レヴィ対エトラ②
Bランク2回戦第4試合、レヴィ対エトラ戦は、熾烈を極めていた。
レヴィは光線をいくつも放ち、それをエトラが弾くことで、地面にはいくつも穴が開いている。
「う〜ん、どうすっかな。攻撃出来ねぇ」
エトラの魔法は属性魔法などのように攻撃に向いたものではない。どちらかといえばサポート向きの魔法だ。相手の体に触れ、直接施錠出来ればそれで勝利だが、その相手の実力がとうとう以上であればまずそのチャンスがない。さらにレヴィは知ってか知らずか遠距離攻撃を基本としている。という訳でエトラは内心動揺し焦っている。
しかしそれはレヴィとて同じだった。当初の作戦では、まず目眩しをし、その隙に一撃を入れて重力。これが理想だった。しかしエトラは自分の周り全体にバリアを貼る。それにより攻撃が入らないのだ。おまけに保険で用意していた大技もあまり効かなかった。それによりレヴィもせめあぐねているのだ。
一見すると魔法の応酬が繰り広げられていて動きのある試合展開だが、その実膠着状態でもある。
「(なんとか意識を逸らさないと・・・)」
「とにかく不規則な動きをすれば目はそちらに向くはず!」
その考えの元、レヴィはエトラに向かい光を曲げ四方八方から攻撃することにした。
「放たれる十の光玉!」
「ああもうまた来た!筒壁」
あらゆる方向から飛んでくる光玉をエトラは自身を覆うようにバリアを貼る。しかしそれはレヴィの作戦通り。ある部分がお留守だった。
レヴィは両手を地面に刺し込み、そこから魔法を流し込む。
「足元お留守よエトラ!地より裁く堕天使の光!」
地面に流し込まれた光がエトラの足元より天へと登る。前にダメージを与えた神罰の光の地面から版である。
「ーーグァァァ!(やばい・・・早く・・・解錠しないと・・・!)」
そもそも高威力の技をもろに喰らっていることもあるが、それ以上にエトラを苦しめたのはエトラ自身の魔法だった。四方八方に貼ったバリア。その内側から攻撃されたことで、本来ならもう少し分散するであろう攻撃が分散するどころか反射し続け、より一層苦しめた。
では光の方を施錠すれば良いのではというと、そうではない。自身を覆っているこの魔法を施錠すれば、結局身動きが取れなくなって終わりだ。つまり、いずれにせよ周りに貼ったバリアを解錠しないことにはどうしようもない。
「ぐののぉぉお!!気合・・・・・・解錠!!」
なんとか気合で魔法を解除したエトラ。密閉された空間が一気に解放されたことにより、エトラは吹き飛ばされた。
光線の奔流からは逃れることができたエトラだったが、すでにダメージは甚大だ。ここまで見ればこの先どちらが勝つかは素人でもわかるというレベルに満身創痍だった。
しかし、エトラは諦めない。
「へへっ・・・耐えた・・・!まだ・・・負けねぇよ!」
そう言ってエトラはレヴィに向かい指を指し、なんとか意地を見せる。
「・・・ほんと、こういうところ確かに義兄弟ね・・・!なんでここまでやって倒せないのかしら?」
レヴィはあまりのタフさに呆れつつも、その姿勢に感服していた。
しかしここで勝負を決めないこととは話が違う。レヴィは光の弓矢を作りエトラに放つ。
「光陰如箭!」
レヴィの中で最速の技。放たれた矢は文字通り光速でエトラに向かう。しかし、その矢はエトラの前で砕け散る。
瞬間、エトラは最後の力を振り絞り、槌状に固めた空気を右手に持ち、レヴィに向かい全力で走る。
一瞬理解できなかった。いつ貼った?そんな素振りは・・・そして思い出した。エトラがこちらに向かい指を指してきたことを。あの瞬間エトラは施錠をしたらしい。
そして理解し終わった時には、エトラはすでに目の前にいた。
エトラが右手を振りかぶる。レヴィの意識は見えない槌に集中される。光の壁を貼り、そしてそこに槌が直撃ーーはせず、エトラの右手は空ぶった。
「(ーーえっ?空ぶった?距離感を掴み損ねた?いや、そんなミス、今の彼はしない・・・!)」
エトラの真の狙いは右手の槌ではない。手ぶらの左手だ。右手に意識を集中させ、その隙に左手で触れ体を施錠する。これで勝利だ。
すでに伸びた左手。その指先は今にもレヴィの体に触れそうだ。触れられ、魔法を使われた瞬間終了。絶対的な敗北をする。
この瞬間、レヴィの頭はフル回転し、視界が鈍重になる。
今から魔法を出していては間に合わない。しかし形を変化させるのであればギリギリ間に合うかもしれない。今のこの感覚ならばいけるはずだ。不思議とそう思った。
エトラの指が触れるーーまさにその瞬間、右手の槌を防ぐために貼っていた壁が変形し、施錠されるのを防いだ。
「ーーあと・・・少しで・・・!」
「ごめんねエトラ・・・私の勝ち・・・!」
レヴィは右手に光を集中させ、爪のような形に変化させる。
師匠であるアリアとの特訓で見て盗んだ必殺技ーー
「全てを裂く堕天の鉤爪!!」
威力はアリアとの比べれば大したことはない。しかし、今のエトラには十分すぎる一撃だ。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「ーーグァァァ!!(ーーくそ・・・負けた・・・。強えぇなやっぱ・・・ごめんバルク兄貴、ルニア兄貴。負け・・・ちった・・・)」
まともに食らったエトラは、数メートル吹き飛び、背中から地面に倒れた。
『2回戦第4試合、勝者ーーレヴィ選手です!』
勝利したレヴィは、疲労と安堵から、息を吐きながらその場でへたり込んだ。
「はぁ・・・はぁ・・・勝った・・・!」
すると、意識を取り戻したエトラがレヴィに話しかける。
「ぐっ、痛ッァ・・・くっそ、負けちゃったな・・・流石レヴィちゃん」
「それをいうならあなただってそうよ。まさか攻撃魔法じゃない人に・・・あそこまで苦戦を強いられるとは思ってなかった」
「いや〜触れるって思ったんだけどな・・・てか、なに?最後の反応速度。もしかして進化の前兆とか?」
「魔法の進化、ふふっ、そうだと良いんだけど」
「進化は・・・強い気持ちがいるって聞いたけど・・・レヴィちゃんはなんだったの?」
「・・・別に。簡単な話よ。あの人が見てる前で負けたくない。彼と戦うまで負けたくない。それだけよ」
それを聞いたエトラは負けたにも関わらず少し笑みを浮かべていた。
「・・・レヴィちゃん。蓮のこと・・・頼むよ。多分あいつ、レヴィちゃんに捨てられたらこれから先誰も見てくれない気がするから・・・」
「さらっと酷いわね。・・・大丈夫よ、いつか絶対守るって決めてるんだから。・・・絶対彼に言わないでね!言ったら何するか分からないわよ・・・!」
「ははっ!怖えぇ。・・・レヴィちゃん、頑張れよ。頑張って・・・蓮に一泡吹かせてやれ!」
「ーーッ!・・・ふっ、言われなくても!」
2人は拳を突き合わせ約束した。
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エトラは医務室に運ばれ、レヴィは退場した。そして、出口付近で観覧していた俺とカミラに鉢合わせた。
「お疲れ様レヴィ!」
「ーー蓮、カミラ!なんでここに」
「蓮くんと一緒にここで試合見てたんだぁ!それにしてもねえねえ!レヴィちゃん最後何話してたの?エトラくんとすごい楽しげだったね!」
カミラは興味津々にレヴィに詰め寄る。
「うっ!別に大した話してないわよ・・・今日すごい良い天気ねって話」
「すごい勝負した直後に天気の話で盛り上がるぅ?しかも手まで突き合わせて。レヴィちゃん相変わらず嘘下手だね」
「べ、別に良いでしょそんなこと!私疲れたから休んでる!」
そういってレヴィは早足で消えていった。
「まぁあんな試合した後だからなぁ。そりゃ一刻も早く休みたいか」
「ーーははっ、面白い」
面白い?何か笑えるポイントあったかな?女子の笑いのツボって昔からよく分からなかったし、今のもそういうあれか。
ーーカミラ。俺はこの子の子とを全然知らない。これから仲間になるなら積極的に知っていかないとな。
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医務室にて回復を受けたエトラは、怪我が治ると脇目も振らずバルクの元へ向かった。
「ーーバルク兄貴!」
バルクが振り返る。そこには先程必死に戦った弟がいた。
「おぅ!お疲れ様!惜しかったなぁありゃ俺も行けたと思ったぜ」
「ははっ!ほんと、土壇場で成長すんだもんなぁ、やになるよ!」
エトラはとても明るく受け答えをする。その答えにバルクは気付く。
「エトラ、隣座れ」
エトラは一瞬何をされるのか分からず戸惑ったが、とりあえず隣に座った。
「えっと・・・どうしたーー」
すると、いきなり頭を覆うようにタオルがかけられた。
「エトラ・・・頑張ったな」
そう言って、タオル越しにエトラは頭を撫でられた。
ーーその瞬間、エトラの中で何かが瓦解した。
「ーーくそ・・・悔しいなぁ。兄貴にいいとこ見えようとしたのに・・・負けちまった・・・!ちくしょう・・・!」
エトラの言葉を頭を撫でながら、一言呟いた。
「惜敗ってのは、人を強くする。もう少し強ければ、もう少し努力してればって思うからな。それを今経験できたお前は、きっと強くなる。てめぇの強ぇ兄貴が保証してやんよ!」
エトラは頷く。そして誓うのだった。絶対強くなろうと。レヴィが最後に言ったように、自分も大切を守れるくらい。




