1人
父と雅紀叔父さんは…どこか行ったのか?気配がない。
まあ家事やらされてシンドかったようだ。
大の男がしんどい事を膝の痛い年食った母親1人にさせてるんだから、変な話だ。
それをまた文句も言わずにセッセとこなす母親とは?
「私も大人になれば、そんな気持ちになるのかなあ〜?」縁側に座ってボーーーッと庭を眺める。
居間には誰も居ない。
いつもは誰かしら居間でゴロゴロしてたような…
「田舎って面倒くさい!」初体験だが、それが織子の感想だ。まあ初日は楽しかったが。
ずっとは、あまりに女性陣の犠牲が酷すぎる。
これは滅びていく文化だなあ〜と感じる。
「静かな夜だね。」いつの間にか貴和子さんの旦那さんが横に座ってる。
「!」全然気付かなかった。
「まだ貴和子叔母さん、帰らないんですか?」確かにもう10時過ぎだ。遅い。
「ハハッ、仕事だからね。彼女は本当に豪快で楽しい人だから。それに容姿も良い。
夜遅いからと相手に気を使わせないしね。」と嬉しそうだ。
確かに叔母さんは顔も態度もデカくて深夜男性の中で1人女性でも気を使わなくて良いような人だ。
ぶっちゃければオッサンみたいだ。
美容家としてはすごい強みなのだ。
「もう!ノロケですか?本当に仲良し夫婦ですね〜」と笑うとなぜか手を握られた。
ビックリしすぎて声が止まった。
「ここは奈良だし、君たち姉妹は本当に古事記に出てくる姫様みたいだよね。」なぜか馴れ馴れしく手を両手で握ってくる。
「はい?何の話ですか?姉妹って…冴子ですか?」手を外そうとするが、軟そうに見えてもやはり男なのだ。なぜか外せない!
「ニニギノミコトの話だよ〜美しいが命儚い木花咲耶の姫と磐長姫姉妹の話だよ〜2人は一緒にニニギノミコト(人間の祖)に贈られるんだよ〜」とグイグイと自分に引き寄せる。
「姉妹はセットみたいなものだよ。現代は1人しか選べないけど、昔は姉妹で嫁ぐ事もあったのさ。
磐長姫は丈夫で安心長持ちで富を約束してくれる。
木花咲耶の姫は抱くのに丁度いい美しさなんだよ。
男は両方大切なんだよ。」と訳の分からない話をしてる。
足で蹴って少し距離を置けた。
「キショ!頭おかしいですよ!貴和子さんと私は姉妹じゃないです!…ちょっと、もしかして…昔も!」嫌な考えが浮かんだ。
「ここへご挨拶で来て、本当に白くて小さくて綺麗な女の子が居て驚いたよ。
貴和子と全然似てないの!と言うか貴和子だけ特別な感じがした。雅紀くんも小さくて白くて女の子みたいで可愛かったし。
でもね、だから彼女は僕に愛されようと努力を惜しまなかった。税理士に受かったのも彼女が水商売して僕を養ってくれたからなんだよ。
そして僕の資格を活かせるように会社を立ち上げて、本当に何から何までしてくれる。
磐長姫みたいな女神様なんだよ。
オプションでこんな可愛い子まで用意してくれて…」話が全く分からない!こんな頭のおかしい人だったなんて!
「何を言ってるんですか?本当に頭おかしいって!」織子は庭に裸足で飛び出す。
「僕があの子を抱きたいと言ったら、貴和子が地蔵裏の森に呼び出してくれて、抵抗したら縛れば良いからって。」
なんと貴和子叔母さんまでグルだったのだ。
男の関心を繋ぐために他の女を提供する女が居るのは事件とかで聞いたことある。
最近だとジジイの金持ちに逃げられないために女子大生に金払ったアラサー愛人とか。ポンパドール夫人も美女軍団作って王を飽きさせなかったとか。
しかし、妹を売るとは!頭がおかしい!
「昔もすごい抵抗して、貴和子にすごい罵声浴びせて、美沙ちゃんが。
顔だけじゃなく心もブスとか全てブスって連呼されて…貴和子が泣いて逃げ出したんだよね。僕も1人になったらドキドキしてきて逃げちゃった。まだ若かったからね。
今なら余裕だよ。大丈夫。痛くしないから。
僕に任せて。」と両手を広げて庭の灯籠の方へ追い詰めていく。
もうダメだ!人間関係のために大声出せなかったが限界が来た。
「ぎゃあああーーーッ!貴和子さんの旦那さんに!清さんに犯されるーーーッ!助けてーーーーーッ!!!」田舎の夜は静かだが、ご近所にまで届く声で名前入りで叫ぶ。
「織子、大丈夫か!」父と雅紀叔父さんが茂みから飛び出してきた。元々隠れてタイミングを見ていたのだ。
「エッ、エッ、なんで…」清さんが狼狽える。
「車で出掛けたと思ったろう?隣家の庭に置かせて貰って徒歩で帰ってたんだよ。貴和子が出掛けたから絶対今夜だと思ったよ!
てか、なんで美沙を殺したんだ!」と雅紀叔父さんが清さんをねじ伏せる。




