抜けてゆく悲しみ
すいませんいつもより長いです。
カミラ達のお陰で自分の情けなさを自覚できた俺は、カミラとの戦闘に決着をつける為、頭の中で作戦を立てることにした。だが実際そんな簡単にいかない。
「三ノ舞・飛蓮--旋蘭・飛び胞子!」
当然のように攻撃が飛んでくる。これを避けながら考えなくてはいけない。正直負けそうだ。ちょっと前にかっこつけただけに、ここで負けたら恥ずかしすぎる。
カミラの姿が消える。これは網を張るべきか?下手にやっては魔法の無駄遣いになる。残り魔法は光1に雷4、そして透過1だ。これをどう使えば捕らえられる?くそっ!考える暇がない!
どうするべきか迷いその場で立ち尽くしていると、背後に強烈な一撃を食らった。あの裏拳の技か!
とりあえず当たってしまった。ここから回避は出来ない。であればせめて--
「異類・・・無礙!」
吹き飛ばされると同時にカミラの魔法が解ける。今は100%実体がある。吹き飛ばされてる最中で体制が安定しないが、やるしかない!
「でたらめ放出!雷神の一撃!」
ピンポイントで狙うことは出来ない。であればカミラのいる方向に広範囲で放つしかない。1箇所あたりの威力は落ちるが仕方がない。
「くっ!!--こんの!」
不意打ちにより一瞬ダメージを与えられたが、すぐに透過されてしまい、結局ほとんど効いてなさそうだ。
対して俺はもともと吹っ飛ばされてたのプラス技を打った時の衝撃で思いっきり地面に叩きつけられる。すごい痛い。特に背中。
「へいへいどうした挑戦者?お前の力はその程度か?」
「ラスボス的テンションで行きたいのかそうじゃないのかはっきりしろ!最初の部分すげぇ陽気だったぞ」
こうして冗談を言っているが、実際やばい。このままだと絶対負ける。・・・にしてもカミラはよくここまでこの透過魔法使いこなしてるよな。よっぽどの努力をしないとここまで精密に使えないだろ多分。理解度だけで言えば進化してもおかしくないんじゃ?とにかくよく観察しろ!調べて調べて調べ尽くして、そんで意表をついてやる!
「こないんだったらこっちから行くよ!」
再びカミラは透明になった。使い方その1。光のみを透過して透明になる。そして同時にその2。体を透過して光だけでなく全ての物体をすり抜ける。
この時どうやってるのか、近づいてくる音もしない。歩いてるなら足だけは透過出来ないはずなのに。
頑張って探っていると、鳩尾に攻撃が突き刺さる。
「ぐはっ!くっそこれが1番いやだ!」
その3。攻撃の瞬間、当たるその部分だけを実体化する。その時その部分の光の透過は忘れない。
・・・こうして探るとまじで繊細な魔法だな。大味の魔法しか使ったことないからどう使えばいいのか分からん。
その後も攻撃は止まない。
「六ノ舞--刺楸!五ノ舞--菘円!」
針で刺すかのような足の蹴りから始まり、両手を地面につき両足を回転し連続で蹴りつける。
そしてすぐに透過して避けていく。接近型ヒットアンドアウェイだ。そして離れると石を持ちそれを投げ飛ばしてくる。不思議なことにその石を避けているのも関わらずその避けた先に別の飛来物があり、それに地味なダメージをくらう。なんだ?と気を取られるとカミラが近づき接近技を仕掛けてくる。
・・・なんだ?あの見えない飛来物は?あれにぶつかる時、決まって石をまず投げ、旋回し裏拳で飛ばしてくる。そして見えてる石を避けようとすると見えないものにぶつかる・・・ん?もしかしてあの魔法って自分の手を離れたものにも使えるのか?だとすれば俺でも応用が出来そうだ。
透過魔法のストックはあと2発分ある。一度試すか?いや、それで違ったりカミラが透過していては意味がない。タイミングを見計らないと。
「--さて、そろそろ決めようかな!どっかの馬鹿を早く気絶させて連れてくるって約束しちゃってるからさ」
「馬鹿ってのは・・・まぁ俺ですよね分かります申し訳ない。だけどもうちょっと待ってくれる?今カミラの魔法解析中なんだよ」
「おっとそうなのかい?だったら待って・・・上げるわけないよね!」
透過し見えなくなった。やはりここでの足音はない。透過を使って足音を出さずに歩く方法・・・いや、歩く必要がないのか?そうか!ここならこうやって近づける!
「(これで終わりだよ!一ノ舞--刻桜印!)--あっ・・・!」
攻撃を当てる瞬間、蓮の姿が消えた。動揺するカミラ。その瞬間、何かに足首をガシっと掴まれた。
「つーかまーえたっ!異類無礙!」
不気味な声と違和感の場所である足元を見ると、そこには手だけ地上に現れ、残り全て地面に埋まった奇妙な光景がそこにあった。
観客の中には悲鳴を上げるものもいる。そうでなくとも異様な光景に声を漏らすものがちらほらと現れる。だが、この女、カミラだけは違った。カミラの動揺、それは何が起こった?という疑問のものではなく、見破られたという驚愕の動揺であった。
「(あっ、バレた。あれっ?ちょっと待ってこれ投げられ-ー)」
伸びた手にカミラは地面に叩きつけられ、少し吹き飛ぶ。今までで1番のダメージを食らった瞬間だった。
「ッ!--いった〜い!蓮くん、私の技パクったね?」
埋まっていた手がだんだんと空へと伸び、その全容を現した。その姿は--まぁ知っての通りこの男。
「へへ〜ん!どうだ?暴いてやったぜ!カミラの無音高速接近方法!」
「・・・長いね」
「ごめんなさい」
・・・まぁ要するに何をしたかと言うと、地面に沈んでいた。まず体全体を透過し地面に沈む。そして足元のみ解除し、進んだ瞬間透過する。そして到着地点に到達したら地面を蹴り上げ地上に上がる。これが種だ。高速で動けていたのは抵抗が働かないからだろう。と言ってもこれを今やれと言われてできる気がしない。なので俺が今やったのは、沈んで足元を解除し、手だけ出して掴んだ。それだけだ。ただ・・・
「土の中で俺の魔法使ったから全身土まみれだ。うぇっ!口に入ってる!」
汚れを払う俺。それに対するカミラは簡易的とは言え自身の技を真似されたこと、そしてそれで反撃されたこと・・・あと多分俺の無様な格好に、微妙な表情を浮かべていた。
「・・・まさか見破られるとは思ってなかったなぁ。あたしこの方法習得するのに何回土食べたと思ってるの?痛みと合わせて泣きそ〜」
「頼むから泣かないでくれよ。泣かれたら多分俺何も出来なくなる」
「ははっ!それあたし泣いたら勝てるっていつまでくれてるようなもんだよ!・・・まぁ、泣かないけどね。で?今の手掴みって結局勘・・・というか推測だよね?もしあたしがその場から動いてなかったら今の全く意味がなかったことになるよね?ってことはあたしの攻略は出来てないってことだ!」
--正解。確かに手を出したのはおそらくこれくらいの時間で、この位置に来るだろうと推測して出したに過ぎない。今のを破ったからってこの先どうなるという訳ではない--って思うだろ?俺もさっきの仮説検証するまではそうだったよ。だけどもう十分だ。体感してみてよ〜く分かった。
「取り敢えず距離をとろっか!三ノ舞・飛蓮--旋蘭・飛び胞子!」
石を上空に放り投げ、数回全身を旋回する。そして裏拳で石を飛ばしてきた。
この技、これも仮説だが、魔法を使って放ったものは手を離れても透過し続けるとする。とすると、今までの見えない飛来物は光を透過させた石で、回避予測位置に先に飛ばしているのではないか。そう考えられる。ってことはこの技は避けずにガードが懸命だ。
「雷の終膜!」
これは前にアリアさんと戦った時に見た雷の防御膜を張る技だ。硬度も比べると大したことはないが、今回レベルなら問題ない。
膜に石が当たり、カンカンと音が鳴る。
「ありゃ、これもダメか!仕方ない、やっぱこれかな!」
カミラは再び姿を消す。この時点で沈んでいるのか地上にいるのかは分からない。もしかしたら地中で様子を伺っているのかも知れない。だが、沈んでる最中でさえなければ全てにおいて問題ない!
--その時カミラは地中で足底のみ解除し、どう攻めるか考えていた。
「(さてはて、どうしようかな。安直にせめてもさっきのくらいそうだし、かと言って攻めないのも意味ないしなぁ。完全透過してる間に目も見えないし、様子伺えない。ここは一か八かはるか高く飛んでみるか--)」
などと考えている間に、蓮は地面に手をついた。
「残り一回一発勝負。これで決めなきゃ敗北だ。大人しく負けを認めようぜ。・・・ふぅ・・・透過!!」
俺が透過したもの、それは--地面そのものだ。体全身を透過するように、地面全体を透過させた。これによって何があるか--それはジタバタしている足裏が見える!
「--えっ?なにこれ?嘘これ?!やだこれ!落ちる〜〜!!」
叫びながら落ちていくカミラ。そしてそこに超高速で突っ込んでいく男、蓮。
「(透過した瞬間に光魔法を使い急接近。んでもって--)」
カミラの体に手が触れる。正確には体の位置に手が触れる。
「この辺か?こっからは賭けだ--異類無礙!!」
魔法を使い、カミラの姿が現れる。それと同時に透過した地面も実体化する。
「ぎゃっ!くていにてゅてぃが!(口に土が!)」
「いっほにうはろうべ(一緒に埋まろうぜ)!--はんほはりほ(雷神の聖域)!!」
カミラをガッチリと掴み全身から大量の電流を放出した。その威力は2人を埋める地面を崩落させるほどだった。
「--ッ!!!(あっ・・・意識・・・なくな・・・)」
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--しばらくし、会場には静寂が訪れる。スタッフが試合の終わりを感じ取り、救出へ向かった。そして、一緒になって気絶している2人を発見する。肝心の試合の勝敗は--
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医務室にて--
「・・・ん・・・あれ?・・・あたしどうなったんだっけ?・・・ッ!頭痛い!・・・・・・そうだ、馬鹿に電撃浴びせられたんだっけ?でその馬鹿は・・・?」
カミラは起き上がれないので仰向けのまま顔だけ横に向ける。すると--
「・・・やっほーカミラ。気分はどう?」
右隣に、同じく倒れたままの馬鹿がいた。
「いいわけないじゃん。馬鹿なの?ごめんそういえば馬鹿だった」
「ひでえなおい。同じく土を食いあった仲だろ?」
「土?あっ!そういえば!ペッペ!土くさーい--そういえば、試合どうなったの?」
「2人とも気絶してたからさ、決め手となったのが俺の電撃だろうってことで俺の判定勝ち。土の中にいたからはっきりとは分かんないんだと。ただ雷が見えてそのあと何もなく治ったからってことみたい。気絶してたからあんま納得出来てないけど」
「ふ〜ん。そっ、負けちゃったんだ」
カミラの反応は思っていたより淡白なものだった。
「・・・カミラ、改めてだけどさ、ごめん。あと、ありがとう!ほんと、辛いことさせてしまって。本当に申し訳ないと思ってる」
「・・・そっ。で、何して返してくれるの?」
そこなんだよなぁ。何すりゃいんだろ?
「・・・取り敢えず、絶対にその過去を見る人のとこには行くよ。そして過去に向き合う、それは絶対そうする。あとは・・・何かして欲しいことある?可能な限り全力で叶えますので」
カミラはしばらく天井を見上げこう言った。
「別にないよ。あたしが勝手にやっただけ。強いて言うなら、もうこんな面倒なことさせないでね」
「ははっ、そりゃ勿論。ってか、本当にないのか?まぁ思いついたらその都度言ってくれりゃいいけど」
「本当にいいよ。あんなことしといてなんだけど、やりながらちょっと蓮くんのことすごいなって思ったから」
すごい?少なくともあの時の俺は酷いばかりですごさなんか微塵もなかったと思うが。
「蓮くんさ、いつもあんな風に心を傷つけるような戦い方してたんだなぁって思って・・・そしたらなんか・・・余計に悲しくなってきて・・・だからさ、ほんともうやめてよね。もう止めたくないし見たくないよ。君のあんな姿も・・・あの子のあんな顔も」
レヴィにもあとでちゃんと謝ろう。誠心誠意、伝わるかは分かんないけど、伝わるまで謝ろう。まずはそれからだ。
「・・・ほんと、ありがとう」
「うん。--そうだ、別に無理して過去に向き合わなくていいからね。あれは君がおかしくなってたから行って欲しかった訳で、それが治ったんならまぁ別に--」
「いや、俺は向き合うよ。そうじゃなきゃけじめつけられないし。それに、俺自身が知りたいんだ」
カミラの方をしっかりと向き、真っ直ぐに伝えた。本当の気持ちと知ってもらうために。
「・・・うん。分かった。--ってな訳で次の試合も頑張ってね!こんな傷だらけで勝てるのか知らないけど!」
ははっ、すげぇ切り替えの速さ。まぁ、いいとこなんだけどな。
「カミラ、俺、お前の分まで戦って勝つよ。だから応援--」
「やだ」
「へっ?」
思ってたのと違う答えで即答されてしまった。
「だってあたしレヴィちゃん応援するから。君とレヴィちゃんだったら、当然そっちだよね!--ってな訳で、レヴィちゃん頑張れー!」
大声で俺負けろコールをされてしまった。
・・・ほんと、ありがとうカミラ。俺はお前と--
「--カミラ、仲間になってくれないか?」
「うん。--いいよ!」
--俺とレヴィのチームに、仲間が増えた。




