蓮とレヴィとーー
試合会場入場口前にて、俺とレヴィは待機していた。現在3回戦最終試合が行われている。
「もうすぐだな、レヴィ」
「・・・そうね。どっちが勝っても恨みっこ無し。それで良いわよね?」
「当然!元々そういう話しだったろ?」
「そういえばそうだったわね、忘れてた」
レヴィの口数が少ない。最初は集中しているのかと思ったが、話を返してくれていることからそういうわけでもないのかもしれない。
「なぁレヴィ?なんかあった?」
この態度に疑問を感じ、レヴィに聞いてみた。
「えっ?別に・・・集中してるだけよ」
俺はレヴィが悩むであろう事柄について思案してみた。まず思いついたのは作戦に穴があったこと。しかしこれはアリアさんのおかげで解決している。では何か?試合に不安でも感じているのか?それとも俺と戦うのが嫌とか?まぁあり得なくはないが、特訓中俺を倒すと言っていたことから違う気がする。
・・・他に何か・・・あれか?モンスターが来るってのが不安、とか?レヴィは1度あいつらのせいで仲間を失っている訳だし、トラウマになっていてもおかしくない。
「モンスターのこと、不安か?」
「・・・別に、そうんなじゃ・・・」
反応を見るに正解のようだ。
「不安でもしょうがないと思うよ。あんなことあった訳だし」
「ほんとにそんなことじゃないの!ただ・・・根拠のない不安が襲ってるだけ。何かは分からないけど、良くないことがありそうで」
「良くないこと・・・ねぇ」
どうやら考えは外れていたらしい。それにしても良くないことか。悪い予想ってのは回避するために行動しなければ往々にして当たるもんだが、今回はどうなんだろうか。モンスターもすぐにこないこの状況で、誰かが暴動を起こす感じもない。そもそもこんな冒険者が大量にいるようなところで暴れる馬鹿はいない。であればその不安は少なくとも今日ではないのではないか?
「色々考えてみたけどさ、多分今日なんかあるってのはないだろ?だったら今は目の前のことに集中して良いんじゃないか?明日の事は明日考えれば良いと思うよ俺は・・・って、これなんかの受け売りだな多分」
だが実際この考え方は俺は好きだ。明日の事今日考えたところで、明日何が起こるか誰にも分からない。だったら今日のことを一生懸命考えた方が得だと思う。しかも今回のことなんか実態のない不安というだけ。余計に考えるだけもったいない。
「明日の事は、明日考える・・・ふふっ!なんか、ダメ人間みたいな考え方に聞こえるわね!--でも、今日はそうするわ。今はただ、優勝だけを見据える」
そう言ったレヴィの表情は明るかった。うん、やっぱりそういう顔のほうが似合うなレヴィは。
--と、そこに1人の青年がやってきた。
「--やぁ、ついに2人が戦うんだね。楽しみだよ」
その声の主は--ディアスだ。
「ディアス!あれお前今の試合の一個前じゃなかった?怪我とかは・・・」
「君みたいにボコボコにされてないからね。すぐだよ」
「あ、そう・・・それは、よかったね」
ディアスの発言に思わず微妙な顔つきになってしまう。
「オレはここで君達の試合を見てるよ。どの道君達の次だしね。・・・はっきり言っておく。蓮、オレは君と戦いたい。だから・・・レヴィに勝ちなよ」
「お・・・おう!(まさかの俺単推しはディアスだった。相手が目の前にいるところで言うってのはどうかと思ったが、よく考えればカミラも俺にやっていたので、イーブンだろうということで黙っておいた。
と、ここで会場から歓声が上がった。覗き込んでみると、どうやら試合に決着がついたようだ。地面は・・・あっ、あんまり壊れてない。ってことはほんとすぐ俺たちの番だな。
「いよいよだな。改めてだけど、お互い、良い試合にしようぜ!」
俺はレヴィに左拳を向けた。
「ええ、勿論!」
2つの拳がぶつかる。迷いはない。俺は、レヴィをに勝つ。そして--
「ディアス、先に待ってる」
指差し、宣戦布告を返した。レヴィに勝って、お前を倒す。そう告げるように。
「・・・ふふっ。ああ!君が行った後、すぐ追いつく」
『いよいよここまでやってきました!魔導祭Bランク、準決勝第1試合!マスターの孫であり、珍しい光魔法を使うレヴィ選手!対するはあの伝説の存在、脳無しだと言う蓮選手!果たしてどんな試合を見せてくれるのか?!そして今回はどれだけ地面を壊すのかー!』
「あの司会者、なんで地面が壊れる前提なんだよ。腹立つな。どうするレヴィ、いっそ期待裏切るためにジャンケンで決める?」
「さっきの待ってる宣言は?!」
などと言いながら俺たちは入場した。そして所定の位置についた。
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一方その頃観覧席では、アリアとカミラが席を探すためうろついていた。
「いや〜ないですね席。というかなんか人増えませんでした?」
「準決勝だからな。ここまで勝ち上がってきた奴は、将来Sランクに上がることが多い。そういう意味でも注目が集まっているのだろう。・・・にしても多いな。あれか?蓮が脳無しってのが効いてるのか?」
そう、2人が抜ける前は、席にゆとりがあったのだが、もうすでにどこにも空きがない状態になっている。
「さて、どうしたものか。誰かに席をとっといて貰えばよかった--」
「--アリアさ〜ん!カミラの嬢ちゃ〜ん!こっちこっち!」
ここで聞こえてきたのはバルクの声だった。
「バルク!もしかして席とっといてくれたのか!」
「ほら、早く来ねぇと取られますよ」
「おおっ!感謝する!行こうカミラ!」
アリアはカミラの手を引きバルクの元へ向かった。そしてバルクの隣に座った。
「いやーほんとありがとうバルク!助かった!・・・おっ、そっちの2人も見にきたのか!」
そっちの2人とは、ルニアとエトラだった。2人とも怪我を治し応援に来たらしい。
「兄弟の活躍だからねぇ。そりゃ行かないわけには行かないでしょ!」
「無論だな。それと、私たちを倒したレヴィを、蓮がどう倒すのかも見ものだ」
「えっ?ルニア兄貴蓮に勝って欲しいの?」
「・・・ん?それはそうだろう?兄弟なのだから」
意見が割れている。どうやらレヴィに勝って欲しいエトラと、蓮に勝って欲しいルニアで別れているようだ。
「いやだってレヴィちゃんはおいら達を倒したんですよ!だったら最後まで勝ってもらわないと!」
「いや関係ない。兄弟であれば兄弟を応援する!これは当たり前だろう?何故それがわからない?だからお前はいつまでも馬鹿と言われるのだ!」
「なんだとー!ルニア兄貴でも言って良いことと悪いことが--」
などと2人は長々と言い争っていたので、バルクは無視してアリア達に話しかけていた。
「ははっ、うちのが悪い」
「いやなに、席を用意してもらってたんだ。これくらい我慢するさ」
「ははは・・・(今我慢って言った。イライラはするんだ)」
「どっちが勝つか・・・結果は全く分かんねぇが、楽しい試合になることは間違いなさそうだな」
バルクは腕を組みながら事前感想を漏らす。
「そうですね!どっちも頑張って--あっ!出てきましたよ!」
蓮とレヴィ。2人が入場してきた。
「さて、ようやく始まる。どんな勝負になるか--ん?アリアさん?」
アリアは突然立ち上がり、口元に手をやり大声で叫ぶ。
「蓮ー!レヴィー!2人とも頑張りなさーい!!」
掛けられた2人は恥ずかしそうにしながらも手を振った。
着席したアリアにバルクが思わず感想を零す。
「・・・本当に親みてぇ」
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「アリアさん、すごいデカかったな・・・声」
「・・・だね」
手を振り返しはしたものの、2人とも恥ずかしさはある。昔小学校の頃の授業参観でこんな親がいたが、その子は恥ずかしさで泣きそうな顔をしていたのを思い出した。
この世界に来て初めて分かったよ、田島くんの気持ち。
『それでは、両者準備はいいですか?』
よかったけど解けたよ。一回深呼吸してー、ふぅ。よし!
『Bランク準決勝第1試合!レヴィ選手対蓮選手!--それでは・・・始め!」
レヴィは開始早々光の矢を構える。現在雷のストック2しかない俺は、取り敢えず最初は魔法の回収に充てなくてはいけない。
「異類無礙!」
「光陰如箭!」
俺は魔法の吸収の体制に入り、レヴィは光の矢を放った。
矢が俺の手に当たろうか、といったその瞬間--
--聞き覚えのある、そして聞きたくなかった声がその中央から発せられた。
「--この大会、ワタシも混ぜてくれませんか?」
その瞬間、俺とレヴィの背筋が凍ったのがはっきりと分かった。
この声。忘れない、忘れられない、忘れるわけがない。飄々とし全ての言葉に芯がないこの声は--
「--やぁ脳無し君。キミを--迎えに来たよ--!」
うすら不気味に、光の矢をこちらに向けながらそう言ったこの男は--レヴィ救出の際に対峙した蛇のモンスター、華蛇だった。




