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「新堂君……私の事、どう……思ってる?」


伊崎さんは少し俯いて彼に訊ねた。




「どうって……」


困ったように眉根を寄せる新堂君。




私はドキドキしながら茂みに隠れて聞いていた。




「新堂君は今、好きな子とか……いるの?」




「……うん」




「誰?」




「……」




「教えて?」


強引に聞き出そうとする伊崎さん。




「誰だっていいだろ?」


そんな彼女に新堂君は少し素っ気無く返した。




「……門倉さんでしょ?」


伊崎さんは絶対の確信があるのか、そうなんでしょ? という感じで新堂君を見つめた。




「昨日、彼女のお見舞いに行ったでしょ?」




「どうして、それを……っ?」




「門倉さんが入院してる病院、うちの病院なの。


 それでパパが私と同じ学校で同じ学年の子が入院してるって言ってたから、


 誰かと思って見に行ったの……そしたら……新堂君が門倉さんの病室にいたから……、


 別になんとも思っていない子なら、わざわざお見舞いなんて行かないでしょ?


 だから……もしかして新堂君、門倉さんの事、好きなんじゃないかと思って……」




「……」




「彼女の事、想ってても無駄よ?」




「それ……どういう意味?」




「あの子、もう何日も意識がないの。辛うじて集中治療室には入ってないけど、


 ナースステーションの目の前の病室にいる意味……新堂君だってわかるでしょ?」




(それって……いつ容態が急変するかわからないとか、そういう事?)




「……」


新堂君は黙ったまま俯いていた。




「もし、新堂君が私と付き合ってくれるなら、門倉さんの事、助けてあげる」




(え……?)




「……っ」


新堂君はハッと顔を上げた。




「今のままだと、多分、後何日もしない内に死んじゃうわ。


 でも、新堂君が私と付き合ってくれるって言うなら、パパに頼んで


 最高権威の医師を呼んでもらうからっ」




(何よ……それ……)


私はまさか彼女が私の命と引き換えに新堂君に交際を迫るだなんて思ってもみなかった。




次の瞬間……、




どこからか、ジャスミンの香りがした。




(……ジャスミンさん?)




「ちょうどいい子が見つかったじゃない?」


その声に振り返ると、不気味な笑みを浮かべたジャスミンさんが立っていた。




「あの子、殺しちゃいなさい」




「え……伊崎さんを、ですか?」




「そうよ……あの女、アンタの命を盾にして交際迫ってんのよ?


 だけどアンタがあの女の命を狩れば、あの女は死んでアンタは元に戻る事が出来るわ。


 こんないい事ないじゃない?」




「で、でも……」




「いいの? このままだとアンタが好きなあの男……あの女に取られちゃうわよ?」




「……」




「その医者なら……確実に門倉さんを助けられるのか?」


私が新堂君の方に振り返ると、彼は真剣な目で言った。




「俺が伊崎さんと付き合えば門倉さんは本当に助かるのかっ?」




(……新堂君?)




「えぇ、そうよ」




(駄目だよっ! だって、私、本当はもう死んでるんだよっ?


 代わりを見つけないと助からないんだよっ?)


「ニャフーッ!(騙されちゃ駄目ー!)」


私は思わず茂みから飛び出し、新堂君と伊崎さんの間に割って入った。




「きゃっ!? 何よ、この猫っ」




「ピーチッ!?」




「……え、この猫……新堂君、知ってるの?」




「あぁ……俺の猫」




「そ、そう」




「ピーチ、おまえ、家にいたんじゃなかったのか?」


そう言って優しく私を抱き上げる。




「ニィー(だってー)」




「俺を迎えに来たのか?」


新堂君は優しい笑みを浮かべて私の頭をよしよしと撫でた。




「ピーチが迎えに来たから、帰るよ」




「えっ!? ちょ……っ」




「それじゃ」


新堂君はくるりと踵を返した。


背中の方で伊崎さんが何か言っている。






「ニャウー?(放っておいていいの?)」




「おまえが来てくれて助かったよ、ありがとな」


公園を出たところで新堂君が私を抱いたまま言った。




「……でも、門倉さん、大丈夫かなぁ?


 やっぱり……伊崎さんと付き合った方がいいのかな?


 そうすれば、門倉さんは助かるって言ってたし……」




(新堂君……)




「あの女、明日にでもまたこの彼のところに来るわよ?」


気がつけばジャスミンさんが後ろをついて来ていた。


もちろん、ジャスミンさんの声は新堂君には聞こえていないし、


姿も見えていない。




「アンタが誰かの命を狩らない限り、あの女は彼に迫り続けるわよ。


 彼は拒み続ける事が出来るかしら?


 今ですらこんなにアンタの事を想ってるのよ? さっきだって。


 アンタがこのままずっと目を覚まさなかったら……わかるわよね?」




(私が目を覚まさなかったら……)




「さぁ、今すぐこの死神の鎌であの女の命を狩ってらっしゃい!」


ジャスミンさんは私に大きな鎌を差し出した。




怪しく黒光りしている大きなその鎌を私は受け取った。




「……あれ? ピーチ?」


私の姿は仔猫から元の姿に戻っていた。


しかし、彼には見えていないらしい。




「いつの間にいなくなったんだろ?」


新堂君はキョロキョロと辺りを見回して、仔猫の私を捜した。




「さぁ、行くわよ」


ジャスミンさんはそう言って私の肩を抱いた――。

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