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アリアとカミラ

 なんとかカミラとの戦闘に勝ち、同時に仲間になってもらうことになった俺。次の試合のレヴィ対ルニア兄貴の試合を見たいのだが、いかせん怪我で動けない。


 1日に何度も駆け込んでいるせいで医務室の方達にめちゃめちゃ叱られ、治療は後回しにされている。因みに隣のカミラはすでにピンピンしている。


「うん!もうすっかり治っちゃった!すごいね〜回復魔法って。蓮くんどんな感じ?」


「わざとだろ。・・・見てそのまま傷だらけだよ。ほんと試合直前まで治してくれないんじゃないか?そのレベルで無視されてる。・・・分かるかカミラ?一緒に怪我した知り合いがいて、自分の目の前でその知り合いだけ治され、次自分だ!って思ったらどっか行かれるあの感じ。超切ないぞ。思わず泣きそうになる」


 事実、あの瞬間結構な音量で「えっ?」って言った。言いたくもなる。


「ははっ、まぁご愁傷様。自業自得だと思って我慢しなよ」


「カミラさんなんか毒増えませんでした?君純真無垢な、村のみんなからは女神様だ!と崇め奉られる感じのキャラじゃなかった?」


「猫被ってた訳ではないけど・・・そうだ!仲間になるのにいつまでも他人フィルターかけるわけにも行かないしね!ってな訳よ!」


 カミラは力強くグットサインを出す。


 うまく逃げたな〜今。


「まぁとにかく、あたしはもう治ったし、試合見てくるね!レヴィちゃん応援しなきゃだし!」


 俺はカミラに羨望の眼差しを向ける。


「ええ〜いいなぁ。戻ったらちゃんと、事細かく試合結果教えてくれよ!」


「はいはい。蓮くんはちゃんと寝ててね。とにかくゆっくり体を休めること!気も落ち着かせて、終わったら戻ってきてあげるから」


「パート前の妻か!」


 そのツッコミに薄い反応を示すカミラ。なにそのジト目、怖い。


 カミラは頭を押さえため息をつく。


「はぁ〜。君が天然って知ってなきゃ多分怒ってたよあたし。女の子に対して妻か!とか恋人か!とか軽々しく言うもんじゃないよ。本気にしちゃう子いたらどうすんの?」


「ははっ、大丈夫。そんなのないから」


 その返答後、カミラは右手を顎に当て、首を捻った。


「う〜ん?これは自分を蔑ろと言うか?いやでもこれは単にモテてこなかったことによる弊害と片付けてしまっても問題ない気も・・・いや!それはそれで問題ありか?」


 などと1人でぶつぶつ呟いている。俺耳いい方だから聞こえてるよ全部。ただ普通に悪口と断罪出来ないのが悲しいところだ。


「取り敢えず分かったから、早く行かないと終わっちまうかもしれないぞ。ほれ!いってらっしゃい」


「ほれって・・・まぁいいや、いってきまーす!」


 カミラはようやく観覧席へと向かい、医務室は静かになった。俺は彼女が言っていたように、取り敢えず今は体を休めるのに専念することにした。


 目蓋を閉じ眠りにつく。するとよく聞こえる女性の声がまた聞こえ出した。いつもならなにも出来ずただそれを聞いているだけ。しかし今日は違った。向かい合おう、そう決めたからなのか、これは夢だと認識することができた。


 俺にしつこく言い聞かせていたのは、年は大体20そこら。長く伸ばし、後ろで結ばれた、明らかに染めましたって感じの茶髪の女性だった。顔立ちは良くも悪くも普通。どこにでもいる感じだった。異世界で現実離れした女性達を見すぎたせいなのかもしれないが。・・・しかしなんというか、誰かに似てんだよなこの顔。テレビでパッと見たとかではない。日常的に見てた顔に近い。・・・先生か?


 その女性は今こうして俺が観察している間もずっといつもの言葉を投げかけている。


「ーーなんでそんなことも出来ないの!」「ーーあんたは私達を楽させる為に生きるの」「ーーさっさとしなさい!」だの。


 こんなこと10年以上2日に一回くらい言われてみろ、俺じゃなくても刷り込まれる。今俺は意識的にこうやって聞けてるからすごいこと言ってんなこの人ってなるが、夢で永遠聞かされれば疑問視も出来なくなる。現に俺は出来なかった。


 ・・・にしてもほんと誰だこの人?イカルガん時のパンイチおっさんといい、なんで俺の夢には知らない他人ばかり登場するんだ?作品とかだったらこの正体分かるものだが、現実だとどうなのだろうか。過去を見て貰えば分かるのだろうか。女性の方は小さい頃から出てきているから知り合いかもしれないし、出てくるのかもしれないが、おっさんは・・・まぁ出ないなら出ないでいいや。影響はない。


 俺はその女性の方を向き、こちらも一方的に語りかける。


「・・・あんたが誰かは知らないし、夜な夜な夢で刷り込み教育してくるやつなんて近づきたくもない。だけど、あんたがなんで俺の夢には出てきてるのか、なんでこんなことしてるのかを知りたい。だから向き合うって決めた。13年続いた夜の日常に終止符打つよ。取り敢えず今は・・・消えろ」


 目の前の風景が全て消滅し、真っ暗な空間になった。そこにはあの女性もいない。このまま目をつぶれば・・・ようやく--


 俺は13年ぶりになににも邪魔されずゆっくりと寝ることができた。

 ----------------------

 蓮が寝ている丁度その頃、出場者用の観覧席にカミラは到着した。本来なら試合が開始している時間だが、蓮が会場の地面を思いっきり壊したので、修繕をしているところだった。


「良かったー!まだギリギリ始まってない!--さてと・・・どこ座ろ?」


 と、席を探していると、いきなり声をかけられた。


「あっ!カミラ!こっちおいで!」


 カミラを呼びかけたのは、アリアだった。


「えっ?・・・えー!アリアさんと・・・いや、でもあたしなんて・・・!」


 アリアはカミラのドキマギ具合に、首を傾げる。


「ん?なんで彼女はあんなに慌てて謙遜しているんだ?」


 そこに、同席していたバルクが口を挟む。


「あんなぁアリアさん。あんたは伝説級の冒険者なんだ、実力経歴容姿に・・・兄弟もな。そんなのにずけずけと弟子入りまでしてるあの2人とか、特に蓮とかがおかしいんだよ。まぁ脳無しだから経歴とかしらねぇんだろうけど。つまり、そんな奴からいきなり誘われても怖いだけなんだよ。もっと自覚しろ自分を」


「・・・と言いつつお前も結構ずけずけくると思うんだが・・・ふん、となればもう少し柔らかく誘うべきだな!」


 顎に手を当て考え、出した答えが--


「カーミーラちゃんっ!こっちおーいでー!」


 とにかく明るく大きな声を出し、大きな身振り手振りをする。これがアリア流の柔らかいだ。


「・・・なんか逆に怖えぇわ。まぁでも、ここまで言わせて断れるやつはいない」


 バルクの読み通り、カミラは最初に怪訝な表情を浮かべ、周りを窺い、行かねば後でなにがあるか分からないとの一種恐怖心から、ようやく近づいた。


「し、失礼します」


 アリアの手招きで左隣に座った。


「ふん・・・たったこれだけのことでこんなに時間が掛かるとは思わなんだ。これから誘うときはこれで行こう」


 微妙にズレているが、アリアの今後誘い文句が決まった。


「えっ・・・えっと、どうしてあたしだったんですか?あと、何で名前・・・」


「ん?蓮と戦ってた、レヴィと友達、その2人とパーティーを組む。これだけあれば名前だってそりゃ覚える。あと、これだけあってまだ誘うまでの壁あったの?教えて」


 真顔でそう言ったアリア。その時カミラは自身が持っていた印象との違いに混乱していた。


「(あれっ?もしかしてアリアさんって気安い人?なんかもっと孤高の戦士ってイメージだったけど、なんていうか・・・普通。いい意味で普通)」


「まぁ、いっか。・・・ねぇカミラ」


「はっ、はい!」


「そんなかしこまらなくてもいいよ。弟子の仲間だ、そんなもんいちいち気にしない」


「・・・はい」


 カミラは流石にまだ緊張しているようで、返事が固い。


「んも〜う、固いなぁ。ま、しょうがないか。・・・カミラ。蓮のこと・・・ありがとうね」


「・・・えっ?」


 突然の感謝の言葉に思わず抜けた声で返事してしまった。カミラからすればいきなり伝説級の人に呼ばれたかと思えば、その人から謝辞を述べられるのだ。動揺もする。


「いやなに、蓮のやつ、なんだか悩んでただろ?それが試合中、なに言ってるのかまでは聞こえなかったけどカミラがなにか言ってくれてから蓮の顔が戻った。というより晴れたっていうべきなのかな?肩の荷が降りたというか。本来師匠が気付くべきだし、降ろさせてやるべきだったんだろうけど、私じゃうまく出来なかった。それをやってくれたんだ、ひとまず感謝をせずになにをする?」


 カミラが、というより冒険者全体がアリアに対して持っているイメージ、それは、孤高で圧倒的な力を持ち、敵味方すべてを寄せ付けない最強女王。だが、目の前にいる女性は全くそれとは違っていた。圧倒的な力はありながら、弟子を取り、その弟子の試合を観覧し、弟子のことについて本気で感謝をする。


「(・・・なるほどね、こんな人なら自分の身を多少犠牲にしてでも役に立ちたいっていう、蓮くんの気持ちがちょっと分かるきがするよ)」


「2人のこと、ほんとに大事なんですね・・・!」


「ああ!大好きさ!」


 綺麗な顔で、とても素敵な笑顔を向けるアリア。


「(あっ!いかん!いかんですよこれは!女の子あたしが惚れそうだ!・・・くっそ〜、タダでさえ綺麗な顔でそんな笑顔しないでよ・・・ずるいでしょあれ)」


「あたしはほんと、大したことしてないですよ。最終的に気づいたのは蓮くん自身。あたしの手柄じゃない。--あっ、そうだ。この大会終わったら、蓮くんを精神病専門のお医者さんである、ティルザさんのとこに連れててってあげて下さい。彼自身、自分の過去と向き合いたいみたいなので」


「ティルザ・・・ティルザね!分かった、絶対連れて行くよ。何から何までほんとにありがとう!感謝しきれないほどだ」


「ははっ、みんな大袈裟だなぁほんと」


「・・・ねぇカミラ?」


「はい?なんですか?」


 アリアは先程の無邪気な笑顔ではなく、とても優しい、柔らかい笑顔になりこう言った。


「色々やってもらってばかりで申し訳ないけど、これからも蓮とレヴィ、あの2人のこと、お願いできる?これからも、一緒にいてあげてくれないかな?」


「・・・柔らかいってこういうのだと思います」


「ん?なんのこと?」


「えっ?・・・あっ!なんでもないです。そうだ、さっきのお願いですけど・・・お願いされるまでもありません!」


 カミラは歯を見せるくらい無邪気な笑顔をアリアに向けた。


「そっか・・・じゃあ安心だ。--おっ!やっと始まるぞ!一緒に見ようカミラ!」


「はいっ!」


 アリアとカミラの仲が深まりつつ、まもなく、レヴィ対ルニアの試合が始まる。


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