四人の共闘
バジリスクの猛追をかわして、どうにか振り切れたあと。
地上に降りて翼を休め、対バジリスクについての思考を巡らせる。
「とりあえず、躱すことは出来るな」
バジリスクの石化能力。見るだけで相手を石化させてしまう強力な能力。大抵の魔物はバジリスクに為す術もなく石になってしまう。
フェンリルの脚力を持ってすれば、焦点を合わされてから能力発動までの僅かなタイムラグを利用して躱すことができる。問題はバジリスクの視界にいる限り、それを繰り返さなければならないこと。
一度でも捕まれば身に纏う魔力を剥がさなければならない。魔力が剥げると性能が落ちて速度が鈍る。そうなると連続で石化を喰らってしまう。
先ほどのように細雪で視界を塞ぐのは有効な手段かも知れないな。ガーゴイルの能力で砂の壁を作ったり、カーバンクルの能力で結晶を盾にするのもいい。
いっそ魔装で一息にとどめを刺す方法もあるが、これはかなりリスキーだし最終手段だな。それで確実に倒せるという保証もないことだし。
そうつらつらと考えながら通路を歩いていると、道の先で人影を見た。
バジリスクに追われていた三人組だ。待ち受けていたかのように通路を塞いでいる。
「よう、さっきは助かったぜ。ありがとな」
そのうちの一人は気さくにそう言ったものの。
「だから、駆除対象なんだってばっ!」
紅一点の彼女に頭をしばかれていた。
痛そう。
「痛ってぇな! おい!」
「あんたが人の話を聞かないからでしょうが」
ひょっとしてここがダンジョンの中だということを忘れているのではないか。
そんな風に思ってしまうほど賑やかに二人は言い争いを始めてしまった。
目の前にいる俺のことはお構いなしだ。随分と余裕そうだ。
「賑やかなのはいいけど、時と場合を考えて貰いたいものだねぇ。仮にも目の前に魔物がいるんだよ」
その一声で言い争いがぴたりと止まる。
彼らも探求者、しかもこの付近にいるということは高位探求者だ。
どんな風に見えても、実力者であることに変わりはない。
束になって掛かられたら、こちらも本気で抵抗するしかない。
「言っておくけど、こっちに戦う気はないからな。剣を抜いたらすぐに逃げる」
「安心しなよ。こちらも戦闘の意思はない、今のところはね」
今のところは、ね。
「今はキミよりもバジリスクだ。そっちのほうが優先度が高い。というのも聞いていたよりはるかにサイズが大きいんだ。特別大きく育った強力な個体なんだろう。それゆえに縄張りを持たず、ダンジョン内を動き回っている」
「すでに中位の魔物の生息域にまで被害が出てる。このままだと中位や低位の探求者にも犠牲者が出かねない。だから話し合ってたんだ。協力を頼めないかって」
「俺に?」
随分と変わった判断だ。
今までの高位探求者は有無を言わさず殺しに掛かってきていたのに。
「あたしは反対だけどね」
彼女はふて腐れたような顔をしている。
まぁ、その気持ちもわかるけれど。
というか、彼女の反応が普通で、残りの二人がすこし可笑しいんだ。
「組合はあんたを駆除したがってるが、俺たちが受けた仕事はあくまでバジリスクの討伐だ。もし協力してくれるなら、俺たちもあんたとは敵対しない。仕事が来ても断るようにする。それでどうだ?」
「もし討伐できたら遺骨はキミに譲るよ。こちらは討伐の証明として鱗が数枚あればいい。どうだい? なかなか悪くない条件だと思うけど」
たしかに協力するメリットは十分にありそうだ。
特に彼らと戦わずに済むようになるのは大きい。
「話はわかったけど、いいのか? 俺に協力を求めたりして」
「いいわけない」
きっぱりと彼女は言う。
「いいわけないけど、今はバジリスクのほうが危険だから、そっちを優先するってだけ」
手段を選んでいられないほど、あのバジリスクが危険だということか。
将来の不安より目先の問題を優先するのは当然の心理だな。
こちらにとっても都合がいい。
「……わかった。協力させてもらうよ」
悪くない条件だし、それに俺が協力することで犠牲者を減らせるなら、それがいい。
バジリスク攻略のための意見を聞けるのもメリットだ。
「よし、成立だな。俺の名前は蓮、こっちが理人で」
最後に彼女が指差される。
「こいつが凜子だ」
「よろしく」
「ふんっ」
凜子は随分と愛想が悪いけれど、まぁいい。
こちらも自己紹介をして、一時的な共闘関係が成立する。
これからどう動くか、四人でよく話し合わないとな。




