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灰色の楽園  作者: ぼろぼろの世界
終わりの始まり
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天使の国

そこは、とても白く、美しい世界だった。


どこまでも続くような白い景色。


空も。


地面も。


境界が分からないほど、全てが淡い光に包まれていた。


辺りを見渡す。


そこには、たくさんの人がいた。


皆、笑っている。


誰も苦しんでいない。


誰も争っていない。


ただ、幸せそうに笑っていた。


「……」


その光景を見て、胸の奥が少しだけ痛んだ。


羨ましい。


そう思った。


自分が今までいた場所には、こんな景色はなかった。


戦い。


裏切り。


疑い。


失うこと。


そんなものばかりだった。


なのに、ここにいる人たちは何も知らないように笑っている。


「ここは……」


声に出そうとする。


でも、頭がうまく働かない。


考えようとしても、意識がぼやけていく。


ここは一体どこなんだろう。


どうして僕はここにいるんだろう。


まあ……いいか。


今は考えるのも疲れた。


僕はそのまま目を閉じた。


そして、眠りについた。


           ◇


「……アテーナ」


誰かの声が聞こえる。


「アテーナ、起きてください」


聞き覚えのある声。


多分、ベルさんだ。


僕はゆっくり目を開ける。


最初に思ったことは一つだった。


戦いは……どうなった?


勝ったのだろうか。


それとも――。


目の前にいた人物を見て、思考が止まる。


知っている顔だった。


間違いなく知っている。


でも。


僕の知っているその人ではなかった。


「……アラロス」


名前が口から漏れる。


「ここはどこだ」


気づけば、言葉が溢れていた。


「なんでお前は裏切った」


「いつからだった」


「どうして敵のお前が、僕の前にいる」


声は怒っていた。


自分でも分かる。


怒っている。


許せないと思っている。


なのに。


心の奥では、少しだけ嬉しかった。


まだ、こんなに感情をぶつけられる相手がいることが。


本気で怒れる相手がいることが。


自分でも驚いた。


僕はまだ、アラロスを完全に切り捨てられていなかった。


アラロスは、少しだけ目を伏せた。


そして、静かに口を開く。


「あいにくですが」


「私の本名は、アラロスではありません」


一瞬、空気が変わる。


「私の名は――グレゴリウスです」


「そして、ここはロザート王国中心部」


「ドミネージュ」


聞き慣れない地名。


聞き慣れない名前。


頭の中で情報が整理できない。


グレゴリウス。


ロザート王国。


ドミネージュ。


次々と知らない言葉が入ってくる。


「今回、私たちは貴方を連れてくるために奇襲を仕掛けました」


「貴方たちは敗北しました」


その言葉が胸に刺さる。


負けた。


ジェシー先輩は。


隊長は。


皆は。


無事なのか。


考えようとする。


でも、情報が多すぎる。


「そして、貴方をここへ連れてきた理由ですが――」


グレゴリウスは一度言葉を止めた。


その間が妙に長く感じた。


そして。


「貴方を、ロザート王国の兵へ勧誘するためです」


理解が追いつかなかった。


「……は?」


思わず声が漏れる。


殺すためではない。


拷問するためでもない。


ただ、仲間になれと言っている。


意味が分からない。


グレゴリウスは続ける。


「詳しい話は、国王陛下から直接伝えられるでしょう」


「私はこれで失礼します」


そう言うと、グレゴリウスは部屋を出ていった。


扉が閉まる。


静寂が戻る。


「……」


一人になった僕は、頭の中を整理する。


まず。


今回の戦いは、僕を巡った戦いだった。


ロザート王国は僕を欲しがっている。


だから襲撃した。


でも。


なぜ僕なんだ?


なぜ、僕を仲間にしようとする?


分からない。


その理由は、きっと国王が説明してくれる。


……多分。


「情報量が多すぎるな」


僕は呟く。


そして少し考える。


「いや……」


「もしかして、僕が理解できてないだけか?」


自分で言って少し悲しくなる。


でも。


今はそんなことを気にしている場合じゃない。


その時。


部屋の扉が開いた。


入ってきたのは侍女だった。


「失礼いたします」


彼女は丁寧に頭を下げる。


「王室へご案内します」


僕は立ち上がる。


足を動かしながら考える。


今日。


僕は、トーマス達を裏切ることになるかもしれない。


その可能性が、頭から離れなかった。


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