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自分の為に

 グニラのおっさんとの勝負に勝った俺だが、試合中に受けたダメージが一気に流れ込み、気絶した。


 暫くし、ようやく目を覚ますと、俺は医務室にいた。そこにはアリアさんとレヴィ、それにディアス。そして・・・少し離れたところにグニラのおっさんが壁に背をつけ、腕を組みながら立っていた。


 あ〜れ?なんで俺この人より長いこと気絶してんの?これだとどっちが勝者かわかんねぇな。


「ーーん?ようやく起きたのか?これではどちらが勝ったのか分からなんな」


 ははっ、おっさんと同じ思考だ。


 俺はゆっくりと上体を起こし、みんなの方に向き直る。


「えっと・・・取り敢えずお見舞い来てくれてありがとう。で・・・今試合どんな感じ?2人とももしかして終わっちゃってる?」


 もしそうなら残念だ。2人とも仲間なのだし、どうせなら応援したかった。


「いや、オレたちはまだ終わってないよ。それどころか試合もまだ5試合目だ。まぁ君に関係者は戦ってるけどね」


 関係者・・・?・・・あっ!そうだ、確か5試合目ってルニア兄貴だった!しかもその前の4試合目も絶賛勧誘中のカミラだったし、なんだかんだ見たいもん見れてねぇな。


「そっか・・・レヴィ、カミラはどうだった?」


「ん?あの子は勝ったわよ。透明化して後ろからドンッ!」


 へぇ、ちゃんと戦えんだ。やっぱ伊達にBランクやってるわけじゃないな。・・・と、ギリギリBランク入りした男が申しております。


「・・・と言うか蓮?あなたあの子のことカミラって呼び捨てにしてるの?・・・いつの間に」


 なるほど・・・レヴィの思考がなんとなく読めたぞ。これはあれだ、俺がとんでもない軟派男だと思われているな。他人なら別に構わんがレヴィにそう言った誤解をされるのはなんか嫌だ。とは言え事実をそのまま伝えるとカミラが不埒な女認定されてしまうかも知れん。


「あの〜あれだよ!たまたま見かけてさ、で、これから仲間になるかもしれないのにさん付けもあれだからってので俺からそう言う提案をーー」


「あの子が言い出したんでしょ?カミラで良いよ!とか。分かってるから無理しなくて良いわよ」


 この気遣いは無用だったようです。気を遣うって難しいー!


「それにしても・・・あの子の変なこと言ってないかしら」


 その小言は誰の耳にも入らなかった。


「そんなことよりも蓮!お前無茶しすぎだ!自分のためにならいざ知らず・・・私の為なんかに戦うんじゃない」


 アリアさんが少し泣きそうな顔をしながら、しかし声色はいつも以上に強くそう言った。


「えっと・・・すいません。でもあんなこと言われたらいても立ってもーーってそうだ!おっさんアリアさんに謝ったのか?ちゃんと試合中に言質取ってたかんな!」


 突然自分の方に矛先が向き、少し焦るグニラのおっさん。


「んなっ!いきなりこっちに話を振るな!あと、お前俺のことおっさんと呼んどんのか!どんだけ失礼なんだ!」


「じゃなんて呼べば良いですか?じじ様?」


「老けをいじるのを止める気はないのか?・・・グニラでいい。一応の敬語もいらん。あんな試合した後にさん付けで呼ばれるのも変な感じだからな」


「そっか・・・じゃあグニラ、謝ったのか?」


「ちっ!話逸らせんかった!」


 このおっさん話を逸らして言質なかったことにしようとしたらしい。甘いよ、甘い甘い!俺は仲間やアリアさんのことになるとゴキブリ並みにしつこいぞ。


「ふんっ!まだだよ。お前が起きてからやらんとどうせ信じんと思ったからな」


 グニラはアリアさんの前に立ち、腕を解く。そしてーー


「お前の弟子を通じて、どれだけ大事に育てたのかは伝わった。試合中の非礼を詫びる。すまんかった」


 グニラは軽く頭を下げる。


 まぁ・・・これでいっか。


「いや、私が師匠として未熟なのはその通りだ。私自身、もっと頑張らないと弟子に面目たたないと思い知ったよ」


 グニラはしばしの無言のあと、再び腕を組み出口へと向かった。


「あれ?グニラ戻るのか?」


「ん?違う帰るんだ。試合には負け、用事も済んだしな」


「そっか・・・そうだ、試合中に言われたあのアドバイス・・・すごい参考になったよ。ありがとう!」


「んなっ!お前・・・そう言うのよく真正面から言えるな。こっちが恥ずかしいわ!」


 その発言にその場にいた全員が「ウンウン」と頷いていた。


 嘘、今のそんな変だったか?と言うか皆んなもそう思ってたんなら言ってくれれば良いのに。・・・いや、前から言われてた気もする。


「まぁとにかく、もっと色々教えてもらえ!そうすればまだ強くなれる。それと、この大会優勝しろよ!でないと俺の株も下がるからな!分かったかーー蓮!」


 ーー蓮。ガキから小僧になって最後に蓮。アリアさんのことも名前で呼んでるってことは、認められたってことだよな。


「ああ!頑張るよ!」


「ふんっ!」


 最後に遠回しなエールをもらった。


「優勝するってことはオレたちも倒すってことだよね?」


「そう言うことよね。私達一応あなたより先輩だからね。絶対負けないわよ」


 レヴィとディアスが乗ってきた。そっか、優勝するにはこの2人、あと他にも知り合い何人かを倒さなきゃ行けないんだよな。大変そうだ。


 と、ここでアリアさんが水を差す。


「レヴィ、ディアス、悪いが少し席を外してもらえるか?蓮と話があるんだ」


 レヴィとディアスは向き合い、お互い頷いた。


「ええ、勿論です。蓮!早く体完全に治してもらいなさいよ!」


「その間に、オレ達も2回戦に上がって待っているよ」


 そう言って2人は医務室から出て行った。


「ーーで、話ってなんですかアリアさん?」


「・・・お前が途中で遮った話の途中だよ」


 遮った話・・・なんだっけ?


 俺が少し考えあぐねていると、正解発表がされた。


「私の為に戦うな・・・そう言ったのを覚えているか?」


「えっ?ああ、話ってそれですか。でもそれ終わりませんでした?」


 やめろと言われて謝った。そして言い訳して・・・そっか、言い訳の途中だった。


「あのね、蓮。私はお前をあの草原で発見してから、ずっとお前と一緒に過ごしてきた。日々を過ごしていく中で、私はお前のことを家族のように思うようになった。個人的には自分の息子のように思ってる」


 ・・・人に恥ずかしいことよく言えるな、とか言う割にアリアさんも大概だと思うんですけど。


「俺も・・・個人的にアリアさんは第2の親だと思ってます。命拾ってもらって、育ててもらって・・・すごい感謝してる。返しきれない恩がある。そんな人が馬鹿にされたら、・・・息子としては黙ってられないだろ?」


「・・・蓮の気持ちはすごい嬉しいし、その気持ちもすごい分かる。否定するつもりはないよ。怒るつもりもない。でもね、蓮。私が親で、お前が息子ってお互い思ってるのなら・・・1つ言わせてくれ」


「はい。いくらでも聞きますよ!」


「親は・・・自分の子供に、親の復讐をして欲しくはないんだよ」


 ・・・!復讐・・・か。アリアさんにはそういう風に映ったのかな?


「別に今回のことだけを言いたいんじゃない。別に私が死んだ訳じゃないしね。だけどそういうことじゃない。私が言いたいのは、子供は親の為に生きるんじゃない、自分自身の為に生きなきゃダメってこと」


「自分自身の為・・・俺は自分の為に生きてますよ!今回のことだって俺が嫌だからああしただけで、アリアさんの為って訳じゃない。俺の勝手な自己満足だ!そう!満足してる!だから・・・これが俺自身の為だよ」


 俺のその返答に、アリアさんは少し悲しそうな表情を浮かべた。


「蓮・・・。お前はほんとに優しい子だよ。他人の為に命をかけられるそんな子だ。だけどその実・・・お前は自分のことを蔑ろにしすぎだ」


 俺が・・・俺を蔑ろにしてる?別にそんなことはない。俺はこれでも自己中だ。自分が動きたいと思ったことがあれば動くし、そうじゃなきゃ別に何もしない。命をかけるって言っても毎度別に死ぬつもりはない。生きて帰る気満々だ。死んだのは元の世界でのあの一回だけ。それだって死ぬつもりはなかった。


「そんなことないですよ!みんなと一緒で自分大好きです!」


「・・・今すぐ分かれとは言わない。だけどこれは覚えておいてーー()は、()()()に傷つく息子()は見たくないな」


 アリアさんは徐に立ち上がり、優しく、それでいてどこか寂しげな顔でそう言った。


「私は戻るよ。レヴィの応援したいしね。蓮はゆっくり休んでなさい、それが今のお前の仕事だよ。蓮の番が近くなったらまた来るから、その時出れるかどうか判断する」


「えぇ〜!俺もレヴィ達の応援したいのに!」


「大丈夫、あの子達なら2回戦いくよ。もしかして信じてない?」


 悪戯な笑顔で俺をからかう。


「んな訳ないでしょう。100%勝ちますよ。そんなこと言ってんじゃなくて、ただ応援したいんです」


 その時何か外で音がした気がするが、アリアさんが無反応なので気のせいだろう。


「ふふっ、そうか。だったら早く治すんだな!」


 そう言ってアリアさんも医務室から出たいった。


 ーー自分を蔑ろ・・・自分の為に生きる・・・ねぇ。しっかり生きてるつもりなんだけど、何がダメなんだろうな。それにあのアリアさんの顔・・・俺のせいであんな顔してたんだよな。


 ーーああクソ!どうすればいいのか全然分からん!自分勝手に我儘に生きろって意味ではないよな、それはわかる。・・・・・・ダメだ。ほんとに思いつかん。今日これ以上考えてても無駄だな。アリアさんもすぐじゃなくていいって言ってたし。 


 ちょっと寝よ。少し寝たら頭がスッキリして妙案が思いつくかもしれん。


 俺はふかふか・・・とも言えない微妙なベットに頭を埋め、眠りについた。


 ーー鮮血に染まる牙が俺に向けられていることをまだ知らずにーー





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