27話 夜会のお誘い!
午後。
珍しくレオン様からお茶のお誘いがあった。
場所は王城の庭園にあるガゼボ。
東屋とも呼ばれるらしい。
白い柱に囲まれたその場所は、花々に囲まれていて絵本の中のようだった。
「お待たせしました」
琴葉が頭を下げると、レオンは優雅に微笑んだ。
「来てくれてありがとう」
相変わらずキラキラしている。
眩しい。
眩しすぎる。
テーブルにはお茶と焼き菓子が並べられていた。
しばらく他愛ない話をして過ごす。
最近の魔法のこと。
街で買い物をしたこと。
ノアのこと。
話していると自然と緊張もほぐれていった。
そして。
レオンがカップを置いた。
「今日は一つお願いがあってね」
なんだろう。
琴葉は姿勢を正した。
「二週間後に夜会があるんだ」
夜会。
聞いたことはある。
参加したことはない。
当然だ。
日本で普通に働いていた人間が夜会に参加する機会などあるはずがない。
「そこで琴葉さんのお披露目をしようと思う」
琴葉は固まった。
「お、お披露目ですか……?」
「うん」
レオンは穏やかに頷く。
「異界の花嫁が召喚されたことは皆知っている。でも実際に会ったことがある人は少ないからね」
なるほど。
理屈は分かる。
分かるけれど。
胃が重い。
すごく重い。
「僕がエスコートするよ」
にっこり。
爽やかな笑顔。
王子様だった。
本物の王子様だった。
イケメンすぎる。
だが問題はそこではない。
「だ、ダンスとか踊れませんけど……」
思わず本音が漏れた。
するとレオンはくすりと笑う。
「踊らなくてもいいよ」
「え?」
「美味しい食事とお酒を楽しんでくれれば十分だ」
どうやら心を読まれたらしい。
「そういうものなんですか?」
「そういうものだよ」
優しい。
本当に優しい。
だから余計に断りにくい。
しばらく悩んで。
「……分かりました」
琴葉は頷いた。
レオンは満足そうに微笑む。
「よかった」
そして何気ない口調で続けた。
「ドレスはこちらで準備するよ」
「えっ」
「贈るからね」
「……ありがとうございます」
断れなかった。
夜会。
ドレス。
お披露目。
胃が重い。
とても重い。
お茶の味が分からなくなりそうだった。
◇◇◇
ガゼボを後にする。
後ろにはいつもの護衛騎士。
夜会かぁ。
歩きながらぼんやり考える。
想像するだけで緊張してきた。
貴族。
王族。
ドレス。
絶対に場違いだ。
ため息をつきそうになって。
ふと後ろを振り返った。
「リヒトさん」
灰色の瞳が向く。
「当日は出席されないんですか?」
少し気になって聞いてみた。
すると。
「そばでお守りします」
即答だった。
琴葉は目を丸くした。
最近は本当に会話ができるようになった。
前なら頷くだけだったかもしれない。
「そうなんですね」
なんだろう。
少しだけ肩の力が抜けた。
「ちょっと不安だったので嬉しいです」
照れながら笑う。
リヒトは何も言わない。
ただ。
ほんの少しだけ目元が柔らかくなった気がした。
気のせいかもしれない。
それでも。
夜会への不安は少しだけ軽くなっていた。




