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反魂のネクロ ~スケルトンになった少年、魔物の遺骨を取り込んで最弱から最強へと成り上がる~  作者: 手羽先すずめ


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石化の魔眼


 次々に襲い来る魔物たち、その姿はコボルトに似ているが、その実力は天と地ほどの差があった。大柄で、強靱で、連携が取れている。なにより速い。

 速いけれど、その速さもまた天と地ほどの開きがある。比較対象がフェンリルでは、どんな魔物も形無しだ。


「グオオオオオオオオオッ」


 フェンリル・スケルトンになったことで、基礎的な速度上昇が上昇している。魔力を消費しなくても、かなりの速度を出せるようになった。

 次々に襲ってくる魔物たちが繰り出す攻撃も、紙一重で躱せている。

 そして躱した刹那に銀の魔力によって反撃を行う。

 銀の魔力はただそれだけで鋭い。刀身に乗せて放つまでもなく、ただ周囲に放出するだけで触れたものを切り刻むほどだ。だから、俺は繰り出される攻撃を紙一重で避けていればそれでいい。

 あとは勝手に魔物のほうが銀の魔力に触れて切り裂かれる。そうして攻撃らしい攻撃を何一つすることなく、魔物たちは全滅した。


「ふいー」


 血の池に沈む魔物たちから遺骨を吸収し終え、一息をつく。

 このフェンリル・コートには鋭い爪もあって獣爪を思い出す。あと毛並みがとてもよくていつまでも触っていられる。暇潰しには持ってこいだ。


「さて、試運転はこれくらいにして、次の標的を決めるか」


 試運転の前に聞いてしまうと気が逸ってしまうので、いつも次の標的を決めるのは終わったあとだ。次はどの魔物を相手取るのだろう? 恐らく、俺でも知っているような有名な魔物だろうけれど。毎回、この時はすこし緊張する。

 神話や伽話でしか聞かないような化け物と戦うんだ、そうなってもしようがない。


「精霊。次の標的の候補を――」


 教えてくれ、と言いかけて遮られる。

 軽い地震のような揺れと、崩れるような音が聞こえてきたからだ。


「なんだ?」


 その疑問の答えは、向こうからやってきた。


「こっちだ! 転ぶなよ、転んだら終わりだぞ!」

「わ、わかってるっ! でも、こんなの聞いてない!」

「いやー、大変なことになったねぇ。まさか、あんなに大きいとは」

「言ってる場合か!」


 声が聞こえ、三人組が姿を見せる。

 なにかから逃げているようで、必死な表情だ。

 それは問題じゃない。問題は、その後ろを追い掛けている、巨大な蛇のほうだ。

 蛇らしく蛇行し、通路の壁面を削りながら三人組を追っていた。


「精霊、あれは?」

「――バジリスク、高位の魔物です。強力な毒と石化能力を有しています」

「……倒せるか? 今の俺に」

「――推奨はしません。が、勝機はあります」

「上等。助けにいく」


 勝機がなくとも助けにいったけれど、そういうことなら次の標的はバジリスクだ。

 とりあえず三人組の救出を最優先。銀翼を広げて飛翔し、三人組の頭上を飛びこえる。


「い、今のはなんだっ!?」

「なんか飛んでったけど!?」

「へぇ、興味深いね。スケルトンだ」


 三者三様の反応をする三人組を置き去りにし、バジリスクを正面に捉える。

 もっとも注意すべきは石化能力だろう。スケルトンである俺に毒性の有無はあまり関係ない。溶解性だとすこし困るけれど、その時は魔力ごと引き剥がせばいい。


「石化能力って言うのは大体、目を潰せばどうにかなる!」


 右手をヒポグリフ、左手をジャックフロストに変換。片方ずつに風と氷の魔力を灯し、混ぜ合わせて解き放つ。


「――複合特性、細雪を会得しました」


 細雪は、文字通り細かな吹雪となってバジリスクの視界を奪う。

 視界のホワイトアウトに加えて、吹雪による体温低下。いくら巨大とはいえ変温動物には堪えるはずだ。


「シュルルルルルル……」


 目論見通り、バジリスクの動きがすこしだけ鈍くなる。けれど、それも長くは持たない。

 中位の魔物ならこれで倒せていたのに、高位の魔物が相手ではすこしの足止めにしかならない。俺も強くなったはずだけど、ほかにももっと強い魔物がいる。

 世知辛いことだ。


「今のうちに逃げろっ」


 そう叫ぶと。


「お、おう。なんだか知らないが助かった」

「馬鹿っ、なにお礼言ってんの! あれ、駆除対象のスケルトンよ!」

「まぁ、いいじゃないか。今はあのスケルトンにこの場を任せよう」


 一悶着起こりそうだったけれど、どうにか場は納まって三人組は逃げ出した。

 そして、ついに細雪の効果が切れる。

 薄くなった細雪の隙間から、バジリスクの眼光が輝く。

 瞬間――


「ぐっ――」


 右腕がずしりと重くなる。考えるまでもない、石化を喰らった。

 それは身に纏う魔力を侵食し、骨にまで達しようとしていた。それを許したらこれまで吸収してきた魔物たちの能力をうしなってしまう。

 それだけは避けようとすぐさま魔力を破棄し、剥き出しとなった骨をまた魔力で包み込む。

 けれど、そうしている間にも、バジリスクは石化能力を使う。

 左腕、右足、脇腹、頬、次々に石化してしまう。


「これは不味いッ」


 次々に魔力を破棄し、そのたびに覆い直す。それと平行して飛ぶのを止めて、地面に降りた。今や空中にいるより、地上にいるほうが速度がでる。

 結果、その判断は正しかった。

 バジリスクが視線を合わせ、石化能力を発動するまでの僅かな間。それだけあればフェンリルの走力でバジリスクの焦点を振り切れる。とりあえず、石化からは逃げられた。


「このまま撤退だッ」


 流石に何の対策もなく突っ込んだのがいけなかった。

 第一目標である三人組の救出が済んだ以上、今は逃げるのが最善手。

 そうと決めたら即行動だ。自慢の走力で地面を駆け、逃げに徹する。

 当然、バジリスクも逃がすまいと追い掛けるが、蛇が狼に追いつけるはずもない。

 あっという間に振り切って、なんとか事なきを得た。


「さて、どうしたもんかな、あれは」


 バジリスク。石化が特に厄介だ。

 躱せはするけれど、それで手一杯になってしまいそうだ。

 とにかく、打開策を考えよう。再戦は、それが済んだあとだ。

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