痴話喧嘩?
俺はレヴィと魔道祭のことについて話していたところ、急に大きなおっさんに絡まれ因縁をつけられてしまった。--と言うことを今アリアさんに説明していた。
「グニラか・・・また面倒なのに目を付けられたな。私もあいつは苦手だよ、何せ私が新人だった頃にめちゃくちゃ絡んできてさ、私何杯飲んだか」
「はは、大変でしたね。あれですか、吐くまで飲むってやつ?」
「ああ、実際吐くまで飲んでたな。あいつあんなでかい図体しといて私より弱いんだ。まぁそれからはめっきり絡んでこなくなったがな」
・・・えっ?ちょっと待って、勝ったの?!
「そう言えば去年の魔道祭はグニラと戦ったなぁ!流石にしぶとかった。倒すのに3発もかかったよ!」
「・・・改めて思いましたけど、本当にやばいですねアリアさん。今の話聞いて、なんだがあのおっさん可哀想に思えて来ました」
「褒めてるのか貶してるのかよく分からん言い方をするな、蓮は」
「褒めても貶してもないですよ。慄いてるんです」
「なっ・・・!そんなこと言って、私ほど優しい人間はそうそういないぞー!」
俺が慄いてるなんて言ったからか、アリアさんは頬を膨らませていた。
「んなもん分かってますよ。アリアさんは俺が今まで出会って来た人の中で一番優しいまである。何せ拾ってくれてる訳だしね。すげー優しいと思ってるし感謝してる」
「・・・えっ、あ、・・・お前時々ずるいぞ・・・」
アリアさんはなぜか辿々しくなり、顔を背けた。
「--まぁでもそれとこれとは話が別ですけどね。大男を酒に溺れさせ、剰えたった3発でのしちまうんだから・・・怖いは怖いでしょ」
「あゔっ!・・・いいのかそんなこと言って・・・?私が汐らしくなったら誰がお前に修行をつける?」
「マジカッコいいっす!姉さん!」
アリアさんは勝ち誇ったような顔をし--
「ふふーん!分かればよろしい!--まぁとにかく、今のままでは絶対にグニラには勝てんからな。残り3週間ほどしかないが、やれることはやっていくぞ」
「はい!あ、そういえばアリアさんって修行とかしなくていいんですか?Sランク戦出るんですよね?」
俺はふと沸いた疑問をアリアさんにぶつけた。
「ん?ああ、修行はやってるよ。蓮が寝た後にね」
俺の修行もつけてそのあと修行って、いつもそんなハードワークやってたのか・・・!完全に俺のせいだな。これではアリアさんの寝る時間をあれが削っていることになる。それは些か心苦しい。なんとかうまいことちゃんと寝てもらうように説得できないか・・・
「アリアさん!」
「な・・・なに?」
俺は出来るだけ誠意を見せるように、どれだけ俺が真剣なのか少しでも伝わるように真顔を務め--
「早く寝ないと老けますよ!」
--突然の腹部への痛み。その痛みは俺の意識を問答無用で暗闇に突き落とす。
--俺は床に倒れ込み、ドンッ!という音を立てた。
それが今日聞いた最後の音だった。
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「--アリアさん、あれは無いと思う」
「・・・あれは蓮がデリカシーなさ過ぎなのが悪い。女性に老けるとか言っちゃダメなの。・・・ねぇ、どっちが悪いと思う?」
「・・・あの、なんで私呼ばれたんですか?」
昨日のアレはどちらが悪いのかを決定するため、俺たちはレヴィを呼んだ。元々別の場所で会う予定だったのだが、俺が目覚めてからこの話が決着を見せそうにないので、第3者の意見をもらうべく、急遽アリアさん宅に来てもらったのだ。(因みに伝令と迎えはペットのコルボに頼んだ)
「いやー、悪いなレヴィ!俺とアリアさん、どっちが悪いか決めて欲しいんだよ」
「・・・両者敗北じゃダメ?」
「ダメだレヴィ!これは私達がこれからも一緒に暮らしていく上で、解決しておかねばならん事案だ!・・・ダメか?」
「はぁ〜、くだらないとは思いますけど、アリアさんにそこまで言われたらやるしかないですね。--で、何があったんですか?」
「俺から説明しよう。昨日のことだ。アリアさんのことを心配した俺が忠告というかな・・・心配をしたらいきなり腹殴られて気絶したんだ」
「おいおい蓮、事実を切り取って話すんじゃない!私からしっかり説明しよう。昨日のことよ。蓮と何気ない会話をしていると、いきなり真顔で「老けますよ」って言われたの!どう?仮にも女性に対してデリカシーなくない?!」
2人の話を聞き終わったレヴィは顎に手をやり、考え込んでいた。
「(どうやって帰ろう?)」--と。
「(正直私からすればどうでも良すぎる事案。でも一応頼まれてるし・・・えっと、大体まとめると・・・?2人が会話していると、蓮が何か心配のつもりでデリカシーのない発言をした。それに怒ったアリアさんが蓮を気絶させた・・・と)」
レヴィは顎から手を離し、真顔でこちらに向き直った。
「--帰っていいですか?」
「「--なんで?」」
なんでだ?なんか聞いてくれる感じだったじゃん!それともなんだ・・・何か用事でもあったのか?だとすれば申し訳ないが。
「あのさレヴィ、何か用事とかあった?だとすれば・・・その、ゴメンな」
「用事・・・そうね、早く帰って水飲まないと」
「そんな用事?!」
「そんなとは何よ。あなた達の痴話喧嘩に比べたら7億倍マシな用事よ」
「億・・・!」
「痴話・・・!ち、違うわよレヴィ!分かってると思うけど私達はそんなんじゃなくてね!そもそもレヴィの相手を取るようなことしないわよ!」
「んなっ!アリアさん何言って・・・!あ、私達はそんなんじゃないから!」
すると、アリアさんは新しいおもちゃを手に入れたような無邪気で、それでいてからかうような表情になった。
「えーっ?私はパーティメンバーって意味で言ったんだけどなぁ?どんな意味だと思ったの?ねぇねぇ?」
「アリアさんこんな人だっけ?!」
「レヴィといたときはどんなだったのか知らんが、こんな感じの人だぞ」
「そうだぞレヴィ!これが真の私だ!恋バナとかそんなのすごい好きなのさ!」
「ドヤ顔で言わないで!崩れてくー!私の中のアリアさんが音を立てて崩れてく!--ってアリアさんどこ触ってんですか!」
「んー?いいじゃないか女性同士。あ、意外とでかい」
--ふむ、置いてけぼり感はあるが悪くない。百合百合はあんまり理解出来なかったが、今ようやく理解した。いいぞもっとやれ!
「ちょっと!ほんとこれ以上は・・・!い、いやーー!」
こうしてゲスイ流れのおかげで2人のモヤモヤも水に流れた。
その後、レヴィにはぶん殴られ、2人して説教を食らいました。
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--とある未開のダンジョン。そこに白髪の男が同じく白髪の男を引き摺りながら入っていった。
そしてなんの苦労もなく最奥へと足を踏み入れる。そしてその場所には、座した1人の、こちらも白髪の女性がそこにいた。
肩には掛からない程度の髪に、目下には何やら赤い染料を使っているのか、化粧が施されていた。
「ただいま戻りましたよ--姉上」
その女性を姉と呼ぶ男。彼の名は華蛇。蓮達がレヴィ救出の際に乱入し、蓮を連れ去ろうとした男。
女性は、華蛇の手元を始め、全身を一瞥し、ため息を付いた。
「はぁ、華蛇。妾はそれを連れてこいと言った。そして、其方はその役目を随分と時間をかけ果たし、帰ってきた訳蛇が・・・一体その傷はなん蛇?よもやそれに苦戦したとでもいうつもりかのぉ?其方、そんなに弱かったか?」
その声は、とても静かで真っ直ぐで透き通り冷たい。とても姉が弟にかける声色ではない。言うなれば尋問の時のよう。
「姉上、遅れてしまったのは非常に申し訳ありません。ですがこれでも全速力できたのですよ。褒めろとは言いませんが休みをくださ--」
華蛇の顔を真っ赤な針が掠めていった。
「--口にせんと分からんか?妾は其方に待たされたせいで無性腹が立っておるん蛇。次ふざけたら--殺すぞえ」
学生などが内でいう、死ねや殺すではない。本気の殺意。誰かに向けるべきでないほどの本気の殺意。
「ふふっ、怖い怖い。安心してください姉上。流石にこれには負けませんよ!--実は、今回の脳無しを見つけました」
その瞬間、女性の顔が殺意から興味へと変わった。
「ほぅ!まだ誰も手を付けておらんの蛇な!して、その傷はその脳無しに?」
「いえ、時間を食ったのはそのせいでもありますが、傷はAランク・・・今はどうか知りませんがとにかく、腕の立つ冒険者に付けられました」
「ほぅ、其方に傷を付ける冒険者・・・それはなかなか蛇のう。して、その脳無しはどこ蛇?持ってきておらんのか?」
「申し訳ありません。姉上との時間を優先してしまった故、放置してきました!」
「チッ!本当に其方はマニュアル野郎蛇のぉ。まぁいい。脳無しを見つけたということで許してやる」
「流石姉上!器が大きい!流石は、我らの先導者--十脳が1人です」
女性は足を組み換え、笑みを浮かべる。
「そう蛇ろう?その脳無し、必ず妾が喰ろうてやる!この十脳が1人--蛇姫がのぉ!雑魚の獣人は勿論蛇が、他の十脳にも絶対にやらん--これで妾が最強蛇・・・!!」
どす黒い笑い声が、ダンジョンに反響しこだまする。そのこだまの大元は、蓮を喰らう為這い寄り始める。




