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職場の先輩は素敵な人でした。  作者: まるねこ


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「彩さん、これお願いできるかしら? 今、私も手一杯でできそうにないの」


私がパソコンとにらめっこしていると、同じ部署の武田さんから声を掛けられた。


彼女が持っていた書類は隣の課のもので製品情報と見積もりを計算して出さなくてはいけないもののようだ。


「今の書類が終わり次第、取り掛かれます」

「分かったわ。ちょっと急ぎらしいから今日中にお願い」

「分かりました」


確かに付箋には『明日には提出』って大きく書かれている。なんでこんなにギリギリに出したの? 担当者は誰よ! 


一人心で愚痴りながら今している仕事を素早く終わらせ、回ってきた書類に取り掛かっていく。


製品の型番も数字も間違えないように集中してやらないと……。


そうして気づけば就業時間もとっくに過ぎてしまっていた。


「なんとか終わったけど、もうこんな時間。今日もまたコンビニ弁当で済ますか」


サッと鞄を持ち、会社を出た。私は明日提出する前にもう一度、書類を確認しなきゃ、と電車に乗っても仕事のことを考えていた。


コンビニに寄り、自宅へ戻ったところでようやく息を吐いたの。何時間も集中して仕事をしてきた分の疲れが一気にやってくる。


……もう動きたくない。


ぐったりしながらベッドへもぐり……こめない!!


 まだ化粧を落としてないわ! このまま脱ぎ捨てたら服が皺になっちゃうし……。


私は億劫な気持ちを抑えつつ、シャワーを浴びてさっと布団にもぐりこんだ。まだまだ明日が来ませんように。


そう願うも空しく朝は私の元へとやってきた。

眠気眼で服を着て出勤する。


「おはようございます」

「おはよう、彩さん。早速で悪いんだけど、昨日の書類出来てる?」


私が挨拶すると、武田さんが書類を持って話し掛けてきた。


「は、はいっ! でも、朝もう一度確認し直してから渡そうと思っていました」

「出来ていてよかったわ。確認は私がするからこれをお願いしていい?」

「えっと、これも隣の課の書類じゃないんですか?」


自分の仕事も抱えながら他の課の書類もするの!?


「ごめんね。あっちの課の新人ちゃんがちょっとやらかしてね。隣の課は総出で頑張っててこっちにも書類が回ってきたってわけ」

「そうなんですね」


「……この書類。よく見るとやばくないですか? 期限がっ」

「でしょう? とにかく急がなきゃいけないのよ。彩さん自身の仕事はまだ猶予があるから大丈夫よね? お願いするわ」

「はい」


悲しいかな、嫌とは言えない私。


手渡された書類は期限ぎりぎりのものや期限が過ぎたものもあった。


これ、もしかして今週ずっと終電コースじゃない!?

私、泣いてもいいですかっ!?


そう心で叫びながら、仕事に取り掛かった。




そうして二週間が過ぎた。


隣の課の仕事を終わらせ、自分の仕事も終わらせてようやくホッと一息。


目の下にクマが出来ていたのは仕方がないわよね!


まさか休日返上になるほど大変だなんて思ってもみなかった。家には寝に帰るだけという生活を送ってたの。


他の人に仕事を頼もうにも他の人も同じような感じでみんな日に日に窶れていた。


「終わった! 今日は、今日こそは即退勤します!」

「彩君、お疲れさま。ゆっくり休んでくれ」

「お疲れ様でしたー」


私はみんなに挨拶してさっと会社を出た。


次の業務の期限までは少し余裕があるし、数日は早く帰れそう。同じ課の人たちもようやく落ち着きを取り戻し、自分の仕事ができる状況になってきているみたい。


―ピロン。


あっ、勇気さんからのメールだ。最近はお互い忙しくて連絡していなかったし、業務のことを話す以外の時間もなかった。


メッセージには『明日、仕事終わりに飲みにいかないか?』って書いてあった。


ちょうど金曜日だし、いいよね。勇気さんから誘われたのは期待してもいいってことかな? いや、でも、深く考えていないかもしれないよね。


ただ単に後輩とお疲れ様会を開いただけっていうオチかもしれないし! 二人だと思ってOKしたら実は他の人もいるってことだってあるし。


色々な考えが頭をよぎるけれど、とりあえず『行きます。明日、楽しみにしていますね』とだけ返信しておいた。


家に戻ってからゆっくりとお風呂に浸かって疲れを癒す。


明日は何を着ていこう。


パックして、マッサージもして。ただの飲み会だと思いつつ、気づけば明日に気合を入れている。


私ってつくづく単純だなぁと思う。


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