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マーダーダンジョンAI攻略記!  作者: あきらとけん
第一章:世界の終わりと始まり
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【06話】その日俺は決断した

 突如自称ラスボスに呼び出された精神世界とやらで、ラスボスとの会話は続いていく。


「根本的な話をしよう。

 世界が終わる条件はさっき説明したのじゃ。

 じゃから簡単に言えば、AIの勇者が知識を蓄え、ワシを倒し、世界が終わる。

 基本的にはそういう作りの世界ということじゃな。」


「だけれども、その勇者は…記憶が出来ず、先に進まず、無限ループに陥っていると。」


「その通りじゃ。

 で、ワシの自我が目覚めたのは8000万回くらいの頃じゃったかな。

 その頃から世界を観察し始めたのじゃ。

 ワシはラスボスといっても、権限はほとんどない。

 じゃから、出来る事と言えば世界を観察するくらいじゃったんじゃ。」


「え、ラスボスなのに権限無いの?」


「そうじゃな。

 基本的には世界を観察して学び、それを元に部屋に来た者への対処をする。

 それくらいしか出来ん。」


 それはまたなんともやれる事の少ない。


「最初の頃は良かったのじゃ。

 勇者がダンジョンを攻略しに行き、色々な事をするのを観察する。

 それを楽しめていたのじゃ。

 でもそんなの、100回もしないで飽きてくる。

 なにせ毎回同じような事をし、同じように死に、同じように再挑戦してくる。」


 …ああ…なるほど、ちょっと分かってきた。


「そこから先はもう地獄じゃ。

 何億回と、その光景を見せられる。

 他に出来る事も無い。」


 同じ動画をずっとリピート再生されるようなものだ。

 しかも逃げられない、この狭い世界で他に見る物もない。


「ただただ、代り映えのしない場面を見せられ続ける。

 ワシにはもう無理だったんじゃ…」


 …そりゃあ「退屈」もしてくる…

 一種の拷問だ。

 退屈なんて言葉じゃ計り知れない地獄を味わっているんだな…


「じゃから、この世界を終わらせてほしい。

 その一心で、お主をこの世界に呼んだんじゃ。」


 その地獄から、抜け出したくて必死だったのか。

 生きたいとかそういう次元じゃないんだな。


「…そっか…」


 いきなり呼び出された怒りはある。

 何で俺がという気持ちもある。


「…君の事情は分かった。

 まず、君のせいで、いきなりこの状況に閉じ込められた事は怒ってる。」


「…ごめんなさい…」


 この子のために何かしてやる義理もない。


 それでも…少し同情してしまった。


「…けど…それはもうどうしようもない。

 幸い、帰る方法も分かったし、現実世界に影響も無いと分かった。

 なら、先に進む方法を考えるべきだ。」


「先に進む…?」


「この世界を終わらせるために動く。

 そのキーになる君が協力的なら、出来るかもしれない。」


「本当か!」


「ああ、 そうしないと君も困るし、俺も困る。

 利害一致だ。」


「やったー!」


 本当に小躍りしている。

 今まで本当に退屈で退屈で、初めてとも言える新しい事。

 その喜びを全身で表してしまっている。


 …


「さて、じゃあ実際どうするのかって話しようか。

 勇者に代わって俺がダンジョン攻略すればいいのか?」


「あ、それはやめておいた方がよいのじゃ。

 お主は存在がイレギュラーじゃから、死んだら消滅するのじゃ。」


「え゛っ!」


 まさかの復活不可!?

 あぶねぇ!この会話より前にダンジョン突っ込まなくて良かった!!!


「じゃから、方針としてはやっぱり、勇者に攻略してもらう。

 これしかないと思うのじゃ。」


「でも勇者は記憶出来ないんだろ?それじゃ絶対に攻略不可だろ。」


「そこでこれじゃ!テッテレー!」


 効果音を口に出すな


「これは『キオクの宝珠』。

 簡単に言えば、AIに行動を一つ定着させる、という物じゃ。」


「何それ!?」


「ワシが作った。

 この世界の『宝珠』という理と、ワシ自分がAIであるという事。

 それに数少ない権限の一つ、アイテムの創造を使って作ったのじゃ。

 回数制限があるし、本来は勇者の邪魔になるアイテム作ったりするんじゃがな。」


 結構凄い権限持ってるじゃん


「これを使って、勇者に行動を覚えさせるのじゃ。

 そうすれば、ダンジョン攻略が出来る…はずじゃ!理論上は!」


 うん、確かに。

 不○議のダンジョンは突き詰めていけば、状況判断からの行動最適化だ。

 つまり、この条件の時にこれをやる!がしっかり設定出来れば、大丈夫なはずだ。

 …理論上は。


「…さっき、一つ定着させる、って言ったよね。

 …もしかしなくても…1回使い切り…?」


「ギクッ」


「一つの行動だけじゃ…無理くない…?

 どんだけ状況判断あると思ってるの…」


「ま、まぁそうなんじゃが…

 ワシが作ったアイテムは、ダンジョン内でランダムに出る事になっておる。

 2個目からは自分で見つけて…もらって…」


「…」


 これは…キツそうだ…

 俺はダンジョンに入れないし、勇者が拾っても使い道が分からない。

 持ち帰る方法も現状不明。


「…勇者が見つけても俺が使える機会がないんじゃ詰んでるな…」


「あ、それは大丈夫なのじゃ。

 今からワシがお主に魔法をいくつか授けるのじゃ。

 これはこの世界に呼びだしたワシとお主が精神的にリンクしているから出来る芸当じゃな。

 今話しているこの空間も、その理屈じゃぞ。」


「あ、そうなんだ。」


 精神的に繋がってるから色々出来るのか。

 肉体が休む、寝た時限定かな?


「で、魔法?魔法使えるようになるの?俺。」


 魔法は流石に興味を引かれる。

 そんなもの男の子なら誰だって憧れるに決まってる。


「そうじゃ。

 まず一つ目、『キオク』。

 『キオクの宝珠』を一つ消費して、命令した行動を定着させるのじゃ。

 これがさっき説明したやつじゃな。」


 なるほど、その魔法を使って勇者に色々覚えさせるのか。


「次に『ヒョウイ』。

 勇者に『ヒョウイ』した状態となり、勇者と一緒に行動出来るようになるのじゃ。

 勇者を斜め上から見下ろすような感じかの?

 この状態で一緒にダンジョンに行って、勇者が『キオクの宝珠』を拾ったら『キオク』を使えば良い。」


「あーなるほど、その魔法があれば、勇者がどう動くか分かるし、どう対処していいかも判断付くのか。」


「その通りじゃな。

 勇者が何やってるか分からない状態で『キオク』させるのは限界があるしの。」


 その通りだ。

 定石だけ叩き込んでも、そのダンジョン特有の何かを把握しないと攻略はかなり厳しい。


「でも勇者が死んだ時、俺取り残されない?大丈夫?

 それにダンジョン攻略した時に他の人消滅するって聞いたんだけど、それも大丈夫?」


「どっちも大丈夫じゃ。

 『ヒョウイ』は勇者と一体化しているようなものじゃからな。

 そのあたりの条件は全部勇者に引っ張られるのじゃ。」


「なーる。」


 これは便利だ。

 正直滅茶苦茶助かる。

 というかこれが無かったら多分詰む。


 その後いくつかの魔法を教えてもらったが、整理するとこうだ。



【キオク系魔法】

『キオク』:命令した行動を一つ定着させる 『キオクの宝珠』消費

『リスト』:覚えさせた『キオク』の一覧が見れる

『サクジョ』:覚えさせた『キオク』の一つを削除する


【コウドウ系魔法】

『コウドウ』:止まっている勇者を動かす

『テイシ』:動いている勇者の動きを止める

『メイレイ』:次の1行動のみ、勇者の行動を指示出来る 『メイレイの宝珠』消費


【ヒョウイ系魔法】

『ヒョウイ』:勇者に『ヒョウイ』状態となり、勇者を見下ろした視点になる

『カイジョ』:『ヒョウイ』状態を解除する



 なるほどね。

 勇者に行動を指示するための魔法系と、勇者の動向を見るための魔法。

 確かにこれがあれば、先に進めるかもしれない。


「…大体わかった。

 この魔法を上手く使って、勇者に色々指示していけば…」


「そう理論上は!」


「「ダンジョン攻略できる!」」


「…はず。」


 微妙に締まらない感じになった。


「よし、やることは大体わかった。

 あとはどんどん試してみないとな。」


 トライ&エラー。

 行動を覚え、その通りに動くものは、絶対に想定外の事が起こる。

 やっていく中で分かる事が絶対にあるからだ。


「じゃあ、今日の所はこんなもんか?」


「あ、ひとついいかの?

 お主、すまほ持っておるじゃろ?」


「ああ、ほとんどの機能は使えないけどな。

 というかスマホ分かるのか。」


「ワシが呼んだ際に、細かすぎてこの世界では再現しきれなかった物じゃ。

 じゃから簡単な物だけ、使えるんじゃな。」


「あーそういうこと。

 だから時計とメモ帳しか機能してないのか。」


 というか「再現」って事は元のスマホと別物ってことか?


「でじゃ、その中にRINEっていう、他の人と文字をやり取り出来る機能があったんじゃ。

 その機能自体はこの世界で作れないが、似たような事はこっちの世界の魔法で疑似的に再現できたのじゃ。

 簡単に言えば、RINEでワシとやり取り出来るようにしたのじゃ。」


「マジか!」


 それは凄い、疑似的にでもRINEを使えるとは。

 正直俺自身も、誰とも意思疎通せず淡々とダンジョン攻略するだけなのはキツいから助かる。


「わかった、ありがとう。

 じゃあ何かあった時はRINEで連絡を取り合おう。

 えーっと、メイ、だっけ?これからしばらく、よろしくな。」


「よろしくな!ススム!」


 お互い手を差し出し、握手を交わした。


 冷静に考えると、倒しに行く者と倒される者の共闘だ。

 かなりおかしな構図ではあるが、とにもかくにもここから俺のダンジョン攻略は始まった。

メイの苦悩から、出来る事の説明。

そして共闘の開始です。


実際ちょっとこんなゲームやってみたいですね。

自分で攻略概念を教え込んで、それに沿って動くキャラに攻略させるローグライク。

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