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独善的で偽善的なーー

「私の魔法は透過魔法、"透過(トランスペアレント)"。あたしは、あらゆるものをすり抜ける」


 ーー透過魔法?透明じゃなくて?じゃあさっきまでの透明化はどうやって・・・?


 突然の告白に疑問を反芻させていると、頭を覗いたように答えた。


「なんで?どうやって透明に?って顔してるね。分かるよ、今までの人もそんな反応だったし。言ったでしょ、私の魔法はあらゆるものをすり抜けるって。ここまで言って分からない?」


 ・・・全てをすり抜ける。透明。姿を映さない・・・あぁ、なるほど。


「つまり、光を透過して自身の姿を反射させなかったってことか」


「正解、物体に光が反射することで姿を映している。つまり反射さえさせなければその物体の姿は認識出来なくなるってわけ。でも変わらずその物体はそこにあるから、私の攻撃は通るって訳よ」


「器用な使い方するもんだな。光だけ透過とか」


「なにそれ?親父ギャグ?」


「・・・ん?透過・・・とか・・・いや素だぞ今の!ってか別にギャグでもねぇだろ!」


「ふふっ!・・・あっ・・・。・・・やっぱりそうやって、自虐的じゃない時の君は面白いね。そんな君と、君が信頼する他の仲間となら、一緒にいたいって思うよ」


 一瞬笑ったカミラの顔は本当に本心からの笑みに見えた。そして今の顔は、口角こそ上がっているが、笑っているように見えない。


「だったら、条件なしで入ってくれないかな?その方が助かるんだけど」


「君がさっきの君だけならそうしただろうけど、自分の過去とも向き合わず、挙句、自分を大切にしろという仲間の声も無視するような君がいるうちは、入りたくないかな。だからあたしは--君を倒すよ」


 笑みが失せ、真剣な表情でそう言ったカミラ。多分その言葉は本当に本当で、嘘偽りがない。


 その言葉を聞くたびに俺の心は気持ち悪くなる。カミラやレヴィの言葉を素直に受け入れたい自分。その言葉を受け入れるなという自分。許諾と拒絶がせめぎ合い今にも吐き出しそうだ。そして何が1番気持ち悪いか、それは--結局選んでいるのが拒絶ということだ。


 そんな自分が--1番気持ちが悪い。


 じゃぁ負ければいい、だけど負けたくない。アリアさんの為、レヴィやカミラの為。

 他人の為、自分の為。


 俺は・・・何がしたい?


「--隙だらけだよ指宿蓮くん」


 いつの間にやら懐に入っていたカミラ。ダメだ、避けきれない!


一ノ舞(いちのまい)--刻桜印(こくおういん)!」


 俺は丁度心臓の付近を叩きつけられ、吹き飛ばされる。とても女の子の力とは思えない。


「右手をいっぱいに広げ、掌全てを相手に押し込む技。あたしのおじいちゃんの代で考案した型の1つだよ。 闘華流(とうかりゅう)、これがこの流派の名前。本当かどうかは知らないけど、脳無しの人に教えてもらったとかどうとか。まぁ特別感出すための嘘だと思うけどね」


 脳無し・・・ねぇ。本当だとすれば俺入れて3人だぞ。しかもたかだか60年のうちに3人。やっぱりそんなにレア度が高いわけじゃなさそうだな。・・・にしても凄い痛い。これが女の子の出す威力とはとても思えないほど。


「あたしの魔法、攻撃自体には向いてないでしょ?だから頑張って習得したの。足手まといにならない為に。だから・・・あの時は悔しかったなぁ。あたしがもっと強ければ仲間を守れたかもしれないのに」


 カミラは空を見上げながらそう言った。そして少しため息を付き、こちらに向き直る。


「--だから、あたしはより一層頑張った。過去の自分より今日の自分が強くなれるように。過去をしっかり悔やんで、その上で前に進んでる」


 ・・・俺とは大違いだ。


「別に逃げることが悪いとは思わないよ。そうじゃなきゃやってられない人もいるだろうし。だけど、君は少し違うでしょ?自分の過去を知りたいと思ってるし知らなきゃって思ってる。それに、他人の為なら自分はどうなってもいいって逃げ方は・・・その他人のためにもならないよ」


 カミラは冷静に残酷に、そして優しく、俺の心を暴いていく。それは大方当たっている。だが--最後の言葉だけは・・・理解できなかった。他人のためにも動いているのに他人のためにならない。どういうことなのか・・・理解できなかった。


「いくよ指宿蓮くん。君を倒す」


 そういうと、カミラの姿は再び消え、視認できなくなった。俺は再び雷の包囲網を張り、相手の出を窺ったのだが、なんと今度は網に引っかかった時同時に俺の横腹に拳の衝撃が加わった。


「--ぐっ!なんで?」


 うまく張れていなかったわけではない。人が通り抜けれるほどの隙間も--通り抜ける・・・?そうか、完全に忘れてた。


 カミラは打撃を与えたままなのであろうポーズで現れた。


「三ノ舞--旋蘭(せんらん)。簡単に言えば旋回のエネルギーを加えた裏拳だね。結構痛いと思うよ」


 あぁそうだな。実際超痛い。


「それと、もう気づいてるとは思うけどその包囲網、もうあたしには効かないよ。その包囲網すらすり抜けてるからね。攻撃の瞬間、当たる部分だけ実体化すればいい。つまり、何が言いたいか分かる?」


「・・・当たった瞬間その部分だけを掴むなりしないと意味がないってことか?」


「そーいうこと。君の魔法は魔法を吸えるみたいだから、触れた瞬間私の魔法は解けるだろうね。だけど打撃はそのまま通る。どうしようもないね」


 ・・・どうする?どうすれば攻撃が入る?


 会場全体に電撃か?でもすり抜けられる。


 雷を鎧にしてガードか?でもすり抜けられる。


 当たった瞬間魔法を使うか?でも攻撃は入ってしまう。


 俺の魔法は透過してても効果があるのでは?確かにあるだろうがその間別の魔法を使えない。生身の殴り合いならカミラに分がありそうだ。


 --ダメだ。どうやっても詰んでる。今この瞬間に攻撃に転じては?とも思ったが今のカミラが姿が見えているだけで透過していない保証はない。残り少ない魔法の無駄使いになってしまう。


 考えろ、他に何か手は・・・


「そろそろ攻撃するよ。油断しないでね」


 そう言ってカミラは落ちていた石ころを数個拾い上げ、上空に投げ捨てた。一体何を・・・?


「三ノ舞・飛蓮(ひれん)ーー旋蘭・飛び胞子(とびほうし)!」


 カミラは体を旋回させ、そして上空に飛ばした石ころを纏めて裏拳で俺の元へ放った。


「石ころ程度なら上空に避ければ--」


 上空に避けた際、何かが数個体に直撃した。俺はバランスを崩しながら地面に足が着く。


「--ッ!今の・・・?」


「目に見えているものだけが真実じゃないんだよ」


 --くそ!もう懐に!


「二ノ舞--槐棘の樹(かいじゅのき)


 5本の指を全て付け合わせ槍のような形にし、俺の鳩尾に突き刺す。


 吹き飛ばされこそしないが、猛烈な気持ち悪さが俺を襲う。


 この戦いの様子を見ていたレヴィが思わず呟いた。


「・・・カミラ、どうしてあなたがそこまで・・・そんな顔して・・・それじゃぁ、蓮と同じだよ・・・!」


 俺はどうやって避けるか、そして今は腹の痛みにより、カミラのことが見れていない。余計に何を考えて戦っているかが分からない。


 カミラはうずくまる俺の近くに立ち止まり、


「・・・あたしはグニラさんのように力はないし、レヴィちゃんのように早くない。そして君のように唯一無二の魔法でもない。そんな平均で平常で平凡なあたしが・・・あなたを倒すの・・・!こんなこと絶対・・・レヴィちゃんにやらせない!」


 --不思議と、カミラが言った言葉の最後が引っかかった。レヴィにやらせない。何をだ?俺を倒すのをさせないってことか?カミラはなんでそんなこと--


 カミラの考えが知りたい。そう思った俺は、彼女の顔を見る。するとーーその顔は辛く、とても悲しそうな表情だった。


 ・・・なんで・・・なんで君がそんな表情をするんだ?君は何も悪くないのに。俺が・・・


 --その瞬間、俺はようやく理解した。


「他人の為なら自分はどうなってもいいって逃げ方は・・・その他人のためにもならないよ」


 カミラのこの言葉がずっと分からなかった。行動するのは俺で、怪我をするのも俺。だったらいいじゃないか、それで誰も傷ついてないんだから別にいいだろ!・・・そう思ってた。だけど、それは違った。俺は外のことばかりで、中を見てなかった。心を見てなかった。


 誰かが傷付けば仲間の心が傷つく。そんなの分かり切った常識的なことで、授業でも教えられないでいいくらい当たり前のことなのに・・・俺は見えてなかった。見ようとしなかった。


「絶対・・・レヴィちゃんにやらせない!」


 カミラは今俺のために、おかしくなった仲間を倒すなんて気分が悪く辛く悲しいことをレヴィにさせないために、今必死で戦ってくれてる。嫌悪の対象であろう今の俺と同じことをしてまで。そんな簡単なことすら気付けなかった。


 --なんだよ。結局仲間を傷つけてるのは俺じゃないか・・・!身を粉にすることが助けることだと思ってた。自分がどうなっても助けるのが仲間だと思ってた。だけど違った・・・それだけじゃダメだったんだ。


 それは酷く独善的で偽善的な・・・独りよがりの勘違いだ。


 --自分を蔑ろにしてるってのは、こういうことだったんだな。


 --俺は、多少ふらつきながら立ち上がった。そして、カミラを真っ直ぐ捉え--


「--ごめんなさい!」


 頭を下げ謝罪した。勿論これで許してもらおうとは思っていない。何せ1番辛い役割をやってくれていたのだ。


 カミラは突然のことに驚き、動揺し呆然としていたが、顔を上げた俺の顔を見て、「・・・あっ・・・!」と声を漏らした。


「・・・ふぅ〜ん。そっ、分かったんだ!」


「ああ。偽善的で独善的な勘違いは、腹立つしイライラするし・・・悲しいし辛いよな。ようやく・・・分かった気がするよ。・・・カミラのお陰だ」


「その言葉、後でレヴィちゃんにも言ってあげてね!レヴィちゃん泣いてたの・・・忘れてないよね?」


 レヴィは泣いていた。俺を止めたくて泣いてくれた。そんなの、忘れるわけない。


「大丈夫、忘れてない。・・・新しい魂に刻んできた・・・!」


 その言葉を聞いたカミラは、辛く険しい顔が解け、いつもの穏やかな顔に戻っていた。


「--そっか。・・・うん!じゃあ安心だね!んでんでどうする魔導祭?続ける?あたしとしてはすぐに行け!ってスタンス保ち続けるつもりだけど・・・アリアさんの為に勝ちたいんだっけ?今の君的にそれはどうなの?」


 --確かに、俺はアリアさんの為にと言ってこの試合に出た。あの時の自分の言葉で。そして今の俺の気持ちは--


「--勝ちたいよ。だけど、アリアさんの為にだけじゃない。俺はもう大丈夫なんだ!って、戦ってる姿で見せたいんだ・・・!これしか方法が思いつかなくて情けないんだけどさ」


「・・・あっそ。分かったよ、見てる限り安定してそうだしね。だけど・・・あたしに負けたらすぐ行く約束は、消さないからね!続けたかったらあたしの屍を超えてゆけい!」


「屍って・・・別に殺さねえよ!つかなんだその台詞!今時ボスキャラだって言わねぇよ!」


 少しの静寂の後、2人して笑い合った。そして--


「超えさせてもらうぞ--カミラ!」


「かかっておいで!--蓮くん!」







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