同じ魔法?
Cランク1回戦最終試合。そのカードはディアスの仲間のカーフ、そして俺達が受付の時に知り合ったイカルガだ。
『それではーー始め!』
戦いの火蓋が切って落とされた。
だが、どちらも動こうとしない。相手の様子を伺っているのか?
「お互い相手の魔法を知らないからね。そう迂闊には動けないんだろう」
アリアさんがそう言った。確かに、属性魔法とかならまだしも、特殊な魔法だった場合、1発KOもあり得る。
と、ここで動きがあった。カーフが足元の石を拾い上げ、イカルガに向かって投擲した。
イカルガは不思議そうな顔をしたが、取り敢えず左に避ける。ーーと、その瞬間イカルガは見えない力で吹き飛ばされた。
「・・・?今のは・・・?」
急に吹き飛ばされた当人は理解できていないのか、呆然としている。
「ディアス、今のなんだ?衝撃波みたいな攻撃だったが」
俺がディアスに質問すると、こう返答される。
「カーフの魔法は衝撃を与えるものだ。遠近どちらでも対応できる使い勝手の良い魔法だね」
「波に衝撃に重力。なんか似た魔法の奴が集まってんだなお前ら」
俺がそう言うと、ディアスは今気づいた、というような表情を浮かべていた。
カーフはそこからもさらに攻撃を続ける。遠距離から魔法を放ち、徐々に削っていく作戦なのかもしれない。
対するイカルガは、最初の1・2発こそ当たっていたが、その後は魔法を理解したのか、全く当たらなくなっていった。
「うん、もう当たらないね」
「・・・くそっ。思ったより早かったな」
そして再び、静寂の時間が訪れる。
イカルガ、まだ魔法を使ってないけど、どうすんのかな?まさか魔法を使わずに勝つつもりなんじゃ。
「避けるのはもう飽きたかな。それじゃあ今度はボクの番だーー」
イカルガは右手を前に差し出す。すると、そこから不思議な黒い空間のようなものが出てきた。
「ーーお返しするよ、君の魔法」
「ん?一体何をーーなっ!」
不思議な空間が現れたかと思えば、直後カーフが壁に吹き飛ばされた。まるで・・・衝撃を喰らったように。
「まさか・・・イカルガの魔法って俺と同じようなものなのか・・・?」
俺の魔法と同様に、喰らった魔法を使えるというものなのかもしれない。なんといか・・・親近感。
「ーーなるほど、指宿蓮と似たような魔法か・・・!厄介だな」
俺はこういう魔法を外から見たことがなかったが、確かに厄介そうだ。自分が放った魔法が相手に吸収され、あまつさえ自分に跳ね返ってくる。面倒極まりない。
イカルガは同じ空間からもう一度衝撃を飛ばす。だがカーフはそもそもの使用者。2度目は難なく避けた。
「衝撃魔法・・・使えてあと一回だろう?しかもその魔法は指宿蓮と違い、その空間に注目しておけば良い。ふふっ、まるであいつの下位互換の魔法だな。厄介だが勝てない敵ではない!」
「この勝負、カーフがもらったかもね」
ディアスがそう言った時、アリアさんが自身なさげに反論する。
「いや、彼のあの魔法・・・どうにも何か隠してそうな・・・」
「えっ、そうですか?」
ディアスはアリアさんの発言に疑問を感じたようだが、正直俺もアリアさんに同意だ。同じような魔法?だからなのか、まだ何かありそうな・・・
カーフは上空にジャンプし、イカルガの四方八方に衝撃を与える。
「囲衝拳!」
それによりイカルガの周りには砂埃が立ち込め、視界が完全に塞がれる。しかもこの砂埃は魔法ではないので吸収も出来ない。
カーフはイカルガの背後へと回り込み、右手に衝撃を溜める。そしてそれを直接相手に叩き込む必殺技「衝撃の一撃!!」
右手に込められた衝撃により、相手の体は彼方へと吹き飛ばされる。これにて試合終了ーーとなるとはずだった。しかしそうはならなかった。寧ろ、カーフの方が地面に叩きつけられ気絶していた。
砂埃が晴れ、皆が一様に驚愕する。勿論俺たちもだ。正直これで決まったと思っていた。だがそうはならず、カーフはイカルガの背後でうつ伏せの状態で地に伏せた。
『ーーしょ、勝者・・・イカルガ選手』
普通ならここで歓声が上がるものだが、皆が皆何が起きたか理解できていない為、只々会場は鎮まりかえっていた。
その後、医療スタッフが駆けつけ、カーフを医務室へと運び込んだ。ここでディアスは我にかえったのか、一目散に医務室へと向かっていった。
「・・・やっぱり、あの魔法にはなにかあるようだな。相手の魔法を返すだけじゃない、他にも能力が・・・」
あの不思議な空間・・・あれがもし吸収と排出だけの魔法じゃなかったら・・・多分あの魔法はーー
「ちょっと俺、イカルガのとこ行ってきます。教えてくれるかは分かんないけど、答え合わせをしてみたい」
「答え合わせって・・・!蓮、あなた何か気づいたの?」
レヴィが驚きながら質問をしてきた。
俺がこの答えに行き着いたのは元の世界でその手の作品を読み漁ってたからだ。ああいう空間は往々にしてーー
「ごめん、ちょっと行ってくる!」
俺はイカルガのいるであろう選手待機場所付近へと足を運んだ。
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思った通りの場所にイカルガはいてくれた。助かった、いろんな場所探し歩かなきゃいけなかったら多分俺迷子になってたよ。
「よ、よぉ!イカルガ!1回戦おめでとう!」
イカルガは声を掛けられてようやく気づいたらしい。
「ん?・・・あっ、イブ。ありがとう」
「なぁイカルガ、一個だけ聞いて良いか?」
「・・・良いよ、だけどそのかわり、ボクの質問にも答えてくれる?」
「ん?あぁ、全然構わないぞ!寧ろ俺だけ質問しといてお前は無し!って言えるほどハート強くねぇよ」
「そう・・・じゃあ、イブからで良いよ」
「そっか、じゃあ単刀直入に聞くな。お前の魔法って・・・空間魔法だろ?」
そう、これが俺の仮説。カーフの魔法を使えたのも、放たれた魔法を自身の魔法では吸収し、それをもう一つの空間を作り放出していた、ワームホール的な能力だとすれば説明がつく。
「あと最後のあれ、予想だけどカーフの手元に空間を作り、そして背中あたりに出口を作ることでカーフ自身の技を当てさせたんじゃないか・・・って思ってるんだけど・・・どう?」
自身は割とある。これなら辻褄が合うし、俺が空間魔法を使えたとしたらこうやって使うだろうと思うからだ。
俺の仮説を聞いたイカルガは、驚いた表情を浮かべていた。
「すごい・・・!うん。イブの言う通りだよ。最後の倒し方もその通り、もしかして見えてた?」
「いや、俺らには砂埃と、それが晴れた後の様子しか見えてねぇよ。完全に予想の範疇だった。・・・でもまさかドンピシャで当たるとは思ってなかったな」
「うん・・・本当にすごい。これが脳無し・・・!」
「ん?脳無しがなんだ?」
「いや、なんでもないよ。うん、ボクの魔法はイブの言った通り空間魔法。名前は空間転移、指定した座標に空間を作り転移させる魔法だよ」
座標に転移・・・ってことは攻撃が来る前に場所を変更すれば避けられるってことか。一見不便だけど俺の魔法みたいにストックも出来そうだったし、使いようによればすごい強い魔法っぽいな。実際元の世界でも空間魔法って強キャラだったし。
「・・・なんでイブは気付いたの?こんなすぐ気づかれたことなかったんだけど」
「あぁ、それはーー」
ちょっと待て、ここで異世界から来たんです!なんて言っても信じてもらえないだろうし、おかしな奴だと思われてしまう。それは避けねば。
「えっと・・・それはだね・・・あ、あれだ!空間魔法ってかっこいいだろ?だからよく妄想してたんだよ!」
「へぇ、妄想・・・変だねイブって」
ーー結局変人っ!!まぁそりゃよく妄想してましたって変だよな。おかし隠して変隠さず。
「まぁいいや。じゃあボクの質問してもいいかな?」
「ああ、どうぞ」
「イブはさ・・・あのSランク冒険者、どう思う?」
あのSランクって・・・多分ルドラのことだよな。
「あれは・・・嫌いだよ。ああやってわざと苦しめて殺すような奴は許せない。俺だけじゃない、レヴィや、イカルガは会ってないけど、俺の師匠のアリアさんもそう言ってる」
その返答に対し、イカルガは少し表情を和らげた。
「うん、だよね。許せないよね。良かった・・・イブやレヴィが同じ考えで。正直、あの時あの冒険者、そしてそれを讃えてた全員殺しそうになったよ」
殺ーー!まぁ気持ちは分かるけどさ、だからっつって物騒なこといきなり言いだすなイカルガ。
「あぁ、まぁ気持ちは分かるよ。だけど殺しちゃいけない。だから俺やレヴィ、そしてアリアさんはギルドマスターを目指すんだ」
「ギルド・・・マスター?なんで?」
「そしたら、あんな催しは廃止させられるだろ?」
その言葉を聞き、イカルガは何か満足したような表情になった。
「うん。ほんとに予想外だ。面白いね、ちょっと興味が再燃してきた」
そう言って、イカルガは自身の控え室に歩を進めた。
「えっ、イカルガ!質問ってこれ?」
「うん。他の人はどう思ってるのか聞きたくてね。それだけだよ。ーーあっ、そうだ」
イカルガは急に立ち止まり、俺の方へ振り返る。
「イブの魔法って4文字?」
4文字・・・?アクセプト・・・5だな。いや、異類無礙なら4文字だ。どっちだ?
「なぁ、読みの方か?それとも書き?」
「書きだよ」
だとしたら4文字だ。・・・だからなんなんだ?
「4だが・・・それが?」
「いや、ボクも4だよって言いたかっただけ。じゃあね、次も勝つよ」
そう言い残し、イカルガは去っていった。
・・・いや、なんだったんだ最後のあれ・・・?ボクも4だよって。そんなに4って少ないか?
煌々、跪拝、鉄兵、操砂、施錠、拒絶・・・確かに漢字まで知ってるので言えば2文字ばっかりだな。4文字ってまさかレア?もしかしてすごい当たり魔法なのかな俺のって。
・・・まぁいっか。考えるだけ時間の無駄だ。2人とこと戻ろう。
こうして疑問の解消と誕生が一緒にでき、なんだかもやもやしながら俺は2人の元へ戻った。




