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動き出す茶番

「帝国が進撃し始めてました。しかも、こちらではなく観光都市を目指して。更に北の城塞都市にも動きがあるみたいです。わたくしの見立てではそちらが攻めて来る可能性の方が高いかと」



つまり、それは…俺はイリーナの方を見る。ホンゴウを捨てるか、トウシューを捨てるかの選択をする可能性があるという事になる。まあ、普通なら…



「…兄様、気になさらないでください。わたしの居なくなったホンゴウは遅かれ早かれ滅びます。琉璃ちゃんにした仕打ちを兄様に繰り返そうとした償いをもって」


「いやいや、気持ちは分かるが…」


「竜介を助けるとか考えないんだ…むしろ、滅ぼされてしまえと。まあ、先輩の敵は全部敵ってのは分かるけど」



領主代行としてそれはアウトだし、シュウが言う通り操られているとはいえ竜介に人殺しさせるのもな…



「分ければ良いんじゃないかな。こっちの防衛と向こうの対処に…お兄様の【小型魔空戦艦】や【転移】を使えばどうにかなるよね?」


「どうにかではなく、どうとでもなるけどな」



分ける必要もなく…というより、やろうと思えばバカネコ大魔王を無理やり召喚してボコるのも簡単だ。とはいえ、わざわざ悪者になりたがってるんだからある程度良い夢見せてから叩き落とす方が良い…俺に喧嘩売ったんだから尚更だ。というわけで…



「班を4つに分けようと思う」



翌日、その班分けで行動する事になった。








《1班 アベルティア帝国奪還組》



「…まだリーゼアリアとの語り合いすら出来てないんだけど、仕方ないよね」



お兄ちゃんの命令だから仕方ない。軍を率いて出て行った四天王の近江くんは別の班に任せて私とアリエルア、フレアちゃんで帝国が使うかつての王城を取り戻す。たった3人だけの解放軍だ。でも、味方は居た…



「さあさあ、先輩のために馬車馬のように働け愚民どもっ!」



フレアちゃんが住人たちを蹴り倒して恐怖で支配して次々と作ってくれたともいう。だって、私やアリエルアが王女や聖女として演説で説得しようとしたら石投げてきたんだもん…普通なら、「王女様と聖女様が俺たちのために戻ってきてくれた」とかっていうところだよね、ここ…


イリーナちゃんを説得するお兄ちゃんに触発されたのはあるけど、お兄ちゃんはこうなるって言ってたからフレアちゃんを同行させたけど…


あんな脱税に横領、メイドを手篭めにしたり厳しく進言する貴族たちを次々殺す国王の方が人望あったとかおかしいよね。イリーナちゃんみたいに切り捨てるべきだったのかとも思えてくるよ…


国王殺しの汚名は甘んじて受け入れるつもりだったけど、お兄ちゃんを悪者にしてアリエルアを穢れた聖女なんて言うのは許せない。



「将来、僕たちって国を捨てた上に魔王に寝返って国を滅ぼした魔女とかって言われちゃうんじゃないかなぁ…」


「……全てはおにいちゃんの思し召しだよ」



そういう事にしないとここの人たちは天使と同じ末路を辿るのは目に見えてる。王国だろうが帝国だろうが操られていようが他の自治権を持つ都市へ進軍しちゃってる時点で敵対行動だ。国が滅ぶより先に皆殺しになる可能性があるって言ってた…だから、石投げてきたら先に皆殺しにすればともお兄ちゃん言ってた。


そんな危ない考えのお兄ちゃんの同行を拒否して良かったと思う…フレアちゃんも似たようなものだけど、殺しまではしない。せめて半殺しだ。とはいえ、そこはアリエルアのスキルで回復可能だしどうにかなるよね。


帰る場所があるだけマシだと思ってもらわないと。










《2班 アベルティア帝国軍殲滅組》



「やはり、兄様の予想通りスケルトンだらけですね」


「小国だからね。軍と呼べるほどの規模は元々無かったはずだもん。少なくともここ100年は戦争なんて起きなかったし、それに竜介を操れる奴が土葬が主流のこの世界で使いやすい軍を作るなら墓地にある材料を見逃すとは思えないよ」



ホンゴウから少し離れた平原に俺はイリーナさんと転移させられた。前方からやってくる骨の軍勢などを俺たちで対処しなければならない。その中には死にたてらしいゾンビ兵や道中で倒したであろう魔物の死体も混ざっていたりする。


【死霊使い】なんてスキルを持っていた同級生も居たけど、さすがに故人だ。でも、おそらくはその手のスキル持ちか道具が使われている…というのが先輩の考え。


まあ、俺たちは竜介さえ救出出来れば後はどうでも良いのが本音だったりするし、その道具を竜介が持ってないかどうかの不安だけ。



「往生しとけにゃん、このバカ竜っ!」



どうやら、別働隊として動いていたミケちゃんが竜介を見つけたようだ…予定通り、ミケちゃんが呼び出した魔物の軍勢が竜介以外のスケルトンを瞬殺する。まあ、とっくに死んでるわけだけど。



「じゃあ、わたしはホンゴウの連中を相手にするから…兄様のためにもちゃんと成功させてよ」


「そっちも程々にね…」








《3班 城塞都市潜入組》



「長耳族の旅人か。珍しいものだ…まあ、通っていいぞ」


「はい、ありがとうございます」



ウチは旅人としてトウシューが発行した身元証明書を門番に見せて堂々と正面から城塞都市へと入る。腰には奏多ちゃんから借りた【地の真聖剣】を帯刀している。ウチとアースちゃんの最少人数で来たのはあくまでも都市間での戦争を防ぐための特使…というのは表向きでしのぶでありユーカでもある女の子を助け出し連れ帰るためだ。


そのためには複数では動きにくい…そして、彼女と前世、前々世で一緒に過ごしたウチならすぐ見つけられるというトウマさんの考えでやってきた。それに長耳族は森林都市の住人だからこそ危害を加えられる可能性が少ないというメリットもある。


さて、まずはシュウゾウさんが用意した親書を届けにお城へ行かなきゃね。








《トウシュー残留組》



「…さて。奏多…どこまで計画通りなんだ?」


「あはは…さすがにお兄にはバレバレか」



そう言いつつも寛ぐ奏多…まあ、こいつが四天王の1人とかいう展開は無いのは知ってる。わざわざアースに帝国やら城塞都市の監視をさせたという時点で色々知って動いているのだろうとも。



「あたしはお兄の味方だよ…でもね、お兄を勇者にして、その体のお母さんを殺させるつもりも大切な仲間を殺させるつもりも命を捨てて1つの世界を救ってもらうつもりは無かった。でも、そう仕向けた連中が居る。いくらお兄が許しても許しきれない相手がいるんだよ。だから、ちょっとお仕置きかな…って思う相手が居るんだよ」


「…まさかとは思うがそれは…」


「そうだよ。お兄に神の力である【聖竜波動】を勝手に教えたおバカ神とお兄の優しさを踏み躙って殺そうとしたおバカ勇者を矯正しないと…ね?」



奏多がそう言って上空を見上げた。そこには、ガクガクブルブルと震えるリーシャと見慣れない少女が居た。

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