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Cランク戦

 俺達が観覧席へと戻ると、何やら会場の土が崩されていた。


「えっ!ちょっ!何やってんですかあれ?!」


 取り乱す俺に引き換え、アリアさんとレヴィは何食わぬ顔をしていた。そしてアリアさんがこの状況を説明してくれた。


「確かに蓮は初めてだから驚くよな。モンスターを見せしめにするショーは毎年あるんだが、その時に飛び散る血を消すために土属性を使うスタッフを呼び出し、その部分を作り替えるんだ。まぁ今回は範囲が広かったからな。いっそのこと全部作り直すって決断になったんだろう」


 ーー作り替えるねぇ。そんな面倒なことしなきゃならんならやめればいいのに。いろんな意味でそっとの方がいいだろ。


 改修が終わったらしく、土属性魔術師ははけていった。


「それじゃあ席に着こうか。戻してしまったものは私が処理を既に依頼してある。安心して座りたまえ」


 アリアさんが元々座っていた座席を手で指しながらそう言った。


「は、はい・・・ありがとうございます。(自分のとは言え吐いたところに座りたくねぇ)」


 レヴィも同様に感じていたのか、少し顔を背けて渋々席へ着いた。


「ーーやぁ、ご一緒しても良いかな?」


 聴き馴染みのある声。これはーー


「おお!ディアス!お前も応援に来たのか!」


 俺はディアスを手招きし、左へと座らせた。


「もしかして、あの2人ってCランクなのか?」


 俺の質問に対し、ディアスが返答する。


「あぁ。なんでも、自分の本来の実力よりも下のランクならば圧勝出来るから、だそうだ」


「はは、そりゃ合理的なこって」


 まぁ実際そうだろう。自分の実力と同様、もしくは少し高いランクで挑戦すれば負ける可能性は高い。だが下ならば優勝の可能性は十分にある。Bランクで1回戦負けより、Cランク優勝の方が聞こえは良いのかも知れん。


 と、ここでレヴィが口を挿む。


「あいつらとしたら、少しでもあんたと当たるのを防ぎたかったんじゃない?自分とこのリーダーと当たるとか、部下としては嫌だろうし」


「別に部下というわけでは・・・まぁ嫌だとは思うがな。しかしレヴィ、君は良いのか?このBランクだと蓮と戦うことになるが」


「ここ来る前に言ってるの。相手が蓮でも容赦なく倒すからって!だから平気よ」


 レヴィのその返答に、ディアスは鳩が豆鉄砲喰らったような顔になった。


「そう・・・なのか。君はてっきり蓮のこと・・・いやよそう。野暮だぬわぁ!」


「ディアス・・・!それもう殆ど答え言ってるから!これ以上言うのは辞めなさい、じゃないと口の中に光線打ち込むわよ。分かった・・・!」


 レヴィはディアスの口を手で押さえつけ、結構怖い顔で詰め寄っていた。突然のことでびびったのか、ディアスも勢いよく首を縦に振っていた。


 ・・・ごめんねディアス。あとでなんか奢るわ。


 その様子をアリアさんは止めるでもなく只々笑っていた。


 ・・・なんか、こうして楽しくしてるとさっきまでのことがまるで嘘だったんじゃないかって思えてくるよ。ずっとこんなのが続けば良いのに。


『それでは、Cランク第1回戦第1試合を開始します!まずは、レギン選手対コロニス選手!』


 コロニスって・・・確かディアスの仲間の明るい方だっけか?


「ディアス、コロニスってお前のとこのーー」


 質問をしようとしたが、ディアスはすごい真剣な目で会場を見ていた。それだけ仲間の試合が大事だということだ。であれば俺達が邪魔をして良いはずがなかろう。


 俺達も一緒に試合を見るモードへと頭を切り替える。ディアスの仲間だからな、勝って欲しい。


 コロニスは柔軟体操を始めていた。一見すればただの舐めた態度にしか見えない。


「結構余裕だなあいつ。そもそも強いのか?」


 俺がふと独り言を呟くと、ディアスがそれに返答をした。


「まぁ見てなよ。少なくとも、あの相手に負けるほどやわじゃない」


 あいつがどんな魔法を使うのか、すごく気になる。姿勢を整え直し、再び会場にしっかり意識を戻したところで、いざ戦いの火蓋が切られる。


『それではーー始め!』


 最初に動いたのは相手のレギンだ。彼の魔法は針魔法のようで、手でかざした方向に任意のサイズの針を飛ばせるらしい。


 レギンは初っ端に大きなドリルくらいの針を出し、コロニスに向かって放出した。それでもなお、コロニスは体操をやめない。何考えてんだあいつ?


 もう当たる!ーーそう思った瞬間、コロニスの足元の地面が急に流動し始め、針を防いだ。


「なっ!なんだその魔法は!」


 レギンが驚きの声が漏らす。俺も漏らしそうだった。・・・声をね!


「へへ〜ん!その程度の魔法じゃ、俺には勝てねえっすよ!」


 すると、客席から歓声が湧き上がる。


「おおー!すげー!」「なんだあの魔法!」


「やるじゃねぇか坊主!」と口々に。


 同様に俺も驚いていると、ディアスが解説してくれた。


「コロニスの魔法は波魔法。触れた物体を波打たせることが出来る。今のは地面を波打たせ、壁を作ったんだ」


「へぇ、結構器用なことするもんだな。なんかノリで生きてそうなのに」


「君、コロニスとカーフのこと馬鹿にしすぎじゃないか?」


「そうよ蓮。こういう時はあんな感じなのにーーみたいに誤魔化して言わないと!」


 レヴィが間違ったフォローをする。オウンゴールだ。


「・・・なんというか、やっぱり君らお似合いだね」


 すげえ小声でとんでもねぇこと言いやがった。ディアス、俺が隣で良かったな。レヴィまでは届いてないぞ。


 ここで、再度試合が動く。レギンが体力に針を飛ばすが、それを全て地面で受け止め、そしてその後相手の足元までその波を移動させる。そしてその波を防御壁の要領で相手の体に叩きつけた。


「へへっ!攻撃される時はされ返すのも想像しとかねぇとダメっすよ!ーー波撃ち(インスリスパート)!」


 攻撃は見事相手の鳩尾に入り、そしてそのまま気絶した。


『第1回戦第一試合!見事勝利したのはコロニス選手だ!』


 再び会場が湧き上がる。


 勝利を収めたコロニスは、ディアスの方を見て、両手でブイサインをしながら満面の笑みで勝利を宣言した。


「やったなディアス!圧勝じゃんか!にしても結構やるならあいつ!流石ディアスの仲間だ。こりゃ、もう一人も凄そうだな」


「あぁ、カーフはコロニスよりも強い。コロニスはカーフに勝ったことがないからな」


「へぇー、そりゃ楽しみだ!」


 楽しみが増え、より一層この観戦が楽しくなってきた。


 そして試合は順調に進み、いよいよ第一回戦最終試合となった。残るカードはディアスの仲間であるカーフ。そして・・・俺達が知り合った青年、イカルガだ。俺としてはイカルガの方を応援したいのだが、いかんせんその対戦相手の仲間が隣にいるんだよな。応援し辛ぇ。別々の球団が好きな同士は友達でも隣に座らんだろ?何故か・・・喧嘩になるからだ。


『それでは第一試合最後のカードです!カーフ選手対イカルガ選手、前え!』


 アナウンスで呼ばれ、両者が会場の中心へと移動する。


 イカルガの方へ視線を向けると、気のせいか、最初会った時より表情が硬くなって見えた。そういうタイプに見えなかったが緊張すんだな。


 と、ここでアリアさんがーー


「ほぅ、あの白髪の青年が2人が応援するって言ってた子か!どんな魔法を使うんだろうな?」


 ・・・あっ、言っちゃった。出来れば今は言わずに全部終わった言おうと思ってたのに。


 ディアスは察したらしく、こっちを向きこう言った。


「別に気にしなくて良い。隣で別の応援をしてたからと言って気にするほど小さくはない」


 ーーぐっ!心が!綺麗!綺麗だよ!・・・っていうか、小さいって言われちった!テヘッ!


 などと心の中で猛省したところで、気兼ねなく応援することにした。


「よっしゃー!イカルガ頑張れ!そんなすかした奴ぶっ飛ばしちまえ!ーー痛っ!」


 隣のレヴィに頭をはたかれてしまった。


「気にすんなってそういうこっちゃないわよ!てかあなた分かっててやったでしょ?」


「何をいうかレヴィさん!俺は嘘偽りなく正直な気持ちをそのまま言葉にしただけです!」


「ストレート!じゃあ普通にダメよ!」


 あらま、怒られちった。というかさ、あいつ俺に対して未だになんか腹に一物抱えてそうなんだよなぁ。嫌われてるというかさ、目の敵にされてるというか。ディアスは勿論、コロニスだって俺のこと菌扱いするくらいには打ち解けたと言っていいのに、あいつだけはそんな感じが一切しない。


 まぁとは言え、流石に大声であいつぶっ飛ばせなんていうのは冗談だ。それくらいは弁えてる。弁えてないのは一部の地域のファンだけだ。阪◯とかな。しかもその一部。


 俺は小さめの声で歓声をかけた。すると、イカルガはこちらに気づいたのか、こちらを向いたのだが、特にアクションなどはなかった。


 ・・・あれだよね、緊張だよね?うん。緊張だ!俺も緊張したらああなるし、決して無視じゃあない。


『両者、準備はよろしいですか?ーーではカーフ選手対イカルガ選手の対決です。ーー始め!』


 こうして戦いの火蓋が切って落とされた。














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