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押し出された空気の斧

 魔導祭Bランク戦、第1回戦第2試合。俺はいきなり優勝候補であるグニラのおっさんと戦うことになった。どんだけ運が悪いんだ?


 俺とおっさんは入り口手前で呼ばれるのを待っていた。


「よぉ、ガキ!ちゃんと逃げずに来たんだなぁ!そこは褒めてやろう」


「俺だってなんもないなら逃げてますよ。でも最愛の師匠が見てるんでね、ちょっとは頑張んないと」


 それを聞くと、少し意外そうな顔をした。


「ほう、この間会った時は酷く挙動不審の怪しいやつにしか見えんだがーー多少は芯があるようだ・・・!」


 挙動不審だったのはあなたが不審者にしか見えなかったからで・・・まぁ酷いのは認めるが。


「そういえばガキ、お前魔法を使うモンスターと戦ったらしいな」


「えっ、なんでそれーーそういえば冒険者全員に存在を伝えるって言ってたな。俺らのとこには来なかったからやってねぇのかと思ってたけど」


「で?どうだ?強かったか?」


 おっさんが興味ありげにこちらを覗き込む。背が高いから中腰で。


 あの・・・そのポーズやめて。そういうのはごついおっさんがやっていい体勢じゃない。取り敢えず汗!熱気!威圧感!この三拍子がなかなかに辛い。


「今までに雑魚2体と強いの1体戦いました。まぁ雑魚って言っても、強いのに比べたらって話ですけど。その雑魚に関しては多分Aランク以上なら1人で倒せると思います。強いのに関しては・・・Sランクでやっとかと」


 それを聞くとしばらく呆然としていたが、少しするといきなり笑い出した。


「ふっ・・・ふふふっ!ふはははっ!いいじゃないか!今からテンションが上がってきたぞ!俺は強い奴と戦うのが大好きでなぁ、話を聞いてからワクワクしとるんだ」


 戦闘狂・・・ねぇ。俺はいまいち理解できんが楽しいのだろうか。


『それでは第1回戦第2試合!グニラ選手対指宿選手です!』


 そのアナウンスを合図に、俺たちは会場へと足を踏み入れた。所定の位置につき、開始の合図を待つ。


 短い期間に既にこの会場で2回も戦っている。だからそろそろ慣れたかと思ったが、相手が変わると景色が変わる。全く別の空間で戦っているようだ。


 ーーと、ここで観覧席から俺に向け声が聞こえた。


「ーーれーん!!頑張りなさーい!!」


 アリアさんだ。バルク兄貴の時と続き2回連続で負けるわけにはいかないよな。これ以上泥塗ってたまるかよ!


『それでは両者、準備はよろしいですか?』


「さっき強い奴と戦うのが楽しみと言ったがなぁーー」


 急におっさんが話し出した。


「ーーあの馬鹿力女の弟子を倒せるのもワクワクしとるんだーー!!」


 開始直前おっさんは担いでいた斧を片手で構える。


「えっ?ちょっまっ」


『それではーー始め!』


 開始と同時におっさんは斧を力強く振りかぶった。


「ーー魔法が全てではないというところ・・・味わい尽くせーー!!空斧(くうせん)!」


 思いっきり振りかぶったことにより発生した空気の斬撃が俺に襲いかかる。


異類(アクセ)ーー(あっ、これ魔法じゃねえじゃん)」


 気づいた時には既に遅し。斬撃は俺の体を叩きつけ、会場端へと吹き飛ばす。


 吹き飛ばされた先の壁は崩れ、砂埃が立ち込める。


「ふん。なんだ?この程度か。やはりアリアの弟子というだけで期待しすぎたか・・・ん?」


 油断してアリアさんの方を向いた瞬間を狙い、俺は反撃を開始する。


 体全体に雷を纏い、攻撃の瞬間片手にその雷を集中させる。


「ーー雷神の裁き(ゼウスディオス)


 攻撃はしっかり腹に直撃した。綺麗に決まった。なのに・・・目の前の相手はピンピンしてやがる・・・!


「・・・一撃でやれるとはこっちだって思ってねえよ?だけどさ、せめて効いててくんね?」


「悪いな。この程度なら100発食らっても聞かんわ」


「あっそ!じゃあ無抵抗に100発やられてみてくれよ」


「そんなサービスはーー無い!!」


 おっさんは斧を地面に向かって垂直に突き刺す。そしてーー


 突き刺した地面1Mくらいを軽々と、そして高速で投げ飛ばしてきた。それによりおっさんの姿を見失う。


「なっ!なんつう馬鹿力だよ!冗談じゃねぇーーぞ!」


 飛来した地面を魔法で破壊する。反撃に転じようとするも、開けた視界の先にはおっさんの姿がない。


「ってことは後ろーーじゃない?!」


 俺は上空を見上げる。すると、その巨大でどうやってと言いたくなるほど高く飛んだおっさんの姿があった。20Mといったところか。


「これは耐えれんだろ!隕石の如し(メテオストライク)!!」


 斧を両手で構え、剣道の面のように、まっすぐ振り下ろした。それにより、斧から放たれる斬撃ーーいや、砲丸言うべきか、とにかく空気の塊が俺に向かって襲いかかる。


「くそっ!仕方ね!ーー」


 刹那、蓮がいた位置にまるで隕石が落ちたかのようなクレーターが誕生した。


 グニラは着地し、蓮の安否を確認する。


「おーい。大丈夫か?これでも押さえたんだが・・・ありっ?マジでやっちまったか・・・どうし--」


「ーーこっちだよ!」


 グニラが声のする方を向くと、そこには蓮がいた。


「ん?お前どうやってあれをーー」


「ーー不視無光(デスルン・ブランテ)


 俺はおっさんの目元付近でレヴィの光魔法の目潰しをした。特訓の時ちょくちょく貯めてたのが役に立った。


「ぐぁっ!目が!」


 今のうちに、叩き込めるだけ叩き込んでやる!


雷神の裁き(ゼウスディオス)」「雷の押印(いかずちのおういん)」「雷神の寝返り(ギラル)」「雷神の一撃(トールハンマー)」「光陰如箭(こういんじょぜん)


 ーー俺のやられた因縁の技の模倣!


雷華(らいか)一千ノ舞(いっせんのまい)!!」


 これはレヴィ救出の際戦った華蛇とか言う奴の技の流用。こいつの威力は俺の体が知っている。同じく魔法を形作ることが出来るのなら、この技も出来ると思い、特訓していたのだ。


「結構叩き込んだぞ・・・!流石にこれでーーはっ?」


 おっさんは快調とは言えず、とは言え満身創痍でもないある程度のダメージを食らっているようだった。


「おいおい・・・今俺6技くらい出しただろ?なんで対して効いてねぇんだよ・・・?!体馬鹿だろ!」


 おっさんは少し息をつくと、こちらを向きーーニカッと笑った。


「なんだガキ、強いじゃねえか!正直舐めてたよ。最後の方なんか、魔法使ってなきゃやられてたかもなぁ?」


 魔法ーー確か身体強化系の魔法。それで耐久力上げられたのか・・・!


「にしても、お前の魔法なんなんだ?アリアと同じ雷属性魔法かと思えばレヴィと同じ光も使いやがった。ぐちゃぐちゃだ」


 どうやら俺の魔法は知られてないみたいだな。俺の魔法は知られてなければより強力だ。教える必要はない。


「悪いなおっさん。だだてさえ俺はあんたより弱いんだ。情報のアドバンテージくらい守らせてくれよ」


「ふんっ、まぁ、それもそうだな。・・・ガキ!いや、小僧!」


 小僧ってこの人の中ではグレードアップなのか?


「俺はお前を相手と見なしてやる!小僧の持てる全てを吐き出せ!それを俺が全て返り討ちにしてやろう!」


 おっさんが斧を地面と平行に構える。


「全部出す前に・・・あんたを倒す!!」






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