生徒会長は巨大少女たちが嫌いみたい 3
次第に意識が覚醒していき、目が覚めた。なぜか高級そうなフカフカ気持ち良いベッドの上にいる。
「こ、ここは……?」
明らかに教室じゃない場所に連れて行かれている。天井も高いし、ソファーと高そうなテーブルもある。こんな広い部屋、学校にあったんだ。先ほどまで歩いていた普段の学校の廊下からは想像もつかないような場所だ。
「目が覚めたかい?」
ソファーに座って紅茶を飲んでいた白嶺さんが立ち上がり、こちらに近づいてくる。相変わらずの高身長だけれど、それはあくまでも平均的な身長の女性よりは背が高いというレベル。そこまで珍しいわけではない。やはり先ほど聞こえてきた会話は夢の中の会話だったらしい。
「わたし、小さくなって無かったんですね」
ホッと胸を撫で下ろす。
「何の話だい?」
「いえ、こっちの話です」
冷静に考えて人を小さくする薬なんて存在するわけがないじゃないか。
……いや、でも30倍サイズの巨大少女が存在してるんだよなぁ
まあ、あんまり考えても仕方ないか。これ以上考えてもどうせ何もわからないだろうし。
「体調はどうだい? いきなり倒れてしまったから心配していたんだ」
そう言われて、軽く伸びをして肩を回してみたけれど、とくに異常はなさそうだった。倒れてしまったことなんて忘れてしまいそうなくらい元気そのものである。
「大丈夫そうです」
「それは良かった。今からいろいろ話を聞きたいのだが、大丈夫そうかい?」
「い、一応……」
体調は問題ないけれど何を聞かれるのかわからなくて怖かった。勝手に巨大少女たちの校舎に行ってしまったし、お説教でも始まるのだろうか……。
とりあえず、わたしと白嶺さんはテーブルを挟んでソファーに向かい合った。
「新しい紅茶がそろそろくると思うから、ちょっと待っていてもらえるかい? キミがいつ回復するかわからなかったものでね」
申し訳なさそうに言われてから、白嶺さんはスマホを手に取った。
「ああ、もしもし。温かい紅茶を2人分頼むよ」
「はーい」
スマホで会話をしているのに、なぜか部屋の外から声が聞こえてきたような気がした。多分スマホの音が大きかったせいで外からも声が聞こえてきたように感じただけなんだろうけど。
「本当におかまいなく」
「そんなに畏まらなくて良いよ」
「じゃあ、遠慮なく……」
一旦断ったものの、喉が渇いていたから紅茶を飲みたかった。先ほどの小さな瓶に入った水だけでは明らかに足りなかったし。
そうして、もう一度室内を見渡して気になっていたことを尋ねた。
「ここって生徒会室なんですか?」
「そうだよ。紛れもなく生徒会室だ」
「立派すぎませんか?」
「そう見えるなら、きっとここを作ってくれた美花も喜ぶだろうね」
「作った? DIYってことですか?」
「ああ、まあ、そんなところかな」
こんな広くて立派な部屋の家具をお手製で作るなんて凄いな。しかも女のひとっぽいし、きっと力持ちな人なのだろう。
「まあ、キミが思っているよりずっとコストのかかっていない部屋だし、あまり緊張しないでくれたまえ」
そう言って一呼吸置いてから、白嶺先輩が真面目な顔で尋ねてくる。
「で、巨大少女たちの校舎に入ってみた感想はどうだったかな?」
「あれ? 怒られるわけじゃないんですか?」
「怒る? なぜだい?」
生徒会長が不思議そうに首を傾げたから拍子抜けしてしまった。勝手に身構えてしまっていたけれど、そこまで不安にならなくて良かったのかも。
「なんだ……。勝手に巨大少女用の校舎に入ったから怒られるのかと思った」
「ああ、そういうことか。危険な場所に入ること自体は感心できないけれど、個人的にはいろいろと実態を見て来てくれたのは助かるよ。あんな場所に入りたがるもの好きなんてほとんどいないからね」
月乃様がいるなら、好きなだけ入るけれど。そんなことを思ったけれど、
「で、30倍巨大少女たちからはどんな嫌がらせをされたんだい?」
「い、嫌がらせというか……」
「隠さなくてもいいよ。私はキミの味方だから」
「じゃあ……」
頼もしいな、と思って詩葉や 小鈴のことを告げ口しようかと思った。意地悪してたことがバレて内申点下がっちゃったら良いんだ。先生とかにも怒られてくれたら嬉しいし。そんなことを思って心の中で笑っていたのだけれど、次の瞬間に困惑するようなことを言われる。
「キミの意見を聞いて理事長に意見を持っていって巨大少女たちには学校から出て行ってもらうようにするから、安心してくれ」
「ええっ!?」
ダメに決まってる。あの2人のことはどうでも良いけれど、月乃様が追い出されたら大変だ。
「わ、わたし何もされてません!」
慌てて取り繕う。ブンブンと必死に首を横に振っている姿は、さぞかし怪しかっただろう。
「告げ口がバレるのが怖いのかな。良いんだよ。私がキミのことを守るし、いざとなったらこっちには小波もいるから」
にこやかに笑っているけれど、その表情からは圧を感じた。もはや小波というのが誰かなんてどうでも良くなってしまっていた。
いずれにしてもこのままここに白嶺先輩と2人きりでいるのはマズい。とにかく理由をつけて帰ることしようと思った。




