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25話 珍しく質問された!

討伐は思いのほか順調だった。


魔物の出現数も少なく、浄化もスムーズに進んだ。


以前なら緊張でいっぱいだった実地訓練も、今では少し余裕が出てきている。


帰りの馬車の中。


琴葉はほっと息を吐いた。


向かいには誰もいない。


そして隣には——。


いつもの騎士。


リヒトが座っている。


もう隣が定位置になっていた。


慣れとは恐ろしい。


「今日はうまくいきましたね」


琴葉が笑う。


リヒトは小さく頷いた。


「そうですね」


短い返事。


でも返ってくるだけで嬉しくなる。


少し前なら考えられなかった。


馬車が揺れる。


窓の外には夕焼けが広がっていた。


ふと琴葉は前から気になっていたことを思い出す。


「この世界の人って、どれくらいで結婚する人が多いんですか?」


少しの沈黙。


そして。


「……貴族は幼い頃から婚約して十八で結婚する」


琴葉は目を丸くした。


文章だ。


ちゃんと文章で返ってきた。


「へぇー!」


思わず声が弾む。


「じゃあリヒトさんも結婚してるんですか?」


「していない」


即答だった。


早い。


ものすごく早い。


思わず笑いそうになる。


「そうなんですね」


しばらく沈黙が流れる。


その時。


ぽつりと。


「……レオンとのことか?」


琴葉は瞬きをした。


えっ。


質問された。


今質問された?


リヒトから?


初めてじゃない?


思わずまじまじと見てしまう。


リヒトは無表情だった。


ただ前を向いている。


だが確かに聞いた。


「うーん」


琴葉は少し考えた。


「そうですね」


レオンの顔が浮かぶ。


優しくて。


頭も良くて。


王太子として完璧で。


「レオン様は本当に良い方だと思います」


リヒトは何も言わない。


「でも」


琴葉は苦笑した。


「そもそも結婚とか考えてなかったですし」


「王族になるのも無理ですし」


「それに」


少し照れながら続ける。


「結婚するなら恋愛してから結婚したいです」


馬車が揺れる。


しばらく沈黙。


そして。


「……そうか」


短い返事だけだった。


表情も変わらない。


何を考えているのか分からない。


でも。


どこか安心したようにも見えた。


気のせいかもしれない。


「そういえば」


今度は琴葉が尋ねる。


「婚約者とかいないんですか?」


「いない」


また即答だった。


早い。


本当に早い。


「そっかー」


琴葉は少しだけにやりとした。


「どんな女性と結婚したいんですか?」


興味半分。


からかい半分。


そんな気持ちで覗き込む。


リヒトはゆっくり琴葉を見た。


灰色の瞳。


相変わらず綺麗だ。


じーっと見つめ返される。


沈黙。


沈黙。


沈黙。


「……」


「……」


「……」


答えないんかい。


琴葉は心の中で盛大にツッコんだ。


流石に聞きすぎたかもしれない。


少し反省する。


結局。


それ以上会話はなかった。


馬車は静かに王城へ向かう。


窓の外の夕焼けが少しずつ夜へ変わっていく。


その間も。


二人は変わらず隣に座ったままだった。

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