生徒会長は巨大少女たちが嫌いみたい 6
改めて2人を見たら、白衣とメイド、女子高生として本来あり得ないような格好に見える。けれど、人間のサイズが変わるという、さらにあり得ないことを経験した状況では、もはや服装なんて些細なことに感じられた。もはや、現実に追いついて無さすぎて、何から突っ込んだらいいのかわからない。
そして、先ほどまでわたしがいた生徒会室と思っていた場所を見たら、綺麗な白い箱の中に入った30分の1スケールの部屋だった。机の上に乗ってしまうような小さな箱の中に立派にミニチュアの部屋ができていた。
まるで平屋のドールハウスみたいで可愛らしい。天井が蓋の代わりになっていて、開け閉めができるみたい。そんな小さな部屋の中で、その部屋のサイズに見合う30分の1サイズの小さな白嶺先輩がわたしたちのことを見上げていた。
「じゃあ、そろそろ私も元のサイズに戻るころかな」
先ほどまで威厳たっぷりのカッコよく芯の通った声がとても小さく聞こえた。強そうに見えていた白嶺先輩が、小さくなった途端に可愛らしく見えた。なんだかしばらくこのサイズでいて欲しい気もするけれど、わたしと一緒のタイミングで小さくなったから、そろそろ元に戻りそう。そんなことを思っていたら、白衣の少女がいたずらっ子みたいに無邪気に笑う。
「かいちょーはまだまだ戻りませんよ」
「は?」
箱の中から苛立ち気な声が聞こえてくる。
「かいちょーには効き目が3時間くらいあるやつ飲ませたので」
「お、お前! 勝手な真似はするなといつも言ってるだろ!!」
白嶺先輩が白衣の少女を睨むようにして見上げながら叫んでいた。
高身長の白嶺先輩が怒っている様子は、同じくらいのサイズ感の時ならそれなりに迫力があったのだろうけれど、今のサイズ差ならまったく怖くない。なんだか元気いっぱいのハムスターみたい。もっとも、今の白嶺先輩は6センチに満たないくらいだから、ハムスターよりもずっと小さいのだけれど。
「小さなかいちょーが可愛いのが悪いんですよぉ」
そのまま、白衣の少女が白嶺先輩の方に指を近づける。白嶺先輩が一瞬ビクッと身体を震わせた。
「指近づけるだけで怖いんだ……」
先ほどまでわたしも同じように怖がっていたのだけれど、いざ大きいサイズの立場になって怯えているところを客観的に見ると、随分可愛らしかった。
「そうだよぉ。今のかいちょーはちっさくてかわいいんだからねぇ」
クスクスと笑いながら、白衣の少女が白嶺先輩の服の襟元を摘まんで持ち上げる。
「お、おい! やめろ! 離せ!!」
ジタバタともがいているけれど、まったく抵抗できそうにない。あれほど威厳のあった白嶺先輩は、今や小柄の少女の指によって翻弄されてしまっていた。
「手だして」
白衣の少女に言われた通り、素直に手を出すと、その上に白嶺先輩が置かれた。
「軽い……」
人が手のひらに乗っているというのに、思ったよりも軽くてビックリした。
「お話の途中だったみたいだからさぁ。2人でじっくり話したら良いよぉ」
白衣の少女がわざとらしく楽し気に笑う。
そう言えば、途中から巨大な彼女たちが現れて途中で話が中断してしまっていたけれど、わたしは高身長で威厳のある白嶺先輩に巨大少女たちに先ほどされたことを言えって言われてたんだっけ。
で、たしかそれを月乃様たちを追い出すための理由作りにするらしいから、わたしは答えたくなくって。でも、白嶺先輩に無理やり言わされそうになってたんだった。怖かったからどうしようかと思って困っていたけど、今のサイズ差なら……
手のひらのに乗っている白嶺先輩をジッと見ると、彼女の方がとっくに状況を把握していたらしい。
「最悪のタイミングで元の大きさに戻られてしまったということか……」
そんな彼女に対して、ここぞとばかりに強気に出た。
自分の方が強くなった瞬間強気になるなんて性格が悪いことは自覚しているけれど、どう考えても月乃様をこの学校から追い出すことに賛成なんてできない。白嶺先輩には考えを改めてもらいたい。
「月乃様の不利になるようなこと、わたしは絶対に言いませんから! これ以上追及するんなら踏んづけちゃいます!!」
ジッと睨んだら、それだけで白嶺先輩が大人しくなる。あのままだとしばらく脅されていたかもしれないというのに、サイズが変わった瞬間あっという間に話は済んだ。
「わ、わかったから。あまりこのサイズ差で物騒なことは言わないでくれ」
大きくため息をついてから、白嶺先輩は白衣の少女の方を睨んだ。
「お前のせいで……」
「にひひ、わたしのせいにするんだったらぁ、かいちょーのこと食べちゃいますよぉ」
白衣の少女がわたしの手のひらの方に顔を近づけて口を大きく開けている様子は無邪気で可愛らしい様子だったけれど、手のひらの上に乗っている白嶺先輩は怯え切っていた。
そうだよね。大きいだけで怖いんだよね……
先ほどまでずっと30倍サイズの少女たちに怯え切っていたわたしには、白嶺先輩の気持ちはよくわかる。心の中で大きく頷いておいた。
「だ、だからこのサイズ差で物騒なことを言うのはやめろと!」
小さなサイズの白嶺先輩が必死になっている様子にはやはり威厳はまったくない。ただただ可愛らしく思えてしまう。
そんなことを考えてしまうと言うことは、わたしもちょっとサディスティックなのだろうか。なんてことを思ってしまうのだった。




