第6話
伊吹は己に迫りくる炎の塊を手で受け止め、文字通り"捻り潰した"。炎をいとも簡単に消してしまった。
「店を燃やされちゃあ、いがぐりの旦那に顔合わせられねぇからな。」
ニヤついていた化け物の顔に余裕はなく、どちらかと言えば怒っているようにも見える。そして、反対に伊吹は化け物の反応を見て、悪戯っぽく笑う。
「あの、……熱くないんですか?」
「んあ?まぁ、ちっと熱いが大したことねぇなっ!」
そう言いガハハと笑う伊吹を見て、安心するのと同時に改めて今いるこの世界の異常性を実感する。
フフッ
フフッ
フハハハ
『紺焰』
再び、漏れ出るように化け物の口から青い炎が噴き出る。先ほどとは比べ物にならない勢いで放たれたそれは、床に落ちた酒瓶に残っていたアルコールに引火してさらに燃え上がる。
「おいおい、だから燃やしたらやべぇんだってばっ!」
慌てて手を仰いで火を消そうとするが、当然消える訳もなく、火はどんどん広がっていく。
化け物はそんな必死な伊吹を見て、まるで自分の勝ちとでも言うように両方の翼を大きく広げ、そのまま店から出ていった。
「てめぇ、どこ行きやがるっ!」
凛が外を見に行っても、既に化け物はどこかへ飛び去った後で、路地には元の静寂のみが残っていた。
「お~い、バケモンはどっかに行ったかい?―――って、燃えてんじゃねぇか!」
店内は酷い有様で、半分以上が焼け焦げてしまっており、これでは元々客がいなかったのにさらに来なくなってしまう。
「いやぁ、わりぃ、いがぐりの旦那。バケモンにも逃げられちまったし………てか結局あいつは何がしたかったんだぁ?」
「今回は特に私は何かされたわけじゃないですし……。」
あの神社で殺し損ねてしまった私を今度こそ仕留める為にやって来たのかと思ったが、今回被害にあったのは私と言うより猪狩さんと伊吹さん。
あそこまでやっておいてそれ以上何もせずに帰って行ったのが何よりも謎だ。
「はぁ、どっちかが陰摩羅鬼に憑かれてるんじゃねぇのか?はぁ………。」
「いがぐりの旦那、あいつがなんの妖かわかんのか!?」
「まぁ十中八九、陰摩羅鬼だろうな。人面鳥、青い炎、あの鳴き声。特徴が殆ど一致してるからな。俺も見るのは始めてだがな。」
2人の中で繰り広げられている会話についていこうと、必死に分かる単語を聞き取ろうとする。
「あの、それで、あれって何者なんですか?」
答えてくれたのは猪狩さん。
「簡単に言えば人面鳥みたいな物の一種。たしか、死んでからずっと放置されていた死体が化けるとああなるんだよ。」
「話だと海鈴ちゃんが目付けられてるっぽいが………最近身近に亡くなった人とか行方不明の人とかいるか?」




