夢の声
「ーーなんでそんなことも出来ないの!」「ーーあんたは私達を楽させる為に生きるの」「ーーさっさとしなさい!」
夢の中でとある女性の声が流れ込んでくる。姿はぼやけて見えない。
この夢は昔から頭に流れ込んできていた。毎晩という訳ではないが、おおよそ2日に一回は流れてくる。
幼少の時からなので既に不快感すらない。日常的になってきている。
それに、この声には何故か懐かしさを感じてしまうのだ。ほんと、何故かは分からないが。
少なくとも母さんではない。あの人はおっとりして優しい人だ。それにあの人も3日に一回は夢に出るから、比較もきっちり出来ている。・・・母さん、今どうしてるかな。結局迷惑かけるだけ掛けて何もしてやれてない。
「ーーん!蓮!」
また別の聴き慣れた声が頭の中に流れてくる。これはーー
「んん・・・。おはようございますアリアさん」
「あぁ、おはよう!体の調子はどうだ?」
グニラにやられた傷。俺は一通り体を見たり動かしたりしたが、目立った外傷もなく、痛みとか完全に引いている。すごいな回復術師。
「はい!もう完全に治りました!次も行けますよ!」
アリアさんは俺のその言葉を受け、念のため医務院の人にも確認をとる。
「すいません、この子、もう動いて大丈夫なんですか?」
「そうですね・・・本来なら念のためもう少し寝てて欲しいところではありますけど・・・まぁこの程度なら大丈夫でしょう」
・・・日本だと絶対に有り得ない判断だが、こういうところに世界の考え方の乖離が窺える。
「そうですか・・・よし、じゃあ次の試合も出ていいよ。ただ、絶対無理はしないこと!約束できる?」
「はい!そりゃ勿論!」
そう言うと、アリアさんは俺の頭に手を置きーー
「蓮ーー何が勿論だこら!!そういうのは元々やってない奴だけだ言う権利があるんだ!お前みたいに前科持ちが言っても説得力あるかっ!!」
すげぇグリグリされた。超痛い。
「ぐぅっ!痛ッタタタタ!ギ・・・ギブギブ!」
ーーはぁ、頭割れるかと思った。
「痛ッたー。・・・あっ、そういえば今って試合どんな感じですか?」
痛む頭を抱えながら、俺は試合の状況をアリアさんに尋ねた。
「えっと・・・確かもうすぐ1回戦最終試合が始まるところだな。という訳でもうすぐ出番だ。今のうちに準備運動しておけ」
俺は固まった体をほぐしながら(ラジオ体操)アリアさんとの話を継続する。
「そういえばみんなはどうなりました?アリアさんのテンション見るに勝ってそうではありますけど」
「ああ、勝ったよ。もれなく全員1回戦突破だ!ただ・・・少なくとも2回戦ではレヴィかエトラは落ちる。個人的にはレヴィしか応援しないが、蓮は複雑だろう?」
「そっか・・・どっちも応援するつもりではあるけど・・・まぁでも複雑だな。とはいえその戦い面白そうな組み合わせではあるんだけど」
知り合い同士の戦い。まぁ結局は最後の1人になるまで戦うんだからこうなるのはしょうがない。俺も3回戦ではカミラと戦わなきゃいけないかもしれないし。
「とにかくそんな感じだ。体をほぐし終わったらすぐ戻ったほうがいい。いつ終わるか分からないからな」
「はい!そうします!今第2に入ったとこなのでそんな時間は掛からないですよ!」
「第2・・・?よく分からなんがまぁいっか。じゃあ私は戻るよ。次の試合、頑張れ!ただほんとに無理だけはするなよ」
そう言って部屋を出ようとするアリアさんだったが、ふと立ち止まった。
「ん?どうかしました?」
「・・・ううん、後でいいや。ごめんね」
そう言ってアリアさんは観覧席へと戻っていった。
その道中、アリアは1人呟く。
「ーー母さん・・・か」
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ラジオ体操も終わり、体もだいぶほぐれた俺は、会場へと向かう。
俺は次の試合、どころか、このトーナメント自体結構優勝の可能性が高いと思っている。その自信はやはり、ぶっちぎりの優勝候補を倒せたことに起因するだろう。グニラより強い相手がバンバンいるランクだとは思いたくない。
そして俺がたどり着いたくらいで、ちょうどよく1回戦最終試合が終わった。
間髪入れずに俺達の試合が始まる。相手はアシア選手。火属性魔法を使うらしい。
試合が始まり、とりあえず1発遠距離から魔法を放ったところ、何故か相手は避けようとせず直撃し、そのまま気絶してしまった。
「・・・・・・ふぁっ?」
思わず変な声がでた。今のは間違えなく避けれなかったのではなく避けなかった。よく分からないまま戻り、たまたま近くにいたディアスに話を聞くと、「彼、あのグニラを倒した君を見て、「グニラさんですら負けちまうのに勝てる訳ねぇじゃん」ってずっとぼやいてたよ」とのことだった。
やはりグニラはそれほどの相手だったようだ。ほんと、もう一回戦ったら俺負けるだろうな。それくらい強かった。
続くカミラも、再び透明魔法を使い不意打ちをすることで勝利を収めた。
戻ってきたカミラと、俺は少し話すことになった。
「やっほー蓮くん!わたしの戦いっぷり見てた?」
「見ようとしたけど見えなかった。透明だったからな」
「おっ!上手い返しだねぇ!あ、そうだ。グニラさんとの試合見てたよ!すごいじゃんまさか勝っちゃうなんて思わなかった!すごい強いんだね」
真正面からの全力褒めに俺は思わず顔を背けてしまう。そうテンション高く褒めないでもらえますかね。男の子ってのはこんなもんで勘違いしてしまうんです。
「いや・・・勝ったのはまぐれだよ。もう一回やったら絶対負ける」
すると、カミラは顎に手をやり少し考えたような素振りを見せた後ーー
「まぐれだったとしてもさ、今回勝ったんだからいいじゃん?次やるときは今よりも強くなってればいいわけだし。そもそもまぐれでも勝つのが凄いんだよ、それだけの人だよ、グニラさんは」
「・・・ははっ!なんていうか、カミラの言う通りだな!確かに、次やるときはもっと強くなってればいい。なんか自信ついた!その考えもらってい?」
「いいでしょう!君にはその考え方をプレゼントします!大事にしなさいな」
「ありがたく頂戴いたします!」
なんでいうか、カミラって喋ってるとなんだか落ち着いてくるな。ペースに飲まれるとも言うのかもしれんが。
「あのさ、カミラ。パーティーの件、どうするかって決めてくれた?まだなら全然待つけど」
「パーティーね。ん〜そういえばそのパーティーって、レヴィちゃんと蓮くん、そしてわたしを入れたとしたら・・・あと1人以上は入れないとダメだよね?誰にするの?」
「同じランクのディアスって分かる?俺あいつと仲良くて、仲間に入ってもらえないかなって思ってるんだけど」
「なるほど、ディアスくんか!確かにあの子最近大人しいし、それに強いしね!確かに人材としては申し分ないけど・・・今の言い方的に決まってはないんだ?」
「そうなんだよ。で、俺とあいつとの約束で、勝ったら入ってやるってことだからさ、出来れば今回の魔導祭であいつに勝って、そのまま仲間に入ってもらいたい。・・・あっ、そういえばあいつにも仲間がいるからディアスが入るならあとの2人も自動的に入ることになるかな」
「そっか・・・じゃあさ、次わたしたち戦う訳じゃん?だったらわたしたちもこうしようよ!」
「こう・・・とは?」
「ふふ〜ん!わたしを仲間にしたかったらわたしを倒してからにしな!」
人差し指を俺に向け、すごいキメ顔で条件を突きつけられた。
「実力的には問題ないでしょ?あっ、もしかして蓮くんって女の子とは戦わない主義とかある人?」
「いや、別にそんなことはないよ。アリアさんとも戦ったことあるし」
「アリアさん・・・えっ!アリアさんってもしかしてアリア・マクベスさん?!あのSランクの?!」
今まで見たカミラの中で1番大きなリアクションをとった。
「えっ、まぁそうだけど・・・どうしたの?」
「どうしたのって・・・なに、蓮くんってそんな人とコネあるの?」
「コネて・・・アリアさんは俺とレヴィの師匠だよ。それと俺の親代わりだ。・・・こういうと確かにコネかもな」
「ひゃー、あの子アリアさんに特訓つけてもらってるなんて・・・そりゃ強いわ。ーーってかあれ?なんでアリアさんの家に住んでんの?」
「俺脳無しだからさ、家とかないんだよ。それでアリアさんが善意で泊めてくれてんだ」
俺がそれをさも当たり前のように言うと、カミラはしばらく口をぼーぜんと開けていた。
「・・・なんというか、すごい経歴だね、蓮くんって。なんか今まで以上に興味湧いてきた!」
「ははっ、まぁ経歴に実績が追いついてないけどーー」
すると、アナウンスが耳に飛び込んできた。
『2回戦第3試合、勝者はルニア選手!』
「あっ!やべっ!見逃した!」
最初見逃したから今度こそ見ようと思ってたのに・・・まぁ勝ってくれたからよかった。
「あっ、これ終わったってことは次レヴィちゃんの番だよね?」
「ほんとだ!早く見にーー」
「ねぇ、一緒に見ない?仲間になるかもなんだし、仲間の応援は仲間同士でやろうよ!」
こうして、俺とカミラの2人でレヴィとエトラの試合を観覧することになった。




