2話 眠気には勝てない!
初老の男性に説明を受けた後。
琴葉は限界だった。
異世界。
異界の花嫁。
王子の婚約者候補。
色々言われた気がする。
だが。
眠い。
とにかく眠い。
⸻
「お部屋はこちらです」
侍女に案内された豪華な部屋。
ふかふかのベッド。
そこで記憶が途切れる。
⸻
目が覚めた時。
窓の外は真っ暗だった。
「……やば」
何時間寝たのだろう。
時計がないので分からない。
お腹が鳴った。
ぐうぅぅ。
盛大に。
「お腹空いた……」
夜勤明けで異世界転移。
最後に食べたのは夜中のコンビニおにぎりだった気がする。
⸻
琴葉はそっと部屋の扉を開けた。
誰もいないと思っていた。
だが。
「っ!?」
目の前に人がいた。
思わず悲鳴を飲み込む。
黒髪。
灰色の瞳。
無表情。
リヒトだった。
「びっくりした!!」
胸を押さえる琴葉。
対するリヒトは微動だにしない。
「起きましたか」
「起きましたかじゃないよ!」
「?」
本気で分かっていない顔だった。
⸻
「こんなところで何してるの?」
「護衛です」
即答。
まるで当たり前のことを言うように。
「ずっと?」
「はい」
琴葉は絶句した。
寝ている間ずっと?
暇じゃないのだろうか。
⸻
そして再び。
ぐうぅぅぅ。
お腹が鳴った。
今度は盛大だった。
死ぬほど恥ずかしい。
「……」
「……」
沈黙。
消えたい。
⸻
「何か食べるものありませんか……」
恐る恐る聞く。
リヒトは少し考えた後、無言で歩き出した。
ついて行ってもいいのだろうか…
⸻
夜の王城。
誰もいない廊下。
リヒトの後ろをついていく。
長い脚。
広い背中。
歩幅が大きい。
途中で気づいたのか。
少しだけ速度を落としてくれた。
たぶん無意識だ。
⸻
案内されたのは厨房だった。
人影はない。
もう夜遅いのだろう。
リヒトは棚を開ける。
そして果物籠を持ってきた。
赤い果実。
葡萄のようなもの。
見たことのない果物もある。
無言で私の目の前に差し出してくる。
「え、いいの?」
「問題ありません」
⸻
琴葉は赤い果実を口に運ぶ。
甘い。
びっくりするほど甘い。
「美味しい!」
思わず笑顔になる。
すると。
向かいに立つリヒトが一瞬だけ目を細めた。
本当に一瞬。
気のせいかもしれないほど。
けれど確かに。
少しだけ柔らかい表情だった。
夜勤明けのとんでもねえ疲労が伝わってたら嬉しい




