生徒会長は巨大少女たちが嫌いみたい 9
「白嶺先輩はそれで良いんですか?」
さすがに心配になってしまう。一般の生徒たちからあれほど慕われている白嶺先輩
「何の心配をしてるんだい?」
こんなふざけた好き勝手なことを言われたのに、強がりとかではなく、本心から特に気にしていなさそう。
「いえ、もっと言うこと聞いてくれそうな人とかを仲間にした方が良かった気がして……」
「あぁ、そう言うことか……」
白嶺先輩がため息を吐いた。
「確かにその通りだし、当然小波より先に声もかけてる」
「え? じゃあ……」
どうしてわざわざ小さくなった小波先輩のことを全力で弄ぶような子を味方につけたのだろうか。疑問に思ったけれど、理由は思ったよりずっと単純だった。
「みんな巨大少女を怖がって協力してくれないんだ」
白嶺先輩がわざとらしく全身で大きなため息を吐き出したけれど、小さいせいで、やっぱり音はほとんどしていない。
「な、なるほど……」
まあ、わたしが教室に戻った時の反応的に巨大少女への恐怖心って白嶺先輩への憧れより遥かに上回ってそうだもんな。
「そういうわけで、巨大少女たちに臆せず近づける人間が必要だから、キミたち3人がちょうどいい。小波はマッドサイエンティストだから、巨大少女たちを実験に使いたいだろうし、美花は私のことを信頼してどこまでもついて来てくれる。だから、一旦今はこの4人で——」
「ま、待ってください!」
今、スルーするわけにはいかないような何か怪しい言葉が聞こえたよね。
「あ、あの……。4人って言いましたよね……?」
「ああ、そうだろ。私と美花と小波と、そして鞘野」
紛れもなく入っているはずのない4人目の名前があった。
「な、なんでわたしの名前が何で入ってるんですか!?」
「そりゃ、巨大少女たちの元へ一番臆せず行けるから参加は確定だ」
そう言うと、小波先輩も頷く。
「学校の許可もなく忍び込むなんて、好奇心強すぎるもんねぇ。さすがのわたしもできないもぉん」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
口を尖らせるわたしを見て、白嶺先輩は小波先輩に摘ままれたままドヤ顔をこちらに見せつける。まあ、摘ままれながらドヤ顔を見せても何も決まっていないのだけれど。
「それに、キミにとって協力してくれたらいい話もあるよ」
「良い話?」
「巨大化薬を使わせてあげても良い」
「!?」
巨大化薬ってことは、つまり……。月乃様と同じサイズになれるってこと!? 月乃様に思いっきりハグしたり、キスしたり、あんなことやこんなことが……!
「ほ、本当ですか!?」
白嶺先輩にグッと顔を近づけたときに、今度は先ほどとは比にならないくらい鼻息を荒げてしまったらしい。摘ままれていた白嶺先輩の身体が激しく揺れる。
「ちょっ……」
「あ、すいません……」
小波先輩がしっかりと摘まんだままでいたおかげで吹き飛ばされずに済んだけれど、結構危なかったみたい。白嶺先輩は怖かったのか、必死に息を整えていて可愛らしい。小さいせいでいちいち威厳が台無しになっている。
「あ、でもわたしが協力したらみんな退学処分とかになっちゃうから、嫌かも……。どうしよう……」
巨大化薬は喉から手が出るくらい欲しいけれど、もらうと月乃様がこの学校から追い出されるかもしれない。それは困るし、月乃様がいない学校で巨大化できても何も意味がない。せいぜい月乃様を追い出すことに成功した学校に対して、八つ当たりで校舎を蹴飛ばすくらいにしか使えなさそう。
「にひひ、大丈夫だって」
「え?」
「本気で退学処分しようとしたら、わたしがかいちょーのこと見えないくらいすーっごくちっさくして踏吹き飛ばしちゃうから、安心してよぉ」
「は?」と白嶺先輩が苛立った声を出す。
「だってぇ、あんなすっごい被験体向きの人間がすぐ近くにいるって言うのに、追い出しちゃうなんてわたしは大反対ですもぉん。だいたい小さくする薬はわたしが持ってるんだからぁ、かいちょーじゃわたしに勝てないもんねぇ。だから、エミリーちゃんは安心して巨大化薬をもらうために協力したらいいよぉ」
「それなら安心ですけど……」
もはやわたしが協力したところで白嶺先輩の目標は達成できない気がする。まあ、こちらからしたら巨大化薬さえもらえればなんでも良いのだけれど……。
一応反巨大娘みたいな集まりのはずなのに、わたし含めて半数が巨大少女肯定派の組織で大丈夫なのだろうか。そんな気持ちを汲み取るみたいに白嶺先輩がため息交じりに話しだす。
「とりあえず巨大少女たちに臆せず近づける人材がとにかく欲しいから、これで良い。みんな頼まれても近づきたがらない巨大少女用の校舎に学校の反対を押し切って近づいてしまうくらいの人材は必要だからね」
「な、なるほど……」
納得したようなしないような。いずれにしても、わたしは巨大化薬のために白嶺先輩たちと行動を共にしなければならないらしいのだった……。




