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22話 護衛ですので

翌日。


琴葉は訓練場を訪れていた。



額に汗を浮かべながら木剣を振るノア。



年齢を考えれば十分上手い。



それでも何度も振り続ける姿は真剣そのものだった。



しばらく見学していると休憩時間になった。



「ノアー!」



琴葉が手を振る。



ノアが近付いてくる。



少し疲れているようだ。



「じゃーん!」



琴葉は持っていた籠を掲げた。



「ノアと一緒に食べようと思って持ってきたんだ!」



中にはお茶と焼き菓子。



エリーに頼んで準備してもらったものだ。



ノアは目を瞬いた。



「……別に」



そう言いながらも。



座るのは早かった。



◇◇◇



二人でお茶を飲む。



「今日すごかったよ」



「何が」



「剣」



ノアが固まる。



「すごく頑張ってたし」



「……」



「かっこよかった」



ノアがそっぽを向いた。



耳が赤い。



分かりやすい。



「かわいいなぁ」



「かわいくない」



即答だった。



◇◇◇



その時だった。



「私が手合わせしましょう」



低い声。



二人同時に振り向く。



「え?」



「えっ?」



そこにはリヒトが立っていた。



ノアが目を見開く。



「……リヒト卿が?」



琴葉も驚いていた。



(急に喋るじゃん……)



昨日まで壁と同化していた人とは思えない。



剣術教師も驚いている。



「おお……よろしいのですか?」



リヒトは静かに頷いた。



◇◇◇



訓練場中央。



向かい合う二人。



ノアの表情は真剣だった。



木剣を握る。



対するリヒトは無表情。



開始。



カン!



木剣同士がぶつかる。



カンッ!



カカンッ!



ノアも決して弱くない。



だが。



相手が悪かった。



数分後。



高い音が響く。



カァン!!



ノアの木剣が空を舞った。



地面へ転がる。



肩で息をするノア。



対してリヒトは呼吸一つ乱れていない。



まるで風でも浴びてきたかのようだった。



「おおー!」



琴葉が拍手する。



「すごい!」



ぱちぱちぱち。



ノアは悔しそうに唇を噛む。



リヒトは何も言わない。



ただ木剣を返した。



「……まだ早い」



それだけだった。



ノアは悔しそうに剣を受け取る。



けれど。



その目は負けていなかった。



◇◇◇



帰り道。



琴葉とリヒトは並んで歩いていた。



「どうして急に相手してあげたんですか?」



琴葉が尋ねる。



沈黙。



やっぱり返事はない。



と思った。



「……剣がなまるので」



ぽつり。



琴葉は納得した。



「あー!」



「そうですよね!」



「ずっと護衛してもらってますもんね」



そして。



ふと思ったことを口にする。



「そういえば」



「まだ護衛って必要ですかね?」



「王城の中ですし」



沈黙。



数秒。



そして。



「……危ないので」



短い返事。



琴葉は首を傾げた。



(そうですか……)



王城の中で何が危ないのだろう。



よく分からなかった。



一方。



リヒトは前を向いたままだった。



その灰色の瞳だけが。



ほんの少しだけ細められていた。

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