生徒会長は巨大少女たちが嫌いみたい 7
結局、白嶺先輩はメイドの少女の手のひらの上に乗せられていた。わたしと白衣の少女は、テーブル越しにメイド服の少女を挟んで横並びで座っていたから、白嶺先輩のことはしっかりと見えていた。
彼女が膝の上に置いた手の上に収まっている小さくて可愛らしいサイズなのに、その上に立って必死にわたしたちのことを睨むように鋭い瞳で見ている様子が虚勢を張って頑張っているみたいで可愛らしかった。そんな彼女のことはほとんど気にせず白衣の少女がわたしの方に身体を向けてくる。
「改めて、わたしは小波杏。2年生の天才科学者様だよぉ」
白衣の少女がニコリと微笑んだ。無邪気に微笑んでいる姿は小学生くらいに見えるけれど、一応わたしの先輩らしい。
「マッドサイエンティストの間違いじゃないのか?」
白嶺先輩は呆れたようにため息をついたけれど、小波先輩は気にしていなかった。
「えっと……。じゃあ、あなたが縮小薬を作った人ってことですか?」
「イェス!」
ピースサインをわたしのすぐ目の前に向けてくる。
「す、凄いですね……」
見た目は子どもっぽいのに、天才らしい。そんな子どもっぽい雰囲気で縮小薬を開発したなんて、実際に使用して見ないととても信じられない。まあ、使用してもまだ信じられないのだけれど。
「ほら、ミカリンも早く自己紹介しなよぉ」
小波先輩が身を乗り出して、メイド服を着た少女の身体を揺らしたから身体が揺れて手に乗せていた白嶺先輩が転がってしまっていた。メイド服少女が慣れた感じで器用に手の角度を変えて支えたから、落下はせずにすんでいた。多分、普段からいたずらで白嶺先輩が危ない目に遭ってるんだろうな……
「や、やめろ!! 落ちるだろ!!」
小さな声で必死に小波先輩に注意をしている白嶺先輩のことは気にせず、メイド服少女に視線を送っていた。
「えっと……。2年生の佐野美花です」
メイド服少女がか細い声を出してから、俯きがちなまま、ぺこりと頭を下げる。30倍サイズの時には少し大きいくらいの声だったのに、同じくらいになると、かなり小さな声であることに気付いた。長い髪の毛が揺れて手のひらの白嶺先輩の方に向かっていたので、白嶺先輩が慌てて避けるのだった。
「ミカリンは手先が器用だから、この小さな部屋の備品全部揃えたんだよぉ」
「これ全部市販だったんですね……」
「い、いえ……、手作りもありますよ」
緊張した声で答えながら、先ほどまで座っていたソファーを白嶺先輩を乗せていない方の手で摘まんでこちらに見せてくれる。
「これ、作ったんですか?」
「そ、そうですよ」
かなりフカフカで気持ち良かったから、本物の高級ソファかと思っていた。
「あと、知ってると思うけどぉ」
小波先輩が佐野先輩の手のひらの上に指先を近づけて、白嶺先輩を摘まみ、わたしの顔の前へと連れて行く。また服の襟元を摘まんでいる不安定な持ち方だから、白嶺先輩は苛立ち気な表情を浮かべながらも、誤って指を離されないようにジッとしている。
「これが我が校の立派な会長の白嶺沙織様」
なぜか風に吹かれてユラユラと揺らされている状態なのに、立派と言われて紹介されている白嶺先輩がなんだかおもしろかった。一体何の風だろうかと思っていると、杏が笑う。
「ねぇ、エミリーちゃんの鼻息かかってかいちょーが怖そうにしてるから、もうちょっと押さえてあげた方が良いよぉ」
「え?」
慌てて鼻の付近に手を持って行って白嶺先輩にかからないようにした。なんだか恥ずかしいな。
「す、すいません」
「いや、気にしないでくれ。指で摘まんでいる小波の方がよっぽどデリカシーはないから」
「えー、そんなこと言うんだったら指離しちゃおっかなぁ」
「や、やめろ……」
それだけで白嶺先輩は黙ってしまった。小波先輩はは完全に白嶺先輩の扱い方をわかっているようだった。




