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第139章:至高の精霊が手を汚した日 - 朱鷺白が初めて料理を覚えた

序章 - 何もしなかった時間の後で

何もしなかった時間がある。

望んでいなかったのに。

ただ存在するだけだった時間が。

その時間は。

長ければ長いほど。

終わった後に。

何かをしたいという気持ちが。

強くなる。

何でも良い。

何かをしたい。

手を動かしたい。

誰かの役に立ちたい。

その気持ちが。

積み重なって。

ある朝。

誰かに頼みに行く。

朱鷺白がそうだった。

第一章:厨房の扉の前で

厨房 - 朝

朱鷺白は扉の前に立っていた。

しばらく。

動かなかった。

厨房から音が聞こえた。

包丁の音が。

水の音が。

火の音が。

「入るか。」

朱鷺白は自分に言った。

「入る。」

また自分に言った。

ノックした。

三回。

「どうぞ。」

扉を開けた。

アクアが振り返った。

包丁を持ったまま。

「朱鷺白様。」

アクアは言った。

「朱鷺白で良い。」

朱鷺白は言った。

「様は要らない。」

アクアは少し間を置いた。

「朱鷺白。」

アクアは言い直した。

「何ですか。」

朱鷺白は入った。

厨房の中を見た。

広かった。

様々な道具があった。

鍋が並んでいた。

材料が並んでいた。

「頼みがある。」

朱鷺白は言った。

「言ってください。」

「料理を教えてほしい。」

アクアは手を止めた。

完全に。

「料理を。」

アクアは言った。

「そうだ。」

「なぜですか。」

朱鷺白は少し間を置いた。

「長い間。」

朱鷺白は言った。

「何もできなかった。」

「封じられていた間。」

「そうだ。」

朱鷺白は言った。

「ただ存在するだけだった。」

「動けなかった。」

「何かを作ることができなかった。」

「誰かのために何かをすることができなかった。」

「しかし今は。」

「今は。」

朱鷺白は言った。

「この王国に来た。」

「動ける。」

「手が動く。」

「だから。」

「何かをしたい。」

「何でも良いのですか。」

アクアは聞いた。

「何でも良いわけではない。」

朱鷺白は言った。

「しかし。」

「あなたの料理を見ていると。」

「これが良いと思った。」

「私の料理を見ていた?」

「食堂で。」

朱鷺白は言った。

「あなたが料理を出す時の顔を見ていた。」

「満足した顔だった。」

「作ったものが誰かに届いた時の顔だった。」

「その顔が。」

「良かった。」

アクアは少し間を置いた。

「...わかりました。」

アクアは言った。

「教えます。」

「感謝する。」

「ただし。」

アクアは言った。

「ただし?」

「私が教えることができるのは技術だけです。」

アクアは言った。

「料理に何を込めるかは。」

「あなたが決めることです。」

朱鷺白はアクアを見た。

「なぜそう言う。」

「三万年で学んだことがあります。」

アクアは言った。

「技術は渡せます。」

「しかし。」

「料理を作る理由は渡せない。」

「その理由がなければ。」

「技術があっても料理にならない。」

「技術と理由の違いか。」

「はい。」

アクアは言った。

「私には私の理由があります。」

「しかしその理由はあなたには渡せない。」

「あなたにはあなたの理由がある。」

「または。」

「これから見つかる。」

朱鷺白は少し考えた。

「わかった。」

朱鷺白は言った。

「技術から始めよう。」

「では。」

アクアは言った。

「エプロンをつけてください。」

第二章:最初の失敗

厨房 - 朝

エプロンをつけた。

白いエプロンが。

朱鷺白の黒い服の上についた。

「まず包丁から教えます。」

アクアは言った。

「包丁から。」

朱鷺白は繰り返した。

「料理は切ることから始まります。」

アクアは言った。

「切り方で料理が変わります。」

「細くても太くても味が変わる。」

「大切な工程です。」

包丁を手に取った。

渡した。

「まず野菜を切ってみてください。」

アクアは言った。

「思うように切っていいです。」

「正しいかどうかは後で教えます。」

朱鷺白は野菜を見た。

にんじんだった。

橙色の。

単純な形の野菜だった。

包丁を当てた。

切った。

音が来た。

大きな音が。

にんじんが二つに割れた。

綺麗には切れなかった。

断面がでこぼこだった。

「...。」

朱鷺白は黙った。

「良い試みでした。」

アクアは言った。

「嘘をつくな。」

朱鷺白は言った。

「失敗した。」

「最初から上手くできる者はいません。」

アクアは言った。

「お前は三万年で最初から上手くできたか。」

アクアは少し止まった。

「...できませんでした。」

アクアは言った。

「最初に料理を作った時は。」

「燃やしました。」

「燃やした。」

朱鷺白は言った。

「はい。」

アクアは言った。

「一万八千年前です。」

「まだそういう記憶があります。」

「一万八千年前の失敗を覚えているのか。」

「最初の失敗は覚えています。」

アクアは言った。

「その後の成功より。」

「最初の失敗の方が記憶に残ります。」

「なぜだと思う。」

「恥ずかしかったからです。」

アクアは言った。

「誰かに見せようとした料理を燃やした。」

「その恥ずかしさが。」

「強く残っています。」

「誰かに見せようとしていたのか。」

アクアは少し間を置いた。

「ある村の者に。」

アクアは言った。

「小さな村で。」

「子供がいた村で。」

「その子供たちに何かを作りたかった。」

「しかし燃やしてしまった。」

「その後どうした。」

「また作りました。」

アクアは言った。

「今度は燃やさずに。」

「子供たちが食べてくれました。」

「美味かったか。」

「わかりません。」

アクアは言った。

「子供たちが笑顔でいたから。」

「美味しかったと思いたいです。」

朱鷺白は。

でこぼこのにんじんを見た。

「もう一度切る。」

朱鷺白は言った。

「はい。」

アクアは言った。

「今度は教えます。」

「包丁の持ち方から。」

第三章:包丁の持ち方

「持ち方が違います。」

アクアは言った。

「どこが違う。」

「力を入れすぎています。」

アクアは言った。

「包丁は力で切るものではありません。」

「重さで切ります。」

「刃の重さで。」

「力で切るのではなく。」

「はい。」

アクアは言った。

「お前は至高の精霊です。」

「力があります。」

「しかし料理では。」

「その力は邪魔になります。」

「力が邪魔になる場所があるのか。」

「あります。」

アクアは言った。

「料理はその一つです。」

「繊細さが必要な場所では。」

「力は邪魔です。」

朱鷺白は包丁を見た。

「では繊細に扱う。」

朱鷺白は言った。

「こう持ちます。」

アクアは手を添えた。

朱鷺白の手の上に。

包丁の持ち方を。

直接示した。

「人差し指をここに。」

アクアは言った。

「親指はここに。」

「残りの指は軽く握る。」

「握りしめない。」

朱鷺白は修正した。

「これで良いか。」

「良いです。」

アクアは言った。

「では切ってみてください。」

にんじんに包丁を当てた。

今度は。

力を入れずに。

刃の重さで。

音が来た。

今度は静かな音が。

見た。

断面が。

少し綺麗になっていた。

まだでこぼこだったが。

最初よりは。

「良くなりました。」

アクアは言った。

「まだ上手くない。」

朱鷺白は言った。

「はい。」

アクアは言った。

「しかし最初より良い。」

「それが進んでいるということです。」

「続けろ。」

朱鷺白は自分に言った。

また切った。

また切った。

また切った。

にんじんが。

少しずつ。

輪切りになっていった。

「止まらなくていいのですか。」

アクアは聞いた。

「切り続ける方が学べる。」

朱鷺白は言った。

「理屈より体で覚えたい。」

「そうですね。」

アクアは言った。

「三万年で学んだことと同じです。」

「料理も体で覚えるものか。」

「はい。」

アクアは言った。

「頭で理解するより。」

「手が覚える方が深い。」

朱鷺白は切り続けた。

にんじんが半分なくなった時。

止まった。

「見てくれ。」

朱鷺白は言った。

アクアは切られたにんじんを見た。

「最初と比べて。」

アクアは言った。

「かなり良くなっています。」

「かなり?」

「本当のことを言います。」

アクアは言った。

「かなり良くなっています。」

「まだ上手くはないですが。」

「方向は正しい。」

「方向が正しければ良い。」

朱鷺白は言った。

「そうです。」

アクアは言った。

第四章:最初の料理

厨房 - 昼前

三時間経った。

朱鷺白はにんじんを全部切った。

玉ねぎも切った。

ジャガイモも切った。

手が痛かった。

言わなかったが。

「次は火だ。」

アクアは言った。

「火を使う。」

朱鷺白は言った。

「まず鍋に油を入れます。」

アクアは言った。

「少量でいい。」

「そこに野菜を入れる。」

「順番は。」

「硬いものから。」

アクアは言った。

「にんじんが一番硬い。」

「だから最初に入れる。」

朱鷺白は動いた。

にんじんを鍋に入れた。

音が来た。

油の音が。

「...気持ちの良い音だ。」

朱鷺白は言った。

「そうです。」

アクアは言った。

「料理の音は。」

「それぞれ違います。」

「音で状態がわかります。」

「音で判断する。」

「はい。」

アクアは言った。

「声と同じです。」

「声の変化で相手の状態がわかるように。」

「料理の音の変化で。」

「料理の状態がわかります。」

「面白い考え方だ。」

朱鷺白は言った。

玉ねぎを入れた。

ジャガイモを入れた。

音が変わった。

複数の音が重なった。

「混ぜてください。」

アクアは言った。

朱鷺白は木べらを取った。

混ぜた。

「優しく。」

アクアは言った。

「砕かないように。」

「また力の加減か。」

朱鷺白は言った。

「料理のほとんどが力の加減です。」

アクアは言った。

「多すぎても少なすぎても良くない。」

「人と同じだ。」

朱鷺白は言った。

アクアは少し止まった。

「どういう意味ですか。」

「力が強すぎると相手を壊す。」

朱鷺白は言った。

「弱すぎると届かない。」

「ちょうどいい力で。」

「相手に触れる。」

「料理も同じではないか。」

アクアは朱鷺白を見た。

しばらく。

「...良い見方です。」

アクアは言った。

「技術ではなく。」

朱鷺白は言った。

「これが私の理由かもしれない。」

「料理の理由ですか。」

「人に届く力の加減を。」

朱鷺白は言った。

「料理で学べるかもしれない。」

「私は長い間。」

「力の使い方を知らなかった。」

「強い力しか持っていなかった。」

「繊細な力を知らなかった。」

アクアは野菜の炒め具合を見た。

確認した。

「水を入れます。」

アクアは言った。

「次の工程です。」

朱鷺白は水を注いだ。

鍋に。

蒸気が上がった。

「熱い。」

朱鷺白は言った。

「蒸気は熱いです。」

アクアは言った。

「気をつけてください。」

「至高の精霊が火傷をするとは。」

朱鷺白は言った。

「思わなかった。」

「料理の前では。」

アクアは言った。

「至高の精霊も人も同じです。」

「蒸気は熱い。」

「それは良いことだ。」

朱鷺白は言った。

「なぜですか。」

「同じだということが。」

朱鷺白は言った。

「良い。」

アクアは少し考えた。

「三万年で。」

アクアは言った。

「同じだと思えたことが少なかった。」

「私は誰とも同じではなかった。」

「しかし料理の前では。」

「同じでした。」

「熱いものは熱い。」

「冷たいものは冷たい。」

「それは変わらなかった。」

「だから料理が好きなのか。」

アクアは少し間を置いた。

「...そうかもしれません。」

アクアは言った。

「考えたことがなかった。」

「しかしそうかもしれません。」

「教えながら学んでいるか。」

朱鷺白は言った。

「そうです。」

アクアは言った。

「あなたが質問するから。」

「私も考えます。」

「それは良い。」

朱鷺白は言った。

「教えながら学ぶことが。」

「最も深い学びだと聞いた。」

「誰から聞きましたか。」

「封じられる前に。」

朱鷺白は言った。

「ある者に教わった。」

「名前は覚えていない。」

「しかし言葉は残っている。」

「名前より言葉が残ることがありますね。」

アクアは言った。

「そうだ。」

朱鷺白は言った。

「名前は忘れても。」

「その者が言った言葉が残る。」

「それが残るということは。」

「その者は今も生きているということかもしれない。」

アクアは鍋の火を調整した。

弱火に。

「煮込みます。」

アクアは言った。

「二十分ほど。」

「その間は何もしないのか。」

「待ちます。」

アクアは言った。

「料理には待つ時間があります。」

「その時間も料理の一部です。」

「待つことも仕事か。」

「はい。」

アクアは言った。

「急かしても美味くなりません。」

「その材料にかかる時間があります。」

「それを守ることが大切です。」

二人は鍋の前に立った。

蒸気が上がっていた。

「アクア。」

朱鷺白は言った。

「何ですか。」

「お前が料理で助けた者は。」

朱鷺白は言った。

「何人いる。」

「数えたことがありません。」

アクアは言った。

「なぜ数えない。」

「数えることに意味がないから。」

アクアは言った。

「一人でも百人でも。」

「作る時の気持ちは変わりません。」

「目の前の者のために作る。」

「それだけです。」

「数ではなく目の前の者か。」

「はい。」

アクアは言った。

「千人の誰かより。」

「今目の前にいる一人の方が。」

「大切です。」

朱鷺白は鍋を見た。

野菜が煮えていた。

「私が今日作る料理は。」

朱鷺白は言った。

「誰のためになる。」

「今日の昼食です。」

アクアは言った。

「食堂にいる全員の。」

「全員のためか。」

「はい。」

「...ならば。」

朱鷺白は言った。

「上手くなければならない。」

「上手くなくても良いです。」

アクアは言った。

「なぜだ。」

「初めて作る料理が。」

アクアは言った。

「完璧である必要はありません。」

「初めて作ったという事実が。」

「料理に入ります。」

「初めて作ったという事実が。」

朱鷺白は繰り返した。

「はい。」

アクアは言った。

「食べた者が感じます。」

「これは初めて作られた料理だと。」

「上手くなくても。」

「初めてという誠実さが伝わります。」

朱鷺白は少し黙った。

「初めてという誠実さか。」

朱鷺白は言った。

「はい。」

「それが。」

朱鷺白は言った。

「私が今日の料理に込めるものかもしれない。」

アクアは頷いた。

何も言わなかった。

しかし頷いた。

第五章:昼食の食堂

食堂 - 昼

昼食の時間が来た。

全員が集まっていた。

十一人の精霊たちが。

私が。

ハナが。

リスカレスが。

セラフィーネが。

料理が出た。

今日は二種類あった。

アクアが作ったものと。

朱鷺白が作ったものが。

「今日は二種類か。」

雷光が言った。

「朱鷺白様が作られました。」

アクアは言った。

全員が朱鷺白を見た。

朱鷺白は表情を変えなかった。

「初めて作った。」

朱鷺白は言った。

「下手かもしれない。」

「しかし食べてくれると良い。」

食堂が少し静かになった。

雷光が最初に取った。

一口食べた。

「...。」

全員が雷光を見た。

「美味い。」

雷光は言った。

また最初に言った。

「雷光様はいつも最初に言いますね。」

ハナは言った。

「黙れ。」

雷光は言った。

「本当に美味いですか。」

朱鷺白は雷光に聞いた。

「美味い。」

雷光は言った。

「しかし。」

「しかし?」

「アクアのものとは違う。」

雷光は言った。

「どう違う。」

雷光は少し考えた。

「誠実だ。」

雷光は言った。

「誠実。」

朱鷺白は繰り返した。

「初めて作ったという感じがする。」

雷光は言った。

「しかしそれが悪いのではなく。」

「誠実に作ったと伝わってくる。」

朱鷺白は少し間を置いた。

「アクアが言っていた。」

朱鷺白は言った。

「初めてという誠実さが伝わると。」

「伝わりました。」

雷光は言った。

深水が食べた。

「水のような料理ですね。」

深水は言った。

「水のような?」

「素直です。」

深水は言った。

「技巧がない。」

「しかし素直な味がします。」

「水が素直なように。」

神珠尾が食べた。

何も言わなかった。

しかし。

二口食べた。

三口食べた。

「神珠尾。」

朱鷺白は言った。

「何だ。」

「どうだ。」

神珠尾は少し考えた。

「食べ続けている。」

神珠尾は言った。

「それが答えだ。」

朱鷺白は。

神珠尾を見た。

「...そうか。」

朱鷺白は言った。

私が食べた。

少し固かった。

切り方がまだ不揃いだった。

しかし。

味は確かにあった。

「朱鷺白。」

私は言った。

「何ですか。」

「良かった。」

私は言った。

「どこが。」

「全部だ。」

私は言った。

「全部は嘘をついていない。」

朱鷺白は言った。

「嘘をつく理由がない。」

私は言った。

朱鷺白は食堂を見た。

全員が食べていた。

自分が作ったものを。

「...。」

朱鷺白は何も言わなかった。

しかし。

表情が少し動いた。

いつも変わらない表情が。

少しだけ。

ハナが気づいた。

「朱鷺白さん。」

ハナは言った。

「何ですか。」

「笑いましたよね。」

「笑っていない。」

朱鷺白は言った。

「笑いました!」

ハナは言った。

「ちょっとだけ!」

「気のせいだ。」

朱鷺白は言った。

「気のせいじゃないです!」

ハナは言った。

紅夜叉が言った。

「ハナ。」

「何ですか!」

「笑ったなら笑ったでいい。」

紅夜叉は言った。

「それが悪いのか。」

「悪くないです。」

ハナは言った。

「嬉しくて言ったんです。」

「そうか。」

紅夜叉は言った。

「では私も嬉しかった。」

「朱鷺白が笑ったことが。」

朱鷺白は紅夜叉を見た。

「お前も。」

朱鷺白は言った。

「そうだ。」

紅夜叉は言った。

「笑えて良かった。」

食堂が少し温かくなった。

音が増えた。

話し声が。

笑い声が。

アクアが横に来た。

朱鷺白の横に。

「どうでしたか。」

アクアは言った。

「全員が食べた。」

朱鷺白は言った。

「はい。」

「届いた。」

朱鷺白は言った。

「届きました。」

アクアは言った。

「初めて作ったものが。」

朱鷺白は言った。

「届いた。」

「はい。」

「それが。」

朱鷺白は言った。

「あなたが言っていた。」

「届いた夕食の意味か。」

アクアは少し考えた。

「今日は昼食ですが。」

アクアは言った。

「...届いた昼食か。」

朱鷺白は言った。

「そうですね。」

アクアは言った。

「今日の名前です。」

第六章:昼食の後

厨房 - 昼食後

全員が去った後。

厨房の片付けをした。

アクアが。

朱鷺白が横で手伝った。

「洗い方は。」

朱鷺白は言った。

「教えてくれるか。」

「こうです。」

アクアは言った。

「力を入れすぎない。」

「また力の加減か。」

朱鷺白は言った。

「料理はすべて力の加減です。」

アクアは言った。

二人で洗った。

しばらく。

「アクア。」

朱鷺白は言った。

「何ですか。」

「明日も来ていいか。」

朱鷺白は言った。

「来てください。」

アクアは言った。

「毎日来ていいか。」

「来てください。」

アクアはまた言った。

「お前は嫌ではないか。」

「嫌ではありません。」

アクアは言った。

「むしろ。」

「むしろ?」

「一人で料理をするより。」

アクアは言った。

「誰かがいる方が。」

「料理が変わります。」

「良い方向に。」

「私がいても変わるか。」

「変わります。」

アクアは言った。

「今日の料理の感じが。」

「私のものとは違いました。」

「あなたがいたから。」

「厨房の空気が変わりました。」

「厨房の空気が変わる。」

朱鷺白は繰り返した。

「はい。」

アクアは言った。

「作る者の気持ちが。」

「料理に入ると言いました。」

「同様に。」

「その場にいる者の気持ちも入ります。」

「では私の何が入った。」

アクアは少し考えた。

「初めてという緊張が。」

アクアは言った。

「しかしそれ以上に。」

「真剣さが入りました。」

「真剣さか。」

「はい。」

アクアは言った。

「朱鷺白は真剣でした。」

「一つ一つに。」

「真剣に向き合っていました。」

「それが料理に入りました。」

「それが伝わったのか。」

「雷光様が誠実と言いました。」

アクアは言った。

「深水様が素直と言いました。」

「それが真剣さが形を変えたものです。」

朱鷺白は洗い終えた鍋を置いた。

「一つだけ聞いていいか。」

朱鷺白は言った。

「どうぞ。」

「マスターは何と言っていたか。」

「良かったと言いました。」

アクアは言った。

「全部という意味で。」

「はい。」

「マスターはいつも全部と言うのか。」

朱鷺白は聞いた。

「嘘をつかないからです。」

アクアは言った。

「良かった部分だけでなく。」

「全部を見て言います。」

「全部を見て良かったと言うのか。」

「はい。」

朱鷺白は少し間を置いた。

「では今日は。」

朱鷺白は言った。

「本当に良かったということか。」

「マスターがそう言ったなら。」

アクアは言った。

「そうです。」

朱鷺白は頷いた。

「明日また来る。」

朱鷺白は言った。

「今度は切り方をもっと練習する。」

「来てください。」

アクアは言った。

「にんじんを用意しておきます。」

「たくさん用意しろ。」

朱鷺白は言った。

「たくさん切りますか。」

「切るだけでなく。」

朱鷺白は言った。

「食べられる形にまで切れるようになる。」

「大きな目標ですね。」

アクアは言った。

「小さな目標では足りない。」

朱鷺白は言った。

「ではたくさん用意します。」

アクアは言った。

「頼む。」

朱鷺白はエプロンを外した。

折りたたんだ。

丁寧に。

「これはどこに置く。」

「その棚に。」

アクアは棚を示した。

朱鷺白は棚に置いた。

「明日また来る。」

朱鷺白は言った。

「待っています。」

アクアは言った。

朱鷺白は厨房を出た。

廊下に出て。

少し歩いて。

止まった。

手を見た。

両手を。

切り傷があった。

小さな切り傷が。

包丁で。

「...痛かった。」

朱鷺白は言った。

誰にでもなく。

「しかし。」

朱鷺白は続けた。

「良かった。」

廊下を歩いた。

宮殿の中を。

ある部屋の前で止まった。

私の書斎だった。

ノックした。

三回。

「どうぞ。」

扉を開けた。

「マスター。」

朱鷺白は言った。

「朱鷺白か。」

私は書類から顔を上げた。

「今日料理を作った。」

朱鷺白は言った。

「知っている。食べた。」

私は言った。

「良かったと言っていたが。」

朱鷺白は言った。

「本当か。」

「本当だ。」

私は言った。

「どこが良かったか。」

「全部だと言った。」

私は言った。

「全部というのは。」

朱鷺白は言った。

「どういう意味だ。」

「初めて作ったものが。」

私は言った。

「食卓に出た。」

「全員が食べた。」

「全員の顔が変わった。」

「それが全部だ。」

朱鷺白は少し間を置いた。

「全員の顔が変わったか。」

「見ていなかったか。」

私は言った。

「自分の料理が気になって。」

朱鷺白は言った。

「全員は見ていなかった。」

「次は見ていろ。」

私は言った。

「それが料理をする理由の一つになる。」

朱鷺白は頷いた。

「明日また作る。」

朱鷺白は言った。

「次は全員の顔を見る。」

「そうしろ。」

私は言った。

「報告は以上だ。」

朱鷺白は言った。

「報告しに来たのか。」

私は少し笑った。

「...そうではない。」

朱鷺白は言った。

「では何をしに来た。」

朱鷺白は少し間を置いた。

「良かったと言ってもらいたかった。」

朱鷺白は言った。

「直接。」

「食堂で言ったが。」

私は言った。

「食堂では全員がいた。」

朱鷺白は言った。

「ここでは二人だ。」

「そうか。」

私は言った。

「良かった。」

私は言った。

「朱鷺白が作った料理が。」

「良かった。」

朱鷺白は。

また表情が動いた。

少しだけ。

「ありがとう。」

朱鷺白は言った。

「また明日も頼む。」

私は言った。

「明日も作る。」

朱鷺白は言った。

「毎日作る。」

「良い心がけだ。」

私は言った。

「毎日作れば。」

朱鷺白は言った。

「毎日届けられる。」

「そうだ。」

私は言った。

朱鷺白は扉の方に向かった。

出ていく前に振り返った。

「マスター。」

「何だ。」

「手が痛い。」

朱鷺白は言った。

「怪我をしたか。」

私は言った。

「切り傷が少し。」

朱鷺白は言った。

「アクアに薬草を分けてもらえ。」

私は言った。

「そうする。」

朱鷺白は言った。

「明日からは気をつけろ。」

「気をつける。」

朱鷺白は言った。

「しかし。」

「しかし?」

「手が痛いのは。」

朱鷺白は言った。

「悪くない。」

「何かをした証拠だから。」

私は少し間を置いた。

「そうだな。」

私は言った。

朱鷺白は出ていった。

扉が閉まった。

私は書類に戻った。

「良い一日だった。」

私は思った。

朱鷺白が料理を覚え始めた。

手に切り傷ができた。

痛みと共に。

何かが始まった。

それが。

王国に根を張るということだった。

手を汚して。

痛みと共に。

根を張る。

明日。

朱鷺白はまた厨房に来るだろう。

にんじんを切るために。

アクアは用意しているだろう。

たくさんのにんじんを。

それが。

今日始まったことだった。



【リンクが開けない方へ】カードの見方・別ルート案内


皆さん、こんにちは!

「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。


前回のキャラクターカード集について——

リンクをクリックしても開けない、

という声をいただきました。


そこで、別のルートをご案内します。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ リンクが開けない場合

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


もし——

記事内のリンクをクリックしても

うまく開かない場合は。


お使いのブラウザで、

以下のURLを直接検索欄アドレスバー

コピー&ペーストしてみてください。


【安全なリンクです。ご安心ください】


https://drive.google.com/drive/folders/1aeslFKS4Ox7hypyBQaSOJpGBuYAr6Nip


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ 貼り付け方

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


1. 上のURLを長押しして「コピー」

2. Google などの検索アプリを開く

3. 検索欄(アドレスバーでも可)に貼り付け

4. 開くと、キャラクターカードのフォルダが表示されます


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


これで、カードをご覧いただけるはずです。


もし、それでも開けない場合は——

コメントで教えてください。


毎日19:00更新中。


お楽しみに!


#世界設定 #キャラクターカード集 #ライトノベル #ダークコンチネント


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