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鈍い光

 レヴィ対ルニア戦がいよいよ本格的に始まった。


「(ルニアさんの魔法は拒絶。エトラの施錠よりなにしてくるのかわからない。・・・とにかく、まずは遠距離から攻撃を仕掛ける!」


 レヴィは手元に光を発生させ、それを弓状に変化させる。


光陰如葥(こういんじょぜん)!」


 高速で放たれる光の矢。それはしっかりとルニアを標的に捉える。


 対するルニアは、指を頭に当て、魔法を発動した。


「40%--解放(リラース)


 光の矢が今にもルニアを貫かんとした瞬間、紙一重でそれを避ける。


「あの距離で・・・避けられた?」


「今の私は40%も解放している。つまり、普段の4倍強い」


 そう言いながら、ルニアは腰に刺した木刀を抜いた。


「真剣は使わん。だが、木刀の威力は舐めない方がいい。これでも十分--痛いからな」


 ルニアは急激に距離を詰め、突きを放つ。


瓦解一閃(がかいいっせん)!」


 とても早い突き。だがレヴィもなんとかその速さに食らいつく。


聖絶(せいぜつ)!」


 木刀と光の壁がぶつかり合い、けたたましい音が鳴り響く。その後も、同様の攻防が続く。


周旋(しゅうせん)」「降伏絶倒(こうふくぜっとう)」「昇天流星(しょうてんりゅうせい)


 横なぎ、振り下ろし、すくい上げる。ルニアはさまざまな角度から木刀を振るう。


 それに対し、レヴィは攻撃を防ぎつつ、遠距離から攻撃を仕掛ける。


「聖絶」「放たれる十の光玉(ディエス・ルーセス)」「慈愛の掌(ホーリーパルム)翔遠(ディスタンザ)


 どちらの攻撃も決定打にかける。と、ここでルニアが再び頭に指を当てた。


「なっ!もしかしてまた強化を--」


 これ以上の強化を防ぐため、ダッシュで近くレヴィだったが、時すでに遅し。


「残念。無駄だ--60%--解放(リラース)


 その瞬間、レヴィの視界からルニアが消えた。


「--えっ?どこに--」


「--随分と鈍い光だな」


 背後--そう気づいた時にはもう遅い。


「八つの交差する一閃--オッチョ・コルテス!」


 常人には一振りにしか見えないほどの高速の8連撃をレヴィの背中に叩き込んだ。


「--ッァ!!」


 攻撃を受けたレヴィは思いっきり吹き飛ばされる。そして壁に叩きつけられた。


「・・・悪いが、この勝負はルニアがもらったな。60%も解放したんだ。そうそう誰にも負けねぇよ」


 バルクは試合の状況を見てそう判断する。実際、光魔法を使うにも関わらず、解放される前のダッシュで間に合っていない時点でレヴィの底は知れている。同じく観覧していた冒険者もそう思っていた。


「レヴィ・・・やっぱりまだ・・・」


 アリアはレヴィの動きに疑問を抱く。特訓の時でさえ、レヴィのスピードはもっと早かった。少なくともあんな悠長に魔法を使わせる時間は与えなかった。


 アリアはなんとなく察していた。レヴィの動きが悪い理由を。


 対してレヴィは、自身の動きが悪い事は自覚しつつ、なぜなのかが分かっていなかった。


「(なんで?いつもならもっと動けるのに・・・?あれくらいの距離一瞬で詰めれるのに)」


 レヴィは、無我夢中で魔法を放ち続ける。


「光陰如葥」「放たれる十の光玉(ディエス・ルーセス)」「地より裁く堕天使の光(ロズ・カイーダ)


 遠距離魔法を放ち続けるが、全て悠々と裂けられてしまう。


 ルニアは剣の間合いギリギリまですでに近づいている。


「くっ!聖なる光の枷鎖(ホーリーチェイン)!」


 光を鎖状に変化させ、敵に払う。それを全て払っていくルニア。レヴィも負けじと応戦するものの、ここで勝負が動いた。


 ルニアは鎖の先端の穴に木刀を突き刺し、旋回させ、鎖を巻き付けた。引っ張られるレヴィ、バランスを崩す。ルニアは鎖を巻き取った木刀を地面に突き刺し、身一つでレヴィに接近する。


「ッ!慈愛の掌(ホーリーパルム)!」


 一瞬にして鎖を奪われたことに動揺し、判断が遅くなったレヴィだったが、咄嗟に近接技を繰り出した。しかし--事前にバランスを崩したこと、そして判断が遅れたこと・・・或いは別の理由からか、その攻撃はルニアには届かない。ルニアは左手で攻撃をいなし、残った右手でレヴィを壁に叩きつける。


「--ッァ!(--なんで・・・なんで勝てないの?私は弱い、それは理解している。だけど、ここまで戦えないはずは--)」


「--なんだその体たらくは?なんだその明るいだけの光は?エトラ戦の方が何倍もマシだったぞ!これでは・・・あいつのメンツがたたないだろうが!」


 レヴィを押さえつけながらルニアは的確にレヴィが今思っていることをついていく。その言葉を聞きたくないと言わんばかりにレヴィも反撃に転じる。


「ぐっ!慈愛の(ホーリー)--」


「遅い!」


 技を放つ前にさらに壁に押し込まれてしまい、その衝撃と痛みで技をキャンセルしてしまう。


「ぐあ"っ!・・・なんで・・・」


「なんでこんなに戦えないのか?と言いたげだな?」


「ッ!」


 図星を突かれ固まるレヴィ。それを無視してルニアは侮蔑が入り混じったような目をして、話を続ける。


「正直私も失望しているよ。せっかくあそこまでしたというのに、そして友人があそこまで言ってくれたというのに、これで全力のお前と戦えると思ったのだがな。それでも全力を出せない奴だとは思わなんだよ。いや、彼女はお前にそうさせるだけのものがなかったという--」


「--ふざけないで!」


 レヴィは今まで向けたことのないような目と、大きな声で反論する。


「私にとってはあの子は・・・初めてできた友達なの!初めて、ギルドマスターの孫ではない、レヴィとして見てくれたはじめての友達!そんな大事な友達に嫌な想いさせたのに・・・尚もあの子は友達って言ってくれた。そんなあの子を、カミラを馬鹿にしないで!!」


「・・・ふん。であればどうする?私を倒すどころか、全力すら出せていない今の状況。お前は・・・何のために戦っている?」


「全力・・・?出すわよ、今すぐ!出して、あの子との約束果たすの!勝つって約束したの!今私は、あの子との約束の為に戦う。それだけよ!」


 しばし黙ったルニア。その後、何故かいきなり吹き出した。


「--ふっ!・・・なんだ、似たような台詞を吐くんだな・・・!少しは理解してくれたか?あいつのこと」


 --それを聞いた瞬間、分かってしまった。蓮はこんな気持ちだったのだと。


 レヴィは、蓮が何故他人のためにそこまで頑張り、時には命までかけるのか、理解できなかった。いっぱい考え、理解しようとしたが出来なかった。だが、そんなに難しいことじゃなかったのだ。


 大事だから守りたい。大事だから他人の悪口も自分のことのように怒る。大事だから--それだけ本気だからあそこまで出来るのだ。それが、レヴィは理解した。


「・・・ははっ、こんな簡単なことで・・・こんな避けがたいものだったんだなぁ」


 レヴィはルニアに視線を移す。その瞳は先ほどまでの侮蔑が入り混じった目ではない。真っ直ぐ、なにかを見据えている目だ。


「・・・そっか。これを私に知って欲しくて・・・」


「ふん。なんのことだか。私は本気のお前を倒したいだけだ。そうでないとエトラの仇を打ったことにならんだろ」


 ルニアは認めないが、おそらくさっきまでのはレヴィにこの気持ちを知ってもらうための演技だったのだろう。


 レヴィは蓮のことを考えていた。自分のことを救ってくれた恩人であり、弟弟子でもあり、パーティの仲間であり--好きな人でもある。そんな人に・・・気持ちが分かったからこそ分からなくなったことがある。


 それは、あの時引き留めようとしたのは正しかったのかということだ。今の今までそこに疑念を抱いた事はなかったが、気持ちが分かってしまった今、それが本当に正しかった行動なのか、彼のためになる行動だったのか、それが分からなくなってきた。


 カミラのために頑張りたい。本気で勝ちたい。そんな気持ちと、蓮への同調と自身への疑念で動けなかった。時間とすれば一瞬だったのかも知れない。だが、レヴィにはそれが永遠に感じられた。


「(私は・・・どうすれば--)」


 その時だった--


「レヴィーー!!」


 聴き慣れた青年の声。その声は、入場口からだった。そこには、友達の姿。そして--


「カミラ・・・!それに・・・蓮?」


 包帯でぐるぐるの男だった。見た目だけでは完全に誰か見分けがつかない。


「ダァーもう!なんでこの場面で包帯ぐるぐるなの!あたしといる時そんな巻いてなかったよね?なにそれ?笑わせたいの?滑ってるよ!」


「ぐっ!辛辣・・・!だけどこいつは俺のせいじゃないぜ!会場行くって言ったら医務室の人にキレられながら巻かれたんだよ。もう知るかボケ!って言われた。悲しい、泣きそうです」


「・・・やっぱり蓮なんだ。なんで?怪我が酷いから医務室で寝てたんじゃ・・・?」


 それを聞き、さも当然のように答える蓮。


「ん?あぁ、カミラからレヴィが俺のせいで悩みまくってるって言われてな。だったら行かないわけには行かないだろ?だから無理言って最低限ここに来れるくらいに怪我治してもらったんだよ」


「・・・ねぇ蓮。私、迷惑だったかな?間違えたかな?あなたのその他人のためにってのがちょっと理解できた。だからこそ思ったの、私、引き留めようとしたのが間違いだったんじゃないかって。それが分からなく--」


「--ありがとう!!」


「・・・えっ?」


 急に蓮が謝礼と共に頭を下げた。


「俺さ、あの時おかしかったんだ。仲間のために頑張ったりってのは、確かに体が勝手に動いてて、それを俺自身で否定するつもりはない。だけど、あの時の俺は、動かなきゃって、助けなきゃっていう強迫観念に動かさせてた。あの時のレヴィの顔を、俺は見逃してた。あんなに誰かのために!って動いてた奴がだぜ。ほんと、笑えてくる。結局俺は、自分の正義に流されてただけだった。だけど、そんな俺に叱り付けて、泣いて止めてくれる人がいるんだって、そう思った時に・・・すごい救われた。俺はこの人を守りたい。本気で、心からそう思えたよ。--なあレヴィ、あの時振り払ってしまった手を、もう一度掴んでもいいか?掴んで、そばに引き寄せて・・・君を護りたいんだ」


 その言葉に、レヴィの心の鎖が解かれていく。


「・・・慈愛の掌(ホーリーパルム)


 レヴィは右手に光を集中させる。


「ん?その技はなんども止めて--」


 瞬間、ルニアはレヴィの元からはじかれていた。ルニアすら気づかぬうちに。


「この・・・スピードは・・・?」


 レヴィは自身についた埃を払い、血を拭う。


「・・・蓮。その言葉、却下するわ」


「えっ?!なんで!俺また変なこと言ったかな・・・」


 レヴィは、にこやかに蓮の方を向いた。


「--あなただけに守らせないわよ!私も、あなたを引き寄せて護るから。いつでも、何度でも・・・!引っ叩いて欲しかったらいいなさい!いつでもやってあげるから!」


「そういう意味じゃあないんですがレヴィさん・・・まぁでも・・・その、なんだ・・・俺がまたおかしくなったときはさ、その時は頼むよ--!」


「うんっ!--カミラ、ありがとう。ほんと、何から何まで」


「そう思うんなら、まずは目の前のメガネさん倒してからにしてよね!あたしとの約束忘れちゃった?」


 悪戯な笑顔でカミラはそう言う。


「--そんな訳ないでしょ?友達との約束よ、絶対に忘れない。見てて、今から本気出すから!勝って--笑顔でそっち行くよ」


 レヴィはもう迷わない。迷い、戸惑い、彷徨い、無駄に足掻き続けた毎日だったが、もう迷わない。大好きな人達のために、彼女は足掻き続ける。護るために、共に生きるために。


「ごめんなさいルニアさん。これから先、絶対勝てませんのでご容赦ください!」


「・・・ふっ、それでこそ仇の打ち甲斐があると言うものだ!--第3ラウンド、開始だ」



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