↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/38

22話 護衛ですので

翌日。


琴葉は訓練場を訪れていた。


⸻


額に汗を浮かべながら木剣を振るノア。


⸻


年齢を考えれば十分上手い。


⸻


それでも何度も振り続ける姿は真剣そのものだった。


⸻


しばらく見学していると休憩時間になった。


⸻


「ノアー!」


⸻


琴葉が手を振る。


⸻


ノアが近付いてくる。


⸻


少し疲れているようだ。


⸻


「じゃーん!」


⸻


琴葉は持っていた籠を掲げた。


⸻


「ノアと一緒に食べようと思って持ってきたんだ!」


⸻


中にはお茶と焼き菓子。


⸻


エリーに頼んで準備してもらったものだ。


⸻


ノアは目を瞬いた。


⸻


「……別に」


⸻


そう言いながらも。


⸻


座るのは早かった。


⸻


◇◇◇


⸻


二人でお茶を飲む。


⸻


「今日すごかったよ」


⸻


「何が」


⸻


「剣」


⸻


ノアが固まる。


⸻


「すごく頑張ってたし」


⸻


「……」


⸻


「かっこよかった」


⸻


ノアがそっぽを向いた。


⸻


耳が赤い。


⸻


分かりやすい。


⸻


「かわいいなぁ」


⸻


「かわいくない」


⸻


即答だった。


⸻


◇◇◇


⸻


その時だった。


⸻


「私が手合わせしましょう」


⸻


低い声。


⸻


二人同時に振り向く。


⸻


「え?」


⸻


「えっ?」


⸻


そこにはリヒトが立っていた。


⸻


ノアが目を見開く。


⸻


「……リヒト卿が?」


⸻


琴葉も驚いていた。


⸻


(急に喋るじゃん……)


⸻


昨日まで壁と同化していた人とは思えない。


⸻


剣術教師も驚いている。


⸻


「おお……よろしいのですか?」


⸻


リヒトは静かに頷いた。


⸻


◇◇◇


⸻


訓練場中央。


⸻


向かい合う二人。


⸻


ノアの表情は真剣だった。


⸻


木剣を握る。


⸻


対するリヒトは無表情。


⸻


開始。


⸻


カン!


⸻


木剣同士がぶつかる。


⸻


カンッ!


⸻


カカンッ!


⸻


ノアも決して弱くない。


⸻


だが。


⸻


相手が悪かった。


⸻


数分後。


⸻


高い音が響く。


⸻


カァン!!


⸻


ノアの木剣が空を舞った。


⸻


地面へ転がる。


⸻


肩で息をするノア。


⸻


対してリヒトは呼吸一つ乱れていない。


⸻


まるで風でも浴びてきたかのようだった。


⸻


「おおー!」


⸻


琴葉が拍手する。


⸻


「すごい!」


⸻


ぱちぱちぱち。


⸻


ノアは悔しそうに唇を噛む。


⸻


リヒトは何も言わない。


⸻


ただ木剣を返した。


⸻


「……まだ早い」


⸻


それだけだった。


⸻


ノアは悔しそうに剣を受け取る。


⸻


けれど。


⸻


その目は負けていなかった。


⸻


◇◇◇


⸻


帰り道。


⸻


琴葉とリヒトは並んで歩いていた。


⸻


「どうして急に相手してあげたんですか?」


⸻


琴葉が尋ねる。


⸻


沈黙。


⸻


やっぱり返事はない。


⸻


と思った。


⸻


「……剣がなまるので」


⸻


ぽつり。


⸻


琴葉は納得した。


⸻


「あー!」


⸻


「そうですよね!」


⸻


「ずっと護衛してもらってますもんね」


⸻


そして。


⸻


ふと思ったことを口にする。


⸻


「そういえば」


⸻


「まだ護衛って必要ですかね?」


⸻


「王城の中ですし」


⸻


沈黙。


⸻


数秒。


⸻


そして。


⸻


「……危ないので」


⸻


短い返事。


⸻


琴葉は首を傾げた。


⸻


(そうですか……)


⸻


王城の中で何が危ないのだろう。


⸻


よく分からなかった。


⸻


一方。


⸻


リヒトは前を向いたままだった。


⸻


その灰色の瞳だけが。


⸻


ほんの少しだけ細められていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。