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黄泉がえり  作者: たま


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9/10

殺人者

「や、やってない!美沙ちゃんの剣幕に逃げたよ〜貴和子も僕も。あんなに気がキツイと思わなかったよ。

普通は大人しい子だったし。」清がポロポロと泣き出す。

「嘘だ!他に誰が美沙を殺すんだよ!皆、美沙が可愛くて好きな奴しかいなかったのに!

皆に愛されてたのに!」雅紀叔父さんが清さんの顔面を拳で殴る。

それを父もジッと見つめてる。

この2人はずっと清と貴和子を怪しいとにらんでいたのだ、長い間。

「やめて!私が悪いの!

どうしても清さんにずっと好かれる自信持てなくて。美沙は男なら誰もが好きじゃない。村の男の子は皆美沙が好きだった。

だから、良いよって。美沙の性格だから絶対清さん好きにならないし。

私が!私が悪いの!清さんは悪くないの!」といつの間にかタクシーで帰って様子を伺ってたのか?

貴和子叔母さんが雅紀叔父さんから旦那さんをかばう。

「でも、絶対殺してない!そんな事しない!

私も清さんも人殺しなんか!美沙を殺したりしない!」貴和子叔母さんの大きな身体が清さんを完全にガードする。

それでも殴ろうとする雅紀叔父さんを織子の父が止めた。

「じゃあ、誰が美沙の首を絞めて殺したんだ?」と父が聞く。


「もう兄弟で争わんといて…お母さんやお母さんが悪いねん。」膝の悪い母が起き上がってヨタヨタと歩いてきた。

「お母さん!無理せんといて。ケンカちゃうから。

美沙を殺した奴をちゃんと罪を償わせたいだけやから〜」父が手を振り否定する。物音に驚いて出てきた冴子と織子の母が祖母を支えた。

祖母が首を振る。

「ちゃうねん、貴和子と清さんが血相変えて帰ってきたから心配なって地蔵の森まで行ったんよ。美沙の靴も無かったし…」なぜか祖母は2人の介抱を断り地べたに座った。

「美沙が泣いててん。森の石の上で倒れててボロボロで…すぐ分かったよ。私に気付いてもっともっと泣き出してん。」

「こんな田舎で…こんなん隠すの無理や。美沙は一生キズモノや。キズモノと言われて生きていかなあかんねん。

なんも悪るうないのに!だまされたバカな女言われて。

人に指刺されて笑われて。結婚なんかでけへん。

愛人どまりや。

他の兄弟かて噂話の的にされる。家が村で笑いもんにされるねん。」だんだん父の顔から血の気が引く。

「戦時中にお父さんが戦争で亡くなった未亡人と娘さんが犯されて売春宿って家にふざけて張り紙されて首吊って自殺した話、お母さんようしてたな…」雅紀叔父さんも思い出したようだ。

戦前の日本では婦女暴行は、女に非があると見なされたのだ。男に言い寄られるスキを作ったと。

だから沖縄でもアメリカが上陸する前に女子供は崖から皆飛んだのだ。いや、日本の女は淫乱だと言われない為に飛ばさたのだ。

「美沙をそんな目に合わせるのは絶対あかん!

あの子の(みさお)を守るためや!」祖母は震えながら頭を地べたに突っ伏した。

「横に落ちてた紐でお母さんが締めた。あの子の事を人に笑われたり後ろ指刺させたり、絶対せえへん!

この家の誇りはお母さんが守る!」

祖母が泣きながら、でも毅然と子供達を見つめた。

「本当は抱いて家に連れて帰りたかった。でも、それもでけへん。お母さんは川で死のうと思ってん。

でも、まだ雅紀が小さいしな。また、いつか死にに来ようと紐を結んで帰ってん。」

「わあああ〜クソックソッ!コイツらのせいで!コイツラのせいで〜〜っ!」雅紀叔父さんが清さんと貴和子さんを足と手で殴り蹴りだした。悲鳴があがる。


「お父さん、もう時効ないから連絡するよ。いいね?」織子の母が携帯で警察に知らせる前に確認する。

父は何も返事しなかった。


織子は、なぜか全て腑に落ちる。

自分がなぜ全てと戦うのか?

2度とこんな悲劇を起こしたくなくて頑張ってるのだ。

美沙さんは死ぬに死にきれなかったんだと。

田舎の…いや戦前の全ての悪習と戦う為に生まれ変わったんだと。

祖母のうなだれた姿を見て織子は悟った。


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