21話 ツンデレかよ!
翌朝。
朝食を終えた頃、エリーが一通の手紙を持ってきた。
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「ノア様からです」
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「ノア?」
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封を開く。
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そこには短い文章。
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『部屋に来て』
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以上。
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「短っ」
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思わず声が出た。
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だが少し笑ってしまう。
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昨日の様子を思い出す。
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「午後に行きますって返事お願い」
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「かしこまりました」
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◇◇◇
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午後。
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琴葉はノアの部屋を訪れた。
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ノックをすると、
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「入って」
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中から声がする。
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部屋に入ると。
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ノアはソファに座って本を読んでいた。
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「こんにちは」
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「……ん」
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相変わらず愛想はない。
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だがちゃんと返事はする。
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少し成長している。
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「座って」
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言われて向かいのソファへ向かう。
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すると。
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「そっちじゃない」
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「え?」
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ノアが隣を指差した。
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「こっち」
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「え?」
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「こっち」
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二回言われた。
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琴葉は素直に隣へ座る。
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肩が少し近い。
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(近くない?)
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とは思ったが、本人は気にしていないらしい。
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◇◇◇
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しばらく沈黙。
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ノアは本を読む。
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琴葉はお茶を飲む。
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従者は見守る。
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不思議な空間だった。
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ふと。
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琴葉はノアの本を覗き込んだ。
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「騎士の本?」
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ノアが小さく頷く。
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「騎士が好きなの?」
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「……好きだけど」
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少しだけ照れたような返事。
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かわいい。
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「剣も好き?」
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「まあ」
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「部屋にも置いてあるもんね」
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壁際の剣を見る。
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「ノアも剣の練習してるの?」
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「……王子もできないとだから」
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「へー!」
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琴葉は素直に感心した。
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「すごいじゃん!」
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ノアはそっぽを向く。
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だが耳が少し赤い。
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褒められるのは嫌いじゃないらしい。
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◇◇◇
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しばらくして。
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「……読みたいなら」
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ノアが本を少し傾けた。
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「え?」
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「見てもいい」
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琴葉は目を輝かせた。
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「いいの!?」
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ノアが頷く。
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二人で本を覗き込む。
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騎士の伝記だった。
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「この人強そう!」
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「強い」
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「この人絶対途中で死ぬでしょ」
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「死ぬ」
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「やっぱり!」
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そんな会話を繰り返しながらページをめくる。
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いつの間にか肩が触れていた。
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どちらも気づいていない。
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ただ一人を除いて。
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後ろで護衛をしている騎士だけが。
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静かにその様子を見つめていた。
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帰る頃。
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「そういえば明日、剣の稽古の日」
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ノアがぽつりと言った。
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「そうなの?」
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「うん」
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「へぇ!」
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琴葉の目が輝く。
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「見に行きたい!」
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ノアが少し驚いた顔をした。
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数秒後。
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「……来たいなら来れば」
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ぶっきらぼうに言う。
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だが。
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どこか嬉しそうだった。
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翌日。
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訓練場。
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木剣を握るノアがいた。
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額に汗を浮かべながら何度も剣を振っている。
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「ノアー!」
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琴葉が手を振る。
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ノアが振り返る。
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少しだけ嬉しそうな顔。
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「頑張って!」
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「……うん」
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そして再び剣を振る。
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「わあ……」
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琴葉は感心した。
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「ノアかっこいいね!」
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その言葉に。
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ノアの剣が少しだけ速くなった。
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そして。
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少し離れた場所で。
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黒髪の騎士が無表情でそれを見ていた。
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面白くなさそうに。
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とても面白くなさそうに。




