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重いものは2人で

「蓮・・・。--ごめん、私は行かない。私は・・・貴方達に顔向け出来ないもの」


 顔向けできない・・・?何で?


「なんかしたの?問題になるようなこと」


「えっ、いや、だって!・・・ごめん、やっぱりなんでもない。あっ、そうだ!このお金使ってよ!私いらないから!」


 そう言ってレヴィは先程マスターからもらった30万ガストが入った袋を俺に差し出した。


「ん?えっと・・・これどういうこと?」


「言ったでしょ、いらないのよそんなお金。30万なんて私にとっては端金だしね!だから・・・使って」


 そう言った一瞬のレヴィの物悲しそうな表情でようやく理解した。


「ああ成る程そういうことかよ!お前、私に受け取る資格はない、とか思ってんだろ?」


 図星だったのか、レヴィは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに元に戻し--


「何言ってんの?そんな訳ないでしょ!さっきからいってるでしょ、いらないんだって!そのくらいのお金ならお爺ちゃんに言えばお小遣いとして貰えるしね!」


 見えている表情はいつもの通り。なのに何故かいつもと違う。今のレヴィを見てると、何故か拒絶魔法を解く前の悲しそうなレヴィの表情が浮かぶ。


「あのさ、俺とお前の仲・・・って言えるほど仲良くはないのかも知んないけどさ、流石に分かるぞ、その嘘」


「嘘って・・・何が?」


「全部だよ。言葉も態度も顔も、とにかく全部だ。俺さ、あんま頼りにならないかも知んないけど、何か出来ることないか?お前が何かに苦しんでんなら、それを解消してやりたい」


 レヴィはあからさまに悲しそうな表情をし、俯いた。


「・・・私には・・・あなたにそんなことをしてもらう資格がない」


「資格?俺なんかやられたっけ?」


「私ね、あなたのこと嫌いだったんだ。急に出てきてアリアさんを取りやがって・・・ってね。ディアスとの決闘なんて、負けちゃえって思ってたんだから。・・・ねっ!最低でしょ!・・・だから、あなたに救われる資格はない」


 --嫉妬ってことだよな。気持ちは分かる。俺も長男で弟が出来てから親はそっちに掛かりっきりになった。そういう時、俺のことを見てくれなくなったって思っちゃうんだよな。


「レヴィ、俺はさ・・・実を言うと最初はレヴィのことあんまり好きじゃなかった。初対面で失礼な奴だな、ってさ。どう?元々嫌いあってた同士だ。プラマイゼロといかねぇ?じゃないと俺の方が最初に資格ないのに助けてもらったってことになっちゃうんだけど」


「私・・・助けてなんか・・・」


「いーや、助けられたね!それこそディアスとの決闘の時だ。あの時お前が声を掛けてくれなかったら確実に俺負けてたね!確実にだ!」


「その程度・・・!今回のことと全く釣り合ってない。私は声を掛けただけ。それに対してあなたは・・・あんなに・・・ボロボロに・・・なって・・・!」


「--あのさ、人の気持ちに優劣を付けないでくれるか?」


「・・・えっ?」


「お前からすれば釣り合ってないのかもしれんが、俺からすれば十分釣り合ってんの!俺の思い出を勝手に下方修正すんじゃねぇよ!分かったか?」


「いや、でも・・・あの・・・?」


 レヴィは面をくらったような顔をし、しどろもどろしていた。


「よし、じゃあこうしよう!まだ俺に負い目を感じてんなら、一緒に飯来てくんない?俺のお願い聞いてくれたってことでさ、これでチャラ!どう?」


「どうって・・・そんなもので・・・?あなた、欲とかはないの?」


「あるに決まってんだろ?生きたい死にたくない強くなりたい守りたい--レヴィと仲良くなりたい。どうだ、欲まみれだろ?」


「そんなの・・・ふふっ、欲って言わないわよ!・・・あっ」


「ようやくちゃんと笑った!やっぱそっちの方がいいよ、レヴィは!」


 その時、レヴィは初めて蓮と会った時のアリアさんの台詞を思い出していた。「蓮は優しい子だよ」


「(優しい・・・か。これはもう甘いとかの次元ですよ、アリアさん。けど・・・なんだろ?そんな甘ったるい言葉なのに・・・私の心が溶かされる・・・!)」


「--蓮、私あなたにずっと言わなきゃいけないことがあるの。・・・聞いて・・・くれる?」


「おお、何?」


「(何でそんな真顔で即答出来るのよ。私の話を聞くのは当たり前みたいに・・・自分のこと、嫌ってた相手なのにさ・・・)」


「--蓮、今回のこと、ほんとうにごめんなさい!」


 レヴィが急に頭を下げてきた。・・・何事?


「私のせいで・・・あなた達を危険にさらしてしまった。それと、ディアスとの決闘の時、負けちゃえとか思ってて・・・ごめんない。・・・ずっと・・・言わなきゃって思ってた・・・。だけど、いざ言おうとしたら、急に変な意地が出ちゃって・・・今に、なっちゃいました。・・・ごめんなさい」


「--言いたいことって、それ?」


「・・・・・・はい」


「はぁ〜、よかった。そんなことかよ」


 正直もっとえぐいこと言われんのかなとか思ったから安心したー。


 俺は思わず安堵のため息を吐く。


「そんな・・・こと?」


「ん?そんなことだろ?嫌いってのはさっき聞いたし、助けに行ったのだって、俺が自分で志願した訳だしな。てか、ほんとにそのことについて気にしてんだったらさ、その・・・なんだ。ありがとうの方が・・・嬉しいかな!」


「・・・ごめん」


「うわぁまた言った。じゃあこうしよう!お願い変更、俺の前でごめん禁止!」


 そういうと、レヴィは少し戸惑った後、笑みをこぼした。


「ふふっ、あなたってほんとに勝手ね!」


「だから言ったろ、欲まみれだって!」


「(ほんと勝手な奴。勝手に現れて勝手に恩を感じて、勝手に約束して・・・勝手に、助けてくれて)」


 その刹那、急に頬が冷たくなった。


「えっ、ちょっ!レヴィ!何で泣いてんの?俺なんかしちゃった?」


「--ううん。蓮、ありがとう!私、勝手なあなたに救われた!」


 真正面からお礼を言われ、何故だか分からないが俺も少し涙が出てきた。見られると恥ずかしいので、俺はレヴィに背を向けた。


「・・・まぁ、その・・・なんだ。俺は別に・・・勝手にやったことだから。これ以上恩義なんて感じんなよ!それと・・・これからは無理して1人で抱え込むな。言ってくれたら、多分半分くらいは持てるから」


「--うん!じゃあもし、あなたが重い荷物を持った時は・・・私に言って!絶対に、持つから!」


「おう!じゃあそん時は真っ先に頼むわ!」


「ええ!姉弟子であるこの私に任せなさい!その時は絶対に--」


「(そう、絶対に救ってみせる。蓮が困ってる時、大変な時、抱え込んでる時、私が支えよう。安心して任せてもらえるくらい強くなろう。あなたにはこれからもずっと・・・笑ってて欲しいから)」


「よし!そんじゃあ早く飯行こうぜ!みんな待ってる。・・・あれ、もしかしてお願いないと行かない?」


 俺は不安になりながらレヴィに向かい、手を差し出した。


「--ううん。行きたい!」


 その手を取り、俺達はみんなの待つ店まで走って行った。





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