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あの日、私はあなたの栞だった。  作者: 甘夏
一章 始まりは一つの小説で
13/23

第十三頁 理由

お久しぶりです!!

リハビリ程度に書いたので今回クソほどに字数が少ないですが、よろしければご一読よろしくお願いします!!

「うわぁ、懐かしい」‬

「懐かしいってどういうこと? お姉ちゃん」‬

「霙と一回来たことあるのよ。和子は産まれてないわね」

 風に煽られ、被っている麦わら帽子を軽く手で抑える。‬

 潮の匂いが鼻を劈き、とても快晴だ。周りにはテントや日傘を立てて海水浴に来ている家族が沢山いた。‬

 小倉北区にある海だ。家族四人で来ていることが毎年の恒例。そういえば、霙と一緒に来た時に貝殻を拾ってどこかにしまっていたような気がする。一体どこであっただろうか。思い出そうとしても思い出せない。

「お姉ちゃん! ワカメー‼」‬

「こらっそんなの拾ってはいけませんったら!」

 和子はいつまで経っても、ワカメを拾うことだけはやめないんだよね。私がこういう反応をすることを分かっていて、わざとやっているようにも見える。‬

 やっぱり妹って腹が立つ。

「和子、またワカメ拾っとると? 変わらんなぁ」

 義父が近づいてきて苦笑混じりに呟く。

「もちろん! 毎年来るんやもん、ワカメは拾わんと!」

 いや、お父さんが突っ込んでるところそこじゃないと思うんだけど。‬

 ちなみに、私と和子で話し方が違うのは、和子は地元の大学、私は長野の大学にいるからなのも主な理由ではあるんだけれども、そもそも私方言っていうのがあまり分からなくて。本当のお父さんが標準語だから、私はそっちに似たのかな? 和子はお母さんに似た感じなんだと思う。

「テント立てたとよー!」

 と、母の声。流石、仕事が早い。職業においても何においても、母は作業が早くて手際が良い。いい母を持ったと心から経緯を表せる程だ。

「お父さん! 遊ぼ!」‬

「よぅし、何するー!?」‬

「私はテントでまったりしとくかね」

 二人で遊んでいる景色をよそに、私はテントの中に潜り込んでさざ波を見つめる。

「あっはっは! ゆずはやっぱここにおるねぇ!」

 愉快に笑いながら母がテントを開けて覗き込んでくる。

「いいじゃん? 和子とお父さんがすごい活発なんだもん、私あのテンションについていけないのよ」‬

「そっか! んじゃお母さんも一緒にテントにいるけん!」

 私の隣に座り、息をつく母。‬

 絶対にあの楽しそうな輪に入れそうなテンションをしている母だが、海に来ると何故か私と母が一緒になってテントに引きこもっていることが多い。‬

 なんで行かないのかを聞いたら「お母さん、海に来ると砂場のアーティストとして活躍するけね……やけんあのテンションにはお母さんもついていけんのや……」と、キラキラしたドヤ顔で呟いてくるので、あぁそりゃあついていけないよなぁと思う。‬

 実質言って、母の砂のお城はとても本格的。どうしてそこに本気を出すのか、娘としてとても疑問に思うことである。

「ねえお母さん」‬

「ん?」

 そんな中、私はふと気になることを思い出した。

「……霙、なんで北海道に帰ったんだっけ?」

 霙が北海道に帰った理由だ。‬

 小さな時ははぐらかされたが、今になって隠すことなんて何も無いだろう。私も成人した一人の『大人』なんだから。私が母であれば、母と同じことをしていただろう。

「そうやねぇ。ゆず、いつも遊んどった公園覚えとると?」‬

「あぁうん、覚えてるよ」‬

「その公園で、ゆずと霙ちゃんが遊んどった時のことや」

 私の知りえない情報が、母の口からいくつも飛び出てきた。‬

 私と霙が公園でごっこ遊びをしていた時、春作さんが呟いたそう。

『北海道にいるうちの奥さんが、つい最近亡くなりましてね。一時的ですが、北海道に帰ることにしたんですよ』

 母も大層驚いて、最初は私にも正直に話そうとしたけれど、春作さんに隠蔽するように提案され、そのままはぐらかすように過ごしていたとの事。‬

 その引っ越す一週間前に渡されたのが、あの栞。‬

 幼い頃から自作の小説を書いていた霙が持っていた、大切な栞。‬

 私も霙の自作の小説を読んでいた為、栞は羨ましく思えたのだ。

「……そっか」

 色々と言いたいけれど、私はそう一言だけ言っておいた。

「ごめんな、隠しとって」‬

「ううん。むしろ知れて嬉しいよ。だから、お母さんが謝るところはどこにもないよ」

 私は微笑んでそう言った。‬

 引いては寄せるさざ波が私と霙の距離の伸び縮みを表しているようで。‬

 大きく引いたさざ波を見て、体育座りの私は母がそばにいるにも関わらず、少しだけ寂しくなった。‬

御一読お疲れ様でした!!

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