早とちり
医務室で休んでいた俺とレヴィ。そしてそこにアリアさんとカミラがやって来た。
「そうだカミラ、ディアスどうだった?負けてない、とは思ってるんだけど」
変な確信がある。あいつは俺と戦うまで負けないと。傲りと言われればそれまでだが、なんとなくそんな気がしている。
「ディアス君かぁ。凄かったよ、地面ドカーンって真上に吹き飛ばしてた」
妙に幼稚な表現と、カミラの大袈裟なジェスチャーであまり話が入ってこなかったが、ディアスが勝った、ということだけは理解できた。
「・・・そっか。ありがとうカミラ!えっと・・・次は俺たちかな?」
「あっ!そうそう!マスターとどんな話してたの?」
俺たちはマスターとの会話、そしてディアスの試合内容をお互い共有することにしていた。まぁディアスの方は地面壊して勝った、ってこと以外分からなかったが、まぁ別にいい。1番知りたかったことは知れた訳だし。
「マスターと?・・・よければ私も聞かせてもらっても良いか?」
アリアさんはマスターがわざわざ俺たちを訪ねて来たことに疑問を持ったのか、情報共有の参加を要請した。--当然答えはYESだ。4文字のことはアリアさんにも質問していたし、モンスター捕獲のこともアリアさんには協力してもらおうと思っていたから、言わない訳がない。
「はい、勿論ですよ!と言うかアリアさんにも聞いて欲しいことなんで」
それから俺はまず、4文字の魔法のことについて2人に話した。
そもそもカミラは4文字のことを知らなかったのでそこからすでに驚いていた。
「あっ、本当だ。2文字しかいない!!」なんて新たな発見をしたようだ。・・・まぁ、4文字があるなんて知らなかったら文字数になんて目を向けないよな。そういうもんだって納得すると思う。
そしてこの話の中で、2人が1番驚いていたのが、過去100年において4文字魔法を使うものが5人しかおらず、そのうち2人も脳無しだった、ということである。最後まで言っていなかったのだが、残り3人も脳無しなのではないか、もしかするとイカルガも?という疑問に2人は辿り着いた。
「・・・なんというか、言葉が出ないね。4文字の魔法ってがあって、その魔法は凄い特殊で、しかも全員脳無しの可能性があって、Cランクのイカルガ君?も脳無しかも知れないって・・・情報過多だね」
「私も、蓮に4文字の魔法をら使う者を知らないか、と質問された時、レアな魔法なのだろうとは思っていたが・・・まさかこういう展開になるとはな。まだまだ疑問がたくさんだ。しかし、もし全員脳無しというのが正しいのであれば、イカルガという青年のあの強さも納得できる」
何やらイカルガは脳無し、という可能性が高くなって来ているが、実際俺はそこに関しては懐疑的だ。何故か?もし仮に脳無しというのが俺と同じ異世界転移者なのだとすれば、あの見た目は明らかにおかしい。黒い肌は普通、あの白い髪もアルビノだ、と思えばあり得なくはない。だがあの赤い目。あれだけは地球から来たとはとても思えない。もしかしたら地球とは別の惑星、もしくは世界軸が違うところからの転移者だった場合はなんとも言えないが、俺とイカルガ以外の3人。この人達の名前は全て、日本人っぽい名前なのだ。なんの理由なのかはまだ分からないが、脳無しは日本から来た転移者と考えた方が納得がいく。
・・・まぁこの手の作品の読み過ぎで納得してしまってるだけなのかも知れないが。
取り敢えずこの話は置いておき、次に本題である調査隊が全滅したこと、そして脳無し--もっと詳しくいえば俺を狙って擬人モンスターがこの町に攻めてくる可能性があることを説明した。因みに4文字については俺が説明したので、今度はレヴィにやってもらった。
ここで一つ気になることが。それはカミラの反応だ。最初は真面目に聞いていたのだが、だんだんと微妙な表情になっていった。
「うん・・・ほうほう・・・うそっ!・・・・・・えっ?・・・あれっ?・・・あぁ・・・」
「・・・どうしたのカミラ?だんだん反応がよく分からなくなって来たんだけど」
「えっ?!あ、えーっと・・・なんでもないです。(え?なに?あれ言ってよかったの?!あたしがアリアさんに嘘ついた意味とは?)」
「そう?あそうだ!因みにこれ下手に広めないでね!あくまでもその可能性が高いって話だから。今2人に話したのは、ある作戦を実行する、もしくはしなかったとしても取り敢えず話を受け入れてくれる保証があったからだよ。私たちも悪戯に広めるつもりはない」
「なるほどね!(ということは話さなくて良かったー!)・・・ん?そういえば作戦って?」
良かったなんだかいつものカミラには戻った気がする。
「うん。今から説明するね。私が考えたのは--」
こうしてレヴィはアリアさんとカミラにモンスター捕縛、もしくは討伐の作戦を伝えた。今度はカミラ含め最後まで真剣に聴いてくれた。
「--なるほどね、つまり不意打ちプラス数の暴力でなんとかするってことね。うん、私も良いとは思う。若干不安要素がないでもないが、少なかったであろう時間の中で、よく考えられている作戦ではあると思うよ」
アリアさんは概ね俺と同じ意見らしい。カミラもそれに頷いている。
「良かった。因みにアリアさん、不安要素ってのを教えてもらえませんか?」
「・・・そうだな、まず相手の魔法が飛行系だった場合、落としてもすぐ復帰される可能性がある」
「はい・・・これは蓮にも指摘されました。改善点だと思ってます」
「そうか、ではこれは取り敢えず良いとしよう。2点目、不意打ちに動じなかった場合。まぁこれに関しては飛行魔法でさえなければ数で押せるかもしれない。そして3点目、相手の実力の問題。みんながあったモンスターはバルクも敵わなかったのだろう?もしそれ以上の的だった場合、数で押すというのが出来ない可能性がある。そして最後、これが一番致命的であり得る問題点だ。潜んでおける冒険者の数には限りがあるということだ」
数に限り?まぁ地面分しか入れない訳だしそりゃ限りはあるだろうけどさ。
「聞くがレヴィ、潜む冒険者は何人を想像していた?」
「えっ?えっと・・・」
突然の予期せぬ質問に黙ってしまうレヴィ。俺もその質問が飛んでくると思っていなかったからフォローできない。
「えっと・・・とにかく出来るだけ・・・ですかね?」
「・・・やっぱりね。それは策として全く成立できていない。何故か?仮に100人潜むとしよう。となるとどうなると思う?直接モンスターと戦えるのは前方数人だろう?では後方はどうなるか?確実にあたふたしだし、統制が取れなくなる。そして結果前方で戦っている奴らの邪魔にまでなり、蓮は連れて行かれるだろうな。しかもさらに、後方が全然役に立たなかった、むしろ邪魔だった!ということで険悪になるだろう、しかもその矛先はレヴィ、お前にも向くだろうさ。こんな雑な作戦立てやがって!・・・てね」
「--ッ!・・・確かに、作戦として穴だらけでした・・・すいません」
・・・なんでレヴィが謝る?なにも悪くないだろ?俺のために頭回して考えてくれて、しかも俺だって賛同したんだ。責められるべきは絶対にレヴィじゃない。頼むから・・・そんな責任を感じたような顔、しないでくれ・・・。
「アリアさん、レヴィはなにも悪くな--」
「悪いなんて一言も言ってないだろ?早とちりするな蓮。むしろ私は良い策だと言ったはずだぞ?今のはレヴィに言えと言われたから言ったまでだ。本来はこの意見をマスターに提言し、その後詰める予定だったからな。ここで今言うつもりはなかった」
「えっ・・・あっ」
「それと、私はむしろ褒めたいくらいだよ。これも言っただろう?時間がなかったであろう中でよく考えられている、と。穴は勿論沢山あるが、ちゃんと考えている。それはすごく伝わる作戦だった。それほど守るために頭を回したってことだ。これを褒めない訳ないだろ?」
・・・完全に早とちった。レヴィとカミラを見ると、なんとなく微妙な顔をしている。レヴィは少し顔が赤く、カミラはあ〜あ。と口に出しているかのような表情だった。
「えっと・・・その・・・ごめんなさい!」
「仲間を想って言ったことだ、許そう!--だか、早とちりはやめなさい。それ他人にやったらただじゃ済まないぞ」
「はい。心得ております」
ははっ、恥ずかし俺。取り敢えずレヴィにも謝ろう。
「ごめんなレヴィも。なんか変な感じにしちゃってさ」
「えっ?いやえっとその・・・良いわよ別に。むしろ・・・ありがとう」
最後だけすごい小さかったが、ありがとうと言っていた気がする。・・・でも何にだ?
「改めてだがレヴィ、良い作戦だった!短時間でよく考えたな。あとでみんなで詰めていこう!」
「は、はいっ!」
レヴィはアリアさんの一言で完璧にいつもの表情に戻った。アフターケア完璧だな。
「そういえば試合ってどうなってんだろうな?もうそろそろ行ったほうが良いかな?」
「そうね、行っておきましょうか。--あの、そろそろ治癒魔法全力でかけてもらって良いですか?」
医務室に待機している女性の治癒術師は、すごいめんどくさそうに俺たちのもとにやって来た。どうやら試合の度に大怪我してくる俺たちにイライラしているらしい。多分、試合の度に地面直すスタッフもそんな気持ちなのだろう。
今この人の考えていることがなんとなく分かる。「--どうせ次も怪我して戻ってくるんだろ?もう治さなくて良いんじゃないの?」的なことだろう?・・・なんというか、ごめんなさい。
とは言え治癒はしっかりとやってくれた。外傷は勿論疲労もなくなった。他をよく知らないのであれだが、優秀な人なのかもしれない。まぁ愛想は悪いが。
「--よし!んじゃあ行こうか、レヴィ!」
「うん。それじゃあアリアさん、カミラ、行ってきます!」
「行ってきます!」
「ああ、気持ちのいい試合を期待しているぞ2人とも!行ってらっしゃい!」
「2人とも頑張ってねぇ〜!でもってレヴィちゃん勝って仇打ってね!」
「俺単の味方無しかよ!まぁいいけどさ。--それじゃあ今度こそ、行ってきます」
こうして俺たちは医務室を退室し、試合会場前に向かった。
「それじゃ、私たちも戻るか?」
「そうですね!席もう一回取らないと」
こうしてアリアさん達も再び観覧席へと足を返したのである。




