モンスターに罠を張らない?
「--いや〜ディアス君凄かったですね!地面の底から重力ドバァーって。というか・・・また地面改修かぁ。可哀想」
ディアスへの称賛とスタッフへの哀れみを同時に向けたのは、観覧席で試合を見ていたカミラだ。
「まぁこれも仕事だからな。と言ってもいくら貰えるのかは知らないけど。この1日だけで何十万か貰わないとやってられないな」
アリアは苦笑いしながらそう呟いた。哀れみの視線もセットだ。
「ですねぇ・・・そうだ、次の試合終わったら次は弟子同士の対決ですよ!アリアさんはどっちが勝つと思いますか?」
このままでは絶対に変な空気のままだと判断したカミラは、話題を逸らすことにした。
「あの2人ねぇ。普通に考えれば冒険者歴が長いレヴィに傾きそうなものだけど、蓮は色々規格外だからな、何をしてくるのかよくわからない。その点では苦労すると思うよ。レヴィは日頃の実績と経験を重ねて強くなるタイプ、蓮は勿論それもあるが、それよりも土壇場での変な戦闘センスだな。お互い戦い方なんかがそんな似ているわけじゃないから、面白い戦いになるかもね」
「なるほど・・・うん〜〜ん?(結局どっちが勝つかってはぐらかされた?でももう一回おんなじ質問出来ないなぁ。・・・やられた)」
しばし沈黙があり、これ以上広げられないと判断したカミラは、立ち上がった。
「アリアさん!あたしレヴィちゃんと蓮君のところ行ってきますね!試合の結果伝えるって約束してあるんで!(よし、これで逃げよう。完璧だ!)」
「ん、そうか?私は・・・うん、次の試合は別に見なくて良いな。よし、私も2人のところに行くよ。一緒に行こう」
「えっ?!行くんですか?」
「えっ?・・・ダメ?」
突然、なんで?!と言いたくなるような言動をされたアリアはキョトンとしている。それを感じ取ったカミラは心の中で反省する。
「えっ、あ、いやその・・・行きましょうか!(馬鹿でしょあたし!なんであんなこと言った?!別に2人でいるのか気まずかっただけなのに内心嫌ってるみたいなこと言っちゃって・・・ダメだなあたし)」
こうして2人は、結局変な空気で医務室へと向かうことになった。
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2人が医務室へと向かい始めたちょうどその頃--
マスター達もとうに出ていった部屋で、俺はレヴィと話していた。
「モンスターがここに攻めてくる、か。多分俺のせいだよな、華蛇って奴は俺を連れ去ろうとしてたし。多分、脳無しになんかあるんだろうな。・・・美味いのかな?」
「急にボケるのやめてくれない?あなたの冗談、タイミングが悪すぎて冗談なのか本気なのか分かんない時あるのよ」
レヴィにジト目で言われてしまった。それにしてもタイミングが悪いか、いろんな人にそう思われてんのかな?だとしたら傷つくよすごい。
「・・・取り敢えず話を戻すが、モンスターが俺を狙って襲ってくるってことは、取り敢えずやってきそうな日から何日かは隠れといた方がいいのかな?」
「そうね・・・それに関しては良い悪いどちらの可能性もあるわね。まず良い方。相手が本当に蓮にしか興味がなくて、それ以外は捨て置くパターン。正直これが理想だけどそんなわけは無いと思う。という訳で悪い点。蓮が出てくるまで街の人を殺しまくるパターン。正直大人しく待つよりこっちの方がありえると思う。他にも挙げるとすれば街に火をつける、とかね。とにかく隠れるってのは他の人に被害が行く可能性が高いと思う」
なるほど、確かにそうだ。創作の世界ではなんか知らんが呼び出した後座って待ってる律儀な悪役とかたまにいるが、あれはあくまでフィクションだ。ここは異世界といえど現実。それに戦ったことがあるから余計にわかるが、あいつらは人を殺すことに戸惑いはない。街に被害なんて平気でやってきそうだ。
「であれば、隠れるのは無しだな。無関係な人を巻き込みたくない。・・・じゃあどうする?迎え撃つか?だけどそれも華蛇みたいな化けもんレベルが出てきたらまだ勝てないしなぁ。ま、化けもんレベルって言うか化けもんなんだけど」
「ほらまた」
ぐっ!・・・なるほど、これが変なタイミングか。理解した。
「ゔゔん!でレヴィ、これにはどう思う?」
俺はレヴィに、迎え撃つというのはどうかと尋ねてみた。
「そうね・・・確かに蓮の言う通り、自分の実力以上のモンスターであった場合、簡単に連れ去られてしまう。このままだと愚作でしかないわよね。・・・何かしら罠を張る?でもそれに引っ掛からなかったら意味ないし・・・強い敵、蓮、巻き込む、迎え撃つ、罠・・・・・・あっ、これならいけるかな?」
レヴィは何か思い付いたらしい。流石レヴィだ。さすレヴィ!・・・言いにくいな、じゃあ・・・さすレビ!あっ、言いやすい。
「まずモンスター達がどうやってこの国に入るのかは知らないけど、最終目的地はわかってる」
「嘘っ?なんでそんなこと--」
「マルロさん言ってたでしょ?調査隊を襲ったモンスターは魔導祭について聞いてたって。その場所もしっかり聞いてた。つまり、とりあえずはここを目指してくると思うの」
「ほうほう、それで?」
「であれば簡単よ。そのモンスターが来ると予測されている日付から数日間、闘技場で叫びまくるの。「僕蓮!脳無しです!あなた方が探しているのは唯の蓮ですか?それとも脳無しの蓮ですか?答えが出た方は闘技場までどうぞ!」って声を張り上げ続ければ良いのよ」
「お前絶対バカにしてるよね。何その金の斧銀の斧みたいな言い方」
「じゃあ・・・モンスターさーん!こっこおーいでー!とか言う?」
「・・・俺初めて人の話無視したいって心から思ったわ。そんな友達呼ぶ感覚で俺の命取りに来てる奴を呼びたくないんだが。それにお前想像してみろよ、「こーろしやさーん!こっこおーいでー!」って標的が言ってる様子。もう色々通り越して怖えよ。それ件の件が解決しても悪評だけが残ってくだろうが」
「・・・確かにキモ怖ね。まぁ冗談はさておきとにかく」
大すげぇ切り返しすげぇ。プロのドライバーなれるんじゃねぇ?
「私が言いたいのは闘技場で声を上げるってことよ。それで相手を誘い出す。あなた1人だけの会場。辺りを見渡しても人気が全くない。安心するモンスター。と、ここである罠を仕掛けるの」
「罠・・・網とか地雷とかか?」
「いえ。もっと確実に捕らえられて、もっと確実に倒せる罠よ!それは--冒険者を地面に潜ませる!」
「・・・・・・ん?ごめんよく分からない」
つまり・・・どう言うことだってばよ?
「つまりこう言うことよ。まず会場の地面を全部無くして、そこに冒険者を待機させる。そして冒険者の真上に表面だけの地面を作ってもらうの。そしてモンスターが蓮を捕らえようとした瞬間、蓮が魔法を発動して地面を消す。するとモンスターは冒険者のいる底まで真っ逆さまって訳よ!どう?捕らえるにしろ倒すにしろ結構いい策だと思わない?」
うん、最初の俺を馬鹿にしたあれのせいで本当に大丈夫か?って気があったが、だいぶしっかりしてる気がする。確かに闘技場内で完結させるんなら周りへの被害も少なそうだし、下手に正々堂々真正面から向かってくよりは確実だ。
「結構いい・・・と思う」
「ん?何か引っかかることあった?」
「・・・あいつら、魔法使うだろ?もし飛行系の魔法を使う奴がいたらその作戦どうするんだ?大人しく穴に落ちないだろ?」
「その時は・・・物量で押し切る・・・とか?・・・ごめん、そこまで考えてなかった」
「ちょっ、謝らないでくれ!俺じゃ絶対こんな案思いつかなかったし、今言ったことだって本当ほんの一握りの可能性だしさ。俺の為にこんなに考えてくれて、感謝こそすれど責めたりする訳ないだろ?」
確かに不安要素はないとは言わない。だが、それを差し引いてもやってみる価値はある。そう思えるような策だと思った。
「蓮・・・!よし、私次の試合の後お爺ちゃんに打診してくるね!」
レヴィはなんだか安心したような、嬉しいと言っているような、そんな表情をしていた。あぁもう可愛いなちくしょう!
「た、頼む」
「うん!」
・・・なんというか、俺次この子と戦うんだよな?やべ、気が引けてきた。まぁでもこれでも冒険者の端くれ、同じ冒険者として手を抜くのは失礼というものだろう。
「レヴィ・・・次の試合、手、抜かないからな。それで・・・いいんだよな?」
「・・・うん。本気でお願い」
「そっか・・・。そうだレヴィ、今度--」
「やぁレヴィちゃん!蓮君!お邪魔しまーす!」
カミラがハイテンションで帰ってきた。まるで何かから解放されたかのようだ。しかし俺といえば--
「・・・・・・・・・」
「あれっ?もしかしてあたしタイミングまずった?ごめん、一回出直して--」
「出直されたら意味含むだろうが!帰ってこい!ハウス!」
「あたしペット扱い?!」
「--蓮、女性をペット扱いなんてするんじゃない。ビンタかまされるぞ」
医務室のドアから顔を覗かせたもう1人、アリアさんだ。
「アリアさん?なんでここに・・・?」
「ん?次はいよいよ弟子同士の対決だろう?師匠が弟子に叱咤激励飛ばしちゃいかんのか?」
「いや?そんな訳ないじゃないですか?普通に嬉しいですよ!」
アリアさんともなんだが久しぶりな気がする。今日中に会っているのに。まぁ色々あったからな、長く感じてるのも無理はない。
「そうか・・・。よし、じゃあまずはレヴィだ!お前はメンタルに実力が左右されることが多い。常に自信を持ちながら、尚且つネガティブになって戦え!これが出来ればお前に敵はいない」
「は、はい!(自信を持ったネガティブ・・・?どういうことだろう?)」
「次に蓮!お前は魔法含めめちゃくちゃだ。だがそれも武器になっている。それはそれで良いが、自分を傷つけるだけの戦い方はするな。・・・まぁ、今のお前は大丈夫なんだろ?」
「は、はい!」
「よしよし!返事よし!」
アリアさんは俺とレヴィを抱き寄せ、そのままほんとに一言だけ呟いた。
「--頑張れ!」
俺たちは背中を押される。物理的には進んでいない。だが、今の一言で心の奥にあった戸惑いは置き去りに出来た。
指揮も、呼吸も、目配せも、なにもなかったはずなのに、俺たちは息がぴったりあった。
「「--はいっ!」」
いよいよ俺たちの試合だ。俺は・・・レヴィに勝つ!
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と、そんな様子をぼーっと見つめる女の子が1人。
「(--感動的だなぁ。これあたし喋ったら邪魔だろうなぁ。・・・・・・早く終わってくれない?辛いよ、排他感!寂しいよ、疎外感!忘れられた?存在感!!・・・話すことあったけど帰ろうかしら・・・)」
「--ねぇカミラ!私のこと応援してね!」
「--勿論っ!!」
レヴィの純真無垢な表情と、若干感傷気味だったこともありカミラは簡単に許してしまう。
「(ははっ、やっぱり--絶対嫌いになれないや・・・!)」
--間も無く、蓮とレヴィの対決が幕を開ける。




