【04話】その日俺は食住を手に入れた
勇者にダンジョンを攻略してもらう。
そのために定石とかのアドバイスをしっかり教えた…はずだが、まったく改善しない。
一応、戻るたびに状況を聞いてアドバイスを追加するが、全然ダメだ。
「この方向じゃ…ダメなのか?」
何回やっても勇者は10分そこらで戻ってくる。
絶対生存率が上がるはずのアドバイスをしても、帰ってくる。
ほぼ進展無し。
「ちょっと別の方向を考えなきゃいけないか?これ」
一緒に攻略すること:NG
勇者にアドバイスすること:NG
じゃあもう次の候補は、「勇者を諦めさせて俺自身が攻略を進める」じゃないか…
「嫌だなぁー、折角行かなくて良さそうな方法見つけたと思ったのに」
しかも諦めさせる方法って何だよ?
他で事件起こしてそっちに向かわせる?
王様からクビ宣告させる?
勇者の心を折る?
…なんかどれもダメそうだ。
他で事件起こしても関与しなそうな気しかしないし、王様がクビに出来るならそもそも2億回も待たない。
勇者の心も、折れるなら2億回の中で折れてる。
分からない。
分からないが、とりあえず次はこっちの方向で何か出来ないか、考えてみよう。
「…とりあえず休憩がてら宿屋に行ってみようか。
今後の拠点になるかもしれないし。」
勇者の動向を試行錯誤していたら、思ったより時間が経っている。
時間の概念はちゃんとあるみたいで、足踏みしてると時間が進んでいく。
大体1行動で5秒進む感じのようだ。
時間はお昼過ぎ。
少しおなかも空いてきたので、ご飯も食べたい。
きっと宿屋でご飯も出るだろう。
…
「すみませーん、宿を利用したいのですが、良いですか?」
「おや、城のお客さんじゃない人は珍しいね。
うちは城のお客さんの利用者がほとんどなんで、宿泊費は無料だよ。
運用費は城持ちなんだ。」
マジか。
良かったー、お金なんて持ってないから払えって言われたらジャージかスマホを売らなきゃいけなくなる所だった。
「それは助かります。
食事はありますか?」
「ああ、11時から13時までは昼食が、18時から20時までは晩飯が出るぞ。
メニューは選べないがな。」
よかったー!飢え死にする事は無さそうだ!
この世界、ダンジョン潜ってなくてもお腹減るんだもの!
いや普通に考えたらそりゃそうだ、なんだけど!
「ではすみません、宿を利用させてもらうのと、さっそく昼食を頂いても良いでしょうか。」
「よしきた。
じゃあ階段上がって2階の左奥の部屋を使ってくれ。
食事は1階の食堂だ。
準備しとくから、15分程したら降りてきてくれ。」
「分かりました、ありがとうございます。」
とりあえず食・住確保!
早速部屋に向かい、内装を確かめてみよう。
…
「わぁーお、シンプルぅー。」
いや予想はしてた。
予想はしてたよ。
この手抜きゲーで宿の部屋を凝るわけがないと。
「ベッド!机!椅子!以上!」
必要最低限!!!!!
いやでも、とにかく寝れる場所だ!
ありがたく使わせてもらおう!
しかし宿屋の店主も普通に話せるな。
街の人が適当なだけで城の人はちゃんとしてるのかもしれない。
…
…
…
「あの…」
「なんだい?」
「これ、何ですか?」
「定番の料理、水玉飴だが?」
「…」
15分後、俺は絶望していた。
食堂の席で待っていたのは、手のひらサイズの水の塊のような丸い物体。
これが…料理?
料理ってもっとこう、主食とおかずとサラダとかさ…
せめておにぎりとか、パンで何かを挟んでるとかさ…
…ここではこれが定番…
「…わかりました、ありがとうございます。
頂かせていただきます。」
もしかしたら滅茶苦茶美味しいのかもしれない。
なにせ定番だ。
定番になるだけの理由が、きっとある!
…
ジュル…
…
うわ、ナニコレ、薄い膜に覆われた水分の塊?
水は粘性があって、水飴のような食感。
味も水飴に近い、甘いもの。
…
不味くはない、不味くは。
水分と糖分がしっかりあり、凄くエネルギーになりそうだ。
…
「ごちそうさまでした。
一旦部屋に戻りますね。」
「はいよ、ごゆっくり。」
…
…
…
「非常食か!!!!!!!!!!」
部屋に戻るなり、叫んだ。
流石に作ってくれた人の横では言えないが、あまりに非常食。
定番料理の昼食なのに甘味。
一品のみ。
味の変化無し。
「確かにおなかは膨れた。
膨れたけどさぁ…」
ステータスを見てみると、36%まで落ちていた満腹度が100%まで回復していた。
「ちゃんとした固形物が食べたい…」
水飴っぽい物だけ食べても、満足感はまったく無かった。
…
「とりあえず、今まで分かった事をスマホのメモ帳に残しておくか。」
ほとんど機能しないスマホ。
けれどメモ帳があれば、情報は残せる。
一旦これを活用して、今後に役立てよう。
【メモ帳】
・この世界は不○議のダンジョンベース
・1回行動する毎に、世界や人物が1行動分動く
・1行動で5秒が経過する
・60行動で満腹度が1%減る
・上記から、満腹度100%で8時間超持つ
・ダンジョン攻略は同時に1人しか出来ない
・現在は勇者が攻略中だが、2億回以上失敗中
・勇者にアドバイスをしても、改善されない
・主食は「水玉飴」 甘い水の塊
…
横になりながら分かった事をメモし今後の事を考えていたら、昼過ぎにも関わらずいつの間にか眠りに落ちていた。
現状までの整理と、宿屋関連ですね。
食が合わないというのは現代日本人では本当にキツイと思います。
…固形物が無いのは現代日本人以外でもキツイか…




