生徒会長は巨大少女たちが嫌いみたい 2
とりあえず、生徒会長の白嶺さんの後を付いていく。普段生徒会室の近くなんて通ることがほとんどないから、なんだか新鮮だった。ドキドキしながら、白嶺さんの後ろをついていっていたら、生徒会室に到着する直前で白嶺先輩が立ち止まった。
「ああ、そうだ。喉とかかわかなかったかい?」
「乾きました……」
嘘をついても仕方がないから、事実をそのまま伝える。さっきまで小鈴に引き出しに閉じ込められていたり、詩葉に追いかけ回されたりしたのに全然水分補給はできていなかったから、確かに喉は渇いている。正直水とか飲ませてもらえたらめちゃくちゃありがたい……。
「そうだろうね。きっと例の巨女たちに酷い目に遭わされただろうからね」
「べ、別に酷い目とかに遭わされてませんから……」
実際はそこそこ酷い目に遭ったけれど、この人にそれを伝えたら月乃様のことまで悪者扱いをしてきそうで嫌だった。
「さあ、怖い思いをして喉も渇いているだろうからね。遠慮無く飲んでくれていいよ」
そう言って、小さな水の入った瓶を渡してくれるけれど、そのサイズ感が明らかにおかしかった。思っていた水よりも遥かに小さい。
「これ……?」
小指の第二関節くらいまでの高さくらいしかない、小さな瓶。それを満面の笑みで渡してくるのだ。
「さあ、ぐいっといってくれたまえ。とても珍しい、美味しい水だよ」
にこやかに笑いかけてくる端正な顔立ちの長身美人。どこか圧を感じてしまうのは気のせいだろうか。小さな瓶をよく見たら、drink meなんて書いてあるし、まるで不思議の国のアリスである。瓶自体の大きさも小さいし、なんだかこれを飲んだらそのまま小さくなってしまいそう……。
「なんだか怪しいんですけど……」
「まあ、無理にとは言わないよ。飲まないなら私が飲むから」
少し不機嫌そうに言われる。ちょっと怪しくはあるけれど、白嶺さんも飲んでくれるというのなら、そこまで怪しものではないのかな。生徒会長の好意を無碍にしても怒られそうだし、せっかくだし飲んでおこうかな。そんなことを思って、彼女の指示通り飲んでみるのだった。
「あ、美味しい」
飲んだことのない水の味だった。変わった味だけれど美味しい。
「ね、言った通りだろ」
白嶺先輩は満足気に笑った。
「はい、ありがとうございま……」
あれ……?
突然ふらついて視界がぐるりと回った。一体何が起きているのだろうか。倒れそうになったところを、白嶺先輩が抱き寄せてくれた。
「大丈夫かい?」
心配そうに声をかけてくれた白嶺先輩の顔が嬉しそうなのは、ふらついているせいで見てしまっている幻覚なのだろうか。
「す、すいません。……って、あれ?」
触れた瞬間に違和感があった。もたれかかったらちょうど頭がぶつかった場所が柔らかかったから。先輩のお腹の辺りに頭部が触れたのだろうけれど、横に並んだ時にお腹の辺りに頭があるくらい身長差あったっけ。まるで小学生と大人くらいの身長差がある気がする。抱き寄せられたはずなのに、なんでわたしは白嶺先輩のお腹のあたりに頭をくっつけてるの……?
「なんだか白嶺さん大きくないですか……?」
「173だから確かに大きいけど」
「いえ、そんなレベルじゃなくて……」
白嶺さんは確かに背は高かったけれど、ここまで大きくはなかった。150センチちょっとのわたしとかなり身長差がある。これじゃあ2メートルを超えるくらいのサイズじゃないか。
「少し休んだほうがいいよ。きっと周りに意地悪な巨女がいっぱいいるような場所にいたから、サイズ感に違和感が出ちゃってるんだね」
困ったようにわたしのことをお姫様抱っこをしてくれた。それも軽々と。何かがおかしい気がする。
「力強すぎません……?」
「体育は5だからね。運動神経が良いからじゃないかな」
そんな単純な問題なのだろうか……?
いくらわたしの体重が軽くても、こんなにも人間って軽々持ち上げられるものなのだろうか。まして高身長とはいえ華奢な白嶺先輩である。これじゃあやっぱりわたしが小さく、軽くなっているみたい。もしかして、白嶺先輩も巨大少女だったりするのだろうか。そんなことを考えている間に、次第にウトウトしてくる。まるで夢の中にでもいるみたいだった。
意識が朦朧として半覚醒状態の中で聞こえてきたから、それが現実の会話なのか、夢の中で聞こえてきていることなのか、よくわからなかった。なぜか先ほどの月乃様の手のひらの上のような柔らかい感触がした。まるで手のひらの上に乗っているみたいな、包み込むような感覚がした。
「かいちょー、薬無駄遣いしないでくださいよー」
ふわふわとした感覚とともに聞こえてくる間延びしたような話し方をする女の声。
「無駄じゃない。これは有効利用だ」
「そんなこと言って、小さくして遊びたいだけじゃないですかぁ?」
「貴様と一緒にするな。だいたい私もこれから小さくなるんだからな」
小さく……、って言ってた……?
「え! じゃあかいちょーで遊べるんですかぁ?」
「本当に私で遊んだら戻ってからただじゃおかないからな」
「やだなぁ、冗談ですってばぁ」
待って、本当に何の話……?
夢の中で聞こえているのだろうか。やっぱりついさっきまでビルみたいに大きな女の子たちに囲まれていたから変な夢でも見ているのだろうか……。
聞こえてきた言葉が事実なのかどうかの確認をしようと思ったけれど、周囲の景色を確認するよりも先に、眠りに落ちてしまうのだった。




