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華蛇対マスター

「さて、第3ラウンドと行こうかい・・・!」


 マルロに代わり、マスターが、蛇姫(だつき)に代わり華蛇(かだ)が戦いに臨む。


「ん〜、そうしたいのはやまやまなんですけどねぇ。それをしたら彼らに殺されそうなので」


「なんじゃつれないのぉ。せっかく少し拳骨(寵愛)をくれてやろうと思っとったのに・・・ほんじゃあ何かい?大人しくやられくれるのかい?」


「そういうわけにもいかないんですよねぇ。ん〜、よし!では折衷案でワタシ達すごい謝るので通してください!」


 その言葉の後、マスターが踏む地面が砕けた。先程までの柔らかい表情とは裏腹に現在は怒気を孕んでいる。


「おい若造・・・あまり調子に乗るんじゃぁない・・・!通したらどうなる?そのあと儂の孫たちを追いかけるんじゃろ?」


「ははっ!怖い。・・・その質問に答えるとすれば、いいえです。ワタシたちは別にあなたのお孫さんは追っていません。・・・あっ、姉上は追ってましたね。まぁとにかく、元々の標的ではありませんよ。ワタシ達の標的は--脳無しである指宿蓮君ただ1人です!あとは生きてようが死んでようが殺されようが喰われようが、どーーーでも良いですね!」


 にこやかにそう答える華蛇。そこには一切の嘘偽りはない。本当に指宿蓮以外はどうでもよく、何もしなければ何もしないし、邪魔をするなら邪魔だから殺す。本当にこの程度しか感じていないのだ。


「ワタシは嘘つきで通ってますがね、興味がないことに関しては真正直な生き物なんですよ!先ほどの答えの裏付けとして、ここにいる民間人達は殺してないでしょ?どーでもいいからです。今ここで見てるしか出来ない人間なんて、大した脅威たり得ません。寧ろどれだけ弱くても歯向かってくるくらいの方が脅威たり得ますよ、認識はしますしね」


 この話を無言で聞くマスター。これは、殺すと決めた相手にのみ行う、殺される前に喋りたいことはあるだろうという、いわば自分ルールである。


「・・・話は・・・まだあるかい?」


「いいえ?今は特に・・・喋りたくなったら喋りますよ!」


「悪いねぇ・・・そこまでは、待てんよ--!」


 マスターは手で人を払う動きをする。その行動に疑問の表情を浮かべる華蛇。だが、理由はすぐに分かる。


「えっと・・・それはシッシッ!ってポーズですよね?それが一体何が--ッ!」


 いきなり華蛇の周囲に引力のようなものが発生し、マスターの元に引き寄せられる。


「(なるほど、人を払うから逆に近づける・・・と)」


 華蛇は引き寄せられながらも、自身の目の前に人の槍を生成し、それを構える。


「無駄じゃよ。この距離では攻撃は当たらん--お主のはなぁ。納刀術--結納輪墓(ゆいのうりんぼ)


 刀を少しだけ開いた状態で、撫でるように回転させる。そして--納めた。


 刹那、銀の槍は複数に輪切りされ、華蛇の体にも旋回した切り傷がつけられる。


「--ッ!痛い・・・ですねぇ!ですがまだ--!」


 再び槍を生成し突撃しようとする華蛇。だがその槍は間合いにすら入ることを許されない。


「ふん、当たらんよ--来いこい(シッシッ)


 今度は手招きすると、今度は斥力が働き吹き飛ばされる。


「うわっ!今度は飛ばされた!ならば・・・闇雲に!」


 吹き飛ばされながら手に持っていた槍を投擲する。とてつもないスピードだ。


「ほぅ、早いのぉ。じゃが・・・通用せんよ」


 銀の槍は確かに直撃した。だが、当たった瞬間に砕けて消えてしまう。どころか少し付いていた傷が消えている。


「あぁなるほど、攻撃は回復す--るぁ!・・・壁痛ったー!」


 分析している間に壁に激突した。そんな華蛇の分析だが、正解である。真逆の効果が起こる。ということはつまり、ダメージを受ける行為は自信を回復するということである。


「うん・・・厄介ですねぇ。ですが魔法には絶対に弱点があるものです。さて何か・・・なんて、探るのもめんどくさいですねぇ。その地面、割れますよ」


 マスターが立つ地面が崩落する。しかしそれは流石にバレている。再び空中に飛び剣を握った。


「芸がないのぉ。この地面割がどういう理屈かは分からんが、予想しておけば脅威でもない!納刀術--」


「--ですねぇ。では--その剣、砕けてますよ・・・!」


 マスターが急いで刀を抜き確かめる。すると宣言通り、刀身が鞘の中でバラバラに崩れていた。


「なん・・・じゃと?・・・まさかお主、言ったことを現実化する魔法か?!」


「ははっ!そんな魔法ある訳ないじゃないですか!ワタシのこれは、ただの妄言ですよ。あっ、そうだ!足元気をつけてくださいねぇ」


「足元?」


 急いで足元に視線を移すも、特に何もない。変わらず崩落した地面があるだけだ。


「なんじゃ?何も--」


「あっ、すいません。上でした!」


「--ッ?!(上じゃと?何かに上を取られた気はせんかったが--」


「すいません、本当は下です!--銀女神のまつ毛(ハエジゴク)--!」


 地面より湧き出た水銀がマスターの両サイドを挟むように噴出し、まるである食虫植物が獲物を捕食するように、銀はマスターを覆うように押しつぶした。


「--マスター!!」


 バルクが動揺し大声で叫ぶ。


「安心してください!()()死んでないですから!まぁでも怪我くらいはしたかなぁ・・・」


 そう言って銀の塊をみつめる華蛇。


「やっぱり・・・その魔法は認識していないと反転させれないんですねぇ。つまり不意打ちに弱いと。彼に伝えてあーげよっと!」


 そう言って華蛇は蛇姫の元へと歩き出す。


「姉上、今のうちに行きましょうか!今なら邪魔だてする者もいませんし」


「--ッ!そ・・・そう蛇な。はよういくぞ」


 貧血で立てない蛇姫は、華蛇に抱き抱えられる。


「--おい待てこの野郎!!」


 旅立とうとする華蛇たちを止めたのはバルクだ。砂の三叉槍を作り立ち上がった。


「何が邪魔する奴はいないだ!このままのこのこ行かせるわけねぇだろうが!」


 それを見たグニラ、ルニア、エトラの3人も立ち上がる。それを華蛇は冷めた目で一瞥する。


「ふふっ、4人がかりでワタシ如きにも勝てなかった人がよく言いますねぇ。言っておきますがワタシは組織の中でも戦闘では最弱と言っていいんですよ」


「・・・最・・・弱・・・?お前ほどの奴が・・・?嘘だろ?」


「残念ですけど本当ですよ!ワタシなんてただ妄言を吐き、銀をばら撒くだけの者ですからねぇ。大したことないんですよ」


 いつものようにヘラヘラと語る華蛇。その為真偽の程は分からない。だが、バルクはその言葉に不思議と真実味を感じた。


「・・・だが・・・んなこと関係ねぇ!今お前を止めねぇと蓮がやべえんだろうが!だったら邪魔するしかねぇだろ!!」


「熱いですねぇ〜!嫌いじゃぁないですよ!ですが・・・今は邪魔です--あなた方にかかる重力、すごい重いですねぇ」


 その言葉を受けた瞬間、4人にかかる重力が何倍にも増え、平伏させられる。


「--ぐぁ!なんだ・・・これ・・・?!」


「これ・・・ディアスの魔法じゃないのかよ・・・!」


「時間があれば遊んであげられるんですけどねぇ・・・すいませんね、また今度会いましょう!」


 崩れかけた地面から水銀が溢れ出る。その銀は4人とマルロに付着し、だんだんと体を侵食していく。


「んなっ!なんだ・・・これ?!」


「動けねぇ!体が、像みたいだ・・・!」


「これは・・・まさか・・・!」


「俺たちを・・・銀人形にしようってか?悪趣味だ。--ぬっ!口にまで--」


(しろがね)世界(せかい)。この技は体内外問わず全て銀で固める技。安心して下さい!高温で炙れば溶けますよ!--って、聞こえてませんね」


 5人は完全な銀の人形へと変わり果ててしまった。全員苦悶な表情で固まっている。


「それでは--この銀の人形、あと少しで壊れて--」


「--待たんか小僧--」


「--ん?・・・ああ、忘れてた」


 声の発生源は上空の銀の塊。その声と共に大きく亀裂が入る。塊を無理やり内部から破壊し、着地した。現れたマスターは全身血だらけだ。


「舐めたマネ・・・してくれたのう・・・!はようそいつらにつけた銀を解除せんかい・・・!」


「良かったぁ、死んでなかった。もし死んでたらワタシが殺されちゃいますよ!あっ、でも十分死にかけですね」


「ガタガタ言わんとさっさと解除せんかい!この若造が!!」


 怒り心頭で殴りかかるマスター。それを軽々と上空に避ける。


 華蛇は会場に糸を張り上空で立ち止まる。


 そして--指パッチンをし人形化を解除した。


「--ハッ!・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・生き・・・てる?」


 バルクたちは助かったことに感激するというよりも実感がなさそうな様子だった。


「・・・何故、大人しく解除した?」


「ははっ!自分で解除しろって迫っておいてその質問ですか?言ったでしょう?あなた方の命なんてどうでもいいって。逃れて追いつければそれでいいんです。それ以上もそれ以下もない」


「何度も言うが、逃す訳ないと--」


「ですよね!ですからこれを落とすことにしました!--銀塊隕石アルジェントム・メテオリーテ。これをこの辺に落とします!多分冒険者総出で止めないといけない大きさなのでご注意を〜!」


 上空に手を伸ばし銀を排出する。それが一つの大きな塊となった。宣言通り数人で止められる大きさではない。仮に止めたとしてもどうにかできる大きさではない。破壊しなけらばいけない。だが破壊しては街に飛び散り被害は拡大する。どうあっても人数が必要だ。


「--貴様ーーーー!!!!無関係な人まで巻き込む気か!!!!」


「はい!」


「ッ!辞めんか!早くそれを解除--」


「嫌で〜す!」


 こうして一切の躊躇なく巨大な銀の塊を街に放り投げた。


「--ッ!!!!!!・・・街にいくぞ」


「なっ!だけどマスター」


「街の方を殺す気か!?儂も載せられるのは癪だが街の住人の安全確保が大優先じゃ!急いで街へ向かわんか!」


「--くっ!・・・はい」


 こうしてバルク達は街へと向かう。


「ぼーっと見とるお主らも早くせい!!」


「「「は、はい!」」」


 傍観していた冒険者達も、マスターの一言で街へと向かう。


「貴様は--いや、貴様らは許さんぞ・・・!いずれ貴様らは壊滅させる!覚えておれ!」


 顔中に青筋が浮かんでいるのではと思うほどの怒りが篭ったマスターの表情。そんな顔には意にも返さないと言った笑顔の華蛇。


「ええ、覚えときますよ!ただ、次に会うのはワタシではないでしょうが・・・ではっ!行きましょうか姉上!」


 そう言い残し華蛇は蓮たちが逃走した方向に向かい高速で飛び出した。


「(すまない蓮くん・・・なんとか逃げ切ってくれ!)」


 逃走する蓮たちのもとに再び蛇の牙が喉元を噛み切らんと接近していた。




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