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お前らのせいで

 ティルザさんに過去を映し出してもらい、トラウマの原因を知ることができた俺は、そもそもギルドへ戻ろうか?と話をしていた。


「なぁテリス!私達と一緒に来てくれないか?この戦いの間だけでいいんだ!」


 アリアさんがティルザさんについてきてくれないか説得をしていた。しかしそれを頑なな断るティルザさん。


「だからその名で呼ぶなと何度言えばわかる!そもそもギルドになんて二度と戻るか!あんなところに戻るくらいならドブの中で死んだほうがずっとマシだよ」


 そこまで嫌がるなんて、一体何があったのだろうか。昔はアリアさんと一緒に冒険者をやっていたらしいが、その時に嫌なことでもあったのだろうか。


「あの、なんでそんなにギルドが嫌なんですか?」


 素朴な疑問をストレートにぶつけてみた。するとものすごく単純な答えが返ってくる。


「ん?嫌いだからだよ、あそこにいる人間の殆どが!力もないくせに戦って、それをさも当然のように治せ!って言ってくるんだ。しかも殆ど私が倒してるのに報酬は当分と来た。それと普段も最悪だな、少しでも自分たちの悪益になると判断したら一瞬で切り捨てる。それだけならまだしも追い討ちをかけるように集団で嬲ってくるんだよあいつら。まぁそれでも私の方が強いんだがな!とにかくもうギルドなんてもんはうんざりなんだよ、ここでゆっくりゆったりと暮らすのが私にあってる」


 その言葉に年数が圧倒的に短い俺以外はうなだれてしまう。そういう人たちを何人も見てきたのだろう。納得してしまっている顔だ。


「・・・そうか、残念だ。テリスが来てくれればすごい戦力になったんだがな。まぁ無理強いはできないし・・・分かったよ」


 大人しく引いたアリアさんをティルザさんはぼ〜っと見つめる。


「な、なに?私の顔になにかついてる?」


「ん?・・・ああ、ゴブリンがついてる」


「それはどう返すのが正解なの?」


 反応に困るボケをされて困惑するアリアさん。


「なんというか・・・今日一日見ていて思っていたが、変わったなアリア」


「そうかぁ?」


 アリアさんの過去か、興味ある。


「アリアさんって昔はどんな感じだったんですか?」


「なっ!ちょっと蓮!」


「昔のアリアはなぁ、一言で言うなら・・・最っ悪だ」



 唐突に最悪な人間だったと告白され固まるアリアさん。伸ばした手に、開いた口が塞がっていない。時間が停止したようだ。


「まずこんなフレンドリーな性格じゃなかった。近づく者全部殺すって感じでな、私もよくいじめられたものだよ」


「いじめてないわよ!風評被害を広めないで!」


 基本クールな感じのアリアさんが酷く動揺している。なんだか新鮮だ。


「まぁ冗談はこれくらいにして、怖かったのはほんとだよ。ひたすら一方的にモンスターを狩まくるその様から[壊雷(かいらい)]って呼ばれてたくらいだ」


「む、昔のことだろ!・・・せっかく弟子達には優しい師匠だと思われてたのに」


 涙目になりへたり込むアリアさん。その様子を見てクスクスと笑うティルザさんは、まるで現役時代の憂さ晴らしをしているように見えた。


「あ〜面白かった。いいもの見せてもらったよ。まぁだからって行かないけどね。そういえばもう戻るんだっけ?」


「はい、俺たちのために戦ってくれたみんなのことも心配なので」


 俺たちを逃すために殿を務めてくれたらしいバルク兄貴達に早く会ってお礼がしたい。そのために今すぐにでも帰らねば、そう思っていたのだが、ティルザさんに引き止められてしまう。


「もう今日は遅い、今から戻るのは危険だよ。それに聞いた話だと彼らが戦っていたモンスターはもう何処かへ消えたんだろ?だったら今行っても明日行っても変わらんさ」


「・・・まぁそうだな。テリス、今日1日世話になっていいかい?」


「ああ。そうじゃなければ引き止めたりしないよ--アリア、食事後少し話さないか?10年ぶりなんだ。積もる話もある」


 こうして俺たちはティルザさんの家に泊めてもらえることとなった。そのことについてお礼を言おうとした時、そういえば過去を見せてもらったことについて感謝を告げていなかったと思い出した。


「あの、ティルザさん!」


「ん?何か不満でも?」


「あの、今日は色々ありがとうございました!止めてもらったこともそうですし、何より、ティルザさんのおかげで俺のこと、そして家族のことを知れました。本来なら絶対知れなかったことだから・・・すごい嬉しかったです!だから、ありがとうございました!」


 俺は誠心誠意頭を下げる。向こうはもしかしたら仕事としてやっていたのかも知れない。だがそれでも俺は救われたのだ。自分でそう感じたのならこうすべきだろう。


「・・・ふっ、構わないよ。だが・・・患者にお礼を言われる、やっぱりこう言う仕事が私は好きだよ」


 そう言って部屋の奥に去っていったティルザさんの顔には、なんだか笑みが浮かんでいるように見えた。


 食事後、アリアさんとティルザさんはベランダで隣り合い話をしていた。


「どうしたんだテリスから話そうだなんて」


「いやなに、10年ぶりにあったから話そうってだけさ。まぁ、昔のお前な絶対話さなかったがな。・・・(というかそのテリス呼び変えるつもりないんだな)」


「ははっ!ほんとひどい言われようだなぁ!まぁ確かに昔は多少荒れてたが。--あっ、そうだ!蓮のことありがとうね、助かったよ」


「・・・いい子だね、あの少年。わざわざ後から頭下げるなんて。他の子もいい子達そうだった、あんたが変わったのはそのおかげ?」


「・・・うん、そうだと思う。特にレヴィと蓮だね。あの2人が私の弟子なんだ!強くて真面目で優しい、あの頃の私が持ってなかったものを全部持ってる、自慢の弟子だよ」


「・・・そっ、ちゃんと守ってあげなさいよあの子達のこと。あと・・・あんた自身も気をつけなよ。強いんだろ?敵」


「・・・・・・まぁね。私が勝てないかも知れない奴が数体、絶対勝てないのが1体いた。--でも、大丈夫だっ!全員倒せるくらい強くなるし、全員守れるくらい強くなる。そして、誰も死なないように強くもする。それに、命に変えて弟子を守るのが使者あの役目だ!その辺は・・・大丈夫だよ」


「・・・そっか、壊雷がいうんなら大丈夫だろうな」


「うっ・・・もういい、飲んで忘れる。今日は飲んで離して明かすわよ!付き合いなさいよテリス!」


「はぁ、まぁいいだろう、今のお前なら。--ただし先に落ちてみろ、2階から突き落とすぞ」


「ははっ!罰がえぐい!じゃああれだ、そっちが落ちたら私達と来てもらうろぉ!れったいにはつ!」


「・・・(もしかしてもう勝ったかな?)」


 こうして夜は明け、出発の日。俺たちは身支度を済ませ玄関前で別れの挨拶をする。因みに何故か顔が泥だらけのアリアさんには誰も触れない方向だ。


「あの、本当にありがとうございました!お世話になりました!」


 俺が頭を下げると、ティルザさんは若干めんどくさそうに手で払う。目にくまができものすごく眠たそうだ。


「はいはい、行くんならさっさと行きなさいな。私は早く寝たいんだ」


「ははっ・・・それでは、本当にお世話になりました。じゃあ--」


 俺たちは踵を翻しギルドまでの道に歩みを進める。その時、突然俺の体に張り手がぶつけられる。振り返るとそこにはティルザさんがいた。


「えっ?いきなりなに--」


「魔法・・・魔法使え」


「魔法・・・あぁ異類無礙(アクセプト)かな?」


 推測通り俺は魔法を発動する。すると、ティルザさんの手が光り輝いた。これは過去を映した時に出ていた光だ。ということは--


「・・・餞別だ。大事な時に使え。死にさえしなきゃ使えるよ。・・・気をつけなよ、全員さ」


「はい!ありがとうございました!」


 今度こそ俺たちは歩を進め、手を振りながらティルザさんの家を後にした。ついてきてくれなかったのは残念だが、すごい手土産をもらった。大事に使おう。


「・・・頑張りなよ。死にさえしなきゃ、治してやれるかも知れないからさ」


 その後俺たちは長い時間をかけギルドへと戻ってきた。何故か街は閑散としており、ゴーストタウンとまでは言わないがとにかく活気がない。一体なにが--


 ギルドのドアを開け足を踏み入れる。すると、俺の顔になにか硬いものが飛来し、直撃した。


「--ッ!・・・なんで今の?」


 足元を見る。すると、そこにはビールジョッキが転がっていた。


「・・・ん?なんでこんなものが--」


 訳もわからず突っ立っていると、その後も色々なものが俺に直撃する。先ほどと同じくジョッキだったり皿だったり、とにかくそこにあったものを投げつけられた。そしてそんなことをしてきた犯人--いや、犯人達は、同じギルドのメンバーだった。


「お前の・・・お前のせいだからな!!」


「・・・はい?」


 突然の罵声に俺はただ、首を傾げることしか出来なかった。





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