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2匹の蛇

 魔導祭にて蓮とグニラによる勝負が行なわれていたまさにその頃、とあるダンジョンにてーー


「ーー本当に良かったんですか?他の方々に怒られちゃいますよ」


 澄んだ青年の声、そしてそれに応えるはとある女性。


「構わん。どうせ毎度全員出ている訳でもないしのぉ。それに、脳無しを食らえばトップは妾蛇!どうせ誰も逆らえんくなる」


 この男女はそうーーレヴィ救出の際に現れた華蛇(かだ)、そしてその姉である蛇姫(だっき)だ。


「ワタシとしては久々に皆さんに会いたかったんですけどね、まぁ姉上の頼みとあらば我慢しますよ」


「当然蛇ろうが。妾を差し置いて他に優先することなど、この世にはない。ーーして、脳無しはほんとにここにおるのかえ?」


 そこは以前華蛇が蓮達と戦ったダンジョンだった。


「いるなんて言ってませんよ〜!ただ知ってる人は居るかもしれないですねっ!と言っただけです」


 その発言に、蛇姫は青筋を立てた。


「・・・なん蛇と・・・?其方、不確定な情報で妾を動かしたのか?」


 蛇姫の周りで、何やら赤い液体がゆらゆらと蠢く。それは次第に形を成し、数十もの刃と変貌する。


「怖いな〜!考えてみてくださいよ、積極的に動かなければ他の十脳(じゅうのう)に脳無し取られちゃいますよ!それでもいいので?」


 その発言を理解はしたのか、蛇姫は舌打ちをした後再び歩き出した。


 しばらく歩き続けていた2人。すると、ちょうど華蛇が戦っていた地点で、複数の人間が何やらたむろしていた。


「ーー人間蛇・・・!華蛇、あれらから脳無しの情報を聞き出せ、手段は問わん。その後は封じておけ」


「かしこまりましたよ、姉上」


 華蛇はゆっくりとその人間達に近づく。平然と、和かに、これから手段を問わず情報を聞き出す者とは思えないほど穏やかに。


「ほんとに出るのか?その化物人間?」「マスターからの直々の指令だ。しっかり調査するぞ」「つってもよぉ、どうせいねぇんだから適当に済ませて、後はどっかの町で飲んで時間潰さねぇ?」「良いねぇ!確かに、居ませんでした!っていえば済む話だ」


 などと、その人間達はこれから起こることを全く予感せず、のうのうと話をしていた。


 と、そこへーー


「あの〜、ごめんなさい。1つ聞きたいことがあるんですが?」


 突然放たれたその声に、一斉に警戒する。


 がしかしーー


「ん?・・・なんだよ、人間じゃねぇか!お前、冒険者か?魔導祭はどうした?まだ途中だろ?」


 彼らは、人間化したモンスターというものは見た目からして少し変なものという認識だった。マスターから見せてもらったサンプルは、蓮やルニアが捕らえたあのゴブリン。あれは鼻が尖っており、モンスターとしての特徴が残っているものだった。


 つまりどういうことかーー華蛇のようなどこからどう見ても人間というのは、探している化物人間ではないと判断してしまうのだ。


 それにより、調査に来た人間達は完全に気が緩み切っていた。


「魔導祭?・・・魔導祭とはどう言ったものなんですか?」


「ん?お前冒険者のくせに魔導祭もしらねぇのか?」


「ギルドに在籍してる奴がランクごとに戦い合うんだよ。んで、各ランクの最強「決めようって話だ!」


「へぇ、そうんなものが・・・!ワタシ最近入ったばかりでして、教えてもらえなかったんですよ。・・・そうだ、風の噂で今年脳無しが出たって聞いたんですけど、ほんとですか?」


 人間達は顔を見合わせあれやこれやと話し合っていた。どうやら知っている者と、そうでない者で分かれているらしい。


 そしてそのうちの1人が華蛇に伝える。


「確かにいるぜ脳無し。それなりにやるらしいが、正直伝承に残ってるほどはパッとしないな。なんというか・・・地味だ。多分魔導祭にも出てると思うぜ」


「そうですか・・・して、その魔導祭はどこで?」


「ん?ギルドの近くにある闘技場だよ。お前もギルドメンバーなら見たことあんだろ?ーーお前、まさかしらねぇのか?」


「(ここまで聞ければ十分ですね・・・)」


 華蛇は現地点からさらにその人間達に近づきーー


「ーー銀の世界(しろがねのせかい)


 華蛇は自身の背中から液状の銀を出し、それを目の前の人間全てに付着させた。


「なっ!何をするお前!これは・・・魔法?」


「なんだよこれ・・・!固まって・・・動けねぇ!」


「おい!俺たちはギルドから直接派遣された調査隊だぞ!こんなことをして許されるとーーまさか・・・お前・・・!」


 華蛇は、穏やかに冷静にゆったりとしっとりと・・・そして冷たい笑顔を彼らに向ける。


「多分・・・そのまさかですよ。いや〜、有益な情報ありがとうございます!あなた方のお陰でワタシ達は救われました!感謝でいっぱいです!」


 心にもないこととはこのことだろうと言うほど、その言葉には感情が乗っていない。今から散りゆく命に毛程も関心がないようだ。


「い・・・いやだ!死にたくない!」


「なっ!口にまで・・・!や・・・やめ・・・」


「ああ・・・あっ・・・」


 こうして、調査隊の面々は、1人残らず体の内外全て銀で固められてしまった。


「あっ!この魔法、すごい高温で炙れば銀が溶けて助かりますよ!・・・って聞こえてないですよね。ごめんなさい、教えるの忘れてました」


 先程で騒がしかったダンジョンは、静寂に包まれる。


「終わりましたよ、姉上」


「遅いわ。1人残して全員殺せばよかった蛇のうが!」


「それでは口を全部やってくれない可能性がありましたので、でもそのおかげで結構有益な情報が手に入りましたよ」


「ふん。・・・まぁ良い。では目指すとしようか、その魔導祭とやら!」


 2人は固まった調査隊の間隙を抜け、先に進む。そこで華蛇が一言ポツリと呟いた。


「ーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ーー」


 2人が去った数分後、調査隊の面々の体が次々と崩壊し、最終的にーー全て崩れ去った。


「ーーまた()()をしたのかえ?」


「ふふっ、ワタシのあれは予知などではありませんよ。ただの・・・()()です」


 2匹の蛇が、蓮達のもとへ這いよろうとしていた。





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