
恐らく、前半部分が指すのは歓楽街の事。うん、本当に子供に行かせる場所じゃないですよね。
ダンジョン内──昔のリーヴァインには歓楽街が一ヵ所しかないので判り易いので助かりますが。
東区の歓楽街に到着すると、其処に一件だけ有る酒場へと向かいます。何しろ、“一杯奢る”為には奢れる状況が必要です。それから情報収集した際にボラデという女の人がカウンターに居た筈です。
酒場──綺麗な御姉さん達が御相手をしてくれる夜の御店的な雰囲気の店内へと入る。
ちゃんと、酔っ払い客や質の悪い客も居る辺りが無駄に生活感を出しています。
薄暗い店内。チラッと見れば明らかに駄目な所に手を突っ込んでいる鼻の下の伸びた酔った男性が。相手をしている女性側が促すと店の奥の扉へと二人一緒に消えて行く辺りは現代と大差無い流れ。
そんな店内を進み、カウンターの奥から二番目の席に座っている妙齢の女性を見付ける。静かに座る哀愁を帯びた姿が妙に様になっています。
その隣──カウンターの一番奥の席に座らないと彼女──ボラデさんは話し掛けても無反応でして。ええ、分身体も最初は無視されましたから。
一度話を聞いて、変化の無い事を確認。それからカウンター内の店員に声を掛け、一杯奢る。
何気に店員の「御注文は如何致しましょう?」が意味の有る事だと思うと、その手の反応をしていた人達が全て怪しく思えて来ます。
因みに、その店員に普通にメニューを注目しても無視されてましたから。そういう仕様なんだと聞き流してしまうのは仕方が無いと思います。
店員が「どうぞ」とボラデさんに木杯を差し出し彼女は笑顔で受け取ると、一気に飲み干しました。木杯の中身は定かでは有りませんが。凄いです。
「奢ってくれて有難う、御礼にコレをあげるわ」
そう言って懐から取り出して手渡してきたのは、長さ10㎝程の一本の青い鍵。
自分が触れられる事から攻略必須アイテムなのは間違い無いと思います。
その鍵を渡すと彼女は店の奥の扉へと消えて行き──【精霊眼】等から反応が消失。
多分、役目を終えた、という事でしょう。
鍵に対して【魔道具鑑定】を使用してみますが、予想に違わず、不明なままです。効果が成長しないもどかしさが恨めしいです。
それは兎も角、二組目のヒントに取り掛かる。
選ぶのは前半が判り易い「流るる風の止まり木、物言わぬ働き者に感謝を」という物。
前半部分が示すのは“宿屋”でしょう。その中で風か木に関わる物を探す訳です。マッピングと共に街の情報も集めていましたからね。楽勝です。
西区に有る宿場街。その内の一軒“風の木”に。ええ、本当に判り易いネーミングです。
ただ、問題は後半部分です。“働き者”と言えば宿屋の主人・奥さん・従業員が妥当な所でしょう。しかし、“物言わぬ”という程に無口ではないので該当しないと思います。普通に話し掛けたら何れも世間話等の反応をしてくれましたので。
そうなると──宿屋の関係者以外、ですか。
でも、宿泊客の人達も普通に答えてくれている事を考えると……違いますよね。
「………………っ……いや、まさか……でも……」
壁に背中を預け、様子を見ながら考えていた時、不意に視界に入った存在に対して【直感】が反応。「イエェ~ッスッ!」と言う様に。
苦笑したくなるのを堪えながら、歩み寄ったら。深呼吸をして。真っ直ぐに見詰め、口を開く。
「いつも、何時でも、御店の人達を、御客さん達を見守っていてくれて、本当に有難う」
──と笑顔で、受け付けの側に置かれた小胸像に言って、頭を下げる。
うん、像なら喋りませんし、休みませんからね。ちょっとした“なぞなぞ”みたいな事です。
それが正解だったらしく、宿屋の奥さんに笑顔で誉められ、“赤い鍵”を頂きました。
尚、像が消えたりはしていません。
気を取り直して、三組目は「マヂソン坊やの家の二階の突き当たり、捧げて祈れ」というもの。
“マヂソン坊や”というのは、リーヴァインでも有名な悪ガキなんだそうで。何十人もの人達からの苦情と所業を聞きました。当然、家の情報もです。……然り気無く、人の怖さを感じますけどね。
同じ西区に有るので移動時間は僅かでした。
──という訳で、不法侵入します。
良い子は絶対に真似しちゃ駄目だぞ!。
一応、有名人だったから調査時に目星い部分には意識を向けていましたが“二階の突き当たり”って何か有ったかな?……あ、花瓶が有ったね。
──と、階段を上がる直前で気付きます。
“捧げて祈れ”が、その花瓶に花を生けろという意味なんだとしたら──その花は?。
自分が製作者なら持ち込み品には反応しない様に専用品を用意します。
「花屋は……確か、東区に有ったよね」
其処で買えば手に入るのは間違い無い筈です。
ただ、問題は購入代金に関して。
この時代のリーヴァインの通貨と、自分の生きる現代の通貨とでは違うんでよ。
名称・デザイン・価値・含有量・重さ……等々。
──そんな風に正面に考えて心配していた純粋な子供心を嘲笑うかの様に、訊ねた花屋の御姉さんが俺を見ながら「初めてよね?、これをあげる」と。小さな花束を笑顔でプレゼントしてくれました。
何だか、胸の奥がモヤモヤしています。
マヂソン坊や宅に戻り、花瓶に花束を生けたら、昨日教会で習った感じで祈りを捧げます。
すると、目蓋を開けた時には花瓶を置く台の上に黄色い鍵が出現していました。
……何と言うか、少し位はリアクションが出来る様に何かを起こして貰いたいです。
兎に角、四組目は「ラーボンとキッローの喧嘩、背中合わせで仲直り」に取り掛かります。
ラーボンとキッローというのは、リーヴァインの過去の英雄とされている人物です。しかし、二人が生きていた時代には百年の開きが有ります。
普通に考えて、喧嘩は出来ません。
ですが、この街の東西各々に彼等の銅像が。共に現代まで残っていますので場所は直ぐに判ります。後はゲームでは定番の仕掛け。二人の銅像を指示に従って“背中合わせ”になる様に動かすだけです。
近いラーボン像から動かし、キッロー像を。
すると、中央区の上空に輝く光球が出現したので向かってみると、降下した光球は“緑の鍵”に。
続く五組目なんですが、「鐘の音の止まぬ間に、陽を追う仔供の影を掴め」と。
前半部分は“教会の鐘を鳴らして”という指示を意味しているだと思います。問題は後半部分。鐘を鳴らしてから考えていたら時間と労力の無駄なので先ずは取り敢えずでも予想を立ててから挑みます。
“陽を追う”から“教会から見て西を向く”と。また“影を掴め”は影踏みか影絵の事でしょう。
ポイントは“仔供”です。
(“仔”は動物の子の事でしょうけど……
“供”は……供物?、従者?、複数?……)
そう考えながらリヴェッセラ教会の鐘楼塔に登り鐘の傍に立って西を向く。
影が有る以上、日差しは関係する筈。
外の時間と連動している為、太陽──は無いけど日差しは有るみたいで、東から西に影は伸びます。
「……早い時間帯だと西側に有ると大変で……
遅い時間帯だと東側に有ると大変……
正午に近いと関係無いけど……影が小さくなる?」
そう考えると、大きく離れた場所だとは思えず、教会に近い、或いは教会に有る可能性が高いと思い周囲を見回してみます。
すると、壁面に彫刻されているレリーフを見て、現在のリヴェッセラ教会には無い事に気付きます。しかし、其処に改修・補修が有ったという記録等は一切残ってはいなかったと記憶しています。
だとすれば、その聖マルエットの仔兎のレリーフとは一体何なのでしょうか。
聖マルエットの使者であり、自らの命を贄として沢山の生命の未来を護った小聖兎。
ええ、興味本意でも勉強はして置くものです。
鐘を打ち鳴らし、小聖兎レリーフの影──が急に伸びて逃げ出したので全力で追い掛け──確保。
いやぁ……まさかの物理的な捕獲になるとは。
油断はしていませんでしたが、事前に予想せずに遣ってたら大きな時間消費だったでしょう。
尚、小聖兎の影は掴まえた瞬間に“紫の鍵”に。
そして、最後の六組目は「眠れぬ死者を導きて、其の数を指折り省みよ」というもの。
前半部分は多分、“出現するスケルトンを倒さず指定場所まで連れて行け”という意味かと。
難しいのは場所と、数の指定の有無です。
場所は……妥当な所で教会?、或いは墓地?。
いや、それだと“死者を眠らせよ”という方向を指す言葉が有ってもいいでしょう。それが無い以上二つの場所、そして浄化・供養という方向の発想は無いと考えてもいいと思います。
そうなると…………“省みよ”、かな?。
反省……後悔……懺悔?、いや、ネタ被りをする可能性は無いと思いますから…………牢屋とか?。確か、中央区の騎士団本部で一般公開しているのが過去に使われていた地下牢だった筈です。
そう思い、【記録書】の百科事典機能を使って、騎士団本部の項目を読んでみる。
「……あっ、そうか、この“指折り”って、一部の危険過ぎる犯罪者に対してのみ遣っていたっていう特殊処置の事かもしれない」
小指を落とすと、握力が大きく低下する様に。
小指と中指を落とす処置を曾ては犯罪者に対して遣っていたそうです。
つまり、“指折り数え”というのは両手の中指と小指を落とした状態を指す訳で──6体。
スケルトン6体を地下牢に御案内、と。
そうと判れば、分身体も使ってスケルトンを探し中央区にレッツ、ゴーッ!でしょっ!。
──とは言え、ジャヴィーも出ますし、6体以上出て来ても要らないので、鬱陶しいです。
……いえ、万が一の予備の為に分身体には離れた場所でスケルトン列車で出発進行してて貰います。要らなかったら即廃棄処分すれば済みますから。
結果から言えば──不要でしたね。
スケルトンを1体ずつ最下層の極悪犯罪者専用の牢に入れたら、スケルトン達が消滅し“銀の鍵”が現れましたので。
さてと、取り敢えず現時点で集められるヒントで入手出来る鍵は、これで全部でしょう。
ただ、自分の手元に有る鍵が六本なのに対して、マップ上の未確認エリアは十ヵ所有ります。
それはつまり、此方等側だけではないという事。多分、彼方等側とを行き来する必要が有る筈です。それは同時に、一部の変化の可能性も含みます。
ただ、考えていても仕方が無いですからね。鍵を使って入れる未確認エリアを確認しましょう。
今一番近い未確認エリアは閉店している料理店。普通に閉店しているだけなら何処かしら侵入出来る隙間が有るんですが……一切無いから未確認エリアという訳なんです。
しかも正面の入り口以外、勝手口も有りません。明らかに機能的に可笑しい造りですから。疑わない理由の方が見付け難いと言えます。
店の入り口の前に立ち、所有する鍵を取り出すと黄色の鍵が淡く光を放ちます。
他の鍵を収納し、黄色の鍵を鍵穴に挿し込んだら一呼吸置いて、回します。
効果音の様に、はっきりと鳴った解錠音。
その音に少しだけ緊張感と期待値が上がります。
ドアを開け、中に入ると、その雰囲気は一転し、今までに見てきた迷宮にも有ったオーソドックスな造りの空間が現れた。外観とは違い、一辺約10mといった正立方体の部屋。
そして、入ってきたドアは消えて、魔素が噴出。ええ、御約束の仕様ですね。
集束した魔素が実体化し、魔物の姿が露に。
部屋を震わせる程の咆哮を、【直感】の「旦那、何か今回ヤバそうっスよ」という警鐘により防御。チャラくて軽い感じでも誠実なら構いません。
その咆哮を上げたのは、ダンジョンの代表格たる牛頭怪人さん。
尚、獣人族の“牛人”とは違います。彼等は頭に牛の角と耳、それから尾を持っていますが他の所は人族と大差無いです。牛頭では有りません。
体長は3m程でしょうか。多少猫背なので姿勢を正せば50㎝は上がるかもしれませんが。
美味し気なイメージの強い光沢有る黒毛が無駄に迫力を増してくれていますし、此方を凝視しているテニスボール程有りそうな真っ赤な両眼。筋骨隆々としか表現出来無いマッスルさ。しかし、その手に握るのは戦斧ではなく、何故か金棒なんですけど。……もしかして、“牛頭鬼”の方ですか?。
──なんて考えている間にも金棒が迫ります。
ただ、はっきり言えば、遅いし威力も低いです。今更この程度の相手にはビビりもしません。
──という訳でして、フェリスフィアにて一閃。残された魔素材は牛角。焼き肉とは無関係です。
それから金棒も人用サイズ化して残りましたね。何気に高性能・高品質なのが敵装備品の魅力です。……何か、追い剥ぎみたいですけど。
主──番人を失った部屋の床には魔法陣が出現。戻るドアも、進むドアも有りませんから一択です。そして、予想通りに転移する訳なんです。
無意識に閉じていた目蓋を開けば、見ていた街と大差無い昔のリーヴァインの姿が広がっています。──と言うか、建物の中とかじゃなくて街の通りのど真ん中に出現させられるとは思いませんでした。ええ、幾ら現実じゃないからって酷いと思います。──とまあ、そんな愚痴は吐き捨てるとして。
マップを確認すれば新規エリアが追加されていて自分の現在地も其方等に移動しています。はっきり言って当然の事なんですけどね。
取り敢えず、分身体達を散開させてマッピングと情報収集を同じ様に遣ります。ただ、此方等の敵の強さが解らないので、余剰分を加味してです。
それは兎も角として。使用した鍵は消えた訳で、未確認エリアも一つ埋まりはしましたが。問題点は転移の魔法陣に関してでしょう。
先ず、先程使用した転移の魔法陣ですが、実際に使用して一方通行なのは判りました。ただ、使用は一度きりなのかが重要。
何度でも使用可能な仕様なら問題有りませんが。一度しか使用出来無いなら慎重さが必要ですから。無制限なら両側に一ヵ所ずつ設置されている筈で、仮に使用する度に番人が復活しても構いません。
しかし、一度きりの使い切りの場合には複数存在している筈です。最低でも各側に二ヵ所ずつは存在していないと、システム上破綻している為、攻略が不可能という事態が起こりますから。
まあ、達成率が絶対に100%には成らない様に意図的に考えられて造られている。そういった仕様なら話は別なんですけどね。
今の所、そういった意図は感じられませんから。多分、大丈夫だとは思います。
話を戻しますが、鍵六本に対して未確認エリアが十ヵ所という時点で、各四ヵ所、計八ヵ所が未踏域のままという事に為りますから。
だから、追加の鍵やイベントは有る筈です。
そう考え、マッピングと情報収集、更にヒントを解読して新たに七本の鍵を入手しました。
ええ、どうやら同数ではない様です。ただまあ、未確認エリアの方は同じく十ヵ所ですが。
今回は【直感】にも相談し、鍵を選びます。
もし、転移の魔法陣以外が存在しているのなら、それから引いて潰して行く訳です。
そんな意図が上手く行き、未確認エリア十ヵ所の内の五ヶ所を埋められましたから。魔物との戦闘は有りましたが、三本の鍵と宝箱を二つ入手。ええ、鍵を使って鍵を入手って……面倒臭い仕様ですね。尚、その三本の鍵は此方等側に使用該当は無い事を一通り回って確認済みだったりします。
残っている二本の鍵の内、橙色の鍵を使う場所を探して、番人を倒して魔法陣で飛びます。
因みに、魔法陣以外の未確認エリアも同じ造りの部屋でしたが、出現したのはジャヴィー達でした。二体目の番人もミノタウロスでしたが、持っていた武器は直径2mの鎖付き鉄球。戦利品となった時は直径1mに縮んでくれましたが、大きいです。
最初の方の街に戻って来たので、先ずは一度目の転移で使用した魔法陣の確認から。使えるか否かで後々の動き方も変わりますからね。それから同時に分身体を散開させて再度情報収集。得られる情報が変化しているか確認して置かないと。
結果から言うと、入れませんでした。
これで魔法陣は使い切りで最低二ヶ所ずつ、と。此処からは慎重に動かないと行けませんから、再び【直感】を頼りに魔法陣以外の未確認エリアを埋め達成率を確実に上げる事にします。
残っていた五本の内、青と銀の鍵は彼方側の鍵、赤と緑は宝箱でした。紫の鍵が魔法陣の様です。
彼方側で入手した三本の鍵ですが、一本は宝箱を入手出来ました。ただ、他の二本は無反応。多分、まだ条件を満たしていない為でしょう。
また情報の変化も有りませんでした。どうやら、勘繰り過ぎたみたいです。
紫の鍵を使用し、三又槍を持つ番人を倒し、再び魔法陣で彼方へ飛びます。
新たに入手した二本の鍵が該当する未確認エリアを探し、使用。一本は宝箱、一本は錆色の鍵です。本当に錆びている様に見えるデザインが紛らわしいですけど、面白いとも思います。
ただ、その鍵は今までとは違い形が歪で。まるで欠損している様に見えます。
そう考えたら【直感】が「ビンゴやで旦さん!」と親指を立てながら言った様な気がしましたけど。まあ、そういう仕掛けなんでしょうね。だから反応しなかった鍵が有ったんだと考えられますから。
「……という事は、次に向こうに飛んで合わせ鍵の片割れを入手…………あれ?、数が合わない?」
今居る此方等側で使えると思われるのは魔法陣用だろう“水色の鍵”のみで、彼方等側の鍵は無反応だった二本のみ。その二本の内の一本は合わせ鍵の片割れを入手する為の物でしょう。
そして未確認エリアは此方等に二ヶ所、彼方等に三ヶ所な訳で。鍵の数が合いません。
それはまあ?、此方等から転移し、彼方等の鍵の一本が更に別の鍵に繋がるなら、三つ目の魔法陣が存在していて、此方等に戻ってきて、全踏破。
ただ、それだと無駄に時間が掛かる仕組みです。少なくとも今まで感じた製作者の意図に合わない為その可能性は無いに等しいと思います。
そうなると、此方等の残る二つの未確認エリアの片方は最初から不可侵エリアという事に為ります。──が、【直感】が「否っ!、断じて否あぁっ!!」と強く抗議の声を上げる様に反応。違うみたいです。
取り敢えず、手持ちの水色の鍵が反応する場所が何方等なのかを確かめ、反応しない方へ。
其処はリーヴァインの街に於ける獣人族の物語を壁面にレリーフとして彫刻されている歴史博物館。初日に観た演劇に出て来る話も有ります。
現代にも残っていますので、一応は分身体を使い大雑把には構造等は把握してはいます。まあ、今は中の構造とかは関係無いでしょうけと。
周囲を確認し、可笑しな点は有りませんでした。しかし、それ故に可笑しい訳です。
何しろ、その外観は現代と全く同じなんです。
過去に幾度か改修されているのに、です。
──と、此処で思い出すのは、例の秘文の存在。途中から出番が無くなっていましたが、アレだって立派な手掛かりですからね。
少なくとも三つ目までは該当していましたので。考えるなら四つ目からですね。
四つ目の秘文は、“季虚ろえど、鬼哭く事無く、宵泣きて路を開き”という物です。
“季虚ろえど”は“時間を無くしても”といった意味合いだと思います。
“鬼哭く”と“宵泣き”は、一見同じ様ですけど表現が違う事から意味も違うという事。
前者は悲哀を伴う事ですから……後者は比喩表現という感じですか。そうすると、この泣きが示す事というのは……涙……濡れる……雨?……水滴?。
──と、其処で脳裏に閃く物が。
亜空間から取り出すのはセァボの村で貰った品。村に伝わる秘宝──“夜の雫”です。
“宵泣き”が示すのが、コレだとするのならば。獣人族の博物館とも繋がります。
ただ、それは結果論で、強引な関連付けですが。何故か、それで納得が出来るから困ります。
本当に……何なんですか、“英雄の相”って。
まあ、愚痴は兎も角として。
夜の雫が有れば“路は開き”ますから。気になる部分は残りの解釈。
もし時間が消費してもと意味するのだとしたら、この路の先は本筋とは関係が無い、という事。
そして、挑戦者が後悔しないのなら。
それだけの価値は有る、という事でしょう。
勿論、確証は有りませんが。
【直感】が「旦さん、行ったれーっ!」と全力で猛プッシュしてきますからね。行きますとも。
博物館の入り口には有る筈の鍵穴は有りません。寧ろ、取っ手も有りません。何故気付かなかった。そう思って凹み掛けますが、それは過去の事です。今は前を向き、進みましょう。
夜の雫を扉の前で翳すと一筋の青白い光を放ち、扉に浸透する様に光は吸収されて、夜の雫から光が消えると少し遅れて扉からも光が消え、ゆっくりと自動的に扉が開いてゆく。
「さあ、臆さぬならば、進むがいい」と言う様に魔法陣が其処に待ち受けています。
そんな風に感じる辺り、自分は挑戦者なんだと。改めて思い知らされた気分です。
魔法陣に乗り、転移します。
着いたと同時にマップを確認すれば新規エリアが表示されているので間違い有りません。
周囲を見回すと……明らかに雰囲気が違う場所に居るという事が判った。
闘技場の中央戦場。其処に立っている。
直径30m程の平らな土の地面。その端、周囲を囲む様に高さ5m程の岩壁。観客席は無く、頭上を半球状の煉瓦造り風の天井が覆っている。
そしてマップで見る限り大体、東西南北の位置に一つずつ扉が設置されています。
選ぶ上で参考になる【直感】ですが──無反応。つまりは何れを選ぼうが関係無い・大差無いという事なんでしょうね。
そう解釈し、最初に視界に映っていた南の扉へと向かって歩いて行く。
鍵としての役目を終えた夜の雫を亜空間へ戻し、フェリスフィアを抜こうとした──その時だった。目の前の扉が何もしていないのに下がって行く。
【直感】に加え、僅かながらの経験則だが瞬時に「下がれっ!」と声を揃える様に警鐘を鳴らす。
それに迷う事無く従い、即座に中央に戻った。
扉という視界を遮る物が無くなると暗闇の中から地響きの様な重量感の有る足音を轟かせて此方等に向かって姿を現す。
全身が黒光りしていて、ロゴーよりも洗練されたフォルムと騎士の様な姿。4mは有るだろう巨躯は迫る壁の様な圧迫感を与える。肘から先は一体型で右手は突槍、左手は盾になっています。
「これが“アゴーナ”……確かに顎が長いね」
「しゃくれ過ぎ!」と言いたくなる三日月の先端みたいに尖った顎。デザイン上は髭だそうです。
“アイアン・ゴーレム・ナイト”が正式な名称。要はロゴーの金属版です。ただ使用する材料は鉄に限らないので“メタル”にすれば良いのにと思う。遥か昔の人の拘りは今一理解が出来ません。
このアゴーナはダンジョンの“番人”の代表格。ロゴーが一兵卒なら、兵を纏め率いる部隊長という立場にある騎士みたいな感じです。要は強い訳で。初めて対峙する相手なので油断は禁物です。
そうは言ってもフェリスフィアの“斬鉄”が利く相手で有れば、然程苦戦はしないと思います。
結果、楽々と斬り刻んで終了でした。アゴーナはバスケットボール大の黒い金属塊を残して、消滅。鑑定は後回しにして亜空間に収納し、開いたままの扉の先へと進んで行く事にします。
縦横3m程の広さの通路が、30m程真っ直ぐに一本道で続き、敵は正面からタマムシが跳んで来るという弾幕状態でしたが無事に抜け切ります。
強力な1体より、一撃特化の1万体の方が嫌だとダンジョンに潜っていると思います。そう意味では昔から有る“数の暴力”は一理有る訳です。
通路を抜けた先は小部屋に為っていて、三ヵ所に先へと続く人一人分程の大きさの通路が有ります。マップと【直感】を頼りに左奥の通路へ。
狭い通路でジャヴィーやスケルトンが出現したり挟まれるのは鬱陶しい限りです。
そんなこんなで宝箱を発見。ミミックでしたが。倒したら直径5㎝程の青い水晶玉の様な物が。
取り敢えず、マップを確認しても、これ以上先は無さそうなので引き返します。探索した結果から、扉の奥には迷路構造の長方形の空間が有りました。多分、入手した青い玉は鍵でしょう。
闘技場に戻って、他の扉を選ぶと最初と同じ様にアゴーナが現れ、倒し、通路を抜け、迷路を攻略。そう遣って赤い玉・黄色い玉、三つの玉を収めると思われる燭台の様な台座を入手しました。
そして、闘技場に戻り、台座に三つの玉を収めた次の瞬間、光り輝き、雫の様に成って地面に落ち、水面に波紋を刻む様に魔法陣が出現。
そのまま問答無用に光が自分を飲み込みました。
…………まあ、目蓋を開けた時には何事も無く、見覚えの有る転移の魔法陣が出現していました。
多分、あの博物館に戻れるんでしょうね。
因みにですが、二体目のアゴーナと戦った際には脇差しを使って、【魔法剣】で【精霊魔法・火】を指定して試して見ました。エグい威力でした。
三体目では【精霊魔法・水】を、四体目の時にはフェリスフィアに【精霊魔法・火】を。
……スキル効果の重複って加算よりも乗算に近いのかもしれませんね。
そう考えながら念の為にステイタスを確認すると見覚えの無いスキル──【合成魔法】が。
……今は、あまり深くは考えたくないですから。取り敢えず、本を閉じる様に後回しにしましょう。ええ、その方が精神衛生上、良いですから。
魔法陣に乗り、転移。予想通りに博物館に戻って来ましたから、最後の水色の鍵を使い、再び転移。
マップを確認すると彼方等と隠しエリアが完踏。現在の達成率が69%ですから、此方等を完踏して全体の70%を攻略。隠しエリアの10%分が無い場合は100%には出来無かったでしょうね。
最初は反応しなかった二本の鍵も使用可能となり予想通りに一本は合わせ鍵を。もう一本は意外にも完全回復の魔法陣が用意されていました。
ただそれは裏を返せば、此処から先──深部にはそれだけの難易度が有るという証拠です。
合わせ鍵を一つにし、最後の未確認エリアであるリヴラテス渓谷林に降りる為の管理所の扉を開け、其処に有った魔法陣に乗ります。
番人が居なかった事が、逆に不気味です。
「………………え?」
転移した先の景色を見て、思わず呆然とします。何しろ、其処に広がるのは今一まで見てきた景色。昔のリーヴァインの街なんですから。
マップを確認すれば、達成率は70%。現在地も新規エリアで予想通りなんですけど。
これは流石に予想外です。──と言うか、物凄い製作者のリーヴァインへの拘りが窺えます。
まあ、そんな事は兎も角として。ある意味では、判り易くて助かります。リーヴァインの街が占める割合が30%なのは確かですからね。つまり此処がラストステージな訳です。
そうと決まれば先ずは分身体を放ちマッピングと情報収集──は必要無いみたいですね。少なくとも人々の姿は見当たりませんから。
分身体を散開させると自分も近場を確認します。立ってるだけでは時間の無駄ですからね。
──と、移動していて、違和感を感じます。空を見上げますが、もう一つ街が有るという事は無く。しかし、拭えない引っ掛かりが有る事は確か。
其処で、街全体を見る為に小さな分身体を作り、上空へと放り投げ、上から見下ろす事にします。
「…………って、え?、何これ?」
確かに、此処は昔のリーヴァインの街ですけど、建物の位置や通りが寸断されていたりと滅茶苦茶。まるで、バラバラにしたパズルみたいです。
そう考えた瞬間──分身体の何体かから発見した異物に関しての報告が入りました。それを受けると直ぐに自分も周囲を探索し──見付けます。本来は存在しない“17番”と書かれた石柱を。
そして、殆んどの建物はマッピングには無関係なオブジェクトと化している事を、達成率が99%と成っている事から把握します。
石柱の前に分身体を残し、最後の未確認エリアのリヴァード邸の前へと移動。
固く閉ざされた鉄柵の門扉はフェリスフィアでも切れませんでしたので、破壊不可能なオブジェクトという事なんでしょうね。鉄柵の隙間から入れるか分身体を入れてようとしましたが入れられません。見えない壁に阻まれている感じでした。
なので、そんな門扉を開く為の仕掛けでしょう。正面広場に置かれた石の机を調べてみます。
机の上に積み上げられているのは縦横15㎝程の十枚の文字が書かれた正方形の石のパネル。石机の表面には窪みが。其処に填める仕組みでしょう。
尚、窪みと窪みの間には五つの“の”の文字が。それを見て秘文を思い出し、パネルを確認します。其処に書かれている文字が略一致しました。
一旦、パネルを全て退かして石机を調べてみるとリヴァード邸から歩いてきた場合には反対側になる側面の下部に「我が問いに正しき解を示せ、但し、回答は一度限りとする」と刻まれています。
取り外しが出来るかは判りませんが、取り敢えずチャンスは一度切りなのは間違い有りません。
秘文に倣って、七枚のパネルを窪みに収めます。手元に残るのは、志・刃・魂の文字の三枚。
秘文では、“人の欲、●の業、生の●、力の因、理の●”となっていました。
「ん~……何れが入っても可笑しく無いんだけど、これって考え方次第だよね……」
妨害・阻害されているのか【直感】等のスキルが無反応なので厄介です。
個人的な好み──価値観に従うなら、迷う事無く填められるんですけどね。
…………もしかしたら、それで良いのかな?。
製作者の意図を汲み取るんじゃなくて、挑戦者の価値観──意思を示す、という事なら。
そう考え──魂の業、生の志、理の刃、と。
パネルを填め、反応を待ちます。
十秒程の静寂の後、焦らした石机の表面が発光。収まった時には表面は別の状態に変わっています。
……正解だったと思って置きましょう。
表面はリーヴァインの街の全体図の形をしとおり番号の書かれたパネルがランダムに並んでいます。それを見て、あの石柱の意味を察しました。
これは、昔のリーヴァインの街全体を使用しての巨大なスライド式パズル。
但し、番号順に並べ替えても駄目。これは正しい昔のリーヴァインの街になる様にしないといけない記憶力と想像力を試される仕掛けです。
つまり、何れだけリーヴァインに対する気持ちが強いかを問われている、という事でしょう。
まあ、今は【絵師の心得】が有効みたいなので、然程苦労はしないと思います。
取り敢えず、試しにパネルを一つ、動かします。それに連動する反応を確かめる為です。
想像通り、パネルに対応する街の部分が移動し、停止したのを確認。その上で街の全体像と番号とを頭の中で組み合わせ、【並列思考】を駆使しながらパネルをスライドさせていきます。
どうやら、パネルを連続して動かす事は可能で、それに合わせて街の動く速度も上がります。だから余計な事は気にせず、完成させる事に集中します。
尚、邪魔しようと出現するジャヴィー達は護衛に配置している分身体が排除してくれています。
パネルを移動させ終え、街の移動が終了したのは開始から約1時間後。石机が消え、リヴァード邸の門扉が開いていきます。
リヴォンを確認すると残る光点は五つ。つまり、約4時間という事になります。
何気に寄り道で時間を取られました。
ただ、それも大した問題では有りません。
残るは、未確認エリアのリヴァード邸だけです。気を引き締めて、開かれた門扉の中に進みます。
意外、と言うべきなのでしょうか。
入ったリヴァード邸の中は普通のエントランス。勿論、現代の造りや装飾とは違いますが。
ただ、正面に有る扉以外、階段や通路の先にさえ他に通じる扉は一切存在していませんけど。
フェリスフィアを左手に握り締めながら、右手で扉を開けて先へと進みます。
造りだけではなく、明らかに雰囲気も変わって、正しくボス部屋という広い空間。
背後の扉は消失し、マップの達成率は100%。文字通り、此処が最深部という訳です。
そうしている間に膨大な量の魔素が噴出します。数える程とは言え、今までに経験してきたボス戦で最大の魔素量なんですけど。──と言うか、改めて考えてみたら、このダンジョン内に配置されている魔物の数や種類が不釣り合いですしたからね。
その意味では、此処に容量を割いている、と。
そう理解出来てしまうから、笑えません。
「──────────────────っ!!??」
そんな事を考えていたら、警鐘を超える悪寒が。亜空間から楯を取り出し、構えます。更に、加えて楯に【魔法剣】で【精霊魔法・水】を纏わせ強化、合わせて【精霊魔法・水】で三重の水壁を展開。
身構えた所に、声と呼ぶ領域を逸脱した咆哮と、強烈な衝撃が襲い掛かってきた。
衝撃を最初の水壁が受けた瞬間、反射的に体勢は変えないまま自ら後ろに向かって跳び退いた。
トス・バッティングのボールの様に軽々と身体は持っていかれるが──構わない。
自重と重力で軌道は降下し、右足の裏──爪先が地面に触れたら、そのまま滑る様に水の膜を展開し背中には衝撃吸収の為の水塊を用意。
その御陰で壁に激突してもダメージは無し。
五体満足なまま、初撃を凌ぐ事が出来た。
だが、安心している暇は無い。集中力を切らさず対峙する相手を視界に収める。
視界の先──空間の中央には水壁が水煙と化した中に揺れる影が、水煙を引き裂いて姿を現す。
その姿を見た瞬間、製作者を殴りたくなった。
強靭という言葉を体現する様に太く躍動感の有る大木の様な剛腕と5mを超える巨躰を支える剛脚。力士の様に全身を包む筋肉の鎧。それを守る硬鱗。鞭の様に撓り容易く地面を叩き割る巨尾。長い首と容易く獲物に砕き喰らう剛顎。
そして、威力の凄まじさの余韻を残す様に白煙が煙っている大きな口。
その姿は竜──ドラゴンと言って間違い無い。
「……選りにも選って“ドレイク”だなんてね」
その呟きに反応するかの様に空間自体を揺さ振る様な咆哮を不機嫌そうに上げるドレイク。
竜、或いはドラゴンという名称は魔獣──自然の生物のみを指して用いられる物。決して姿形を総称しているという訳では有りません。
その為、そういった姿形をする人工物の魔物には区別用に“ドレイク”という総称が存在します。
ただ、何方等も稀少な存在な事だけは同じです。
そんなドラゴンとドレイクですけど、個体の能力としてはドラゴンの方が可能性も含め上でしょう。ただ、純粋な敵としてはドレイクの方が厄介です。
ドラゴンは生物ですから感情を有していますし、種類によっては高い知性も有していますから無理に戦わなくても済む可能性が有ります。
しかし、ドレイクは人造物である為、戦闘回避は不可能に近いと言えます。特にダンジョンでは。
侵入者を駆逐し、終焉を与える死と絶望の凶器。それがドレイクと云われています。
また、ドレイクにも幾つもの種類が有りますが、基本的に陸・海・空の3タイプ。
目の前に居るのは翼も鰭も無い陸ドレイクです。そういう意味では一番行動が判り易いのですけど、純粋な身体能力という意味では一番でしょうね。
「……それなのに、どうしてなのかなぁ……」
こんなにも、鼓動が高鳴るのは。身体の奥底から湧き上がる様に熱が意識を侵食してゆく。
目の前に有る絶望を見ると笑みが浮かぶ。
少なくとも、曾ての自分の人生では、こんな事は──あっ、そうか……だからなんだ。
困難な強敵、複雑な迷宮、その難易度が高い程に遣り甲斐を感じ、攻略したくなる。
曾ての自分が生きる社会の中でも、そういう事は少なからず有る訳だけど。そうじゃなくて。
文字通り“生きるか死ぬか”だから。
そういう生き方が当然の今、自分は歓喜しているという事なんだって、漸く理解出来た。
楯を亜空間に収納して、フェリスフィアと短剣を構えて【二刀流】を有効に。
そして此方等を睨むドレイクに向かって、疾駆。守りに入る事は無い。攻めなければ倒せない相手。捨て身も覚悟の上なのに。高揚感が強まり続ける。
二足歩行をする為、自然と身体は前傾姿勢になり恐竜みたいな格好をしているドレイク。
此方等が自分よりも小さいと判断すると間合いを取る様に後退、同時に身体を捻って尻尾を振り回す様に撓らせて全てを薙ぎ払う様な一撃。
それを正面に受けたなら、自分の体重では軽々と持って行かれ、壁に叩き付けられるのは明らか。
その為、躱すの一択な訳ですが。
【直感】が「アカンッ!」と訴えます。
其処でフェリスフィアを刃鞭に変化させ、尻尾を飛び越えて躱すのと同時に引っ掛けます。
すると、空中に有る自分の視界の端に映ったのは裏拳を放つ様に伸ばされたドレイクの剛腕。
尻尾という獣人族の人達でも持っているだけで、攻撃には先ず用いない部位を上手く利用した誘いと二段構えの撃墜罠。見事な初見殺しです。
ただ、その剛腕が自分に触れる事は有りません。尻尾に引っ張られて空中でも身体は移動。遠心力が強く掛かり過ぎる前に刃鞭を解いて、放り出される様にしてドレイクから距離を取ります。
魔獣であれば、此処で驚いたりして動きを止めて隙や時間が出来るんですけど。
魔物には関係有りません。
回転を止めるのと同時に首を大きく撓らせると、口から放たれるのは、ある意味では彼等の代名詞。人類の魔法を容易く凌ぐ、強烈な咆撃。
ですが、これで二度目。
初撃で範囲は均等な筒状で、最大で直径1m程。軌道も直線的で、放射時間は3秒程。銃弾を躱すと思えば予備動作も大きく遥かに容易い事でしょう。銃弾を躱した経験は有りませんが。
──とは言え、水・火属性ではなく無属性な為、吸収出来無い辺りは面倒ですけど。
射線上から外れ、自分の小ささを最大限に活用。
守勢に回りでもしない限り、元々軽装備な自分は常に【軽騎疾迅】の恩恵を受けられる。
加えてフェリスフィアを短剣に戻し、【二刀流】【巧刃】【剣撃強化】【斬撃強化】【武闘巧者】で更に能力を底上げする。
その状態で【微風花弁】を発動。使用する対象はフェリスフィアではなく、短剣の方を選択します。万が一の時の対応手段として備えて。
スキルの効果で底上げされている為、効果発動で肉薄し、離脱する速度も単独発動時よりも上です。──が、急所を狙った筈の短剣の感触は鈍い。
「──っ、自分の非力が悩ましいっ!」
ドレイクの硬さは勿論ですが、それ以上に自分の純粋なパワー不足は否めません。
しかも、以前の変異種のサラマンダーより確実に個体としての能力が上。あの時の遣り方は先ず通用しないと考えて置かないと。
ただ、そうは言っても長期戦になるのは攻略失敗を意味するので、じっくりと楽しむのは自爆。
──という訳で、裏技に等しい【燃昇】を発動。何しろ【性皇剣】の効果で精力は体力・呪力以上。ある意味、無尽蔵に近いので。精神的な負荷の無いスキルの対価としての消耗なら、無問題。
発動した瞬間、身体の奥底から湧き上がる力強い感覚に意識が飲み込まれそうになります。
それは意識を失うという事ではなく。あまりにも強大な力を得てしまう事による勘違い。自分自身を見失い力に翻弄されそうになる、という意味です。
そんな力の影響を【並列思考】を使って抑制。
数の暴力で強引に捩じ伏せます。
狙うのは首──顔の真下。噛み付かれる可能性も有りますが、其処が一番の死角であり、皮膚的にも一番外皮の弱い場所だったりします。
【瞬撃】で肉薄してから、【剛撃】を発動させて【重交斬】を繰り出す。更に【剛撃】【連追斬】と上乗せする形で畳み掛けます。
二刃を通じ、殺った感触
を認識するのは攻撃し、スキルに伴う動作が終了した瞬間です。
──が、それと同時に【直感】と経験則が人生で最大級の悪寒を。
後先考えず、反射的に自分自身を精霊化。
──その直後。
空中に有った自分は衝撃と共に壁に叩き付けられ破裂した水風船の痕跡の様に圧し潰される。
その程度で済んだのは、間違い無く精霊化をした御陰なんですけど。人に戻れるかが心配です。
……まあ、杞憂で終わりましたけど。
スライムが再生する様に元に戻りながら先程までドレイクが居た場所を見詰めます。
「……アレで即死しない辺りがドレイクですか」
普通の魔物であれば自分の攻撃が終了した時点で消滅しているんですが。流石は最強種の一角です。まるで魔獣の様に最後の最後まで抗うだなんて。
しかも、自壊も厭わない限界突破の咆撃。
文字通り、“死なば諸共”な訳です。
これ、自分じゃなかったら、死んでますよ?。
【貯水】と【水化】により難無く自己修復完了。それでも精霊化していなかったら、持って逝かれた結末が有った可能性は否めません。
単純に【水化】【炎化】を使用しただけだったら跡形も無く消されていたでしょうから。
そういう意味では、九死に一生です。
……尤も、アエラさん達が居て、知られていたら御説教物の賭けだったとは思いますけど。
まあ、死ぬよりは増しですからね。深くは考えず生きている事を素直に喜びましょう。
何気に精霊化しても人に戻れると判りましたし。ええ、手札が増えるのは良い事です。
「それにしても、あの話話って本当だったんですね」
ドレイクが消えた場所に残されたのは“竜骨”。ええ、ドラゴンの骨です。
一説に由れば、強力なドレイクを生み出す為には高位のドラゴンの骨を一定量必要とするそうです。そうすると何故か強力なドレイクが出来るのだと。以前、リゼッタさんに聞きました。
疑うとかではなく、話していた本人も事の真偽は定かではない話でしたからね。仕方有りません。
その竜骨を亜空間に収納し、周囲を確認すると、壁面の一部に壁画の様に紋様が出現していました。側に寄って見てみると、樹の様にも見えます。
しかし、それが古代文字で有る事に直ぐに気付き読み進めて行きます。
その壁画自体が継承の魔法陣の役割を果たす事、起動の為の手順と詠唱文が記されています。
左手を樹の中央の円に当て、瞑目。
「……悠久なる季の波に揺蕩いしは生命の揺り籠、幾世幾星霜移ろえど揺らぐ事無く大地に在り続く
遺されし標に戯れる童の声に導かれ、彷徨いし魂は新たな芽吹きの為、契りを以て宿りて息衝く
幼芽は育ち、若葉を広げ、幹枝を伸ばし、大樹へ
恋彩るが如く花咲きて、結びて実るは来生の種子
枯れ朽ち落つ我が身は種子の為の肥やしと成りて、再誕の季へと刻み繋がれ継がれ行く」
詠唱をし終えるのと同時に急激に熱くなる左手。しかし、壁から手を離したくても離れません。
そして、何かが流れ込んで来る様な感覚。
ただ、【直感】も働きませんから自分に害が有る事ではないのでしょう。
10秒程で熱は収まり、強く押し寄せる波の様な感覚も消えた事で一息吐いてから目蓋を開ける。
目の前に有った筈の壁画は跡形も無く消えており左手にも特に異常は見られません。
ステイタスで確認すると──はい、有りました。新しく【守護精霊の蕾卵】というスキルが。
取り敢えず、無事にダンジョン攻略を達成という事で帰るとしましょう。疲れましたから。
部屋の中央に現れている魔法陣に乗る──前に、何処に出るのか判らないので準備をして置きます。入り口だった支柱の所に出た場合、運が悪いと人に見られる事になり、騒ぎになりますからね。此処は用心するに越した事は有りません。
……まあ、転移した先は、例の墓地の墓石の前。ええ、今の時期、誰も来ませんから目立ちません。無駄に気が利いていますね。
「──で、最後に残った謎に関しては、手掛かりは何一つ無し、ですか……」
そう呟きながら墓石を見詰める。
残った秘文の“超え到りし果てに、種実は待ち、落葉は眠らん”という部分はスキルの継承の事だと考えて間違い無いと思います。
ただ、まだ秘文には続きが有りました。
最後の一文が、“我遺すは杓杖、汝遭うは宿怨、現世は奇怪なり”という物です。
“杓”って柄杓の意味だから……汲み取る?……あ、いや、掬うで、転じて“救う”って意味かも。
そうすると、“救いの杖”は継承したスキルの事なんでしょうね、きっと。
ただ、“宿怨”って……もしかして、然り気無く何等かの後始末を押し付けられました?。
ええ、そう考えたくなりますよ、これは。
──とは言え、“現世は奇怪なり”っていうのも何気に気になる部分では有ります。
結論としては何も判らない訳ですが。
「……まあ、まだ時間は有りますし、取り敢えずは残った時間はリヴ・カーニバルを楽しもう」
考えて判らない事なら、考え過ぎない事も必要。忘れさえしなければ問題有りません。
何れ、知るべき時・理解すべき状況が訪れれば、嫌でも判るでしょうから。
……いや、本当にね……英雄の相っていうのが、段々笑えない話に為っている気がします。
だからせめて、今の間位は気にしないで居たいと心の奥底から強く思います。
《ステータス》
:オリヴィア・リクサス
(偽名:シギル・ハィデ)
年齢:10歳
種族:人族
職業:──
評価 強化補正
体力:EX +1287
呪力:EX +1110
筋力:D +1011
耐久:D +976
器用:D+ +1211
敏捷:D +1113
智力:D +1075
魔力:D- +1020
魅力:── +976
幸運:── +1189
性数:── 143人
[スキル]
【守護精霊の蕾卵】
宿主の為だけに存在する精霊が生まれる。
主の経験・思考・嗜好を糧として誕生する。
その為、どの様な精霊となるかは不明。
[魔法スキル]
【合成魔法】
生物以外の物質を合成し、新たな物質とする。
但し、不可能な物質、組み合わせも存在する。
また、必ずしも素材の特性等が組み合わさるという訳ではなく全てが全て良い結果に成る訳でもない。
合成する素材に関する知識・認識が深い程に合成の成功率が上昇。
合成後に出来る物質に関する知識・認識が深い程に合成後の物質の品質が上昇。




