レヴィ対ルニア
「ごめんなさいルニアさん。これから先、絶対勝てませんのでご容赦ください!」
「・・・ふっ、それでこそ仇の打ち甲斐があると言うものだ!--第3ラウンド、開始だ」
本調子を取り戻したのであろうレヴィ。そしてそれに相対するルニア。
「あぁ言ったものの、実際あのスピードにどう対応すべきか--」
ルニアは悩んでいた。本気のレヴィを倒す。そう意気込んではいるものの、実際今のレヴィのスピードに追いつけるかと言われれば自信がない。事実、先程の接近攻撃は反応できなかったのだから。
「・・・くそ、やるしかないか。70%----」
さらに解放するため、頭に指を当てたルニア。だが、その解放は叶わない。
なぜか・・・それは、先ほどまでそこにいなかったはずの人物が、すでに懐にいるからである。
「--もう、強化はさせません!」
「んなっ!(いつのまに!先ほどまでと違いすぎるだろ。なんだこのスピードは!)」
「聖嵐・光渦!」
レヴィの手元にて発生した渦巻く光が、ルニアを襲う。光はルニアを纏うように旋回し、徐々にダメージが蓄積していく。
「(早い!だが、一回あたりのダメージはさしたる事はない)」
「(光魔法は攻撃力が他と比べ全然ない。だからこそ、長所である速さを武器に数叩き込む!)」
ルニアは纏う光を木刀で打ち消している。確実に威力は落ちてきているが、まだ消えない。
その隙に、レヴィは足元に20本ほどの光の剣を創製する。そしてそれを一気にルニアに放ち込む。
「煌光する戦士達の魂!」
襲いかかる20の剣。ルニアにダメージが入るが、その剣で嵐は止んだ。
「自分の技をかき消すとは、馬鹿なのか?・・・まぁいい。隙だらけだ--降伏絶倒」
ルニアの木刀がレヴィの脳天を直撃した。--のだが、何故かそれは股を抜け、空気を叩く音だけがそこに響く。
「嘘っ!レヴィちゃん透過出来るの?!あたしのアイデンティティが!」
カミラが若干目を潤おわせながらそう言った。その傍らで、蓮は少しテンションを上げている。
「いや、多分あれは速すぎる移動により分身を作る技。残像拳!」
「--虚像見」
「・・・」
「--蓮くん。大丈夫、君は悪くないよ」
「励まされてしまった。大丈夫だよカミラ、俺は落ち込んでない。沈んでるだけだ」
「それ落ち込んでるって言わない?!」
--残像を残せるほどのスピード。それほどのスピードに、一瞬何が起きたのか理解出来なかったルニア。光の前にはその一瞬が命取りになる。
「今度は私よ番ですね。--隙だらけです」
背後に回っていたレヴィは、右手に光を集中させ、手を掲げた。その光が大きな十字架に形を変え、そしてそれをルニアの元へ叩き落とした--
「断罪する光の十字架!!」
以前アリアとの戦闘で見せた技。だが、その大きさが段違いである。
「(なんだこの大きさは?あの一瞬でここまで大きく出来るはず--まさか)」
そう、そのまさかである。レヴィが自身の魔法でかき消した魔法。正確にはかき消したのではなくバラバラにし攻撃魔法としての意味をなさなくした。そしてその魔法を、この大技に組み込んだ。より速く、強力な一撃にするために。
「--なるほど、これは食わされた--」
攻撃は間近で直撃し、ルニアを先ほどレヴィが叩きつけられた壁まで吹き飛ばした。土埃が舞い、壁のヒビはさらに亀裂を広げている。
その様子をバルクは何も言わず両手を合わせ、膝に肘を乗せながら静かに見ていた。
「義弟が心配か?」
アリアのその問いに、じっと視点は変えず答える。
「まぁ、試合の結果は別に心配してねぇんですよ。俺としちゃ、勝っても負けてもどっちでもいいっすしね。どうせ命がけの試合じゃねえんだ、負けたからどうなると言ったものでもねぇ。だけどそれよりも・・・あいつ、上限忘れてねぇだろうな?」
「上限・・・?」
アリアも再び会場に視線を戻す。
変わらず砂埃が立ち込めているだけ。特に変わりはない。--と、そこからまさか声がした。
「--ほんと、攻撃魔法は羨ましい。そんな戦いかた・・・私にはできない」
「・・・嘘・・・!あれ私の中で1番の攻撃力なんだけど・・・」
動揺するレヴィ。しかしすぐに冷静さを取り戻し光の弓を放った。先ほどまででも対応出来ていなかったスピード。満身創痍の今なら尚更の事。そう括っていたのだが--
「--なるほど、これくらいなら見えるな」
そう言ったルニアは、体ごと一回転し、木刀で光の弓をはじき返した。
弓は惜しくもレヴィの真横を通り過ぎ、背後の壁を貫いた。
「・・・な、なんで・・・?」
ルニアはメガネの位置を直し、歩きながら説明した。
「何故・・・か。こういえば伝わるかな?75%--解放」
「・・・完全に油断した。なんで確かめなかったんだろ?」
ルニアは吹き飛ばされ、土埃に巻かれたとき、密かに解放していたらしい。
「バルクには70%以上は絶対するなって言われてるんだけどね・・・でも、弱い私がお前に勝つには、これしか無さそうだし」
ルニアは特訓により以前まで10分しかなかった解放の制限時間を20分まで伸ばせるようになっていた。そしてこの時点で残り5分。以降は解放の度合いにもよるが、大体反動で動けなくなる。
「さて、75%は久しぶりだ。今の私ではどれほどの威力を出せるのか・・・見ものだ--なっ」
ルニアはその場で木刀を振るう。ただの素振り。その筈なのに--
「(75%・・・弓も止められたし、さらに警戒しな)--いっ?!」
気づいたとき、レヴィは見えない何かに吹き飛ばされていた。
「今のは・・・まさか!」
「なるほど。75まで解放してようやく--グニラレベルか」
そう、今のは、バルクが振り下ろした木刀から発された衝撃波。つまり、残り5分間、実質グニラと同じ筋力を持った相手と戦うことになる。挙句スピードはレヴィレベルときた。
「つまり・・・こういう攻撃が出来るというわけか--瓦解一閃・飛切」
相手に突きを放ち貫く技。それが遠方のレヴィに向かい放たれる。
「--ッァ!!」
鳩尾のあたりに真空の突きが入り、再び壁に叩きつけられる。尚も攻撃は止まない。
右、左、振り下ろしからの突き上げる。そんな攻撃が遠方から休みなしで飛んでくる。その度に斬撃のダメージと、壁に叩きつけられることによる追撃が入る。
「(まずい、とにかく抜け出さないと--)聖絶!」
前方にバリアを張り、一瞬攻撃を防ぐ。その隙に抜け出し、高速でルニアに近づく。今度は逆にレヴィが攻撃を仕掛けた。
「--仕返しよ!慈愛の掌!」ルニアの間合いに入り、直接技を叩き込む。
「遠距離からじゃ止められるんでしょ?だったら直接よ!」
慈愛の掌、煌めきの一撃、光爆拳
様々な技を出来うる最速で放つ。しかし、技の切り替えの一瞬を突かれ、直接木刀で吹き飛ばされる。
思いきり地面に叩きつけられ、転がりながら飛んでいく。ようやく止まり、次の攻撃に備え構えていると、レヴィの目を疑うことが起こり、その手が止まった。
「・・・なに、それ?・・・どうしたんですか ・・・?」
「ん?何が--あぁ、なるほど。もう出てきたか」
そう言ってルニアは顔を拭う。そしてその拭われた手は、紅く、滴っていた。
「これが70%以上使ってはいけないと言われていた理由。これを使うと、脳に強い負荷がかかり--血涙が出る」
そう、ルニアの両眼からは、紅い涙が溢れていた。




